【R18】オトメゲームの〈バグ〉令嬢は〈攻略対象外〉貴公子に花街で溺愛される

幽八花あかね・朧星ここね

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〈悪役王子〉と〈ヒロイン〉王都編

【48】悪役王子とヒロインの結婚 −式と夜− ★

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 ――扉が開き、美しい花嫁が現れる。

 ヴェールの向こうには髪の薄紅色が透け、華奢な身体はふんわりと純白に包まれていた。スカートはたっぷりのシルクとレースで丸く膨らみ、彼女に豊かな威厳と可愛らしさを同時に纏わせている。
 父であるテリフィルア侯爵にエスコートされ、アリシアは花嫁の道を歩いた。
 親愛なる母や兄、可愛い妹たちも、この晴れ舞台を見守ってくれている。顔を隠したヴェールの中で、アリシアはゆるく微笑んだ。
 シシリーやユースタスは、ここにはいない。
 けれど、ふたり一緒に、遠くからでも祝福の想いを送ってくれると言っていた。
 ユースタスは休暇をとって、花街で暮らすシシリーに、今日も会いにいっているのだ。

(どうか、おふたりにも幸せになってほしい――)

 願うアリシアのヴェールが、ふわりと揺れる。
 離れゆく父の温もりと涙の気配を感じた。

(いよいよね)

 胸がじんと熱くなり、アリシアは小さく息を吸う。
 彼女は、無事に、新郎の隣へと送り届けられた。

(ああ、殿下……――フィリップ様)

 ヴェール越しに見ても彼は素敵で、かっこよく、アリシアは心臓をドキドキさせる。ときめいてしまう。
 ステンドグラスの光が、色鮮やかに新郎新婦を照らす。白いドレスや礼服に、花びらのような光が落ちている。彼の銀糸の髪も、きらきらと輝く。

 儀式が進み、言葉を交わし、名を綴り。
 ついにフィリップは、アリシアのヴェールをはらりとあげた。
 誓いのキスの時だった。 

「――アリシア」

 小声で呼んで、アリシアの頬に手を添える。

「……はい。殿下」

 目を瞑ったアリシアの唇に、ふ、とやわらかな熱が触れた。
 幼き頃に、初めて交わしたキスのような。
 甘くて、優しい、幸せな口づけだった。

 アリシアとフィリップの婚儀は、未来の王と王妃の式らしく、盛大に執り行われた。
 婚礼衣装姿のアリシアを、フィリップはいっぱい褒めて可愛がってくれた。

「世界でいちばん綺麗だ。アリシア。最高に可愛い。素敵だ。可愛い。可愛い……」
「あ、ありがとうございます。貴方様も素敵です、殿下」
「殿下じゃない、フィリップだ。もう名前で呼んでも誰にも咎められない。ほら、呼んで?」
「フィリップ様――」
「ああ、可愛い。可愛いね。大好き」

 ちゅっ、ちゅと額や頬にも口づけられて。神殿での式も、お披露目の宴も、城下でのパレードも無事に終わって。王宮での支度を済ませたら。

(今度は、ついに、初夜の儀式を――……)


 ***


 女官たちやヘレンにお支度をされた身体で、夜の白い衣装に包まれたアリシアは、夫婦の寝室にて彼を待つ。
 ドキドキと胸を高鳴らせていると、扉が開き、大好きなひとが顔を出した。

「アリシア、お待たせ」

 フィリップはゆるく微笑んで言う。アリシアよりも、いくらか余裕のありそうな様子だった。

「あっ、こんばんは……ふぃ、フィリップ様」

 ふたりは寄り添い、抱きしめあい、キスを交わす。
 頬を撫でられ、髪を掬われ、アリシアの緊張もいくらか和らいだ。

「では、始めようか」
「はい――」

 青楼での水揚げの儀式の時のように、夫婦の初夜の儀式でも、男女は薬酒を飲ませあうことになっている。
 色欲を煽る香の焚かれた寝室で、あの日のように。アリシアとフィリップは互いに酒を口移しした。
 ふたりの唇を舞台に水音が鳴り、花嫁の嬌声が小さく漏れる。

「ん……んんっ、ん」
「可愛いよ、アリシア」
「ふぅ……んっ」

 最後のひとくちを交わし終えると、フィリップは、アリシアにふつうのキスをする。彼女の左耳をくすぐって、可愛い可愛いと幸せそうに囁いて、彼女の花を濡らしてしまう。

「ふゃ、にゃ……ぁ」
「お耳、気持ちいい?」
「ぅん……」
「ふふ、可愛い……大好き。ベッドまで抱っこしたげるね……」

 フィリップの逞しい腕にお姫様抱っこをされ、嬉しくなったアリシアは、彼の首に腕を絡める。「好きです」とあふれた想いを呟くと、額に彼からのキスが降ってきて、さらにふわふわと嬉しくなった。
 香のせいか、酒のせいか、――いや、きっと。大好きなひとと結ばれる純粋な歓喜なのだろう。これは。
 花婿は花嫁をベッドへと優しく降ろし、白の衣を手ずから剥いた。真珠の肌を露わにした妃に、王子は幸せそうに触れていく。

 ――あの幸福感も、恥辱感も、何もかも。
 もう二度と感じることはないと思っていた――

 薄紅の髪をシーツの上で遊ばせ、甘い責めに身を跳ねさせ、彼女は思う。青楼で過ごした一週間と、王都に帰ってきてから今日までのことを。
 娼妓として生き、身に余るほどの快楽を知り、淫らになって。もう王妃の道を外れたと諦めた。
 色欲に侵された心をなくし、未来の王妃として育てられた体だけ、みんなの求めるアリシア・テリフィルアだけが居ればいいと決めつけた。
 理想像だけを残して去れば、愛するひとも幸せになれると捻くれて。
 そうして、一時はここから逃げてしまった……けれど。

「にゃう……んにゃ、や」
「綺麗だよ、アリシア」
「んぅ……ふぁ、フィリップ、さまも、お綺麗……」
「ん。ありがとう」

 ちゅっと啄むキスをくれたフィリップに微笑みを返し、アリシアは彼の引き締まった肉体へと手を触れる。魔法にも剣術にも長けた彼の筋肉は、彫刻のように美しい。
 やわやわと両胸をほぐすように揉まれながら、彼女は、大好きなひとの鍛えられた裸体に見惚れた。しばらくぺたぺた楽しく触っていると、彼は「余裕そうだね?」と意地悪げに笑う。

「……フィリップ様のお体に、触れていると。愛おしくて、幸せです。ずっと触ってたい……」
「きみというひとは、まったく可愛いことを言う」
「きゃうんっ」

 と。胸の先端を不意打ちで摘ままれ、つい、アリシアは子犬のような声を上げてしまった。「にゃんにゃんじゃないの?」と彼はまた愛しい意地悪を言って、アリシアの胸をさらに責める。手の指で乳嘴を捏ねつつ、唇で、胸のやわらかなところやお腹にキスマークをつけていく。紅い花が咲く。

「ふぁん、ゃん、にゃあ……」
「可愛くにゃんにゃんできて偉いね、いい子」
「んにゃあ――っあ!」

 ふるりと腰が震え、胸から背、足先へと痺れが走る。軽く果ててしまう。じゅわりとあふれた蜜が内腿を濡らした。

「あぁ……ゃあっ」
「アリシア、好きだよ」
「ん……」

 唇を食むキスと一緒に、彼の手は下腹部へと伸びていく。子宮の上をゆるりと撫で、もうすこし先の恥丘へと指を滑らせる。
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