ライゼン通りの雑貨屋さん ~雑貨屋の娘とお客様~

水竜寺葵

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ライゼン通りの雑貨屋さん4 ~雑貨屋の娘と探検家の青年~

一章 レイヤの秘密

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 春風吹き抜けるライゼン通り。その道を彩るように一人の女性が雑貨屋へと訪れる。

「ふふっ。また来てしまいました~」

レイヤが言うと扉を開けて室内へと入っていった。

「いらっしゃいませ。あ、レイヤさん」

「ふふっ。ベティーさんお久しぶりです~。またお買い物に来ました」

扉が開く音を聞いたベティーが振り返ると、そこに立っている女性の姿に微笑む。

レイヤが陽だまりのような笑顔を浮かべて手の平を合わせた。

「どうぞ、どうぞ、ゆっくり見ていってください」

「それでは~。失礼して……ふふっ。春らしい色の雑貨さんは何処にいますか?」

彼女の言葉に女神が言うとゆったりとした動作で棚を一つずつ見て回る。

「おや、この香りは……女神様いらっしゃいませ」

「あら、あらあらあら。ジュディーさん今年もお会いできて嬉しいですぅ~」

うたた寝をしていたジュディーが春の匂いに目を覚まして微笑む。その姿にレイヤも嬉しそうに笑い返した。

「ふふっ。女神様にお会いできるなんて、長生きはするものですねぇ」

「あらら? ジュディーさんは少し元気がないみたいですね。では、春の女神より祝福を」

「?」

祖母の言葉に女神が言うと一瞬周囲が花が咲き誇ったかのような雰囲気に包まれる。それに目を丸めてベティーは驚く。

「え、あれ? 今一瞬女神様とおばあちゃんが光ったように見えたのだけど……」

「はい。魔法を使いましたので」

目を瞬く彼女へとレイヤがにこりと笑い答えた。

「魔法ってそんなの大昔のお話でしょ。それを扱えるレイヤ様って一体?」

「あらら? お話した事なかったですか? 私は春の女神。正真正銘の精霊です~」

驚くベティーへと首を傾げながらレイヤが話す。

「え? 精霊? 女神様は本物の精霊ですってぇええっ!?」

「ベティーやそんなに驚いたら女神様に失礼だよ」

目を白黒させて驚愕の表情を浮かべる彼女へとジュディーが軽く諫める。

「ふふっ。大丈夫ですよ~。驚かせてごめんなさいね」

「い、いえ。驚きはしましたけれど毎年お姿が変わらない理由に説明がつきました。そっか、精霊様だから見た目はあまり歳をとらないんですね」

柔らかく微笑み謝るレイヤへとベティーが慌てて答えるとほぅっと溜息を零す。

「でも、正真正銘の女神様だろうと何だろうと、家のお店を贔屓にして頂けるなら何でも構いませんよ」

「ベティーやそういういい方は失礼だよ」

彼女はにこりと笑い言うと、祖母が再び諫める。

「はい。また来年も再来年も利用させて頂けると嬉しいのですが……でも来年以降は難しいかもしれませんね~」

「「?」」

女神の言葉に二人はそろって疑問符を浮かべた。

「ふふっ。こちらの薔薇の花の便箋を頂けますか」

「あ、はい。毎度有り難う御座います」

不思議な言葉の意味を教えては貰えず、レイヤがそう言って便箋を買うとお店を後にする。

「ねぇ、おばあちゃん。女神様何が言いたかったんだろう」

「さあねぇ。わたし達人間には分からない神様や精霊様や妖精さんの神通力じゃないかねぇ」

ベティーはジュディーの顔を見て尋ねる。それに祖母が首を振って答えた。

「それより、忙しくなる前にミラちゃんのお店にお使いに行ってはくれないかねぇ」

「分かったわ。何時ものでいいのよね」

「あぁ、お願いねぇ」

ジュディーの言葉に彼女は返事をすると身支度を整える。その姿へと向けて祖母が声をかけた。

「それじゃあ、ちょっと行ってくるわね」

「はい。行ってらっしゃい。……そろそろわたしにもお迎えが来るのかねぇ。ベティーを一人残していくのは心配だよ」

ベティーが出掛けて行った後、一人きりになった部屋の中でジュディーは呟く。

「孫が結婚する姿を見るまではと思っていたけれど、難しいかねぇ」

小さく溜息を吐き出すと再びうつらうつらと舟をこぎ始める。

レイヤの言葉の意味を知るのはもう少し後になってからであった。
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