6 / 23
第一章
005 いじめっ子カップルはリア充ではないらしい
しおりを挟む
豪奢な謁見の間。会長の言葉に戸惑いを覚えつつも「ウォッホン」と再度偉そうな咳ばらいをかます、少しかわいそうな国王。
だが、俺はそんな国王に多少のシンパシーを覚えていた。
『国王』と『生徒会長』
仮にも一国の『王』とただ無数に存在する一高校の生徒のトップでしかない『生徒会長』
なのに、明らかにそのカリスマ性は天ヶ崎会長の方が上。その人間としての『個』というものが非常に大きく関わっていることは否定できない。
話が本当ならここは異世界ということ。日本程に発展しているはずがない――という自負が日本人の俺の中に確固としてある。
ということならば、魑魅魍魎が暗躍する日本の高校のトップというのは、かくも高いカリスマ性を有する必要があるという事なのか。
考えても分からないか、と思い俺は小さく首を振った時、会長が俺の肩をつついてきた。
優し気な微笑みの奥に俺の考えている事が読まれていたんじゃないかと思い、俺の心臓を強く揺れた。
「何かおかしなこと考えてません?」
会長の内包するカリスマ力におののきつつ「い、いえ、会長今日もお綺麗ですね」と言って笑おうとしたら、うまく笑えず変な顔になってしまう。
「ふふ。何ですかその顔、その言葉? ま、誤魔化されてあげますよー」と言って俺とは違う完璧な微笑みを浮かべると、国王に顔を向け「申し訳ありません」と口にした。
瞬間、
「おぅふっ!」
もう、何度目になるか分からない莉緒の肘鉄が飛んできて、進藤に理由は不明だが一睨みされる。
俺の心は訴えている。俺の身体はサンドバッグではないと――
しかし、大分威力が抑えられていたが、殴られた理由は分からない。
すまし顔で前を向く莉緒をじろりと一瞥してから、俺も顔を前に向ける。
「そろそろ話を進めさせてもらっても良いだろうか?。
ここ、リンガルテムスは魔族の領域に囲まれた国であってな、四人の魔王達は東西南北に拠点を造り儂らの事を監視しておるのだ」
そう言うと国王は俺たちの事を見回した。今度は睨め付けるような視線ではない。おそらく、会長が何か言ってくるんじゃないかと恐れをなしているのだろう。
――分かります。
それを悟られないようにか、会長にはなるべく視線を向けないようにしているということも、手に取るように分かります。
ああ、何て憐れな一国の王様。そんなことにこの会長が気付かないはずはないというのに。
国王は俺たちが何も言わないので少し調子を取り戻したのか、少し顔色を良くし言葉を続けた。ピエロ!
「それで、そなた達八人の勇者を召喚させてもらったのだ。こちらの都合で誠に申し訳ないとは思うのだが――」
の言葉に、江原が怒鳴り声を被せる。
「っざけんな! 何が召喚させてもらっただ。頭沸いてんじゃねぇのか? 王とか王女とか知らねーけどよぉ! さっさと元の場所に帰せっての!」
その言葉に会長はどう反応するのかと俺は恐る恐る見ていたが、値踏みするかのように妖笑を浮かべているだけだった。
おそらく江原を泳がせて、王様がどう反応するのか観察しているんだろう。小悪魔!
だが、意外にも言葉を発したのは国王ではなく、その脇に控えていたお偉いさんの中の一人であった。
一歩前に出ると国王と、今は笑っていない王女に目を向けてから江原に向かって指を突きつける。
「おい、お前! 勇者だからといって国王に対するその言動は流石に口が過ぎるぞ!」
「はぁ!? んなことしらねーっつの! お前にとっては王だとしても、俺にとってはただの他人。髭ジジイでしかねぇんだよ!」
「貴様ッ……!!」
帽子をかぶってでも分かる頭の毛の薄いおっさんが、顔から火が出そうなほど顔を赤くし大きな体をブルンブルンと震わせると共に、兵士達がガチンと持っていた槍の柄で地を叩く。
あまりの恐怖に俺は思わず喉を鳴らし、江原はやはり強気な奴で、会長はただその上をいく存在なんだと示された気がした。
王様はそのお偉いさんを制するように手で遮る。
「大臣! 良いのだ。お主の気持ちは分かるがな。勇者殿の気持ちも儂には分かる。突然知らない世界に呼ばれたら、儂だって納得できないという事は想像するに難くない」
王様の予想外の常識人加減に驚いたが、胸をなでおろす暇もなく江原が顔を大きく歪め食って掛かった。
「だから、早く元の場所に戻せっつってんだろ!」
今にも飛び掛かりそうな顔つきと言動。だが、それとは裏腹に、今度は若干足が震えている。槍持った兵士が待機してたら当然だろうが、中々に勇敢だとも思う。
けれど、国王はそんな江原に嘲笑を浮かべたり侮蔑の視線を向けたりすることもなく、ただ一度大きく首を振った。
「すまないが、それは出来ん。戻さない、という事ではない。戻せない、不可能なのだ。この召喚は呼ぶだけの代物、本当に申し訳ないと思うのだが……」
「はぁぁ!? っざけんな! な――」
と言いかける江原を、今度こそ会長がピシャリと手で完全に止める。まるでライオンの前の子犬のよう。
しかし、それよりもなによりも、王様がもう戻れないと言ったことによる絶望感で俺の心は満ちていく
「国王様、大丈夫です。その答えは想定の範囲内ですので。
むしろ、魔王を倒せば元の世界に帰れる。などと整合性の取れてない言葉を口にしたのであれば、あなたの信用は地に落ちていたことでしょう」
超絶上から目線に、もうそれが会長にとっての当たり前なのだと思いつつ、全然想定の範囲内ではない事を口にしたかった。
「あ、うむ、そういったことはない。はっきり言われると、何とも複雑な気持ちになるが……」と言う国王を尻目に、ギャルが江原に声を掛ける。
「家族に会えないのは悲しいけど、正樹には私がいるから。ねっ?」
「あ、ああ。そうだな。俺には美々がいればそれでいいか」
二人の会話を聞き俺の心に黒い感情が渦巻く。
とするなら、さっき江原が足を震わせながらも王様や大臣に突っかかったのは、もしかしてギャルのためなのか?
だとするならば江原は意外と男気のあるやつといえるかもしれない。
と思ったが、それはそれとして、
これこそリア充爆発しろ!じゃないのか?と、会長に目を向けたが、無表情で見つめているだけだった。
そう、ただただ無の境地で。
『?』を浮かべながら、俺は会長の肩をちょいちょいとつつき顔を寄せる。
「あの、会長。さっきのやらないんですか……? リア充爆発しろって……」
俺の言葉に驚いたような表情をしてからクスクスと笑い出す。
「ふふ。何を言ってるんですか? あれはリア充ではありません。
あれはゴキブリの求愛に等しいもの。嫌悪感を抱くことさえすれ、妬ましい気持ちなど清浄程にも湧くはずがないじゃないですかー。洗浄したいとは思いますがね」
――どんだけー。
会長は俺に「清浄とは小さい物の単位ですよー」と言ってきたが、正直意味は何となく分かったのでどうでも良かった。
さっき社会の屑でも人間です、と言っていたのに、本心はゴキブリ扱いしていたんだと思いながら。
その言葉を聞いた今、江原たちに目を向けても、もう『リア充爆発しろ』という気持ちは微塵も湧いてこない。
だからと言って二人がゴキブリが見えるという事はない。
ギャルは結構可愛いと思うし、日焼けした太腿もムッチリと色気があるもんな、と思った瞬間、
「おごぉっ!」
莉緒の地獄突きが喉元に炸裂し、一瞬息が止まり俺は膝から砕け落ちる。
一体なんなんだよ、と顔を上げると莉緒が何故か手を差し出してくれていた。
ツンデレさんなんだろうか、と俺がその手を握ると、物凄い勢いでグインと引っ張り上げられる。
顔を背けて「ご、ごめんなさい、やり過ぎたわ」と言うのが、何だか可笑しくて、可愛くて俺の心はほっこりした。
けれど、莉緒とは今日が初対面。
隠れ幼馴染なわけでも、実は許嫁なんかってことは――多分ない。少なくとも俺に心当たりはない。
俺は知っている。
女ってのは男に期待だけさせて、それをあっさり裏切る生物だという事を。
そう、好きと言えば、それはほぼほぼ『Love』ではなく『Like』なのだという事を。
心を開くな俺。騙されるな俺。気を許すな俺。
現状、ただの無人島効果。付かず離れず、それがベスト・オブ・ベスト!
でも莉緒の容姿ははっきり言って直球ど真ん中――ドストライクであるし、少しは夢を見たいとは感じる。
そこで新垣と高嶋のリア充カップルに目を向ける。
会長の言葉通りに取るとすれば、はあの二人は妬ましいと思ったということ。
仲良く手を繋ぎ二人だけの世界を作り、王様に顔を向けているあの二人こそ、やはり本物のリア充なんだなと納得した。
そのまま江原たちに目を向けると、
「うぷっ」
日焼けした体色のせいで、本当にゴキブリカップルを連想してしまい嗚咽を漏らす。
――会長のばかたれ!
と思った瞬間、会長が朗らかな顔をしながらも、明らかに瞳に怒りを浮かべ顔を向けてくる。
「ひょうすけく~ん?」
「うわぁ!? な、何ですか、会長? そ、それより早く話を進めませんか? じゃないと、いつまで経っても先に進みません。王様も困惑してますし、なっ進藤?」
「え、ええ? 何で急に僕に……。でも、確かに藤堂君の言うとおりだと思います」
との進藤の言葉に会長は俺にジト目を向けてきたが「ま、歩君に免じて許してあげますよー」と言って王様に体を向けた。
俺は進藤に向け親指を立ててみせ「兵輔でいいぞ」と言うと、同じように親指を立て「じゃあ、僕は歩で」と返してくれる。
歩がいじめられてたとは思えないほどにノリが良い奴だと感じ、気が合うかもしれないと思いつつ、会長の背中に目を向けていることに不安を覚える。
勿論、会長に対し悪感情を抱いたなどバレたら堪らないので、必死に隠していると、会長が王様に向け小さく頭を下げた。
「本当にすみませんね。
ええと、私達八人に四人の魔王を倒して欲しいというのは分かりました。しかし、各個撃破していくなら別に一人でも二人でもいいはずです。ということは……?」
「うむ。流石よの。その通りなのだ。
とはいえ、単純な話。各個撃破だと、そこを攻めようとすると三方からの挟み撃ちを食らってしまうのだ。なので、全方位同時に攻めよう……という魂胆でな」
今度は王様は会長にジッと目を向ける。不安に思ってその顔を見つめたというのが手に取るよう。
「その言い方ですと実際に試して失敗した経験があるという事ですね。
ちなみに、魔王を倒さなかったらどうなるのでしょうか?」
「失敗した回数は無数にある。そのため、我が国はもう戦力を攻勢に回すことが出来ん。それで心苦しいが勇者方を召喚させてもらった、ということなのだ……。
そして……、魔王を倒さなかったらこの国は滅びるであろうな。儂はそなたらの世界は知らん。けれど、強き者が弱き者から奪うのは自然の摂理。それはどこも同じなのではないか?」
それを聞き会長は腕を組み黙考していたが、王様に「ちょっと待ってもらえますか?」と言ってから、なぜか俺の方へと歩み寄ってくる。
微笑みを浮かべながらではなく真剣な表情で。
「ね。予習組じゃない兵輔君の意見を聞きたいのだけど。今の聞いてどう思いますか?」
「…………。そう……ですね。俺には魔王=悪というゲームの図式しか知りません。
けれど、現実に今の局面に相対して思うことは、結局どちらが奪う側になるか?って事なんじゃないかと思います。善悪の判断は俺には出来ませんから」
俺の言葉を聞いて嬉しそうな顔で会長は大きく頷き、莉緒と歩を呼び寄せると声のボリュームを落とした。
「ちなみに私も兵輔君と同意見。だけど……そうですね、この先は絶対に内緒、四人だけの秘密にしてね」
その言葉にに、俺、莉緒、歩が頷いたのを満足そうに見てから言葉を紡いだ。
「王様の言葉に乗ろうと思います。けど、それはあくまで作戦上。やっぱり自分の目で見て判断すべきだと思うの。けれど、優先すべきはまず自分の命。それだけは覚えといて下さい」
言ってから小さな円陣を解散させたが、俺は気になったので会長の耳元に口を寄せた。
「なぜ、あっちの四人は加えなかったんですか? 不安そうな表情を浮かべてますよ……?」
会長は俺の言葉に艶笑を浮かべると、ゾクリとする程色っぽい声色で囁きかけてきた。
「それはね………………私の好みよ」
小悪魔!と内心でツッコんでいると、会長は王様に体を向け小さく腰を折った。
「王様、度々申し訳御座いませんでした。同じ人間として勇者としての努めを果たさせて頂きたいと思います」
だが、俺はそんな国王に多少のシンパシーを覚えていた。
『国王』と『生徒会長』
仮にも一国の『王』とただ無数に存在する一高校の生徒のトップでしかない『生徒会長』
なのに、明らかにそのカリスマ性は天ヶ崎会長の方が上。その人間としての『個』というものが非常に大きく関わっていることは否定できない。
話が本当ならここは異世界ということ。日本程に発展しているはずがない――という自負が日本人の俺の中に確固としてある。
ということならば、魑魅魍魎が暗躍する日本の高校のトップというのは、かくも高いカリスマ性を有する必要があるという事なのか。
考えても分からないか、と思い俺は小さく首を振った時、会長が俺の肩をつついてきた。
優し気な微笑みの奥に俺の考えている事が読まれていたんじゃないかと思い、俺の心臓を強く揺れた。
「何かおかしなこと考えてません?」
会長の内包するカリスマ力におののきつつ「い、いえ、会長今日もお綺麗ですね」と言って笑おうとしたら、うまく笑えず変な顔になってしまう。
「ふふ。何ですかその顔、その言葉? ま、誤魔化されてあげますよー」と言って俺とは違う完璧な微笑みを浮かべると、国王に顔を向け「申し訳ありません」と口にした。
瞬間、
「おぅふっ!」
もう、何度目になるか分からない莉緒の肘鉄が飛んできて、進藤に理由は不明だが一睨みされる。
俺の心は訴えている。俺の身体はサンドバッグではないと――
しかし、大分威力が抑えられていたが、殴られた理由は分からない。
すまし顔で前を向く莉緒をじろりと一瞥してから、俺も顔を前に向ける。
「そろそろ話を進めさせてもらっても良いだろうか?。
ここ、リンガルテムスは魔族の領域に囲まれた国であってな、四人の魔王達は東西南北に拠点を造り儂らの事を監視しておるのだ」
そう言うと国王は俺たちの事を見回した。今度は睨め付けるような視線ではない。おそらく、会長が何か言ってくるんじゃないかと恐れをなしているのだろう。
――分かります。
それを悟られないようにか、会長にはなるべく視線を向けないようにしているということも、手に取るように分かります。
ああ、何て憐れな一国の王様。そんなことにこの会長が気付かないはずはないというのに。
国王は俺たちが何も言わないので少し調子を取り戻したのか、少し顔色を良くし言葉を続けた。ピエロ!
「それで、そなた達八人の勇者を召喚させてもらったのだ。こちらの都合で誠に申し訳ないとは思うのだが――」
の言葉に、江原が怒鳴り声を被せる。
「っざけんな! 何が召喚させてもらっただ。頭沸いてんじゃねぇのか? 王とか王女とか知らねーけどよぉ! さっさと元の場所に帰せっての!」
その言葉に会長はどう反応するのかと俺は恐る恐る見ていたが、値踏みするかのように妖笑を浮かべているだけだった。
おそらく江原を泳がせて、王様がどう反応するのか観察しているんだろう。小悪魔!
だが、意外にも言葉を発したのは国王ではなく、その脇に控えていたお偉いさんの中の一人であった。
一歩前に出ると国王と、今は笑っていない王女に目を向けてから江原に向かって指を突きつける。
「おい、お前! 勇者だからといって国王に対するその言動は流石に口が過ぎるぞ!」
「はぁ!? んなことしらねーっつの! お前にとっては王だとしても、俺にとってはただの他人。髭ジジイでしかねぇんだよ!」
「貴様ッ……!!」
帽子をかぶってでも分かる頭の毛の薄いおっさんが、顔から火が出そうなほど顔を赤くし大きな体をブルンブルンと震わせると共に、兵士達がガチンと持っていた槍の柄で地を叩く。
あまりの恐怖に俺は思わず喉を鳴らし、江原はやはり強気な奴で、会長はただその上をいく存在なんだと示された気がした。
王様はそのお偉いさんを制するように手で遮る。
「大臣! 良いのだ。お主の気持ちは分かるがな。勇者殿の気持ちも儂には分かる。突然知らない世界に呼ばれたら、儂だって納得できないという事は想像するに難くない」
王様の予想外の常識人加減に驚いたが、胸をなでおろす暇もなく江原が顔を大きく歪め食って掛かった。
「だから、早く元の場所に戻せっつってんだろ!」
今にも飛び掛かりそうな顔つきと言動。だが、それとは裏腹に、今度は若干足が震えている。槍持った兵士が待機してたら当然だろうが、中々に勇敢だとも思う。
けれど、国王はそんな江原に嘲笑を浮かべたり侮蔑の視線を向けたりすることもなく、ただ一度大きく首を振った。
「すまないが、それは出来ん。戻さない、という事ではない。戻せない、不可能なのだ。この召喚は呼ぶだけの代物、本当に申し訳ないと思うのだが……」
「はぁぁ!? っざけんな! な――」
と言いかける江原を、今度こそ会長がピシャリと手で完全に止める。まるでライオンの前の子犬のよう。
しかし、それよりもなによりも、王様がもう戻れないと言ったことによる絶望感で俺の心は満ちていく
「国王様、大丈夫です。その答えは想定の範囲内ですので。
むしろ、魔王を倒せば元の世界に帰れる。などと整合性の取れてない言葉を口にしたのであれば、あなたの信用は地に落ちていたことでしょう」
超絶上から目線に、もうそれが会長にとっての当たり前なのだと思いつつ、全然想定の範囲内ではない事を口にしたかった。
「あ、うむ、そういったことはない。はっきり言われると、何とも複雑な気持ちになるが……」と言う国王を尻目に、ギャルが江原に声を掛ける。
「家族に会えないのは悲しいけど、正樹には私がいるから。ねっ?」
「あ、ああ。そうだな。俺には美々がいればそれでいいか」
二人の会話を聞き俺の心に黒い感情が渦巻く。
とするなら、さっき江原が足を震わせながらも王様や大臣に突っかかったのは、もしかしてギャルのためなのか?
だとするならば江原は意外と男気のあるやつといえるかもしれない。
と思ったが、それはそれとして、
これこそリア充爆発しろ!じゃないのか?と、会長に目を向けたが、無表情で見つめているだけだった。
そう、ただただ無の境地で。
『?』を浮かべながら、俺は会長の肩をちょいちょいとつつき顔を寄せる。
「あの、会長。さっきのやらないんですか……? リア充爆発しろって……」
俺の言葉に驚いたような表情をしてからクスクスと笑い出す。
「ふふ。何を言ってるんですか? あれはリア充ではありません。
あれはゴキブリの求愛に等しいもの。嫌悪感を抱くことさえすれ、妬ましい気持ちなど清浄程にも湧くはずがないじゃないですかー。洗浄したいとは思いますがね」
――どんだけー。
会長は俺に「清浄とは小さい物の単位ですよー」と言ってきたが、正直意味は何となく分かったのでどうでも良かった。
さっき社会の屑でも人間です、と言っていたのに、本心はゴキブリ扱いしていたんだと思いながら。
その言葉を聞いた今、江原たちに目を向けても、もう『リア充爆発しろ』という気持ちは微塵も湧いてこない。
だからと言って二人がゴキブリが見えるという事はない。
ギャルは結構可愛いと思うし、日焼けした太腿もムッチリと色気があるもんな、と思った瞬間、
「おごぉっ!」
莉緒の地獄突きが喉元に炸裂し、一瞬息が止まり俺は膝から砕け落ちる。
一体なんなんだよ、と顔を上げると莉緒が何故か手を差し出してくれていた。
ツンデレさんなんだろうか、と俺がその手を握ると、物凄い勢いでグインと引っ張り上げられる。
顔を背けて「ご、ごめんなさい、やり過ぎたわ」と言うのが、何だか可笑しくて、可愛くて俺の心はほっこりした。
けれど、莉緒とは今日が初対面。
隠れ幼馴染なわけでも、実は許嫁なんかってことは――多分ない。少なくとも俺に心当たりはない。
俺は知っている。
女ってのは男に期待だけさせて、それをあっさり裏切る生物だという事を。
そう、好きと言えば、それはほぼほぼ『Love』ではなく『Like』なのだという事を。
心を開くな俺。騙されるな俺。気を許すな俺。
現状、ただの無人島効果。付かず離れず、それがベスト・オブ・ベスト!
でも莉緒の容姿ははっきり言って直球ど真ん中――ドストライクであるし、少しは夢を見たいとは感じる。
そこで新垣と高嶋のリア充カップルに目を向ける。
会長の言葉通りに取るとすれば、はあの二人は妬ましいと思ったということ。
仲良く手を繋ぎ二人だけの世界を作り、王様に顔を向けているあの二人こそ、やはり本物のリア充なんだなと納得した。
そのまま江原たちに目を向けると、
「うぷっ」
日焼けした体色のせいで、本当にゴキブリカップルを連想してしまい嗚咽を漏らす。
――会長のばかたれ!
と思った瞬間、会長が朗らかな顔をしながらも、明らかに瞳に怒りを浮かべ顔を向けてくる。
「ひょうすけく~ん?」
「うわぁ!? な、何ですか、会長? そ、それより早く話を進めませんか? じゃないと、いつまで経っても先に進みません。王様も困惑してますし、なっ進藤?」
「え、ええ? 何で急に僕に……。でも、確かに藤堂君の言うとおりだと思います」
との進藤の言葉に会長は俺にジト目を向けてきたが「ま、歩君に免じて許してあげますよー」と言って王様に体を向けた。
俺は進藤に向け親指を立ててみせ「兵輔でいいぞ」と言うと、同じように親指を立て「じゃあ、僕は歩で」と返してくれる。
歩がいじめられてたとは思えないほどにノリが良い奴だと感じ、気が合うかもしれないと思いつつ、会長の背中に目を向けていることに不安を覚える。
勿論、会長に対し悪感情を抱いたなどバレたら堪らないので、必死に隠していると、会長が王様に向け小さく頭を下げた。
「本当にすみませんね。
ええと、私達八人に四人の魔王を倒して欲しいというのは分かりました。しかし、各個撃破していくなら別に一人でも二人でもいいはずです。ということは……?」
「うむ。流石よの。その通りなのだ。
とはいえ、単純な話。各個撃破だと、そこを攻めようとすると三方からの挟み撃ちを食らってしまうのだ。なので、全方位同時に攻めよう……という魂胆でな」
今度は王様は会長にジッと目を向ける。不安に思ってその顔を見つめたというのが手に取るよう。
「その言い方ですと実際に試して失敗した経験があるという事ですね。
ちなみに、魔王を倒さなかったらどうなるのでしょうか?」
「失敗した回数は無数にある。そのため、我が国はもう戦力を攻勢に回すことが出来ん。それで心苦しいが勇者方を召喚させてもらった、ということなのだ……。
そして……、魔王を倒さなかったらこの国は滅びるであろうな。儂はそなたらの世界は知らん。けれど、強き者が弱き者から奪うのは自然の摂理。それはどこも同じなのではないか?」
それを聞き会長は腕を組み黙考していたが、王様に「ちょっと待ってもらえますか?」と言ってから、なぜか俺の方へと歩み寄ってくる。
微笑みを浮かべながらではなく真剣な表情で。
「ね。予習組じゃない兵輔君の意見を聞きたいのだけど。今の聞いてどう思いますか?」
「…………。そう……ですね。俺には魔王=悪というゲームの図式しか知りません。
けれど、現実に今の局面に相対して思うことは、結局どちらが奪う側になるか?って事なんじゃないかと思います。善悪の判断は俺には出来ませんから」
俺の言葉を聞いて嬉しそうな顔で会長は大きく頷き、莉緒と歩を呼び寄せると声のボリュームを落とした。
「ちなみに私も兵輔君と同意見。だけど……そうですね、この先は絶対に内緒、四人だけの秘密にしてね」
その言葉にに、俺、莉緒、歩が頷いたのを満足そうに見てから言葉を紡いだ。
「王様の言葉に乗ろうと思います。けど、それはあくまで作戦上。やっぱり自分の目で見て判断すべきだと思うの。けれど、優先すべきはまず自分の命。それだけは覚えといて下さい」
言ってから小さな円陣を解散させたが、俺は気になったので会長の耳元に口を寄せた。
「なぜ、あっちの四人は加えなかったんですか? 不安そうな表情を浮かべてますよ……?」
会長は俺の言葉に艶笑を浮かべると、ゾクリとする程色っぽい声色で囁きかけてきた。
「それはね………………私の好みよ」
小悪魔!と内心でツッコんでいると、会長は王様に体を向け小さく腰を折った。
「王様、度々申し訳御座いませんでした。同じ人間として勇者としての努めを果たさせて頂きたいと思います」
1
あなたにおすすめの小説
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕だけ別な場所に飛ばされた先は異世界の不思議な無人島だった。
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚…
スマホのネット小説や漫画が好きな少年、洲河 愽(すが だん)。
いつもの様に幼馴染達と学校帰りの公園でくっちゃべっていると地面に突然魔法陣が現れて…
気付くと愽は1人だけ見渡す限り草原の中に突っ立っていた。
愽は幼馴染達を探す為に周囲を捜索してみたが、一緒に飛ばされていた筈の幼馴染達は居なかった。
生きていればいつかは幼馴染達とまた会える!
愽は希望を持って、この不思議な無人島でサバイバル生活を始めるのだった。
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つものなのかな?」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は幼馴染達よりも強いジョブを手に入れて無双する!」
「幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕は魔王から力を授かり人類に対して牙を剥く‼︎」
幼馴染達と一緒に異世界召喚の第四弾。
愽は幼馴染達と離れた場所でサバイバル生活を送るというパラレルストーリー。
はたして愽は、無事に幼馴染達と再会を果たせるのだろうか?
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる