鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

文字の大きさ
96 / 184
ー光ー 第七章 焦る仲間

第九十五話 あの話

しおりを挟む
「て......天宇軒...様......」

「.........」


 天宇軒は千秋の父親の首を絞めているため、千秋の父親は苦しそうにしている。

 天宇軒は威嚇しているライオンのような恐ろしい顔をしている。


「...く......苦し......」

「何故"光琳をいじめた"。言え!」


 天宇軒は更に力を強めた。


「天宇軒様!!」

「苦しそうですよ!!」


 他の護衛神二神は次は自分の番ではないかと一歩下がりながら叫んだ。
 しかし天宇軒は聞かなかった。


「言え!!何故いじめた、何故怪我をさせたっ!?」

「...ゆ......宇軒様!!いけません、このままでは死んでしまいます!」


 波浪が焦ってそう言うと、天宇軒はゆっくりと手を離した。


「......ゲホッ......ゲホッ......」

「......お前はクビだ。明日から城へ来るな。光琳に近づくな。将来の王を傷つけた...ということは本来ならもっと重い罰を受けることになる。これぐらいですんだのだから有難く思え。次はないぞ」


「は......はい......」


 千秋の父親は走って逃げていった。他の二神もついて行こうとした。


「お前たちは何故助けなかった?見ていたのだろう?」


 天宇軒が睨みながらそう言うと、二神は口から心臓が飛び出そうなほど驚いた。


「そ......それは......」

「すいません......」


「お前たちも明日から来なくて良い」


 二神は青ざめながら一礼し、走って逃げていった。
 明日からこの三神の姿は見えないだろう。


「......はぁ...」

「宇軒様......」


 波浪は心配そうに天宇軒の側まで来た。
 天宇軒はすごく疲れている様子だ。


「......今日ぐらい休んでください......。私にはもう限界に近いように見えます......また倒れてしまったら......」

「いや。大丈夫だ......」


 天宇軒は目を閉じ、眉間を押さえた。
 寝不足のようだ。


「しかし......また倒れてしまったら...逆効果ですよ!......光琳様にとって一番良いのは......」

「時間が......時間が無いのだ......」


 天宇軒は暗い顔でそう言った。
 何をそんなに焦っているのだろうか。
 天宇軒は椅子に座った。

 いつものように姿勢を正しているのではなく、背もたれにもたれ、上を向いた。


「......はぁ...」


 ため息ばかりだ。疲れが取れていない。
 このままでは危ない。


「......父上...?」

「...麗華...!?」


 天宇軒は天麗華の声が聞こえ、姿勢を正した。


「あ、良いのですよ......そのままでも......。家族でしょう?......それに...すごく疲れているように見えますよ」

「......何の用だ?」


 天宇軒はそのまま姿勢を正したまま天麗華に聞いた。

 天麗華は天光琳のことを全て話した。
 話終わると天宇軒は下を向き、また一つため息をついた。
 そして、顔を上げ、真剣な顔をした。


「麗華。話したいことがある。......波浪、外で見張っててくれないか。あの話をする」

「......あの話をするのですね......。はい。分かりました」


 あの話とはなんだろう......。天麗華はそう思いながらいつも天万姫が座っている椅子に座った。
 波浪が外に出ると、天宇軒は話し始めた。


「俺には......」



 ✿❀✿❀✿



 天光琳と天俊熙は部屋に戻ってきた。
 天光琳は本を読んでいる。
 天俊熙は椅子に座り、外の様子を眺めている。


「...なぁ、光琳」

「なに...?」


 天光琳は本をめくりながら、返事をした。


「お前は......この世界のこと、どう思ってる?」

「この世界......?」


 そうだ、と天俊熙は頷きながら言った。
 突然天俊熙にしては珍しい質問で、天光琳は真剣に考えた。


「良い世界だと思うよ」

「ほんとに?」


 天光琳は何故こんな質問をしてくるんだろう......と首を傾げた。
 開いていた本も閉じた。


「この世界を............滅ぼしたい...とか、変えたいとか......そういうことは...?」

「そ...そんなの嫌だ......全然思ってないよ!」


 天光琳がそう言うと、天俊熙はニコッと微笑んだ。


「だよな、良かった」

「......?なんで急に......?」


 天光琳はそう言ったが、天俊熙は首を横に振って、『なんでもない、聞いてみただけ』と言ってまた窓の外を眺めた。

 しかしその様子はとても不安そうな顔だった。
 先程微笑んでいたのが嘘のように......。


 不思議に思いながら天光琳は本を開いた。


  「......あっ」

「...ん?どうした?」


 天光琳はあることを思い出した。


「あ、いや、なんでもない!!」

「......?」


 (やばい......やばい......)

 扇を壊してしまったこと、忘れていた!
 天光琳は白い布に包んでおいた折れた扇を取り出した。




しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

処理中です...