【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん

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第14話 川を拓く者

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街道補修が終わり、村に笑顔が戻ってから数日後。
マリエールはトマスや村の長老を伴い、川沿いへと足を運んでいた。

「これが……かつて王都まで荷を流していた川です」
長老が杖で指し示す。
冷たい流れは白い飛沫を上げ、浅瀬の岩が乱立していた。
ところどころに渦を巻き、舟を通すにはあまりに危険に見える。

「確かに、このままでは荷船は沈みますね」
マリエールは頷いた。
「でも、川は街道よりもはるかに多くの荷を運べます。
――ここを生かさなければ、商業帝国など夢のまま」

◇ ◇ ◇

村へ戻ると、彼女は帳面を広げた。
「課題:川路の開拓」
ペン先で箇条書きを並べる。

・浅瀬の岩の撤去
・流れを緩める“導流堤”の設置
・小舟の建造と漕ぎ手の確保
・川辺に積み荷を集める小さな倉庫

「導流……てい?」ノラが首をかしげる。

「ええ、流れを仕切る小さな石垣です。川を分けて穏やかな道筋を作る。
これなら大きな改修をせずとも、舟は通れるようになります」

トマスが腕を組む。
「だが、石垣を築くには労働力と石が……」

「街道を直した今だからこそ、皆も“できる”と信じているはずです」
マリエールの声は確信に満ちていた。

◇ ◇ ◇

数日後。
川辺に村人たちが集まり、石を運び始めた。
冷たい水に足を浸しながら、男たちが岩を動かし、女たちは縄を使って小石を運ぶ。
子どもたちまでもが「小舟で運ぶんだ!」と丸木を転がしていた。

「嬢様、これを!」
ノラが濡れた裾を気にしつつ、赤い手で石を差し出す。

「ありがとう、ノラ。無理はしないで」
マリエールはそれを受け取り、石垣の隙間に丁寧に積んでいく。

やがて、流れの一部が緩やかになり、小舟が浮かべられた。
舟は最初ふらついたが、導かれるように穏やかな流れに乗り、ゆっくりと川を下った。

「……通った!」
歓声が上がる。
村人たちの顔が歓喜に染まり、マリエールの胸にも熱が広がる。

◇ ◇ ◇

夜。館で帳面を開く。

――「川路開拓:第一段階成功」
――「物流拠点:川辺倉庫建設予定」
――「課題:船大工、王都までの距離に応じた輸送網」

マリエールは深く息を吐いた。
「街道と川。二つの流れが交われば、辺境は必ず蘇る」

窓の外には川面を照らす月。
その光は、まるで未来への水脈を示すかのように揺れていた。
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