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四章 惹かれ合う二人
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ユリウスとエディが復讐に協力してくれると言ってくれた夜の事、ユリシアは一人中庭に立ちぼんやりと月を眺める。
「ユリシア、こんな夜遅くにどうしたの? 眠れないのか」
「ユリウス様……」
誰かに声をかけられ振り返るとそこには不思議そうな顔のユリウスが立っていた。
「もしかして、昼間の事で悩み事でもあるのかな」
「わたくしは王妃になるはずでしたの。ですから、元国民達の事を案じてもよろしいのではなくて」
彼の言葉に彼女は皮肉な笑みを浮かべて答える。
「……グエル殿が国王となり、シャナを王妃に迎えたそうだ。それを聞いて、グエル殿の事を想っていたのではないのか」
「あの男に何の未練も御座いませんわ。それよりも、昼間お話した気持ちは本当です。ユリウス様の助けになりたい。その為ならば、わたくしにできる事ならなんでもいたしますわ」
探るような眼差しで見詰めてユリウスが話すと、ユリシアは淡泊に答えながら熱い瞳で彼の顔を見やる。
「僕達に恩を感じているから? それなら、気にしなくてもいい。僕達が好きでやった事だから」
「それだけではございませんわ。わたくしは……」
彼の言葉に言いかけて飲み込む。不安そうに小さな溜息を吐き、俯く彼女の姿にユリウスが不思議そうな顔をした。
「……グエルに抱いていた気持ちが嘘であったとは思いたくありません。ですが、今わたくしの胸を占めていらっしゃるお方は彼ではなく貴方様なのです」
「っ!?」
ユリシアの言葉に瞳を大きく見開きユリウスは息をのむ。
「……このような気持ちを抱いたのは初めてで、ですから怖いのです。貴方様にまで見放されてしまうのが――っ!?」
「……」
不安そうに語っていると彼に優しく抱きしめられ、彼女は驚く。
「貴女と出会った日から僕の心にはどす黒い何かが渦巻いていた。グエル殿に対する怒りと嫉妬。ユリシアの瞳に映るのは今でも彼なのではないか。そう思うと自分を押さえられなくなるくらい、醜い想いに駆られた。ユリシア、僕は出会った日から君の事に惹かれていたんだ」
「ユリウス様……」
耳元で囁く声にユリシアの頬は赤く染まる。
「ユリシア、君の事が好きだ。だから、君の助けになりたい」
「わたくし、信じてよろしいのでしょうか。貴方様の事を……」
身体を離し美しく笑うユリウスへと彼女は不安げに尋ねた。
「君が受けた仕打ちの何十倍も何億倍も、この国の……いいや。世界一幸せにしてあげる。だから、信じてついてきて貰えないかな」
「ユリウス様……」
微笑む彼へとユリシアは嬉しそうにその差し出された手を取る。
「……」
「あれ、エディさんこんな遅くに何しているんですか?」
その様子を回廊の柱の陰から見詰めるエディ。その姿にリィーナは不思議そうに声をかけた。
「……何でもない」
「もしかして、昼間のお話を気にしていらっしゃるんですか?」
不貞腐れたような顔で呟く彼へと、彼女はそう言って尋ねる。
「大丈夫ですよ。この国にもし疫病が入ったとしても私の力で何とかできます。ですが、一気に広まってしまったら、そう言う訳にもいきませんが。そこで、ユリシアさんと考えて特効薬を開発しようって話になっているんです。だからそれが出来ればこの国にもし疫病が流行り始めたとしても問題ないです」
「そんなことを問題視しているわけではない。君の力なら大丈夫だと信じている」
にこりと笑い話すリィーナへとエディが首を振って答えた。
「ふふっ。嬉しいです~。私頑張っちゃいますね」
「リィーナ。その、昼間の件で僕達が君達を保護したことで、恩を感じているから手助けしたいと思っているのなら、そんなに気を張らなくても大丈夫だ」
