毛糸の恋人

もなか

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あみぐるみ教室開幕

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「白戸さーん!」

昨日のカフェの前で、大きく手を振る小原田さんの元へと向かった。

「ごめんなさい。待ちましたか?」

「いえいえ!大丈夫ですよ!僕も少し前に来たので!じゃあ、乗って下さい!」

小原田さんの車は林檎みたいに真っ赤な軽自動車だった。なんだか小原田さんに似ている。

「車、持っていたんですね。」

「はい!学生の時からバイト代を貯めて、最近やっと購入したんです!」

嬉しそうに、ほわほわした笑みでハンドルを撫でている。

「可愛い車ですね。ちょっと小原田さんに似ています。」

「ええー!似てますかね!?」

「似てますよ。林檎色でタレ目っぽいライトとか、そっくりです。」

穏やかに過ぎていく時間が楽しい。車で二人っきりなんて、死ぬほど嫌だったのに。



「ここが僕の部屋です!」

案内されたのは、安全面もしっかりしたマンションの一室で、小原田さんの部屋はきちんと整理されていた。

玄関にはゼラニウムが飾ってあり、小原田さんお手製の玄関マットがひかれていた。

「パッチワークで作ってみたんです!」

ちょっと形が歪んでいるのは愛嬌だろう。
部屋に入ると、ふわりと小原田さんの匂いがした。たぶん、柔軟剤の匂いだと思う。

「座っててください!今お茶入れていますね!」

クッションカバーやテーブル掛けなどなど、小原田さんが作ったらしいものが、部屋を彩っている。自分が作ったものを大事に使っているのがわかる、素朴で可愛い部屋だ。

「白戸さん!紅茶とコーヒーとカモミールティーなら、どれがいいですか?」

「では、紅茶を。」

小原田さんの作品を見ていると、

「お茶入れました!どうぞー!」

と声がかかった。ありがたく頂いた。

「このクッキーは友人から頂いたんです。最近、夢の国へ行ってきたみたいで。可愛いですよね!このクッキー!」

「夢の国は割高ですが、その分可愛くて美味しいものを提供してくれますよね。」

ほくほくとクッキーを食べている小原田さんは、リスみたいだ。

ひとしきり、夢の国談義に花を咲かせたあと、いよいよ編みぐるみを教える事になった。



「ふむ…基本的な技術はありますね。」

小原田さんが作ったという、くまのあみぐるみを見た。不器用ながらに格闘した後がある。きっと、たくさん練習したのだろう。私は、小原田さん指導法の路線を変更した。

「そうそう。そこでこうして…」

ゆっくり、丁寧に。小原田さんが綺麗に編めるように…



そうして、いつの間にか日は暮れていた。
小原田さんは苦労しながら、くまのあみぐるみの頭の部分を編み上げた。

「ごめんね、白戸さん…こんなに遅くまで…」

「いいんですよ。気にしないでください。」


小原田さんは夕飯に誘ってくれたが、どちらも明日は早かった。丁重にお断りし、小原田さんに家の一歩手前まで送ってもらった。

「それでは、これで。」

車から降りようとした時、手を掴まれた。

「あ、あの、白戸さん!また、今度!」

「ええ。また、今度。」

そう言って、今度こそ私は車を降り、家に帰った。
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