セーラーキャプチャー

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偽装新装備開発秘話

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 …あたし『マネージャー』が留守の間も特に問題なく、『セーラーキャプチャー』の拠点は回っていた。まぁ、相変わらず、魔族の姫様はお元気で、『受付』さんはダラけていて、『ロボット』さんは洗濯物を干していて、『幼女』はみんなと遊んでいた様だが…『幼女』に変な遊びを教えていないよな?
「いや、『幼女』って『殴り合い宇宙』、強いよ‼」
 新発見‼どんだけ強いの⁈
「『会計』さんと互角だよ‼」
 うわ、マジか‼挑まなくって良かったぁ…

 偽物騒動はとりあえず収束した。騒ぎを起こした現場にあたし達の巡回地域に本店を置く商店の店長さんが現れて、暴れていた偽物を一喝、近くに居た騎士団が渋々連行したらしい。お礼に、あとで何か買いに行こう。
 しかしながら、この事が発端となり、この街全体で『セーラーキャプチャー』ブームが展開される事となった。いや、女の子がセーラー服着るだけなんだけど、新作として売り出すにしても、仕立て屋で頼むと高い‼一か月分の食費程になると近所のお姉様方が笑い飛ばしていた。何とかならないか?と商業ギルドの服飾部門の担当者が冒険者ギルドに泣き付いて来たので、各体形に合わせた型紙を作れば?と提案。だたし、紙は貴重な上、機密扱いの品なので、一度、想定される体形の人物のセーラー服を仮縫い状態で制作。あとは糸を解いて、それに合わせた布を裁断・縫製すれば完成‼…いや、そんなに何パターンも要るかな?精々、子供向け、大人細身向け、大人ぽっちゃりさん向けの三種類あれば良くね?と思ったが、作業の効率化を図りたいらしく、三歳から三年上がりごとの体形を想定したセーラー服を作成。商業ギルドの服飾部門にトーソーがあって助かった…
 ここで気になるのが、誰のセーラー服が一番人気か?
「あたしは『剣士』さんだと思うな」
「『精霊術師』ちゃんでしょ?」
「意外な所で『プレジデント』さん‼」
「意外って言うなら『鍛冶師』トリオの誰かじゃない?」
 …話に上がらない一同がそわそわしながら、彼女達の前を行き来している…
「じゃあ、『マネージャー』は?」
 ぬ?あたしか?
「あれは元が良過ぎて浮いちゃうって‼」
 …喜んでいいのかな…?

「…勘違いした街の女子がセーラー服のまま、ダンジョンに入ろうとしてな…」
 『ギルドマスター』‼売り出す時に『この装備のままではダンジョンに入れません‼』って注意喚起してくださいって言いましたよね⁈
「お前らがその装備のまま、ダンジョンに入って行ったのを見た女の子がいたんだよ。年齢もお前らより幼いし、『セーラーキャプチャー』のメンバーにしては見憶えもないって気付いて、何とか止められたけど」
 貴族の勘違いお嬢様とかが腕試しで入られる可能性もあるんですよ‼権力振り翳されたら、『冒険者ギルド』なんて一気に弱腰になるじゃないですか?補償問題とかになったら責任取れませんよ‼
「…だから、お前らがセーラー服を広めたがらなかったのか…済まん‼浅慮だった‼」
 …で?対策は考えているんですか?
「まぁ、お前らにそれなりの装備を身に着けてもらうのが、最良なんだが…」
 ウチは速さが売りの者も多いですからね。それにセーラー服で探索する事にも慣れていますし…ちなみに、最低限の装備ってどんなモンですか?
「手足と胴体…胸部を守れる装備があれば…後は頭か?」
 …この前の元貴族のお嬢様系か…お値段は?
「安くても、大銀貨三枚はすると思え」
 …帰って、検討します…

 …あたしはこの件を『会計』さんに伝える…
「最低限で大銀貨三枚…今、拠点に居る分でも大銀貨九十枚…金貨九枚分か?」
 それでも最低限です。機能性やデザイン性とか凝り出したら金貨二十枚は見るべきかと思われます。それに『第二王子』の権威もありますから、ある程度、凝った造りの防具を着ないと問題になると『ギルドマスター』から…
「まぁ、出しても構わないんだけどなぁ」
 ああ、ウチの『鍛冶師』トリオの作品ですか?
「あれを使わないのか?と文句が来そうでなぁ」
 あいつらの趣味全開の装備が死蔵されていますからね。表の倉庫にある分は、まだマシな部類だと思います。問題は『空間収納』にある分です。
「ビキニアーマークラスが出て来ると思うか?」
 それ以上が出るかも知れません。
「例えば?」
 『バカには見えない』系とか?
 …この事を工房の『鍛冶師』トリオに伝えたところ…
「その発想はなかったな‼」
「早速、取り掛かろう‼」
「腕が鳴ります‼」
 はい、皆さん。一旦、振り上げた槌を降ろしましょう。そして、誓ってください。
 『バカには見えない』系は絶対作るな‼
「え~?何でぇ?」
 勘違いした『マッパー』さんが、それだけ装備してダンジョンに入り兼ねないからだよ‼裸のねぇちゃんがダンジョン内、徘徊していたら、新手の魔物として手配されるぞ‼
「あたしら、あんまりダンジョン潜らないから良く分からないんだけど…装備が壊れるってあるじゃん。それで裸にはならないの?」
 それでも、ちゃんと下に服は着ているよ。裸のままって事はないの。
「フルプレートの場合も?」
 ダンジョンでフルプレートなんて見掛けないよ。動きが遅いし、ガチャガチャうるさいし、可動範囲が狭いし、倒されたら一人じゃ起き上がれないからね。
「ふむ。戦争をしている訳ではなく、あくまで探索がメインの装備か」
 何か問題でも起きたの?
「例のセーラー服事件な。あたしらの耳にも届いて、何かいい案がないか模索中なんだ」
 だからって、『バカには見えない』系はないでしょ?
「そうだな。ウチには正直者の『幼女』もいるしな」
 それ以外の目もあるけど。ご近所とか。
「まぁ、とりあえず、頭と手足、それと胸部を守れる防具か?試作してみるよ」
 …まともなモノ作って下さいよ…?
「我々の作品に異常なモノなどない筈だ」
 じゃあ、ビキニアーマーは?

