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ー光ー 第六章 燦爛鳳条国
第八十四話 落暗
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「伽耶兄!!伽耶兄!!!」
目を開けると、知らないところにいた。
しかしここはまだ焔光山のようだ。
天光琳の目の前で京極庵がしゃがみこみ、涙を流している。
天光琳も涙が止まらなかった。
「助けに行こう、まだ間に合うかもしれない!!」
天光琳はそう言って京極庵の腕を引っ張ったが、京極庵はしゃがみこんだままだ。
「庵くん!早くしないと......!!」
「お前見てなかったのかっ!?」
京極庵はバッと天光琳の手を振り払った。
そして立ち上がり目を真っ赤にして天光琳の方を見つめた。
「なに...を......?」
天光琳はなんのことか分からなかったが、悪い事だと察し、恐る恐る聞いた。
すると、天光琳はあることに気づいた。
手や服にに付いているこの血は誰のものだ?
京極庵に付いているこの大量の血は......一体誰のものだ......?
「い、いや......ま...まだ、生きてる......よ......ほら......は...早く...行かないと.......伽耶斗さんが.......」
「伽耶兄は死んだよっ!!」
「...っ!?」
一番聞きたくなかった言葉だ。
天光琳は信じたくなかった。
「目を閉じる前、一瞬見えたんだ。アイツが......伽耶兄の頭を.........ひ......引きちぎってっ!!......丸呑みしたんだっ!!」
「......!」
京極庵は小さい子供のように泣き叫んだ。
ずっと一緒にいた兄の頭と体が離れ、最悪な状態を見てしまった京極庵にとって、人生最大のトラウマになるだろう。
天光琳は見ていなかったが、想像しただけでも恐ろしい。
この大量の血は、恐らく京極伽耶斗の頭が引きちぎられた時に飛び散ったものだろう。
京極庵は京極伽耶斗の血が着いた羽織をくしゃくしゃに抱きしめて泣いている。
天光琳も震えて立っていられなくなりしゃがみ込んだ。
(伽耶斗さんが......死んだ......?)
どうか嘘であってくれ......と願ったが、この血が京極伽耶斗の死の証拠を示している。
天光琳も大粒の涙を流した。
✿❀✿❀✿
しばらくだった。
涙でせっかくの整った顔が台無しだが、そんなのどうだっていい。
京極庵はまだ泣き続けている。
天光琳はもう犠牲者を出したくないと京極庵を守ると決めた。
そのため、座り込む京極庵の隣にたち、辺りを見渡している。
あの生物は一体何者なのだろうか。
角が生えていた......本当に鬼神なのだろうか。
恐らく悪神の仲間だろう。
「うぅ.........ぅ......」
「......ごめんなさい...」
天光琳は謝った。
助けられなかった。自分を護衛するために派遣されたため、責任は自分にあると思っているのだろう。
どれだけ泣いても、あの優しくて面白くて......頼りになる天然の神は戻ってこない。
天光琳も再び涙が込み上げてきて、目を擦る。
(姉上......俊熙......助けて......)
天光琳はどうすることも出来ない。いつも側にいて助けてくれる仲間は今はいない。
今そばに居るのは、兄を失い絶望している弟の京極庵だ。
親に嫌われている...と話を聞いた時、京極伽耶斗と嫌われると言っていたため、仲が悪いのかと思ったが、そんなことは無かった。
恐らく、天光琳が天麗華と比べられても、嫌いになったりしない.....そういう感じだろう。
やはりどこか自分と似てる気がした。
ニ時間後、京極庵は落ち着いてきたようで、近くにあった岩にもたれかかった。
焚き火をつくり、二神はその近くで休憩している。
「......」
「......」
二神は一言も喋らなかった。
京極庵は喋るつもりはないようし、天光琳は黙っておくことにした。
ばち、ばち、と焚き火の弾ける音が響く。
そろそろ体力の限界も近い。
ずっと暗いところにいるせいか、気分も晴れない。
助かるのだろうか......帰れるのだろうか。
そんなことばかり考えてしまう。
......と突然。
ベタベタとまた音が聞こえ、二神は立ち上がった。
なぜ居場所が分かったのだろうか。
この山は広い。そして、京極伽耶斗は遠いところに飛ばしてくれたはずだ。
天光琳はあることに気づいた。
「あいつら......僕を追っているのかな」
「その可能性はある」
もともと、焔光山にこんな生物はいなかった。......となると、悪神の仲間...天光琳を狙っているのだろう!
