【完結】母が終わらせた物語、娘が選んだ人生

あめとおと

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 母の過去を知ってから、私は考えるようになった。

 もし、奇跡が私に宿っていたら。
 もし、誰かに期待される力を持っていたら。

 ――私は、どうしていただろう。

「祈りなさい」

 そう言われた未来が、ふと頭をよぎる。

 でも私は、首を振った。

 私は、母の背中を見てきた。
 奇跡を失って、ようやく眠れるようになった夜を。
 誰にも縋られず、誰にも裁かれない朝を。

 それが、どれほど尊いかを。

 畑に出る。
 土に触れる。
 芽吹いた葉を、指でなぞる。

 これは、私が選んだ仕事だ。
 誰かに与えられた役割じゃない。

「ねえ、町に残らない?」

 彼がそう言ったとき、私は迷わなかった。

「ううん。ここで、生きる」

 静かで、派手じゃなくて、
 でも――自分の足で立てる場所。

 母は、何も言わなかった。
 ただ、少しだけ目を細めて、頷いた。

 その仕草が、祝福だった。

 私は、奇跡を起こさない。
 世界を救わない。
 誰かの物語の中心にもならない。

 それでも。

 私は、私の人生を選んだ。

 母の物語は、ここで終わった。
 でも私の物語は――

 誰にも奪われず、
 誰にも決められず、
 ここから、続いていく。
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