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第一話 音で知る、あなた
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最初に聞こえたのは、足音だった。
廊下に響く規則正しい靴音。
重すぎず、軽すぎず――迷いのない歩き方。
(……騎士の方ね)
リリア・フォン・エルヴェインは、窓辺の椅子に腰掛けたまま、そっと背筋を伸ばした。
目の前に広がる景色は、いつも通り闇のままだ。それでも、彼女の世界は静かな情報で満ちている。
空気が、少しだけ張り詰めた。
扉が開く音。
父の低い声に続いて、聞き慣れない男の声がした。
「本日より護衛を務めさせていただきます。レオンハルトと申します」
簡潔で、感情の起伏がほとんどない声。
けれど――その奥に、ほんのわずかな緊張が混じっている。
リリアは微笑んだ。
「初めまして。リリアです。……足音、とても綺麗ですね」
一瞬、空気が止まった。
「……そう、でしょうか」
少しだけ、声の調子が変わった。
驚いた時の、わずかな呼吸の乱れ。
(やっぱり)
彼は、自分が見られていないと思っている。
だからこそ、心まで無防備なのだ。
「はい。迷いがありません。きっと、剣を振るう時も同じなのでしょうね」
沈黙。
そして、かすかな衣擦れの音。
「……令嬢は、目が……」
「ええ。見えません」
はっきりと答えると、彼の気配がわずかに揺れた。
戸惑い。躊躇。
そして――優しさ。
「ですが」
リリアは、そっと立ち上がる。
「見えない分、わかることもあります」
数歩近づくと、彼の魔力の輪郭がはっきりと伝わってきた。
堅く、真っ直ぐで、少しだけ不器用。
リリアは、自然に手を差し出した。
「これから、よろしくお願いしますね。レオンハルト様」
ほんの一瞬、ためらい。
それから、温かく大きな手が、彼女の手を包んだ。
「……はい。必ず、お守りします」
低い声が、すぐ近くで響く。
その音に、リリアの胸が小さく高鳴った。
(ああ……この方は)
きっと、とても優しい人だ。
――こうして、
視線を交わさない二人の恋は、
静かに、始まりを告げた。
廊下に響く規則正しい靴音。
重すぎず、軽すぎず――迷いのない歩き方。
(……騎士の方ね)
リリア・フォン・エルヴェインは、窓辺の椅子に腰掛けたまま、そっと背筋を伸ばした。
目の前に広がる景色は、いつも通り闇のままだ。それでも、彼女の世界は静かな情報で満ちている。
空気が、少しだけ張り詰めた。
扉が開く音。
父の低い声に続いて、聞き慣れない男の声がした。
「本日より護衛を務めさせていただきます。レオンハルトと申します」
簡潔で、感情の起伏がほとんどない声。
けれど――その奥に、ほんのわずかな緊張が混じっている。
リリアは微笑んだ。
「初めまして。リリアです。……足音、とても綺麗ですね」
一瞬、空気が止まった。
「……そう、でしょうか」
少しだけ、声の調子が変わった。
驚いた時の、わずかな呼吸の乱れ。
(やっぱり)
彼は、自分が見られていないと思っている。
だからこそ、心まで無防備なのだ。
「はい。迷いがありません。きっと、剣を振るう時も同じなのでしょうね」
沈黙。
そして、かすかな衣擦れの音。
「……令嬢は、目が……」
「ええ。見えません」
はっきりと答えると、彼の気配がわずかに揺れた。
戸惑い。躊躇。
そして――優しさ。
「ですが」
リリアは、そっと立ち上がる。
「見えない分、わかることもあります」
数歩近づくと、彼の魔力の輪郭がはっきりと伝わってきた。
堅く、真っ直ぐで、少しだけ不器用。
リリアは、自然に手を差し出した。
「これから、よろしくお願いしますね。レオンハルト様」
ほんの一瞬、ためらい。
それから、温かく大きな手が、彼女の手を包んだ。
「……はい。必ず、お守りします」
低い声が、すぐ近くで響く。
その音に、リリアの胸が小さく高鳴った。
(ああ……この方は)
きっと、とても優しい人だ。
――こうして、
視線を交わさない二人の恋は、
静かに、始まりを告げた。
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