悪女と聖女の国直し~とある王国の滅亡物語~

水竜寺葵

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五章 謀り

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 その頃聖女の加護を失い疫病が流行り始めていたザイバール王国では、国王の下に毎日のように悪い知らせが入る。

「陛下、国内外問わず疫病が蔓延しており、薬を買えない民達からの苦情が相次いでおります」

「ぐぅ~。なぜこんなことに……」

「あぁ、グエル様。もはやわたし一人の力ではどうすることも出来ません。わたしが悪いのですわ。グエル様の悩みも解決できない聖女だなんて……うぅ、うぅ」

大臣の報告に唇をかみしめるグエル。その様子にシャナが瞳に涙をためて嗚咽する。

「シャナ、君のせいじゃない。そもそも、医者達は何をしている!? 疫病を治す薬一つも作れないのか。無能な医者はすぐに解雇させろ。それから不満を持つ民達が暴動を起こさないよう圧力をかけて鎮めておけ」

「しかし……」

国王が王妃を慰めると、鋭い眼差しで怒りを他者へと向け命令を下す。それに大臣が何事か言いたげに口を動かす。

「いうことも聞けない奴はクビだ!」

「っ……すぐに兵士達に命令を下します」

しかしグエルにきつい言葉を投げかけられ、その発言に怒りを抱きながらも家族の為自分の保身のために承知する。

こうして国内外問わず民達や王宮に仕えている者達の間で、制圧的な態度をとる国王と何もできない無能な聖女であり贅沢三昧する王妃に不満が募っていったのであった。

ザイバール王国内でそのような状況になっている頃、ユリシアとリィーナはユリウス達の協力の下特効薬作りに挑んでおり、王妃は主に知恵を振り絞り、聖女は持ち前の薬膳の知識や能力を生かし試行錯誤の末ワクチンや丸薬を作り続けていた。

「これで、どうでしょうか?」

「早速これを動物に飲ませてみましょう」

あともう一息で特効薬作りも終われそうなのだが、どうしても決め手となる最後の素材が見つからず、効き目の悪いサンプルばかりで、疲れが見える顔をしながらリィーナが言う。

それにユリシアは答えると、疫病にかかったキツネリスへと薬を飲ませる。

「「……」」

固唾を飲みキツネリスの様子を窺う。初めは弱ってぐったりと横たわっていたのだが、すぐに元気になり二人の間を走り回る。

「ここまでは今まで通りでしてね」

「問題はこの後、ちゃんと回復するかどうかですよね」

今まで何匹もの動物に投薬を飲ませたが元気になったものの、副作用により命を落とす物や元気になったが本来の能力を失ってしまった物など様々な問題があり、特効薬作りは難航していた。