嬉しそうにはにかむ彼女へと彼が話す。
「違いますよ。確かにご恩返ししたい気持ちももちろんあります。でも……それだけじゃないんですよ」
「?」
はぐらかすような感じのリィーナの言葉に、エディが不思議そうに首をかしげる。
「エディ様はお優しいですね」
「優しい、僕が? そうだね、君だからかな」
「え?」
頭を振うとにこりと笑い話す彼女へと、彼が微笑み答えた。その意味が分からずリィーナは目を丸める。
「僕の噂はもう耳に入っているでしょう。無能な王子……昔から出来の良い兄上と比べられて育ってきた。どんなに努力しても兄上に勝てることは無かった。勿論兄上に対して憎いとか思ったことは一度だってなかったけど、兄上が補佐になるのは僕しかいないと言って側に置いた時、周りの奴等に散々罵られた。それからだよ。僕は人に対して卑屈になり、遊び歩くようになったのは」
「エディ様……そうかもしれません。ですが、エディ様はやっぱりお優しいです。私には分かりますよ。心の温かい人だって事。だから私達の境遇を知って見捨てられずに保護して下さったんですよね」
昔語りを始めたエディへと彼女は優しく微笑み気持ちを伝えた。
「ですから、そんなエディ様の役にたちたいんです」
「有難う。君は本当に優しいね」
にこりと笑うリィーナへと彼が微笑み返す。
それから数ヶ月たったある日の事。この日、ユリウスとユリシアの結婚式が執り行われ、彼は国王に即位し、彼女は王妃となった。
「ユリウス・リアン・ファイザール様、ユリシア・シャルティー・ヴェイゼル様の御結婚をお祝いいたします」
『お祝いいたします』
壇上に立つ司祭の言葉に城に仕えている人々から祝いの言葉がかけられる。
「ユリシアさんおめでとうございます!」
「兄上おめでとう」
笑顔で拍手を送るリィーナとぎこちない微笑を浮かべるエディ。
「有難う」
「リィーナ次は貴女の番でしてよ」
ユリウスが照れた顔で礼を述べる横で、花束を聖女へと手渡し微笑むユリシア。
「ユリシア、以前君に言った言葉は変わらない。世界一幸せにしてみせる」
「えぇ、わたくしどこまでも信じて付いて参りますわ」
王妃の唇へとキスを落とした国王がそう言って微笑む。それにユリシアもにこりと笑い答えた。
「……」
(エディ様?)
その様子を羨ましそうに見詰めるエディ。その姿に気付いたリィーナは暗い顔をする。
(やっぱり、無能と呼ばれた私なんかよりも、いつも冷静沈着で立ち振る舞いも立派なユリシアさんの事が好きだったんですね。ユリウスさんと結婚されて複雑な思いを抱いているのかも……)
嫌な考えに心に影がよぎる。それを振り払うように首を振って否定する。
(私は聖女よ。嫉妬を抱いたりするなんてよくない。エディ様の事が好きなんですもの。好きな人がユリシアさんの事が好きだったって知ったとしても、優しく励ましてあげるのが私の役目。好きな人の笑顔の為なら私は自分の気持ちに蓋をします)
そう決意してそっとエディへと近寄る。
「エディさん顔色が良くありませんよ。ということで聖女の癒しの力が必要ですね。さ、気分転換に行きましょう」
「え、ちょっとリィーナ?」
彼の右腕を取り歩き始めた彼女の突然の行動にエディが驚く。
「僕を連れ出すなんて、いきなりどうしたの?」
「エディ様、ユリウス様とユリシアさんの事羨ましそうに見ていましたよね」
誰もいない中庭までやって来ると、彼がずっと不思議に思っていたことを尋ねる。
それに振り返りリィーナは答える代わり聞いた。
「!?」
「エディ様。国王になれないからと言って何なのですか。エディ様の瞳の色はエメラルドの宝石のように綺麗で素敵です。エディ様にはエディ様にしかない魅力があります。ですから、ユリウス様にユリシアさんをとられたからと言って落ち込まないでください」
「え、ま。待ってよ! どうしてそこでユリシアが出て来るんだ」