 こうして出来上がった偽装新装備試作一号。素材はこの前食べた大型ロブスターの殻。外側は茹でて真っ赤になっていたが、内側は真っ白…匂いがちょっと残っているかな?
 アームガードとレガース、ヘッドギアの前面に切り出した殻を装着。肘当てと膝当てをクッション付きでアームガードとレガースの端に取り付けている…肘は長袖で何とかなるが、膝は生足露出なので必要だろうと付け加えられた。付いているトゲトゲが結構いかつい。胴体…と言うか、胸当ては両胸防御タイプで背面も覆っている上に肩当ても付属。肩当てにもトゲトゲが付いている…意外に凝った造りだ…試着モデルは『剣士』さん。あたしも立候補したが、装備が見劣りするとガッツリお断りを入れられた…
「あの一匹で二組分は造れそうだな」
 何か、普通に防御力もありそう。
「売り出しはしないぞ。それに、これは意匠を揃え易い様にした、見てくれだけだ」
 ああ。赤は目立ちますからねぇ。
「ん?赤で良いのか?セーラー服と言えば、紺や青だろ?」
 じゃあ、その系統の色の甲殻を持っている魔物を狩らないと。

 その後、もう一着の装備を造り出し、『剣士』コンビが昆虫系のダンジョンで素材を狩りまくった。様々な工夫を凝らし、目的の色合いが出るまで素材を加工…ついに、紺系の色と青系の色の甲殻が手に入った。
「冒険者ギルドには卸してくれないんですかぁ?」
 『受付』さんがぼやいている。
 分かってますが、未使用の素材は良いですが、変に加工した素材でも卸せますか?
「…まぁ、研究素材として、魔法系や学術系に売れるかな…?」
 この街にはない様なので、とりあえず『空間収納』に保管。『外回り組』が帰って来たら売り払う様にお願いしよう。

「そう言えば、三十着分、必要でしたか?」
 全員分の装備が整った所で、『調理師』ちゃんが聞いて来る。
 まぁ、いつ、全員に動員が掛かるか分からないからねぇ。そもそも我々は誰もが超人的な戦闘力を持っているから、全員が闘えるって事を示さないと…
「…そんな事態が来ない事を祈りますよ…」
 偽装装備を着ている面々に一度目線を向けて、『調理師』ちゃんは厨房に戻る。
 確かに平和が一番だが、そうもいかない。我々は闘う事を前提としてこの世界に呼ばれんだ。しかも総力戦が想定される状況。戦わないと言う選択肢はない。戦ってもらわなければならない。その上で、勝ち取るんだ‼『この世界に残る』と言う権利を‼
 幸いな事に基本性能は優れている。あとは自分に合った戦闘スタイルを磨くだけ。

 偽物を飼っていたクランから迷惑料が支払われた。相手は向こうを拠点にしている中堅クランの一つ。迷惑を掛けた事も去る事ながら、この辺をきっちりしないと冒険者ギルドの信頼を損なうらしい。本当は貴族が絡んでいるのだろうが、その辺は面倒なので、ここで手打ちとする。偽物の三人はクランから退会。背後の貴族の元に戻ったんだろう。『忍者』さんに調査してもらって、『第二王子』に釘を刺してもらうか。
 街を行き交うセーラー服の女の子…髪の色が黒い子が着ていると、向こうの世界から来たのか?と、ちょっと錯覚してしまう。そう言えば、アイドルグループの皆はちゃんと新曲を出しているのだろうか?あたしが抜けた事で何か不都合が出てはいないだろうか?まさか解散なんてしてないよね…?最後に連絡した時は……まぁ、向こうのマネージャーは優秀だから何とかしているか。ちょっとだらしない所はあったけど。
「ところで、『バカには見えない』装備はいつ出来るんだ?」
 『マッパー』さん。そんなモノは製作しません。未来永劫。
「そうか。残念だ。では『バカには見える』装備は?」
 そんなモンは存在しない‼そして、脱がない‼
「わぁ。立派な装備ですね?」
 そして、『幼女』に忖度を教えるな‼目が死んでるだろ‼
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