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ライゼン通りのお針子さん5 ~店長就任以来の危機? 波乱を呼ぶ手紙~
番外編 イクトとキース
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これはアイリスが仕事を休んでいた頃のお店でのお話。
「アイリス、最近元気がないって聞いてきたんだけれど、大丈夫?」
「おや、キース君いらっしゃい。せっかく来てくれたのに悪いな。しばらくの間アイリスはお店を休んでいるんだ」
鈴の音が鳴り響きキースが店内へと入って来るとイクトがそう答えた。
「そうですか……あの、イクトさん。アイリスは大丈夫でしょうか?」
「こればかりは俺にもどうしようもない。アイリスが決める事だからな」
伏目がちになりながら呟かれた言葉に彼が困った顔で話す。
「そうですよね」
「それよりもキース君に一つ聞きたい事があるんだけれど」
「はい、何でしょうか?」
俯き暗い顔をするキースへとイクトが優しい微笑を称えたまま尋ねる。
「俺の勘違いでは無ければキース君はアイリスの事が好きなんじゃないかな?」
「えっ」
問いかけるように放たれた言葉に彼が目を見開いて驚く。
「どうかな? 俺の勘違いかな」
「……いいえ。イクトさんの仰る通りです。僕はその、アイリスの事昔から好きでした。初恋ってやつですね」
優しい瞳で見透かしているかのような言動にキースが苦笑しながら答える。
「そうか、やっぱりか。だけどアイリスは仕事一筋で君の好意に気付いていないようだ」
「そのようですね。僕も面と向かってアピールしたことありませんでしたから」
店の店員と客というよりも姪の事を思う叔父と彼女に恋をする片思い男子みたいな空気が流れ始めた。
「キース君。俺は君の事もう少し知りたいと思う。アイリスの事を任せられるかどうか確かめたいんだ」
「と、仰いますと?」
イクトの言葉に彼が首をかしげて不安げに見詰める。
「最近この辺りも物騒な噂が絶えないだろう。アイアンゴーレムの事件は解決したけれど今度は怪しげな闇の取引の話が持ち上がってきている。確か黒の集団だっけか」
「もうその情報を入手しているんですね。そうです。最近黒の集団と言われるどこの国にも属さないという自由の組織だとかいう連中がいろんな国で問題を起こしているようで。それでこの国にもその一員が潜んでいる可能性もあると国王は危険視しているのです」
彼の言葉にキースが真面目な顔になり説明した。
「キース君。君が本当にアイリスにとってふさわしい相手かどうか見極めるためにも、この国で起こる事件や起こりそうな出来事、そして危険人物とどのように戦うのか見て見たい」
「どのように戦うかですか?」
「うん。俺のこの課題にどう答えるかは君に任せる。どうかな?」
「分かりました。僕、頑張ります」
二人の会話はそこで終わりイクトは変わらない微笑みでキースは変な汗を流しながら笑う。
アイリスの知らないところで叔父と婚約者になるかもしれない相手との密談は進んでいったのであった。
======
あとがき
イクトは叔父としてアイリスの幸せを願っています。だから彼女の事を好きになった男性陣を試しては誰が一番ふさわしいのかを見極めてます。
自分がいなくなった後もアイリスを守り幸せにできる相手かどうかを見るために彼女に内緒で男性陣に試練を与えているのであります。
ライゼン通りのお針子さん6ではついに恋愛模様も含まれて来るかも?
「アイリス、最近元気がないって聞いてきたんだけれど、大丈夫?」
「おや、キース君いらっしゃい。せっかく来てくれたのに悪いな。しばらくの間アイリスはお店を休んでいるんだ」
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伏目がちになりながら呟かれた言葉に彼が困った顔で話す。
「そうですよね」
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俯き暗い顔をするキースへとイクトが優しい微笑を称えたまま尋ねる。
「俺の勘違いでは無ければキース君はアイリスの事が好きなんじゃないかな?」
「えっ」
問いかけるように放たれた言葉に彼が目を見開いて驚く。
「どうかな? 俺の勘違いかな」
「……いいえ。イクトさんの仰る通りです。僕はその、アイリスの事昔から好きでした。初恋ってやつですね」
優しい瞳で見透かしているかのような言動にキースが苦笑しながら答える。
「そうか、やっぱりか。だけどアイリスは仕事一筋で君の好意に気付いていないようだ」
「そのようですね。僕も面と向かってアピールしたことありませんでしたから」
店の店員と客というよりも姪の事を思う叔父と彼女に恋をする片思い男子みたいな空気が流れ始めた。
「キース君。俺は君の事もう少し知りたいと思う。アイリスの事を任せられるかどうか確かめたいんだ」
「と、仰いますと?」
イクトの言葉に彼が首をかしげて不安げに見詰める。
「最近この辺りも物騒な噂が絶えないだろう。アイアンゴーレムの事件は解決したけれど今度は怪しげな闇の取引の話が持ち上がってきている。確か黒の集団だっけか」
「もうその情報を入手しているんですね。そうです。最近黒の集団と言われるどこの国にも属さないという自由の組織だとかいう連中がいろんな国で問題を起こしているようで。それでこの国にもその一員が潜んでいる可能性もあると国王は危険視しているのです」
彼の言葉にキースが真面目な顔になり説明した。
「キース君。君が本当にアイリスにとってふさわしい相手かどうか見極めるためにも、この国で起こる事件や起こりそうな出来事、そして危険人物とどのように戦うのか見て見たい」
「どのように戦うかですか?」
「うん。俺のこの課題にどう答えるかは君に任せる。どうかな?」
「分かりました。僕、頑張ります」
二人の会話はそこで終わりイクトは変わらない微笑みでキースは変な汗を流しながら笑う。
アイリスの知らないところで叔父と婚約者になるかもしれない相手との密談は進んでいったのであった。
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あとがき
イクトは叔父としてアイリスの幸せを願っています。だから彼女の事を好きになった男性陣を試しては誰が一番ふさわしいのかを見極めてます。
自分がいなくなった後もアイリスを守り幸せにできる相手かどうかを見るために彼女に内緒で男性陣に試練を与えているのであります。
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