「庵くん......もうこれ以上犠牲者を出したくない......僕から離れてほしいんだ」
「何を言っているんだ!?」
天光琳は自分から離れれば、庵は関係ないため助かるだろう......と思ったのだ。
しかし一神でいるのは危険すぎる。
「お前を守るために派遣されたんだぞ、それじゃあ、伽耶兄の死が無駄じゃないか!」
「......!」
そうか......と天光琳は思った。
天光琳を守り、安全に帰らせる......それが二神の任務なのだ。
しかし犠牲者は出したくない。
「とりあえず逃げるぞ!!!」
...と京極庵が振り返った次の瞬間。
「庵くん!」
「!?」
なんと、いつの間にか京極庵の目の前に何者かが立っていた。
髪の角の生えた男神......これは...悪神だ!
「来てくれたんだね、天光琳様」
悪神は片手で京極庵の首を絞めながら言った。
「やめて!離して!」
天光琳は剣を抜き、悪神に斬りかかった。
しかし悪神はさっと軽々と避ける。
「ぅっ......」
京極庵は苦しそうにしている。早くしなければ死んでしまう......!
「天光琳様、落ち着いてくれ」
「落ち着けるか......!まずは離してよ!」
「分かったよ」
悪神はそう言って、京極庵を投げ飛ばした。
京極庵は岩にぶつかり、口から大量の血を吐き出して倒れ込んだ。
「ゲホ......ゲホ......」
「庵くん!!」
天光琳は急いで駆け寄った。
京極庵は意識はあるようだが、体は動かなかった。
首に鋭い痛みがはしる......首の骨を折ってしまったのだ。
体が麻痺してしまい、思うように動かせない。
「俺の......ことはいい.........」
「よくないよ!」
「なんでそんなに心配してるんだ?」
「っ!?」
天光琳の後ろには悪神がいた。
悪神は天光琳の片手に手を置き、耳元でゆっくりと話した。
「他神に興味無いんじゃなかったのか?」
「なんで......」
なぜ知っているのだろうか。あそこには天俊熙しかいなかったはずだ。
まさか......あの時いたのか。
「ずっと天光琳様のそばに居たけどね。やっとこの時が来たよ」
「っ!」
天光琳は悪神を払い除けた。
その勢いで悪神は転んでしまった。
「お前は何者だ!!」
「あぁ......まだ言ってなかったな」
悪神は立ち直し、ニヤリと怪しい笑をみせた。
するとサッと冷たい風が吹いた。
「俺の名は鬼神 落暗」
「鬼神っ!?」
やはりこの悪神は鬼神だった。
本当に存在するとは。
「天界になんの用だ......」
「天光琳様を助けに来たんだ」
「助けに来た......?」
天光琳は息を飲んだ。
助けに来たとはどう言うことだろうか。
別に助けて欲しいなんて思っていない。それに鬼神と関わりもない。
......強いて言うなら神の力が使えないことだが......。
それは鬼神と関係ない話だ。
しかしこの者は助けに来たと言っている。
......もしかしたら.........。
「光琳......コイツの話は聞くな」
京極庵にそう言われ、はっと我に返った。
そうだ。相手は鬼神だ。
説話によると鬼神は恐ろしい存在なのだ。
この鬼神はどうなのだろう。
しかし既に神を殺している。良い神ではないだろう。
天光琳は再び鬼神落暗に斬りかかる。
鬼神落暗は天光琳に攻撃はせず、避けるばかりだ。
「助けに来たのに......酷いなぁ」
「お前の助けなんていらない!」
天光琳は必死に攻撃する。
しかしいくら攻撃しても、避けられてしまう。玉桜山の時と同じだ。
(どうして......!!)