見破られていたことに驚くエディへと優しく励ます。しかしユリシアの事が出てきて彼が驚いて尋ねた。
「ユリシアさんの事が好きだったから、ユリウス様にとられて悔しかったのではないのですか?」
「はぁ!? ちが……僕が好きなのは――!」
不思議そうな顔で尋ねるリィーナへとエディが口走り慌てて手で押さえる。
「?」
「……っ。確かに羨ましいと思ったよ。僕は兄上の様に素直に自分の気持ちを伝えるのが出来なくて、好きな人に好きだと伝えられずにいる。だから二人の仲睦まじい姿に、憧れと嫉妬の念を抱いたのは確かだ。だけど、僕は別にユリシアの事が好きだったわけじゃない」
首をかしげる聖女へと彼が言葉を選びながら話す。
「では、なぜ、羨ましそうに見ていたんですか?」
「そ、それは……」
純粋な瞳で見詰められたじろぐエディ。リィーナは彼が口を開いてくれるのを待つ。
「……」
「……」
暫く静寂が訪れた。聖女は居心地の悪さを感じながらもエディの瞳をじっと見詰め続ける。
「はぁ……僕が好きなのはリィーナ。君だよ」
「え?」
リィーナは聞き間違いではないかと思い目を丸くすると、一秒だけ呼吸を忘れた。
「僕は国王にはなれないし、兄上みたいに優秀じゃないけど……それでも、リィーナ……君を愛してもいいかな?」
「私はエディ様がいいのです。ずっと、お慕いしておりました」
優しく微笑み尋ねるエディへと聖女は嬉しくて涙を瞳にためながら笑顔で答える。
「っ!?」
柔らかく微笑む彼の顔がそっと近づいてきて、唇に感じる熱にリィーナは目を見開き頬を赤らめた。
「リィーナ。君は無能な聖女なんかじゃない。それは僕が一番よく理解している。だから、僕の隣で妻として支えてくれないかな」
「エディ様が無能な王子なんかではないことを、私は知っています。ですから、側で支えてくれますか」
二人して同じような言葉を話すと、一瞬の静寂の後に可笑しくて笑い合う。
こうしてエディとリィーナはユリウスとユリシアの後を追うように結婚するのであった。
「ユリシア、こんな夜遅くにどうしたの? 眠れないのか」
「ユリウス様……」
誰かに声をかけられ振り返るとそこには不思議そうな顔のユリウスが立っていた。
「もしかして、昼間の事で悩み事でもあるのかな」
「わたくしは王妃になるはずでしたの。ですから、元国民達の事を案じてもよろしいのではなくて」
彼の言葉に彼女は皮肉な笑みを浮かべて答える。
「……グエル殿が国王となり、シャナを王妃に迎えたそうだ。それを聞いて、グエル殿の事を想っていたのではないのか」
「あの男に何の未練も御座いませんわ。それよりも、昼間お話した気持ちは本当です。ユリウス様の助けになりたい。その為ならば、わたくしにできる事ならなんでもいたしますわ」
探るような眼差しで見詰めてユリウスが話すと、ユリシアは淡泊に答えながら熱い瞳で彼の顔を見やる。
「僕達に恩を感じているから? それなら、気にしなくてもいい。僕達が好きでやった事だから」
「それだけではございませんわ。わたくしは……」
彼の言葉に言いかけて飲み込む。不安そうに小さな溜息を吐き、俯く彼女の姿にユリウスが不思議そうな顔をした。
「……グエルに抱いていた気持ちが嘘であったとは思いたくありません。ですが、今わたくしの胸を占めていらっしゃるお方は彼ではなく貴方様なのです」
「っ!?」
ユリシアの言葉に瞳を大きく見開きユリウスは息をのむ。
「……このような気持ちを抱いたのは初めてで、ですから怖いのです。貴方様にまで見放されてしまうのが――っ!?」
「……」
不安そうに語っていると彼に優しく抱きしめられ、彼女は驚く。
「貴女と出会った日から僕の心にはどす黒い何かが渦巻いていた。グエル殿に対する怒りと嫉妬。ユリシアの瞳に映るのは今でも彼なのではないか。そう思うと自分を押さえられなくなるくらい、醜い想いに駆られた。ユリシア、僕は出会った日から君の事に惹かれていたんだ」
