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Q Youはなぜ畑に?
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マーガレットは、中の中くらいの強さの平凡な魔女である。まったりのんびりした性格で、争いを好まない。そんな彼女は魔女らしからぬ、実に地味な生活を送っていた。1年前は。
「マーガレット。今日は何が食べたい?」
「秋刀魚が食べたいです!」
「ん、了解。」
華々しいイケメンがいる。滴るようないい男がいる。目の保養。心の栄養。マーガレットの庭に生えていたイケメンである。
さて、遡ること1年前の事。マーガレットは、畑を見に外へ出た。
「今日は何が生えてますかねー」
余談だが、マーガレットは畑に何も植えていない。なのに、毎日朝には人参やら芋やら、何かしら生えているのである。完全に季節を無視し、気まぐれに、ランダムで生えてくる。マーガレットは畑に生えているものを見てから、毎日の献立を考えている…のだが。その日は何も生えていなかった。代わりに…
「なんか…人間の足が…土から出てるんですけど…」
土から2本、足が生えている。
「畑さん?これはあれですか?今日は人間を食えということでしょうか…」
当然、返事をするものは誰もいない。
「ううう、とりあえず引っこ抜くしか…」
うんとこしょ、どっこいしょ。うんとこしょ、どっこいしょ。それでも人間は抜けません。
「魔法は苦手なんですけどね…」
渋々魔法を使うマーガレット。とりあえず、雑に引っこ抜く事ができた。しかし、抜いたのはいいが、これをどうしたものか。それなりに長い時を生きてきたが、人間は食べたことがない。調理法も知らない。
「そもそもこの人、生きてるんですかね?」
土に汚れた顔をつんつんしてみる。
「っ…ぐぐ……すぅ…」
「あー…生きてますね……」
死んでいたら埋められたのに。でもこのまま放置もできないからなぁ…。マーガレットはちょっと悩んでから、家に入れることにした。
マーガレットは400年くらい使ってない客室を急いで掃除した。渋々魔法を使って人間を丸洗いし、服を着せ、掃除した客室へと運び、ようやくベットに寝かせた。
「さて、傷を治療しますか。」
人間の傷を一つ一つ見ていく。切り傷、打ち身、刺し傷。それに火傷まで…
「これは…事故ではありませんね。」
明らかに第三者による暴行のあとである。
「もしかして、面倒な拾い物しちゃいましたかね…」
でも、拾ったものは仕方ない。せめて、この人間が完治するまでは面倒を見よう。
その後、高熱を繰り返し、ようやく峠を超えた。
「あら、綺麗なお顔。」
傷や火傷、汚れのない顔。黒曜石の髪、ミルク色の肌、すっと通った鼻、薔薇色の唇。長い睫毛。
「んんんん?これはもしや、とんでもないイケメンなのでは?」
今まで傷と汚れで人という以外は全くわからなかったが…お主、イケメンであったか。
すやすやと眠るイケメンを観察する。しばらくはこのまま眠り続けるだろう。さて、そろそろ依頼の品を作らなくては。締め切り間近のものをいくつか頭に浮かべる。電気を消し、ドアへと向かう。
「いい夢を。」
この様子だと、明日の朝には目覚めるかな。
さて、翌日。気まぐれな畑に生えているカブを使い、スープを作っていると…
ドタッ!!バッターーーン!!!!
何かが派手に転げ落ちる音がした。急いで客室に向かい、扉を開け…豪速球で飛んできた羽ペンを避けた。羽ペンは綺麗に壁に刺さった。危ない。避けなかったら目に怪我をしていたに違いない。
「危ないじゃないですか。」
イケメンは静かに警戒を張り巡らせている。
「誰だ?」
「マーガレットです。何もしてませんよ。丸洗いして着替えさせて、傷の手当をしただけです。」
しばらくイケメンは黙り込んだ。ゆっくりと、慎重に口を開く。
「なぜ俺を助けた。」
「あなた、私の畑に生えてたんですよ。仕方く引っこ抜いたら、まだ息をしていたんで。死体が落ちてた畑のものを食べるのは、気分的に遠慮させて頂きたいので…」
「畑に生えてた?」
「ええ。はい。生えてました。」
訝しげなイケメン。
「嘘じゃないですよ。ばっちり生えてました。」
「そんな、まさか…だって俺は!!!」
何かを言いかけて口をつぐむイケメン。それから、何かを考えているようであった。厳しい顔である。
「よくわかりませんが、怪我が完治するまでは面倒を見ますよ。あとは自分でなんとかしてください。」
「なぜ俺を助ける…」
「暇つぶしです。」
そう言って、私は朝食の準備に戻った。
それでは、朝食のメニューを紹介しよう。
•梅干し卵粥
•カブと昨日の残りの野菜達のスープ
•手作りブルーベリージャム乗せヨーグルト
•お茶
である。柔らかくて食べやすい、栄養のあるものにしてみた。
お盆に載せ、イケメンの元へ運ぶ。警戒心が強いから、食べてくれるか不安である。だか、それは杞憂に終わった。渡した瞬間に端から食らいつくしたのだ。おそらく、よっぽどお腹を減らしていたのだろう。
「ゆっくりよく噛んで食べてください。お腹壊しますよ。」
「おかわり。」
「お腹の調子は?」
「ばっちり。」
ならよし。お鍋の残りをよそってこよう。
そうして、瞬く間にすべてを平らげた。
「ご馳走様でした。美味しかった。」
「お粗末さまです。」
「あのヨーグルトにかかってたやつが美味しかった。なんのジャム?」
「あれはブルーベリーのジャムですよ。お裾分けでたくさん貰ったんです。」
「ぶるー…?なんだそれ?」
怪訝そうな顔をするイケメン。まさかこの世にブルーベリーを知らない人がいたとは…いや、そりゃいるか。実物を持ってブルーベリーの解説をしていた。だがそこで、思わぬ事が発覚する。
「シェスタ共和国が生産国1位です。」
「シェスタ共和国?どこだ?そんな国あったか?」
「この世界で一番力を持つ国ですよ?」
「どこの国だ…そんな国ないぞ?世界で一番力を持つ国は、ジェベルだろう?」
ジェベルなんて国、聞いたことがない。そういえば、あの靴、服装…見たことがない型だった。長い時を生きているが、見たことがない。最近の流行りかと思っていたが…イケメンが、慎重に口を開いた。
「ダーシェンって国知ってるか。」
「いや、知りませんね。」
「精霊の気配が感じられないが、ここはエディオンか?」
「エディオン?ここはフィーネシュカ公国のトウィニア領ですが…」
それから、彼はいくつか私に質問し、最後に世界地図を見て…後ろにぶっ倒れた。
「ちょ!?大丈夫ですか!?」
「大丈夫…いや、大丈夫じゃない…」
手を上げて制し、イケメンはしばらく迷ってから口を開いた。
「できれば信じてほしいんだが…おそらく、俺はこの世界の人間ではない。」
「は???」
驚くべき事に、イケメンは自分のいた世界とここは全く違う別世界だと言い出したのだ。
正直、頭を疑った。だが…イケメンが身につけていたバックを渡し、その中から出てきた手紙を見て、考えが変わった。それは、この世界のどこにもない素材、文字であった。流行りのファッションはわからないが、この世界のことはだいたい知り尽くしている。
気づかれないよう魔法を使い、彼の中に流れる魔力を見て…私は彼が異世界から来たということを信じることにした。
彼の中にはいっさい魔力がなかったのだ。通常、この世界の人間には血液と共に魔力が流れている。この世界の生き物にとって、魔力は無くてはならないものだ。
ちなみに、魔力は心臓に魔核がないと使えない。これの有無で、魔女又は魔法使いになれるかが決まる。魔核は遺伝するものではないため、完全に天からの授かりものである。
話はそれたが、魔力がないと生きていけないのだ。仮にそう産まれてきたとしても、すぐに死んでしまう。だから、彼のような人間はいるはずがない。
「とりあえず、貴方が異界からのお客様というのは信じましょう。」
「ありがたい。」
「それで、これからどうするのですか?」
傷が治ればあとは自由にしてもらうつもりだったが…これは外に放り出していいものなのか。イケメンの顔色が悪いのは、気のせいではないだろう。冷や汗が流れている。