早く鬼神落暗を倒さなければ、京極庵が死んでしまうかもしれない。
目を開けると、知らないところにいた。
しかしここはまだ焔光山のようだ。
天光琳の目の前で京極庵がしゃがみこみ、涙を流している。
天光琳も涙が止まらなかった。
「助けに行こう、まだ間に合うかもしれない!!」
天光琳はそう言って京極庵の腕を引っ張ったが、京極庵はしゃがみこんだままだ。
「庵くん!早くしないと......!!」
「お前見てなかったのかっ!?」
京極庵はバッと天光琳の手を振り払った。
そして立ち上がり目を真っ赤にして天光琳の方を見つめた。
「なに...を......?」
天光琳はなんのことか分からなかったが、悪い事だと察し、恐る恐る聞いた。
すると、天光琳はあることに気づいた。
手や服にに付いているこの血は誰のものだ?
京極庵に付いているこの大量の血は......一体誰のものだ......?
「い、いや......ま...まだ、生きてる......よ......ほら......は...早く...行かないと.......伽耶斗さんが.......」
「伽耶兄は死んだよっ!!」
「...っ!?」
一番聞きたくなかった言葉だ。
天光琳は信じたくなかった。
「目を閉じる前、一瞬見えたんだ。アイツが......伽耶兄の頭を.........ひ......引きちぎってっ!!......丸呑みしたんだっ!!」
「......!」
京極庵は小さい子供のように泣き叫んだ。
ずっと一緒にいた兄の頭と体が離れ、最悪な状態を見てしまった京極庵にとって、人生最大のトラウマになるだろう。
天光琳は見ていなかったが、想像しただけでも恐ろしい。
この大量の血は、恐らく京極伽耶斗の頭が引きちぎられた時に飛び散ったものだろう。
京極庵は京極伽耶斗の血が着いた羽織をくしゃくしゃに抱きしめて泣いている。
天光琳も震えて立っていられなくなりしゃがみ込んだ。
(伽耶斗さんが......死んだ......?)
どうか嘘であってくれ......と願ったが、この血が京極伽耶斗の死の証拠を示している。
天光琳も大粒の涙を流した。
✿❀✿❀✿
しばらくだった。
涙でせっかくの整った顔が台無しだが、そんなのどうだっていい。
京極庵はまだ泣き続けている。
天光琳はもう犠牲者を出したくないと京極庵を守ると決めた。
そのため、座り込む京極庵の隣にたち、辺りを見渡している。
あの生物は一体何者なのだろうか。
角が生えていた......本当に鬼神なのだろうか。
恐らく悪神の仲間だろう。
「うぅ.........ぅ......」
「......ごめんなさい...」
天光琳は謝った。
助けられなかった。自分を護衛するために派遣されたため、責任は自分にあると思っているのだろう。
どれだけ泣いても、あの優しくて面白くて......頼りになる天然の神は戻ってこない。
天光琳も再び涙が込み上げてきて、目を擦る。
(姉上......俊熙......助けて......)
天光琳はどうすることも出来ない。いつも側にいて助けてくれる仲間は今はいない。
今そばに居るのは、兄を失い絶望している弟の京極庵だ。
親に嫌われている...と話を聞いた時、京極伽耶斗と嫌われると言っていたため、仲が悪いのかと思ったが、そんなことは無かった。
恐らく、天光琳が天麗華と比べられても、嫌いになったりしない.....そういう感じだろう。
やはりどこか自分と似てる気がした。
ニ時間後、京極庵は落ち着いてきたようで、近くにあった岩にもたれかかった。
焚き火をつくり、二神はその近くで休憩している。
「......」
「......」
二神は一言も喋らなかった。
京極庵は喋るつもりはないようし、天光琳は黙っておくことにした。
ばち、ばち、と焚き火の弾ける音が響く。
そろそろ体力の限界も近い。
ずっと暗いところにいるせいか、気分も晴れない。
助かるのだろうか......帰れるのだろうか。
そんなことばかり考えてしまう。
......と突然。
ベタベタとまた音が聞こえ、二神は立ち上がった。
なぜ居場所が分かったのだろうか。
この山は広い。そして、京極伽耶斗は遠いところに飛ばしてくれたはずだ。
天光琳はあることに気づいた。
「あいつら......僕を追っているのかな」
「その可能性はある」
もともと、焔光山にこんな生物はいなかった。......となると、悪神の仲間...天光琳を狙っているのだろう!
