【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん

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第4話 閉ざされた道

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朝の光が丘を照らすころ、マリエールはノラと共に村を歩いた。
昨日決まった「輪作」の準備のため、村人たちはすでに畑を耕している。
鍬の音が乾いた空気を割り、息が白く立ちのぼる。
その姿を見て、胸が少しだけ温かくなった。

「皆、真剣に動いてくれている……」
「お嬢様のおかげです!」ノラが笑った。
「昨日まで、誰も希望なんて信じてませんでしたのに」

マリエールは頷いた。だが同時に、胸に小さな棘が残っていた。
――畑を耕しても、種子や肥料が足りない。
――作物が実っても、それを運ぶ道がない。

「……物流が無ければ、飢えは繰り返される」
思わず口からこぼれた言葉に、ノラが首を傾げる。
「じゅつりゅ……ですか?」

「物流。物を運ぶ流れのことよ」
マリエールは説明した。
「畑で作物がとれても、運ぶ手段がなければ価値は半分になるわ」

そのとき、道の向こうから荷馬車の軋む音がした。
村に出入りする唯一の交易商人、ガロットが到着したのだ。
背の曲がった男で、よれた帽子を深くかぶっている。

「おや、子爵令嬢様じゃねえか」
ガロットはにやにやと笑った。
「こんな辺境まで追いやられるとは、お気の毒に」

「ごきげんよう、ガロットさん。今日は何を運んできたの?」

「塩と油、それに粗末な布きれだな。欲しいなら高くつくぜ」

彼の馬車には、たいした物資は積まれていない。
そのくせ値段は王都の二倍もする。
村人たちは渋い顔をしながらも、必要だからと買うしかなかった。

「……足元を見ている」
マリエールは小さく呟いた。
「この状況を、変えなければ」

◇ ◇ ◇

村の広場に戻ると、老人が彼女に声をかけた。
「嬢様……麦がとれても、売る先がねえんです」
「昔は川沿いに町まで出荷していたんだが、道が崩れて通れなくなってからは……」

別の女が続ける。
「川を船で下れば王都に近いけど、浅瀬に岩が増えて船が沈むんです」

「つまり……」
マリエールは指を顎にあてた。
「街道は荒れて通れず、川路は塞がれている。――これが辺境が“忘れられた地”と呼ばれる理由なのね」

トマスが静かに頷いた。
「物流が途絶えれば、富も知識も届きません。……この地は閉ざされてしまったのです」

◇ ◇ ◇

夜、帳面を開き、彼女は新しい頁に大きく記した。

――「課題:物流網の再建」

その下に箇条書きが並んでいく。

・街道の補修(村人の労働力?)
・川の浅瀬の改修(石の撤去、船の新造)
・新たな輸送手段(馬車、荷獣)
・中継拠点の設置

文字を刻むたび、心に熱が灯る。
これらが実現できれば、辺境の物産は必ず王都に届く。
王都が見捨てた地が、逆に王都を脅かす日も来る――。

「必要は、必ずここにある」
マリエールは筆を置き、静かに微笑んだ。

◇ ◇ ◇

そのとき、ノラが部屋に駆け込んできた。
「お嬢様! 村はずれで狼が出たって!」

「……狼?」

物流を考える前に、まずは“安全”を確保しなければならないらしい。
マリエールは帳面を閉じ、外套を羽織った。

「なら、なおさらよ。――道を開く前に、まずこの土地を守らなくては」

夜風が窓を叩く。
辺境は牙をむきながら、彼女を試していた。
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