「…頼む。なんでもするから、俺をここに置いてくれ。」
深々と頭を下げるイケメン。ああ…そうだよな…そうなるよな…さようなら、私の静かで地味な生活……
「わかりました。じゃあ、仕事と家事の手伝いをして下さい。」
こうして、イケメンとの共同生活が始まったのである。
イケメンの名は、柳瀬咲夜。ピッチピチ(どうやら死語らしい)の24歳であった。
咲夜はとても優秀であり、教えた事をどんどん吸収して行く。しかも、自ら応用方法を編み出し、活用していくのだ。末恐ろしい男である。もし魔力と魔核があれば、偉大な魔法使いになっただろう。1年を過ぎる頃には、私の仕事の右腕となるまでに至ったのである。
しかも咲夜の作るご飯がべらぼうに美味い。朝が弱い私に代わり、朝ごはんは咲夜が担当するようになったのだが、ものすごく美味い。私より美味い。完全に胃袋を掴まれている。近く、夜ご飯も任せるようになるだろう。
かくして話は冒頭へと戻る。
「秋刀魚美味しいー!脂のってるわー!」
「安くなってたから買ったんだ。ああ、昨日貰った栗で、栗ご飯にしてみたんだけど」
「秋刀魚に栗ご飯!最高ー!」
「お気にめしたようでなにより。」
態度も口調も、前よりかは刺々しさと荒っぽさが丸くなった咲夜。柔らかく微笑む彼に、微かに体温が上がる。最近ずっとこうなのだ。でも、悪い気持ちじゃない。ふわふわ甘い、心地がいい…何なのだろうか、これは。そんな事を考えながら、美味しいご飯に舌鼓をうち、今日の予定を話す。
「今日はお休みよ!どうする?家でのんびりする?」
咲夜はしばらく考えてから、
「マーガレット。買い物に行かないか?」
私をショッピングに連れ出した。
「咲夜さーん??これは一体…」
てっきり咲夜の買い物の付き合いかと思ったのだが…今、私は着せ替え人形になっている。しかも、割といい値段の服。
「うん、似合う似合う。やっぱり俺の見立てに狂いはなかった。可愛いよ。」
「ありがとうございます…?」
可愛いとか言われたこと無いから、どうしたらいいかわからない。
「試着してた服、全部似合ってたな。いっそ全部買うか。」
ぼそりと呟かれた言葉に震えた。主に金額に。
「ちょ、咲夜さん!?お値段的に全部は無理よ!!」
「俺が払うからいいんだ。最近まとまった金が入ったから、マーガレットに何かプレゼントしたかったんだよ。…あ、試着してた服全部下さい。」
まとまったお金?その言葉に気を取られて、本当に全部買われている事には気が付かない私なのであった…。その後、靴やらアクセサリーやらバックやらをプレゼント…いや、貢がれた。それら全てを魔法で家に送った。なれないプレゼントに身が縮む思いである。
「だいぶ買ったな。」
お昼はカフェでパスタを食べている。満足そうに笑っている咲夜だが、彼は自分のものは一つも買っていない。帰ったら、彼がくれた物とは大分見劣りするが、今の自分にできる精一杯のプレゼントを渡そうと思う。
咲夜は渋ったが、お昼は個人会計を押し通した。さすがにそこまでお世話になるつもりはない。店を出て、ふと気がつく。あ、あれ…?
そろりと視線を下にすると、自分の手と咲夜の手が繋がれている。暖かな感触が自家に伝わってくる。あ、あれれ??
「咲夜、あの…手…」
「やっと気づいたか。嫌じゃないよな?」
そう言ってふわふわと陽気に笑い…繋ぎ直された。指一本一本を絡ませ、隙なく繋がれる。これは噂に聞く、恋人繋ぎでは??
「咲夜!?」
「いいだろ?」
離そうにも離れられない。力強い、手放すつもりなんて微塵もない手の熱。そっと手を引いてみても、びくともしない。
「ほら、行くぞ。」
カチカチになりながら、咲夜に引かれて一歩踏み出した。それから、夢のような時間を過ごした。知っているのに知らない景色。彼がいるだけで、何故か割増で美しく見える。ふわふわ、ふわふわ、甘くて…何故か底しれない恐怖がある。わからない。いや、本当はわかってる。でも認めてしまえば戻れない。
次の日、最も恐れる事を聞く事になる。
「マーガレット。あのな。」
「うむ??」
今日も今日とて美味しい咲夜のご飯を食べながら、それを聞いた。
「俺、元の世界に帰るよ。仲間が迎えに来たんだ。」
「そっか。」
一番怖かったこと。咲夜が帰ってしまうこと。そうして…それを止められない事。
「いつ帰るの?」
「明後日の夜」
思ったよりも時間がなかった。
「そっか。早いね」
「ごめんな。本当は、もっと早く言うつもりだったんだ。でも、言えなくて…」
色々なものがこみ上げてくる。私を選んでほしかった。元の世界になんて、帰ってほしくない。でも、それは許されない。
「そっか、仲間が迎えに来てくれたんだね。帰れるんだ…よかった…」
ねぇ、私、上手く笑えてる??