「ユリウス様……」
耳元で囁く声にユリシアの頬は赤く染まる。
「ユリシア、君の事が好きだ。だから、君の助けになりたい」
「わたくし、信じてよろしいのでしょうか。貴方様の事を……」
身体を離し美しく笑うユリウスへと彼女は不安げに尋ねた。
「君が受けた仕打ちの何十倍も何億倍も、この国の……いいや。世界一幸せにしてあげる。だから、信じてついてきて貰えないかな」
「ユリウス様……」
微笑む彼へとユリシアは嬉しそうにその差し出された手を取る。
「……」
「あれ、エディさんこんな遅くに何しているんですか?」
その様子を回廊の柱の陰から見詰めるエディ。その姿にリィーナは不思議そうに声をかけた。
「……何でもない」
「もしかして、昼間のお話を気にしていらっしゃるんですか?」
不貞腐れたような顔で呟く彼へと、彼女はそう言って尋ねる。
「大丈夫ですよ。この国にもし疫病が入ったとしても私の力で何とかできます。ですが、一気に広まってしまったら、そう言う訳にもいきませんが。そこで、ユリシアさんと考えて特効薬を開発しようって話になっているんです。だからそれが出来ればこの国にもし疫病が流行り始めたとしても問題ないです」
「そんなことを問題視しているわけではない。君の力なら大丈夫だと信じている」
にこりと笑い話すリィーナへとエディが首を振って答えた。
「ふふっ。嬉しいです~。私頑張っちゃいますね」
「リィーナ。その、昼間の件で僕達が君達を保護したことで、恩を感じているから手助けしたいと思っているのなら、そんなに気を張らなくても大丈夫だ」
嬉しそうにはにかむ彼女へと彼が話す。
「違いますよ。確かにご恩返ししたい気持ちももちろんあります。でも……それだけじゃないんですよ」
「?」
はぐらかすような感じのリィーナの言葉に、エディが不思議そうに首をかしげる。
「エディ様はお優しいですね」
「優しい、僕が? そうだね、君だからかな」
「え?」
頭を振うとにこりと笑い話す彼女へと、彼が微笑み答えた。その意味が分からずリィーナは目を丸める。
「僕の噂はもう耳に入っているでしょう。無能な王子……昔から出来の良い兄上と比べられて育ってきた。どんなに努力しても兄上に勝てることは無かった。勿論兄上に対して憎いとか思ったことは一度だってなかったけど、兄上が補佐になるのは僕しかいないと言って側に置いた時、周りの奴等に散々罵られた。それからだよ。僕は人に対して卑屈になり、遊び歩くようになったのは」
「エディ様……そうかもしれません。ですが、エディ様はやっぱりお優しいです。私には分かりますよ。心の温かい人だって事。だから私達の境遇を知って見捨てられずに保護して下さったんですよね」
昔語りを始めたエディへと彼女は優しく微笑み気持ちを伝えた。
「ですから、そんなエディ様の役にたちたいんです」
「有難う。君は本当に優しいね」
にこりと笑うリィーナへと彼が微笑み返す。
それから数ヶ月たったある日の事。この日、ユリウスとユリシアの結婚式が執り行われ、彼は国王に即位し、彼女は王妃となった。
「ユリウス・リアン・ファイザール様、ユリシア・シャルティー・ヴェイゼル様の御結婚をお祝いいたします」
『お祝いいたします』
壇上に立つ司祭の言葉に城に仕えている人々から祝いの言葉がかけられる。
「ユリシアさんおめでとうございます!」
「兄上おめでとう」
笑顔で拍手を送るリィーナとぎこちない微笑を浮かべるエディ。
「有難う」
「リィーナ次は貴女の番でしてよ」
ユリウスが照れた顔で礼を述べる横で、花束を聖女へと手渡し微笑むユリシア。
「ユリシア、以前君に言った言葉は変わらない。世界一幸せにしてみせる」
「えぇ、わたくしどこまでも信じて付いて参りますわ」
王妃の唇へとキスを落とした国王がそう言って微笑む。それにユリシアもにこりと笑い答えた。
「……」
(エディ様?)
