鬼使神差〜無能神様が世界を変える物語〜

天楪鶴

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ー光ー 第七章 焦る仲間

第九十八話 隠し事

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「なぜだ......なぜ変わらないっ!!」


 天俊熙は頭をくしゃくしゃとかき、頭を抱えていた。そしてその表情は暗くあの天俊熙だとは思えないほど険しい顔をしていた。


「......じゅん......しー......?」

「!?お...お前......いつの間に......!?」


 天俊熙は驚き、勢いよく立ち上がった。


「どうしたの......?」

「え?あっ......な、なんでもない」


 天光琳はあんな天俊熙の顔を見たことがなかったため心配になり聞いてみたが、天俊熙は目を横にそらし、しまった......と後悔しているような表情になった。


「なんでもないわけないでしょ......?俊熙がそんなに悩んでるところ、初めて見たよ......」

「......」


 天光琳がそう言うと、天俊熙は下を向き、何も言わなかった。
 様子がおかしい。


「ねぇ......本当にどうしたの?」
「......俺......さ.........」


 天俊熙は言いかけだが、眉間に皺を寄せ、また何も言わなくなり首を横に振った。


「やっぱりなんでもない」

「なんで......?」


 しかし天俊熙は何も言わない。
 表情的に良くないことなのはよく分かる。だが天光琳はますます気になってきた。


「相談なら乗るよ...?ほら、俊熙も言ってたでしょ?」

「うんん、いいんだ、大丈夫」


 天俊熙は苦笑いしながら言った。
 しかし手が震えている。
 そしてどこか焦っているような感じがした。




 ✿❀✿❀✿



 数日後。

 天光琳は修行と稽古をしに行くため、朝食を食べて直ぐに準備をした。

 そして天俊熙も準備をしている。
 どうやら天俊熙も一緒に行くそうだ。

 すると、扉をノック音が聞こえた。


「俊熙、いる?」


 天麗華だ。
「はい、います」と天俊熙はいい、扉を開けた。

 そして扉を開けたまま、天俊熙は天麗華と小さな声で会話をしている。
 天光琳は離れたところでその様子を見つめた。
 天麗華と天俊熙の顔には笑顔がなく、とても真剣な顔で話している。


 (最近......よく一緒にいるけど......何かあるのかな)


 二神は昨日も一昨日も、このように話していた。
 なぜ自分には教えてくれないのだろう。
 聞かれたらまずいことなのだろうか。

 ......それとも悪口か?
 いいや、そんなはずは無い。
 二神は天光琳のことをよく知っていて、守ってくれる良い神だ。


「悪い、光琳。修行に行きたかったんだけど、大事な話があるから、行けなくなった......」

「ごめんなさい、急に......。天桜山まで一緒に行くわ」


 二神は申し訳なさそうに言った。
 天光琳は「大事な話って何?」と聞こうとしたが、何故か急に怖くなって言えなくなった。
 二神を信用しているはずなのに......悪口だったらどうしようと怖くなってしまう。


「うんん、大丈夫だよ。それに僕一神で行けるし......」


 天光琳はそう言ったが、二神は一緒に行くと言い張った。
 そして今考えてみれば、最近一神でいることが少なくなった。
 鬼神を倒したというのに......鬼神がいた時と同じぐらい二神がよくそばに居てくれる。
 特に天麗華がいてくれることが以前よりも増えた。
 嬉しいのだが、天光琳には不思議でしか無かった。

 天光琳は二神と一緒に天桜山へ向かった。


 (最近よく真剣に何か話している二神......よく一緒にいてくれる姉上......俊熙の険しい顔あの表情......そしてこのどこか焦っている感じと心配そうな表情......どうしたんだろ......)


 天光琳は真剣に考えながら歩いた。
 全く分からない。自分は何かした訳でもない。

 天俊熙は未だにもう一つの能力を教えてくれないし、最近天俊熙についてよく分からなくなってきた。

 能力の今回の件は繋がっているのだろうか。


 考えているうちに天桜山へ到着した。
 しかし到着しても、二神は離れなかった。
 草沐阳と会うまで帰らない......と。
 また一つ、モヤモヤが増えた。




 草沐阳は小屋の前の椅子に座っていた。
 天光琳が草沐阳の側まで行くと、二神は手を振って帰って行った。
 天光琳は不思議そうに二神を眺めた。


「どうした?何か困り事か?」

「老師......」


 天光琳の様子を見て、気になった草沐阳は聞いた。


「僕の思い込みかもしれませんが......姉上と俊熙......最近、僕に隠し事をしているような感じがするんです」

「隠し事......?」


 草沐阳は聞き返した。


「はい。......聞いても...話してくれないんです。僕に聞かれたら嫌なことなのかなって、悪口なのかなって......思っちゃって......」


 天光琳は下を向きながら言った。すると草沐阳は天光琳の背中を優しくさすった。


「あの二神が光琳の悪口を言うと思うか?」


 天光琳は少し間をとってから首を横に振った。
 信じたい。二神は悪口を言っていない......と。


「大丈夫だ。心配することは無い。きっと最近元気がない光琳を心配に思っているのだろう。俺にはそのように見えたが......?」


 草沐阳がそう言うと、天光琳は顔を上げた。


「そう......かな......。......僕、元気なんだけどなぁ」


 天光琳は空を見上げた。
 空は雲でおおわれ、薄暗かった。
 もうすぐ雨が降りそうだ。
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