明後日帰るというのに、私は結局何も言えず、静かに過ごした。そうして、彼はあっさりと帰っていったのであった。
彼が家にいない寂しさが、誰もいない空気の冷たさが、私を蝕む。何をしていても、どこを見ていても出てくる彼との日常の思い出に苦しめられる。
彼は酷い。私を一人で生きられないようにして、さっさっと帰っていった。
ドレッサーを開けると、プレゼントしてくれた服などが入っている。あの時にはもう…
腹立つわ。幸福を、温もりを…恋を植え付けて、よくもやってくれたな!と怒りたいが、そんな気力もない。私は大人しく、彼との記憶に浸ることにした。そうして、半年。
「よし。断捨離しよう。」
魔法の畑は惜しいが、このままここに住んでいたら、彼との記憶に押しつぶされそう。というわけで、引っ越す事にした。
引っ越すに当たり、家具も服も何もかもを捨てた。だっていちいち彼との記憶が思い出されて、辛いんだもの。懐は痛いが、心の安全を保つためには必要である。
「さて、もういいか!」
身一つになり、最後に一礼した。長年過ごした家をぐるりと見回し、そうして、去った。
というわけで、新たな土地にやってきた。フィーネシュカ公国の北、アローニャ領。4大魔法使いと呼ばれる最強の魔法使い達の一人、ヴェラ•ノースハランのお膝元である。アローニャ領は領主も優しく聡明で、この国で一番治安がいい事で知られている。
「えーっと、あった!!あそこだ!!赤い屋根の家!!」
そこは前と同じ、森の中にある。ちらっと見えた赤い屋根の家。あそこだろう。
森に入ると、心地の良い風がふいてきた。ざわざわと歓迎するように揺れる木々。どうやら、受け入れて貰えたようだ。誘い込まれるように入る。古いが、しっかりした作りのトロッコが現れた。なるほど、これに乗って家まで行くらしい。
トロッコに乗り、家まで運んでもらう。
「ついた!」
こじんまりとして可愛い家である。畑もついている。ドアを開け、中の掃除から初め…初め…
「……………」
「あ、あはは…久s」
ぱたん。
「???????」
今見覚えのあるイケメンがいた気がする。
「ちょ、閉じないで!閉じないで!話を聞いてくれ、マーガレット!!」
今聴き覚えのある声を聞いたんですが!!
「咲夜?」
「そうだよ!!開けて!!暗い!何も見えん!」
恐る恐る、ドアを開けた。そこには、やっぱり咲夜がいた。
「なんで咲夜がここに?だって、元の世界に帰ったはずじゃ…」
「ちゃんと話すよ。中は掃除してあるし、座るところも一応あるから。聞いてくれる?」
聞いた話はこうだ。
咲夜は、とある国で精霊師と呼ばれる職についていた。精霊師とは、精霊を使役して魔獣から世界を守護する、というもの。咲夜は精霊師の中でもトップクラスに強かった。
ある日、とんでもなく強い魔獣とガチガチのバトルをして、勝利した。さすがの咲夜も疲労困憊という状態だったのだが、そこで相棒だと思っていた精霊師に裏切られた。傷を負って動けなくなり、このまま殺されるよりはと川に身を投げ、気がついたら私の家のベットにいたのだと言う。
「な、なるほど…え、帰って大丈夫だったの…?」
裏切者の相棒がいるのに、大丈夫だったのだろうか。
「ああ。不審に思った兄弟が、色々調べてくれたらしくて…。その過程で、俺が異界にいる事もわかったらしい。稀にな、世界から落っこちる事があるらしいんだ。話には聞いていたが、まさか自分がそうなるとはな。」
元の世界に戻った咲夜は、牢で元相棒と再会した。
「まとめて言うと、強くてかっこよくてなんでもできる英雄的存在の俺が憎たらしくて、妬ましかったらしい。」
「逆恨みですか。」
「そうだな。」