その様子を羨ましそうに見詰めるエディ。その姿に気付いたリィーナは暗い顔をする。
(やっぱり、無能と呼ばれた私なんかよりも、いつも冷静沈着で立ち振る舞いも立派なユリシアさんの事が好きだったんですね。ユリウスさんと結婚されて複雑な思いを抱いているのかも……)
嫌な考えに心に影がよぎる。それを振り払うように首を振って否定する。
(私は聖女よ。嫉妬を抱いたりするなんてよくない。エディ様の事が好きなんですもの。好きな人がユリシアさんの事が好きだったって知ったとしても、優しく励ましてあげるのが私の役目。好きな人の笑顔の為なら私は自分の気持ちに蓋をします)
そう決意してそっとエディへと近寄る。
「エディさん顔色が良くありませんよ。ということで聖女の癒しの力が必要ですね。さ、気分転換に行きましょう」
「え、ちょっとリィーナ?」
彼の右腕を取り歩き始めた彼女の突然の行動にエディが驚く。
「僕を連れ出すなんて、いきなりどうしたの?」
「エディ様、ユリウス様とユリシアさんの事羨ましそうに見ていましたよね」
誰もいない中庭までやって来ると、彼がずっと不思議に思っていたことを尋ねる。
それに振り返りリィーナは答える代わり聞いた。
「!?」
「エディ様。国王になれないからと言って何なのですか。エディ様の瞳の色はエメラルドの宝石のように綺麗で素敵です。エディ様にはエディ様にしかない魅力があります。ですから、ユリウス様にユリシアさんをとられたからと言って落ち込まないでください」
「え、ま。待ってよ! どうしてそこでユリシアが出て来るんだ」
見破られていたことに驚くエディへと優しく励ます。しかしユリシアの事が出てきて彼が驚いて尋ねた。
「ユリシアさんの事が好きだったから、ユリウス様にとられて悔しかったのではないのですか?」
「はぁ!? ちが……僕が好きなのは――!」
不思議そうな顔で尋ねるリィーナへとエディが口走り慌てて手で押さえる。
「?」
「……っ。確かに羨ましいと思ったよ。僕は兄上の様に素直に自分の気持ちを伝えるのが出来なくて、好きな人に好きだと伝えられずにいる。だから二人の仲睦まじい姿に、憧れと嫉妬の念を抱いたのは確かだ。だけど、僕は別にユリシアの事が好きだったわけじゃない」
首をかしげる聖女へと彼が言葉を選びながら話す。
「では、なぜ、羨ましそうに見ていたんですか?」
「そ、それは……」
純粋な瞳で見詰められたじろぐエディ。リィーナは彼が口を開いてくれるのを待つ。
「……」
「……」
暫く静寂が訪れた。聖女は居心地の悪さを感じながらもエディの瞳をじっと見詰め続ける。
「はぁ……僕が好きなのはリィーナ。君だよ」
「え?」
リィーナは聞き間違いではないかと思い目を丸くすると、一秒だけ呼吸を忘れた。
「僕は国王にはなれないし、兄上みたいに優秀じゃないけど……それでも、リィーナ……君を愛してもいいかな?」
「私はエディ様がいいのです。ずっと、お慕いしておりました」
優しく微笑み尋ねるエディへと聖女は嬉しくて涙を瞳にためながら笑顔で答える。
「っ!?」
柔らかく微笑む彼の顔がそっと近づいてきて、唇に感じる熱にリィーナは目を見開き頬を赤らめた。
「リィーナ。君は無能な聖女なんかじゃない。それは僕が一番よく理解している。だから、僕の隣で妻として支えてくれないかな」
「エディ様が無能な王子なんかではないことを、私は知っています。ですから、側で支えてくれますか」
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