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ー悪ー 第一章 アタラヨ鬼神
第二十一話 師匠
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「んん~~楽しかったぁ~~!」
祭りが終わり、城に戻ってきた鬼神王とメリーナ。シュヴェルツェは用があるから先に帰って良いと言ってどこかへ行ってしまった。
もうすっかり日が暮れている。
「ふぇぇ」
「お疲れ様でした」
鬼神王は空気が抜けた風船のようにぐったりとソファに座った。今日は本当に楽しめた。今までで一番良い一日になった。しかし今までで一番疲れた。
「ルーシェさん強かったなぁ」
「......気になったんですけど......何故鬼神王様はししょーに敬語を使っていたのですか?」
鬼神王はそう言われ、瞬きを二回した。確かにそうだ。言われなければ気づいていなかっただろう。王である鬼神王がこの国で一番偉いのだ。それだと言うのに鬼神王はルーシェに敬語を使っていた。ルーシェは鬼神王に対してタメ口で話したり、呼び捨てをしていた。かなり失礼だ。罰を与えられても文句は言えないぐらいだ。
「僕より強そうだったし、僕よりもしっかりしてそうだったからかな。無意識なんだよね」
「でも鬼神王様の方が強いですし、かっこよかったです!」
メリーナは拍手をしながらいった。
「そういえば、メリーナはルーシェさんとどんな関係なの?」
ずっと気になっていた。師匠と弟子の関係なのは知っているが、今は違うように見える。目覚めてから今日、初めてメリーナとルーシェが一緒にいるところを見たため、今は距離を置いているのかもしれない。
「えーっとですねぇ」
メリーナは人差し指を顎に当て、視線を上に向けた。
「"ししょー"って呼んでますけど、今は師匠では無いのです」
やはりそうか。『ししょー』と変わらず呼んでいるのは慣れだろう。
「嫌じゃなければ、詳しく教えて欲しいな」
鬼神王がそう言うと、メリーナは全然嫌では無いと、笑顔で返事をした。
そのまま立ちながら話し始めようとしていたため、鬼神王は隣のソファに座らせた。
メリーナはソファに座ると、ゆっくりと話し始めた。
「私が......目覚めたばかりの時。私は誰かを守れるような鬼神になりたくて、毎日修行をしていたのです。けれど修行と言っても何をやれば良いのか分からなくて、途中で挫折しちゃいまして......けれどある日、一神の強い鬼神を見つけたのです。力比べでは毎回勝っていて、皆から最強と呼ばれている鬼神......それがししょーでした。私はししょーを初めて見たその日に、ししょーに『弟子にしてください』って頼み込んだんです。......即断られました」
メリーナは苦笑いした。ルーシェなら断りそうだ。ルーシェは他神と関わるのは好きではないように見える。『いやだ』の三文字で断っている姿が浮かぶ。
「けれど、私は諦めきれず、毎日毎日頼みました。それでも断る......というか、見向きもしてくれなくなってしまったので、勝手に後を着いていき、ししょーの戦い方を観察してました。......まぁ...バレましたよね......。それで諦めたのか、ししょーは『優しく指導するつもりはない』って言って、私はししょーの弟子になることが出来たのです!」
メリーナはかなり苦労したようだ。......いや、苦労したのはルーシェの方かもしれない。
しかしここまで苦労したというのに何故今は距離を置いているのだろうか。喧嘩したようには見えない。鬼神王はそれを聞こうと口を開いたが、ちょうどメリーナが話し始めたため、口を閉じた。
「けれど......戦うことは私に向いていなかったのです。いくら指導してもらっても成長しませんし、いくら修行をしても強くなれませんでした。また、ししょーと戦うと毎回たったの三秒で負けてしまいます。私は誰かを守ることが出来ないのかな......って諦めていました。けれどそんな私に、ヴェルさんが声をかけてくれたのです。『鬼神王様に仕えるつもりは無いか』......と。何故私に声をかけたのかは分かりません。けれど、私はその時、『誰かを守れるような鬼神』じゃなくても『誰かの役に立つ鬼神』になれるならそれでもいいかもしれないって思いました。なので、その日、ししょーに事情を話して、私はししょーの弟子を辞めました」
あんなに苦労したというのに簡単に辞めてしまうとは。けれど辞めたおかげで今隣にメリーナがいる。今。メリーナがやりたいことが出来るなら、それで良いのかもしれない。
「ルーシェさんは怒らなかったの?」
「はい。好きにしろって言ってました」
メリーナは笑顔で言った。『好きにしろ』この言葉にはどのような言葉が込められているのだろう。適当に言ったのかもしれない。けれど、ルーシェの性格からして、何か意味がありそうだ。......とはいえ、今日初めて会ったのだ。ルーシェのことはまだよく知らない。
すると扉をノックする音が聞こえた。
「鬼神王様。お風呂の準備が出来ております」
「はーい」
側近のある男鬼神の声だ。
早く、戦って疲れた体を癒したかった。また緊張で汗をかいたため、早く洗い流したい。
「さて、疲れましたよね。ゆっくり温まってきてくださいね!」
「うん!」
入浴の際はメリーナではなく三神の男鬼神が担当してくれる。髪を洗ってくれたりマッサージをしてくれたり、とても贅沢な時間を過ごすことが出来る。最初は一神で入れると断っていたのだが、男鬼神たちは鬼神王様のためになにかやりたいといつも言っていたため、諦め断るのを辞めた。