元相棒はもう陽の光を浴びる事はできない。終身刑になったと、咲夜は語った。
「それから俺は、全ての魔獣を葬って、精霊師を辞めて、家を出てきた。」
「え?」
静かに、でも力強く抱きしめられた。
「マーガレット、俺はお前と一緒にいたい。何を犠牲にしてでも、お前の傍にいたい。」
「私に咲夜の全てと引き換えにする程の価値はない…」
「そんなことない。マーガレットは何とも引き換えられない、大事な人だ。」
心臓がうるさい。体が熱い。そうして…歓喜していた。
「いなくなって、寂しかった。辛かった。」
「ごめん。」
「もう、一人にしないって約束できる?」
「勿論だ。」
私はそっと彼の背に手を回した。暖かで優しい世界が戻ってきた瞬間だった。
「マーガレット。今日は何が食べたい?」
「秋刀魚が食べたいです!」
「ん、了解。」
華々しいイケメンがいる。滴るようないい男がいる。目の保養。心の栄養。マーガレットの庭に生えていたイケメンである。
さて、遡ること1年前の事。マーガレットは、畑を見に外へ出た。
「今日は何が生えてますかねー」
余談だが、マーガレットは畑に何も植えていない。なのに、毎日朝には人参やら芋やら、何かしら生えているのである。完全に季節を無視し、気まぐれに、ランダムで生えてくる。マーガレットは畑に生えているものを見てから、毎日の献立を考えている…のだが。その日は何も生えていなかった。代わりに…
「なんか…人間の足が…土から出てるんですけど…」
土から2本、足が生えている。
「畑さん?これはあれですか?今日は人間を食えということでしょうか…」
当然、返事をするものは誰もいない。
「ううう、とりあえず引っこ抜くしか…」
うんとこしょ、どっこいしょ。うんとこしょ、どっこいしょ。それでも人間は抜けません。
「魔法は苦手なんですけどね…」
渋々魔法を使うマーガレット。とりあえず、雑に引っこ抜く事ができた。しかし、抜いたのはいいが、これをどうしたものか。それなりに長い時を生きてきたが、人間は食べたことがない。調理法も知らない。
「そもそもこの人、生きてるんですかね?」
土に汚れた顔をつんつんしてみる。
「っ…ぐぐ……すぅ…」
「あー…生きてますね……」
死んでいたら埋められたのに。でもこのまま放置もできないからなぁ…。マーガレットはちょっと悩んでから、家に入れることにした。
マーガレットは400年くらい使ってない客室を急いで掃除した。渋々魔法を使って人間を丸洗いし、服を着せ、掃除した客室へと運び、ようやくベットに寝かせた。
「さて、傷を治療しますか。」
人間の傷を一つ一つ見ていく。切り傷、打ち身、刺し傷。それに火傷まで…
「これは…事故ではありませんね。」
明らかに第三者による暴行のあとである。
「もしかして、面倒な拾い物しちゃいましたかね…」
でも、拾ったものは仕方ない。せめて、この人間が完治するまでは面倒を見よう。
その後、高熱を繰り返し、ようやく峠を超えた。
「あら、綺麗なお顔。」
傷や火傷、汚れのない顔。黒曜石の髪、ミルク色の肌、すっと通った鼻、薔薇色の唇。長い睫毛。
「んんんん?これはもしや、とんでもないイケメンなのでは?」
今まで傷と汚れで人という以外は全くわからなかったが…お主、イケメンであったか。
すやすやと眠るイケメンを観察する。しばらくはこのまま眠り続けるだろう。さて、そろそろ依頼の品を作らなくては。締め切り間近のものをいくつか頭に浮かべる。電気を消し、ドアへと向かう。
「いい夢を。」
この様子だと、明日の朝には目覚めるかな。
さて、翌日。気まぐれな畑に生えているカブを使い、スープを作っていると…
ドタッ!!バッターーーン!!!!
