4 / 7
ライゼン通りのお針子さん4 ~光と影の潜む王国物語~
番外編 イクトとレイヴィン
しおりを挟む
アイリスにお店を任せ飛び出していったイクトはセツナの姿を探す。
「いつもだったらこの辺りにいるはずなんだが……どこにもいないとなると、もうこの国を出ていってしまったのかな」
ゲートの辺りでいつも立っている彼女の姿は見当たらず、仕方ないので次に図書館へと向かう。
「レオ様は……いないか。となると今はお城で仕事中なんだな。……後は、アイアンゴーレムについて話が出来そうな人は隊長だけか」
王立図書館の書棚の辺りにいる時もあるというレオの姿を探すもどこにも見当たらないため、お城で国王としての仕事をしているのだろうと判断する。
そうして最後にレイヴィンの下へと向かった。彼は普段王宮の門前を警備しているので、そこに行けば会えるだろうと足を進める。
「隊長!」
「お、イクトじゃないか。なんだ、またレオ様に呼び出されたのか」
イクトが思った通りに門の前に佇む彼の姿に駆け寄っていった。レイヴィンも彼に気付き微笑む。
「……いや、今日はレオ様に呼ばれたわけではないよ。少し確認したい事があって。アイアンゴーレムについてだけれど俺達町民には言えない何か秘密があるんだろう」
「……アイアンゴーレムが二度とこの国で人々を襲うことはない。奴はリリアのおかげで心を取り戻したんだよ。だから、もう二度とあんな悲惨な事件が起こることはない。俺がそれを保証する」
彼の言葉に隊長は真面目な顔でそう答えた。
「だからイクト。もう、お前も苦しまなくていい。これからはアイリスと一緒に平和に楽しく暮らしてくれ」
「……だけど、俺は……」
微笑み話すレイヴィンの言葉にイクトは苦しげな悲しげな顔で俯く。
「アイリスはたった一人の家族なんだろう。なら、何の心配もないさ。彼女だってイクトがいないとダメなんだ。だからお前達二人は大丈夫さ」
「……」
その様子に隊長が言い聞かせるかのように語る。彼はただ黙っているだけだった。
「皆前に進みだした。あんただってそうなんだろう。アイリスに出会って止まっていた時が動き出したんだ。もうあんたは一人じゃない。アイリスがいるだろう。二人で幸せだって思える時を刻んでいっていいんだよ」
「……ははっ。そう言われて少しだけ救われたような気がするよ。でも、だけどごめん。俺はまだ向き合うのが怖いんだ。だから、もう少しの間このままでいたい。勇気が出るまでは……」
穏やかな口調で語るレイヴィンの言葉にイクトが小さく笑うと悲しそうな瞳でそう話す。
「いいんじゃないの、俺もあいつとの出来事が解決したから前に進めるようになった。だから、イクトもすぐには出来なくてもいつかは前に進める日が来るさ。その時は俺達皆でミラさんの事アイリスに話して謝ってやるよ。助けられなくてごめんってな」
「うん……隊長。有り難う」
にこりと笑い言われた言葉に彼がお礼の気持ちを伝えると立ち去った。
アイリスに言えない秘密を皆が抱えたまま季節は巡り、時はまた過ぎ去っていくのである。
「いつもだったらこの辺りにいるはずなんだが……どこにもいないとなると、もうこの国を出ていってしまったのかな」
ゲートの辺りでいつも立っている彼女の姿は見当たらず、仕方ないので次に図書館へと向かう。
「レオ様は……いないか。となると今はお城で仕事中なんだな。……後は、アイアンゴーレムについて話が出来そうな人は隊長だけか」
王立図書館の書棚の辺りにいる時もあるというレオの姿を探すもどこにも見当たらないため、お城で国王としての仕事をしているのだろうと判断する。
そうして最後にレイヴィンの下へと向かった。彼は普段王宮の門前を警備しているので、そこに行けば会えるだろうと足を進める。
「隊長!」
「お、イクトじゃないか。なんだ、またレオ様に呼び出されたのか」
イクトが思った通りに門の前に佇む彼の姿に駆け寄っていった。レイヴィンも彼に気付き微笑む。
「……いや、今日はレオ様に呼ばれたわけではないよ。少し確認したい事があって。アイアンゴーレムについてだけれど俺達町民には言えない何か秘密があるんだろう」
「……アイアンゴーレムが二度とこの国で人々を襲うことはない。奴はリリアのおかげで心を取り戻したんだよ。だから、もう二度とあんな悲惨な事件が起こることはない。俺がそれを保証する」
彼の言葉に隊長は真面目な顔でそう答えた。
「だからイクト。もう、お前も苦しまなくていい。これからはアイリスと一緒に平和に楽しく暮らしてくれ」
「……だけど、俺は……」
微笑み話すレイヴィンの言葉にイクトは苦しげな悲しげな顔で俯く。
「アイリスはたった一人の家族なんだろう。なら、何の心配もないさ。彼女だってイクトがいないとダメなんだ。だからお前達二人は大丈夫さ」
「……」
その様子に隊長が言い聞かせるかのように語る。彼はただ黙っているだけだった。
「皆前に進みだした。あんただってそうなんだろう。アイリスに出会って止まっていた時が動き出したんだ。もうあんたは一人じゃない。アイリスがいるだろう。二人で幸せだって思える時を刻んでいっていいんだよ」
「……ははっ。そう言われて少しだけ救われたような気がするよ。でも、だけどごめん。俺はまだ向き合うのが怖いんだ。だから、もう少しの間このままでいたい。勇気が出るまでは……」
穏やかな口調で語るレイヴィンの言葉にイクトが小さく笑うと悲しそうな瞳でそう話す。
「いいんじゃないの、俺もあいつとの出来事が解決したから前に進めるようになった。だから、イクトもすぐには出来なくてもいつかは前に進める日が来るさ。その時は俺達皆でミラさんの事アイリスに話して謝ってやるよ。助けられなくてごめんってな」
「うん……隊長。有り難う」
にこりと笑い言われた言葉に彼がお礼の気持ちを伝えると立ち去った。
アイリスに言えない秘密を皆が抱えたまま季節は巡り、時はまた過ぎ去っていくのである。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
英雄一家は国を去る【一話完結】
青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。
- - - - - - - - - - - - -
ただいま後日談の加筆を計画中です。
2025/06/22
【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?
【完結】アル中の俺、転生して断酒したのに毒杯を賜る
堀 和三盆
ファンタジー
前世、俺はいわゆるアル中だった。色んな言い訳はあるが、ただ単に俺の心が弱かった。酒に逃げた。朝も昼も夜も酒を飲み、周囲や家族に迷惑をかけた。だから。転生した俺は決意した。今世では決して酒は飲まない、と。
それなのに、まさか無実の罪で毒杯を賜るなんて。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる