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第13話 団結の光
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冬の陽がわずかに差し込み、白い息が街道に立ち昇っていた。
マリエールは厚手の外套を羽織り、石を積む村人たちの姿を見守っていた。
「ここに石を並べて――そう、排水路は斜めに掘って!」
彼女の声に応じ、男たちは鍬を振るい、女たちは小石を運び、子どもたちまでもが土をならす。
昨日まで「無理だ」と嘆いていた彼らの瞳は、今日、確かに輝きを帯びていた。
「嬢様、本当に泥が固まってきました!」
ノラが声を弾ませる。
確かに、昨日まで足を取られていた地面は、水が流れ始めたことで安定し、車輪が沈みにくくなっていた。
「ええ。水を敵にするのではなく、流れを味方にするのです」
マリエールは小さく頷いた。
「流れは、富も同じ。止めれば腐る。流せば命を与える」
◇ ◇ ◇
昼休み。焚き火の周りで人々は湯気を立てる粥を啜っていた。
「嬢様の考えは本当に不思議だな」
ひとりの農夫が笑った。
「わしらは泥を厄介者としか思わなかったのに、利用するだなんて」
「でも、嬢様の言うとおりにしたら、道が固まった!」
「俺たちにもできるんだな……」
やがて談笑が広がり、重かった空気が和らいでいく。
マリエールはそれを見て、胸の奥に熱が広がるのを感じた。
(これが“団結”……)
前世の記憶がまた断片のように蘇る。
会議室の長机、並んだ資料、真剣に議論する人々の顔。
――「人を動かすのは数字ではなく信頼だ」
かつての上司の声がよみがえる。
(ええ、今ならわかります。数字は手段。信頼こそが基盤……)
◇ ◇ ◇
作業は続き、数日後。
崩れていた坂道の石は積み直され、泥地は丸太と石で固められ、簡素な木橋も補強が施された。
「嬢様、馬車が通れるようになりましたぞ!」
トマスが声を上げる。
実際に荷馬車を走らせると、車輪は泥に沈まず、道を進む。
村人たちから歓声が上がった。
「やったぞ!」
「これで王都へ続く道が開けたんだ!」
人々の瞳に、かつてない誇りが宿っていた。
マリエールは微笑み、胸を張って告げた。
「これが私たちの“第一の道”です。
――この道は、未来へと続きます」
◇ ◇ ◇
夜。帳面の頁に書き込む。
――「街道補修完了」
――「物流再建の第一歩」
――「信頼=人を動かす最大の資本」
窓の外には、辺境の夜空にまたたく星。
その輝きは、まるで村人たちの瞳の光と重なって見えた。
「必要ないと言われた私が、こうして“必要とされている”」
マリエールは小さく呟いた。
それは、自分自身を奮い立たせる誇りの言葉だった。
マリエールは厚手の外套を羽織り、石を積む村人たちの姿を見守っていた。
「ここに石を並べて――そう、排水路は斜めに掘って!」
彼女の声に応じ、男たちは鍬を振るい、女たちは小石を運び、子どもたちまでもが土をならす。
昨日まで「無理だ」と嘆いていた彼らの瞳は、今日、確かに輝きを帯びていた。
「嬢様、本当に泥が固まってきました!」
ノラが声を弾ませる。
確かに、昨日まで足を取られていた地面は、水が流れ始めたことで安定し、車輪が沈みにくくなっていた。
「ええ。水を敵にするのではなく、流れを味方にするのです」
マリエールは小さく頷いた。
「流れは、富も同じ。止めれば腐る。流せば命を与える」
◇ ◇ ◇
昼休み。焚き火の周りで人々は湯気を立てる粥を啜っていた。
「嬢様の考えは本当に不思議だな」
ひとりの農夫が笑った。
「わしらは泥を厄介者としか思わなかったのに、利用するだなんて」
「でも、嬢様の言うとおりにしたら、道が固まった!」
「俺たちにもできるんだな……」
やがて談笑が広がり、重かった空気が和らいでいく。
マリエールはそれを見て、胸の奥に熱が広がるのを感じた。
(これが“団結”……)
前世の記憶がまた断片のように蘇る。
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――「人を動かすのは数字ではなく信頼だ」
かつての上司の声がよみがえる。
(ええ、今ならわかります。数字は手段。信頼こそが基盤……)
◇ ◇ ◇
作業は続き、数日後。
崩れていた坂道の石は積み直され、泥地は丸太と石で固められ、簡素な木橋も補強が施された。
「嬢様、馬車が通れるようになりましたぞ!」
トマスが声を上げる。
実際に荷馬車を走らせると、車輪は泥に沈まず、道を進む。
村人たちから歓声が上がった。
「やったぞ!」
「これで王都へ続く道が開けたんだ!」
人々の瞳に、かつてない誇りが宿っていた。
マリエールは微笑み、胸を張って告げた。
「これが私たちの“第一の道”です。
――この道は、未来へと続きます」
◇ ◇ ◇
夜。帳面の頁に書き込む。
――「街道補修完了」
――「物流再建の第一歩」
――「信頼=人を動かす最大の資本」
窓の外には、辺境の夜空にまたたく星。
その輝きは、まるで村人たちの瞳の光と重なって見えた。
「必要ないと言われた私が、こうして“必要とされている”」
マリエールは小さく呟いた。
それは、自分自身を奮い立たせる誇りの言葉だった。
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