何かが派手に転げ落ちる音がした。急いで客室に向かい、扉を開け…豪速球で飛んできた羽ペンを避けた。羽ペンは綺麗に壁に刺さった。危ない。避けなかったら目に怪我をしていたに違いない。
「危ないじゃないですか。」
イケメンは静かに警戒を張り巡らせている。
「誰だ?」
「マーガレットです。何もしてませんよ。丸洗いして着替えさせて、傷の手当をしただけです。」
しばらくイケメンは黙り込んだ。ゆっくりと、慎重に口を開く。
「なぜ俺を助けた。」
「あなた、私の畑に生えてたんですよ。仕方く引っこ抜いたら、まだ息をしていたんで。死体が落ちてた畑のものを食べるのは、気分的に遠慮させて頂きたいので…」
「畑に生えてた?」
「ええ。はい。生えてました。」
訝しげなイケメン。
「嘘じゃないですよ。ばっちり生えてました。」
「そんな、まさか…だって俺は!!!」
何かを言いかけて口をつぐむイケメン。それから、何かを考えているようであった。厳しい顔である。
「よくわかりませんが、怪我が完治するまでは面倒を見ますよ。あとは自分でなんとかしてください。」
「なぜ俺を助ける…」
「暇つぶしです。」
そう言って、私は朝食の準備に戻った。
それでは、朝食のメニューを紹介しよう。
•梅干し卵粥
•カブと昨日の残りの野菜達のスープ
•手作りブルーベリージャム乗せヨーグルト
•お茶
である。柔らかくて食べやすい、栄養のあるものにしてみた。
お盆に載せ、イケメンの元へ運ぶ。警戒心が強いから、食べてくれるか不安である。だか、それは杞憂に終わった。渡した瞬間に端から食らいつくしたのだ。おそらく、よっぽどお腹を減らしていたのだろう。
「ゆっくりよく噛んで食べてください。お腹壊しますよ。」
「おかわり。」
「お腹の調子は?」
「ばっちり。」
ならよし。お鍋の残りをよそってこよう。
そうして、瞬く間にすべてを平らげた。
「ご馳走様でした。美味しかった。」
「お粗末さまです。」
「あのヨーグルトにかかってたやつが美味しかった。なんのジャム?」
「あれはブルーベリーのジャムですよ。お裾分けでたくさん貰ったんです。」
「ぶるー…?なんだそれ?」
怪訝そうな顔をするイケメン。まさかこの世にブルーベリーを知らない人がいたとは…いや、そりゃいるか。実物を持ってブルーベリーの解説をしていた。だがそこで、思わぬ事が発覚する。
「シェスタ共和国が生産国1位です。」
「シェスタ共和国?どこだ?そんな国あったか?」
「この世界で一番力を持つ国ですよ?」
「どこの国だ…そんな国ないぞ?世界で一番力を持つ国は、ジェベルだろう?」
ジェベルなんて国、聞いたことがない。そういえば、あの靴、服装…見たことがない型だった。長い時を生きているが、見たことがない。最近の流行りかと思っていたが…イケメンが、慎重に口を開いた。
「ダーシェンって国知ってるか。」
「いや、知りませんね。」
「精霊の気配が感じられないが、ここはエディオンか?」
「エディオン?ここはフィーネシュカ公国のトウィニア領ですが…」
それから、彼はいくつか私に質問し、最後に世界地図を見て…後ろにぶっ倒れた。
「ちょ!?大丈夫ですか!?」
「大丈夫…いや、大丈夫じゃない…」
手を上げて制し、イケメンはしばらく迷ってから口を開いた。
「できれば信じてほしいんだが…おそらく、俺はこの世界の人間ではない。」
「は???」
驚くべき事に、イケメンは自分のいた世界とここは全く違う別世界だと言い出したのだ。
正直、頭を疑った。だが…イケメンが身につけていたバックを渡し、その中から出てきた手紙を見て、考えが変わった。それは、この世界のどこにもない素材、文字であった。流行りのファッションはわからないが、この世界のことはだいたい知り尽くしている。
気づかれないよう魔法を使い、彼の中に流れる魔力を見て…私は彼が異世界から来たということを信じることにした。
彼の中にはいっさい魔力がなかったのだ。通常、この世界の人間には血液と共に魔力が流れている。この世界の生き物にとって、魔力は無くてはならないものだ。
ちなみに、魔力は心臓に魔核がないと使えない。これの有無で、魔女又は魔法使いになれるかが決まる。魔核は遺伝するものではないため、完全に天からの授かりものである。
話はそれたが、魔力がないと生きていけないのだ。仮にそう産まれてきたとしても、すぐに死んでしまう。だから、彼のような人間はいるはずがない。
「とりあえず、貴方が異界からのお客様というのは信じましょう。」
「ありがたい。」
「それで、これからどうするのですか?」
傷が治ればあとは自由にしてもらうつもりだったが…これは外に放り出していいものなのか。イケメンの顔色が悪いのは、気のせいではないだろう。冷や汗が流れている。
「…頼む。なんでもするから、俺をここに置いてくれ。」
深々と頭を下げるイケメン。ああ…そうだよな…そうなるよな…さようなら、私の静かで地味な生活……
「わかりました。じゃあ、仕事と家事の手伝いをして下さい。」
こうして、イケメンとの共同生活が始まったのである。
イケメンの名は、柳瀬咲夜。ピッチピチ(どうやら死語らしい)の24歳であった。
咲夜はとても優秀であり、教えた事をどんどん吸収して行く。しかも、自ら応用方法を編み出し、活用していくのだ。末恐ろしい男である。もし魔力と魔核があれば、偉大な魔法使いになっただろう。1年を過ぎる頃には、私の仕事の右腕となるまでに至ったのである。
しかも咲夜の作るご飯がべらぼうに美味い。朝が弱い私に代わり、朝ごはんは咲夜が担当するようになったのだが、ものすごく美味い。私より美味い。完全に胃袋を掴まれている。近く、夜ご飯も任せるようになるだろう。
かくして話は冒頭へと戻る。
「秋刀魚美味しいー!脂のってるわー!」
「安くなってたから買ったんだ。ああ、昨日貰った栗で、栗ご飯にしてみたんだけど」
「秋刀魚に栗ご飯!最高ー!」
「お気にめしたようでなにより。」
態度も口調も、前よりかは刺々しさと荒っぽさが丸くなった咲夜。柔らかく微笑む彼に、微かに体温が上がる。最近ずっとこうなのだ。でも、悪い気持ちじゃない。ふわふわ甘い、心地がいい…何なのだろうか、これは。そんな事を考えながら、美味しいご飯に舌鼓をうち、今日の予定を話す。
「今日はお休みよ!どうする?家でのんびりする?」
咲夜はしばらく考えてから、
「マーガレット。買い物に行かないか?」
私をショッピングに連れ出した。
「咲夜さーん??これは一体…」
てっきり咲夜の買い物の付き合いかと思ったのだが…今、私は着せ替え人形になっている。しかも、割といい値段の服。
「うん、似合う似合う。やっぱり俺の見立てに狂いはなかった。可愛いよ。」
「ありがとうございます…?」
可愛いとか言われたこと無いから、どうしたらいいかわからない。
「試着してた服、全部似合ってたな。いっそ全部買うか。」
ぼそりと呟かれた言葉に震えた。主に金額に。
「ちょ、咲夜さん!?お値段的に全部は無理よ!!」
「俺が払うからいいんだ。最近まとまった金が入ったから、マーガレットに何かプレゼントしたかったんだよ。…あ、試着してた服全部下さい。」
まとまったお金?その言葉に気を取られて、本当に全部買われている事には気が付かない私なのであった…。その後、靴やらアクセサリーやらバックやらをプレゼント…いや、貢がれた。それら全てを魔法で家に送った。なれないプレゼントに身が縮む思いである。
「だいぶ買ったな。」
お昼はカフェでパスタを食べている。満足そうに笑っている咲夜だが、彼は自分のものは一つも買っていない。帰ったら、彼がくれた物とは大分見劣りするが、今の自分にできる精一杯のプレゼントを渡そうと思う。
咲夜は渋ったが、お昼は個人会計を押し通した。さすがにそこまでお世話になるつもりはない。店を出て、ふと気がつく。あ、あれ…?
そろりと視線を下にすると、自分の手と咲夜の手が繋がれている。暖かな感触が自家に伝わってくる。あ、あれれ??
「咲夜、あの…手…」
「やっと気づいたか。嫌じゃないよな?」
そう言ってふわふわと陽気に笑い…繋ぎ直された。指一本一本を絡ませ、隙なく繋がれる。これは噂に聞く、恋人繋ぎでは??
「咲夜!?」
「いいだろ?」
離そうにも離れられない。力強い、手放すつもりなんて微塵もない手の熱。そっと手を引いてみても、びくともしない。
「ほら、行くぞ。」
カチカチになりながら、咲夜に引かれて一歩踏み出した。それから、夢のような時間を過ごした。知っているのに知らない景色。彼がいるだけで、何故か割増で美しく見える。ふわふわ、ふわふわ、甘くて…何故か底しれない恐怖がある。わからない。いや、本当はわかってる。でも認めてしまえば戻れない。
次の日、最も恐れる事を聞く事になる。
「マーガレット。あのな。」
「うむ??」
今日も今日とて美味しい咲夜のご飯を食べながら、それを聞いた。
「俺、元の世界に帰るよ。仲間が迎えに来たんだ。」
「そっか。」
一番怖かったこと。咲夜が帰ってしまうこと。そうして…それを止められない事。
「いつ帰るの?」
「明後日の夜」
思ったよりも時間がなかった。
「そっか。早いね」
「ごめんな。本当は、もっと早く言うつもりだったんだ。でも、言えなくて…」
色々なものがこみ上げてくる。私を選んでほしかった。元の世界になんて、帰ってほしくない。でも、それは許されない。
「そっか、仲間が迎えに来てくれたんだね。帰れるんだ…よかった…」
ねぇ、私、上手く笑えてる??
明後日帰るというのに、私は結局何も言えず、静かに過ごした。そうして、彼はあっさりと帰っていったのであった。
彼が家にいない寂しさが、誰もいない空気の冷たさが、私を蝕む。何をしていても、どこを見ていても出てくる彼との日常の思い出に苦しめられる。
彼は酷い。私を一人で生きられないようにして、さっさっと帰っていった。
ドレッサーを開けると、プレゼントしてくれた服などが入っている。あの時にはもう…
腹立つわ。幸福を、温もりを…恋を植え付けて、よくもやってくれたな!と怒りたいが、そんな気力もない。私は大人しく、彼との記憶に浸ることにした。そうして、半年。
「よし。断捨離しよう。」
魔法の畑は惜しいが、このままここに住んでいたら、彼との記憶に押しつぶされそう。というわけで、引っ越す事にした。
引っ越すに当たり、家具も服も何もかもを捨てた。だっていちいち彼との記憶が思い出されて、辛いんだもの。懐は痛いが、心の安全を保つためには必要である。
「さて、もういいか!」
身一つになり、最後に一礼した。長年過ごした家をぐるりと見回し、そうして、去った。
というわけで、新たな土地にやってきた。フィーネシュカ公国の北、アローニャ領。4大魔法使いと呼ばれる最強の魔法使い達の一人、ヴェラ•ノースハランのお膝元である。アローニャ領は領主も優しく聡明で、この国で一番治安がいい事で知られている。
「えーっと、あった!!あそこだ!!赤い屋根の家!!」
そこは前と同じ、森の中にある。ちらっと見えた赤い屋根の家。あそこだろう。
森に入ると、心地の良い風がふいてきた。ざわざわと歓迎するように揺れる木々。どうやら、受け入れて貰えたようだ。誘い込まれるように入る。古いが、しっかりした作りのトロッコが現れた。なるほど、これに乗って家まで行くらしい。
トロッコに乗り、家まで運んでもらう。
「ついた!」
こじんまりとして可愛い家である。畑もついている。ドアを開け、中の掃除から初め…初め…
「……………」
「あ、あはは…久s」
ぱたん。
「???????」
今見覚えのあるイケメンがいた気がする。
「ちょ、閉じないで!閉じないで!話を聞いてくれ、マーガレット!!」
今聴き覚えのある声を聞いたんですが!!
「咲夜?」
「そうだよ!!開けて!!暗い!何も見えん!」
恐る恐る、ドアを開けた。そこには、やっぱり咲夜がいた。
「なんで咲夜がここに?だって、元の世界に帰ったはずじゃ…」
「ちゃんと話すよ。中は掃除してあるし、座るところも一応あるから。聞いてくれる?」
聞いた話はこうだ。
咲夜は、とある国で精霊師と呼ばれる職についていた。精霊師とは、精霊を使役して魔獣から世界を守護する、というもの。咲夜は精霊師の中でもトップクラスに強かった。
ある日、とんでもなく強い魔獣とガチガチのバトルをして、勝利した。さすがの咲夜も疲労困憊という状態だったのだが、そこで相棒だと思っていた精霊師に裏切られた。傷を負って動けなくなり、このまま殺されるよりはと川に身を投げ、気がついたら私の家のベットにいたのだと言う。
「な、なるほど…え、帰って大丈夫だったの…?」
裏切者の相棒がいるのに、大丈夫だったのだろうか。
「ああ。不審に思った兄弟が、色々調べてくれたらしくて…。その過程で、俺が異界にいる事もわかったらしい。稀にな、世界から落っこちる事があるらしいんだ。話には聞いていたが、まさか自分がそうなるとはな。」
元の世界に戻った咲夜は、牢で元相棒と再会した。
「まとめて言うと、強くてかっこよくてなんでもできる英雄的存在の俺が憎たらしくて、妬ましかったらしい。」
「逆恨みですか。」
「そうだな。」
元相棒はもう陽の光を浴びる事はできない。終身刑になったと、咲夜は語った。
「それから俺は、全ての魔獣を葬って、精霊師を辞めて、家を出てきた。」
「え?」
静かに、でも力強く抱きしめられた。
「マーガレット、俺はお前と一緒にいたい。何を犠牲にしてでも、お前の傍にいたい。」
「私に咲夜の全てと引き換えにする程の価値はない…」
「そんなことない。マーガレットは何とも引き換えられない、大事な人だ。」
心臓がうるさい。体が熱い。そうして…歓喜していた。
「いなくなって、寂しかった。辛かった。」
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「もう、一人にしないって約束できる?」
「勿論だ。」
私はそっと彼の背に手を回した。暖かで優しい世界が戻ってきた瞬間だった。
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