「庵くん......もうこれ以上犠牲者を出したくない......僕から離れてほしいんだ」
「何を言っているんだ!?」
天光琳は自分から離れれば、庵は関係ないため助かるだろう......と思ったのだ。
しかし一神でいるのは危険すぎる。
「お前を守るために派遣されたんだぞ、それじゃあ、伽耶兄の死が無駄じゃないか!」
「......!」
そうか......と天光琳は思った。
天光琳を守り、安全に帰らせる......それが二神の任務なのだ。
しかし犠牲者は出したくない。
「とりあえず逃げるぞ!!!」
...と京極庵が振り返った次の瞬間。
「庵くん!」
「!?」
なんと、いつの間にか京極庵の目の前に何者かが立っていた。
髪の角の生えた男神......これは...悪神だ!
「来てくれたんだね、天光琳様」
悪神は片手で京極庵の首を絞めながら言った。
「やめて!離して!」
天光琳は剣を抜き、悪神に斬りかかった。
しかし悪神はさっと軽々と避ける。
「ぅっ......」
京極庵は苦しそうにしている。早くしなければ死んでしまう......!
「天光琳様、落ち着いてくれ」
「落ち着けるか......!まずは離してよ!」
「分かったよ」
悪神はそう言って、京極庵を投げ飛ばした。
京極庵は岩にぶつかり、口から大量の血を吐き出して倒れ込んだ。
「ゲホ......ゲホ......」
「庵くん!!」
天光琳は急いで駆け寄った。
京極庵は意識はあるようだが、体は動かなかった。
首に鋭い痛みがはしる......首の骨を折ってしまったのだ。
体が麻痺してしまい、思うように動かせない。
「俺の......ことはいい.........」
「よくないよ!」
「なんでそんなに心配してるんだ?」
「っ!?」
天光琳の後ろには悪神がいた。
悪神は天光琳の片手に手を置き、耳元でゆっくりと話した。
「他神に興味無いんじゃなかったのか?」
「なんで......」
なぜ知っているのだろうか。あそこには天俊熙しかいなかったはずだ。
まさか......あの時いたのか。
「ずっと天光琳様のそばに居たけどね。やっとこの時が来たよ」
「っ!」
天光琳は悪神を払い除けた。
その勢いで悪神は転んでしまった。
「お前は何者だ!!」
「あぁ......まだ言ってなかったな」
悪神は立ち直し、ニヤリと怪しい笑をみせた。
するとサッと冷たい風が吹いた。
「俺の名は鬼神 落暗」
「鬼神っ!?」
やはりこの悪神は鬼神だった。
本当に存在するとは。
「天界になんの用だ......」
「天光琳様を助けに来たんだ」
「助けに来た......?」
天光琳は息を飲んだ。
助けに来たとはどう言うことだろうか。
別に助けて欲しいなんて思っていない。それに鬼神と関わりもない。
......強いて言うなら神の力が使えないことだが......。
それは鬼神と関係ない話だ。
しかしこの者は助けに来たと言っている。
......もしかしたら.........。
「光琳......コイツの話は聞くな」
京極庵にそう言われ、はっと我に返った。
そうだ。相手は鬼神だ。
説話によると鬼神は恐ろしい存在なのだ。
この鬼神はどうなのだろう。
しかし既に神を殺している。良い神ではないだろう。
天光琳は再び鬼神落暗に斬りかかる。
鬼神落暗は天光琳に攻撃はせず、避けるばかりだ。
「助けに来たのに......酷いなぁ」
「お前の助けなんていらない!」
天光琳は必死に攻撃する。
しかしいくら攻撃しても、避けられてしまう。玉桜山の時と同じだ。
(どうして......!!)
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