その後投薬をしたキツネリスは一日たっても三日経っても一週間が経っても元気に走り回り、今ではすっかりユリシアやリィーナになつきすり寄るまでになっていた。

「これは、成功と言っていいのではないでしょうか?」

「そうですわね。これなら人間に飲ませても問題ないと思いましてよ」

笑顔で話す聖女に王妃も頷く。こうしてできたワクチンや特効薬を持ち、疫病により病棟に閉じ込められている人々の下へと持っていった。

「ユリシア」

「リィーナ!」

病気に苦しむ人々に薬を飲ませたりしていると、ユリウスとエディの声が聞こえて来る。

「ユリウス様」

「あ、エディ様」

二人は嬉しそうに愛しい人の名を呼び微笑む。

「ワクチンや特効薬が完成したと聞いて様子を見に来たんだ」

「薬を飲ませた人達の様子はどうだい?」

双子の言葉に二人は小さく頷き合うと口を開く。

「御覧の通り、皆さんすっかり元気になりましたよ」

「体力が低下している者もおりますので、まだ病棟でのリハビリが必要ではありますけれど、皆回復へと向かっておりますわ」

人々へと視線を投げかけリィーナが答えると、ユリシアも説明する。

「そうか、二人のお陰で、この国の民達は救われた。感謝する」

「お礼にはおよびませんわ。それより、このワクチンや特効薬を使って、いよいよ計画を開始しようと思いますの」

国王として民達の命が救われたことに感謝するユリウスへと王妃が語る。

「あぁ、こちらでも準備は進めていた。早速始めよう」

「ふふ。いよいよ正念場ですね。頑張りましょう」

エディの言葉に聖女がにこりと笑い話す。

こうして出来たワクチンや特効薬の力でまずは国内の疫病を鎮める。それをあえて大げさに噂として国外へと広めた。

すると、いろんな国からその特効薬やワクチンを必要とする手紙が届き、ユリシア達はそんな悩める各国へと人員を派遣し人助けを開始する。その噂はザイバール王国にも届き、シャナの耳にも入るのに時間はかからなかった。

「グエル様、朗報です。エルクシア王国では疫病を治すワクチンや特効薬があるとのことです」

「それは、本当か?」

玉座に座り悩める王グエルへと王妃が笑顔で駆け寄り、今しがたメイドから聞いたことを伝える。

「えぇ、それさえ手に入れればこの国に蔓延する疫病も瞬く間に治まりますわ。そうですわ。双子の国に戦争を仕掛けて占領してしまえば、その国の薬は全てわたし達の物になります」

「しかし、それだけ功績をあげた国を攻め落とすのは流石に不味い。聞いた話が本当ならば、他国もエルクシア王国を頼っているはず。そんな国に戦争を仕掛けてはこちらが不利になる。ここは穏便に同盟を組む話を持ち掛けるんだ。そうして最終的にその技術と薬をこちらの物にしてしまえばいいのではないだろうか」

戦争を仕掛けようと持ちかけるシャナへと国王が考え深げな表情で話す。

「あぁ、流石はグエル様。わたし、貴方の為になるならと良からぬことを考えていたことをお許しください」

「いや、シャナはよく考えてくれているよ。戦争を仕掛ける程、今この国には余裕がないんだ。だから、穏便に事を済ませよう」

確かに今の国力では世界を敵に回すほどの力はない。そんな事王妃にも分かり切っている事であったため、その話に素直に従う。そんなシャナへとグエルが優しく微笑み語る。

「はい。グエル様の御心のままに」

王妃は微笑み頷く。こうして使いの者を出してエルクシア王国にいるユリウス達の下へと手紙が届けられることとなった。それはユリシア達が企んでいた通りの結果となったのである。

「ユリシアの考えていた通りに、グエル王から手紙が届けられたよ」

「それで、どうするんだ? すぐに返事を出すのか」

ユリウスの言葉にエディが尋ねた。

「いいえ。同盟を組むことを承知するとお伝えするのを少し渋って頂きたいの」

「その間に私達は先に入国をしておきます」

小さく頷くユリシアの隣でリィーナもにこりと笑い話す。

「だが、国外追放の身の君達が入国するのは難しいのでは?」

「やはり僕達も一緒に」

「あ、それなら神父様が協力して下さるので問題ないですよ」

双子の心配をよそに聖女がそう言って笑う。

「わたくし達は神父様のお手をお借りて入国を果たし、そして計画通りに動きますわ」

「ですから、その間にユリウス様とエディ様はグエル王の気をひいていて貰わないといけないんです」

二人の話に納得するしかなくなったユリウスとエディが小さく頷く。

「分かった。こちらでグエル王の気をひくように色々と条件を書いて手紙を送っておくよ」

「二人とも、気を付けてね」

こうして双子に心配されながら見送り出されたユリシアとリィーナは唯一協力してくれる神父の下へと密かに会いに行ったのであった。

ユリウスがグエルへと手紙を送り、日取りや会う時の条件などをやり取りしている間にザイバール王国へと無事に入国出来たユリシア達から手紙が送られてきて、双子はついにグエルと会うことを伝えた。

そうして双子もザイバール王国へと入国を果たし、いよいよ国王グエルと王妃シャナと会う日を迎える。グエル達が待ち受けている結末など露とも知らずに……。こうしていよいよユリシアとリィーナの謀りが明らかになる日が訪れるのであった。
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