鬼神王はメリーナと一旦わかれ、風呂へ向かった。
祭りが終わり、城に戻ってきた鬼神王とメリーナ。シュヴェルツェは用があるから先に帰って良いと言ってどこかへ行ってしまった。
もうすっかり日が暮れている。
「ふぇぇ」
「お疲れ様でした」
鬼神王は空気が抜けた風船のようにぐったりとソファに座った。今日は本当に楽しめた。今までで一番良い一日になった。しかし今までで一番疲れた。
「ルーシェさん強かったなぁ」
「......気になったんですけど......何故鬼神王様はししょーに敬語を使っていたのですか?」
鬼神王はそう言われ、瞬きを二回した。確かにそうだ。言われなければ気づいていなかっただろう。王である鬼神王がこの国で一番偉いのだ。それだと言うのに鬼神王はルーシェに敬語を使っていた。ルーシェは鬼神王に対してタメ口で話したり、呼び捨てをしていた。かなり失礼だ。罰を与えられても文句は言えないぐらいだ。
「僕より強そうだったし、僕よりもしっかりしてそうだったからかな。無意識なんだよね」
「でも鬼神王様の方が強いですし、かっこよかったです!」
メリーナは拍手をしながらいった。
「そういえば、メリーナはルーシェさんとどんな関係なの?」
ずっと気になっていた。師匠と弟子の関係なのは知っているが、今は違うように見える。目覚めてから今日、初めてメリーナとルーシェが一緒にいるところを見たため、今は距離を置いているのかもしれない。
「えーっとですねぇ」
メリーナは人差し指を顎に当て、視線を上に向けた。
「"ししょー"って呼んでますけど、今は師匠では無いのです」
やはりそうか。『ししょー』と変わらず呼んでいるのは慣れだろう。
「嫌じゃなければ、詳しく教えて欲しいな」
鬼神王がそう言うと、メリーナは全然嫌では無いと、笑顔で返事をした。
そのまま立ちながら話し始めようとしていたため、鬼神王は隣のソファに座らせた。
メリーナはソファに座ると、ゆっくりと話し始めた。
「私が......目覚めたばかりの時。私は誰かを守れるような鬼神になりたくて、毎日修行をしていたのです。けれど修行と言っても何をやれば良いのか分からなくて、途中で挫折しちゃいまして......けれどある日、一神の強い鬼神を見つけたのです。力比べでは毎回勝っていて、皆から最強と呼ばれている鬼神......それがししょーでした。私はししょーを初めて見たその日に、ししょーに『弟子にしてください』って頼み込んだんです。......即断られました」
メリーナは苦笑いした。ルーシェなら断りそうだ。ルーシェは他神と関わるのは好きではないように見える。『いやだ』の三文字で断っている姿が浮かぶ。
「けれど、私は諦めきれず、毎日毎日頼みました。それでも断る......というか、見向きもしてくれなくなってしまったので、勝手に後を着いていき、ししょーの戦い方を観察してました。......まぁ...バレましたよね......。それで諦めたのか、ししょーは『優しく指導するつもりはない』って言って、私はししょーの弟子になることが出来たのです!」
メリーナはかなり苦労したようだ。......いや、苦労したのはルーシェの方かもしれない。
しかしここまで苦労したというのに何故今は距離を置いているのだろうか。喧嘩したようには見えない。鬼神王はそれを聞こうと口を開いたが、ちょうどメリーナが話し始めたため、口を閉じた。
「けれど......戦うことは私に向いていなかったのです。いくら指導してもらっても成長しませんし、いくら修行をしても強くなれませんでした。また、ししょーと戦うと毎回たったの三秒で負けてしまいます。私は誰かを守ることが出来ないのかな......って諦めていました。けれどそんな私に、ヴェルさんが声をかけてくれたのです。『鬼神王様に仕えるつもりは無いか』......と。何故私に声をかけたのかは分かりません。けれど、私はその時、『誰かを守れるような鬼神』じゃなくても『誰かの役に立つ鬼神』になれるならそれでもいいかもしれないって思いました。なので、その日、ししょーに事情を話して、私はししょーの弟子を辞めました」
あんなに苦労したというのに簡単に辞めてしまうとは。けれど辞めたおかげで今隣にメリーナがいる。今。メリーナがやりたいことが出来るなら、それで良いのかもしれない。
「ルーシェさんは怒らなかったの?」
「はい。好きにしろって言ってました」
メリーナは笑顔で言った。『好きにしろ』この言葉にはどのような言葉が込められているのだろう。適当に言ったのかもしれない。けれど、ルーシェの性格からして、何か意味がありそうだ。......とはいえ、今日初めて会ったのだ。ルーシェのことはまだよく知らない。
すると扉をノックする音が聞こえた。
「鬼神王様。お風呂の準備が出来ております」
「はーい」
側近のある男鬼神の声だ。
早く、戦って疲れた体を癒したかった。また緊張で汗をかいたため、早く洗い流したい。
「さて、疲れましたよね。ゆっくり温まってきてくださいね!」
「うん!」
入浴の際はメリーナではなく三神の男鬼神が担当してくれる。髪を洗ってくれたりマッサージをしてくれたり、とても贅沢な時間を過ごすことが出来る。最初は一神で入れると断っていたのだが、男鬼神たちは鬼神王様のためになにかやりたいといつも言っていたため、諦め断るのを辞めた。
鬼神王はメリーナと一旦わかれ、風呂へ向かった。
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