-全無生物を魔法に変える落ちこぼれ勇者- ユニーク魔法で異世界無双

とりっぷましーん

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第一章

005 いじめっ子カップルはリア充ではないらしい

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 豪奢な謁見の間。会長の言葉に戸惑いを覚えつつも「ウォッホン」と再度偉そうな咳ばらいをかます、少しかわいそうな国王。

 だが、俺はそんな国王に多少のシンパシーを覚えていた。

『国王』と『生徒会長』

 仮にも一国の『王』とただ無数に存在する一高校の生徒のトップでしかない『生徒会長』

 なのに、明らかにそのカリスマ性は天ヶ崎会長の方が上。その人間としての『個』というものが非常に大きく関わっていることは否定できない。

 話が本当ならここは異世界ということ。日本程に発展しているはずがない――という自負が日本人の俺の中に確固としてある。
 ということならば、魑魅魍魎が暗躍する日本の高校のトップというのは、かくも高いカリスマ性を有する必要があるという事なのか。
 考えても分からないか、と思い俺は小さく首を振った時、会長が俺の肩をつついてきた。
 優し気な微笑みの奥に俺の考えている事が読まれていたんじゃないかと思い、俺の心臓を強く揺れた。

「何かおかしなこと考えてません?」
 
 会長の内包するカリスマ力におののきつつ「い、いえ、会長今日もお綺麗ですね」と言って笑おうとしたら、うまく笑えず変な顔になってしまう。

「ふふ。何ですかその顔、その言葉? ま、誤魔化されてあげますよー」と言って俺とは違う完璧な微笑みを浮かべると、国王に顔を向け「申し訳ありません」と口にした。

 瞬間、

「おぅふっ!」

 もう、何度目になるか分からない莉緒の肘鉄が飛んできて、進藤に理由は不明だが一睨みされる。

 俺の心は訴えている。俺の身体はサンドバッグではないと――

 しかし、大分威力が抑えられていたが、殴られた理由は分からない。
 すまし顔で前を向く莉緒をじろりと一瞥してから、俺も顔を前に向ける。

「そろそろ話を進めさせてもらっても良いだろうか?。
 ここ、リンガルテムスは魔族の領域に囲まれた国であってな、四人の魔王達は東西南北に拠点を造り儂らの事を監視しておるのだ」

 そう言うと国王は俺たちの事を見回した。今度は睨め付けるような視線ではない。おそらく、会長が何か言ってくるんじゃないかと恐れをなしているのだろう。

――分かります。

 それを悟られないようにか、会長にはなるべく視線を向けないようにしているということも、手に取るように分かります。
 ああ、何て憐れな一国の王様。そんなことにこの会長が気付かないはずはないというのに。

 国王は俺たちが何も言わないので少し調子を取り戻したのか、少し顔色を良くし言葉を続けた。ピエロ!

「それで、そなた達八人の勇者を召喚させてもらったのだ。こちらの都合で誠に申し訳ないとは思うのだが――」

 の言葉に、江原が怒鳴り声を被せる。

「っざけんな! 何が召喚させてもらっただ。頭沸いてんじゃねぇのか? 王とか王女とか知らねーけどよぉ! さっさと元の場所に帰せっての!」

 その言葉に会長はどう反応するのかと俺は恐る恐る見ていたが、値踏みするかのように妖笑を浮かべているだけだった。
 おそらく江原を泳がせて、王様がどう反応するのか観察しているんだろう。小悪魔!

 だが、意外にも言葉を発したのは国王ではなく、その脇に控えていたお偉いさんの中の一人であった。
 一歩前に出ると国王と、今は笑っていない王女に目を向けてから江原に向かって指を突きつける。

「おい、お前! 勇者だからといって国王に対するその言動は流石に口が過ぎるぞ!」

「はぁ!? んなことしらねーっつの! お前にとっては王だとしても、俺にとってはただの他人。髭ジジイでしかねぇんだよ!」

「貴様ッ……!!」

 帽子をかぶってでも分かる頭の毛の薄いおっさんが、顔から火が出そうなほど顔を赤くし大きな体をブルンブルンと震わせると共に、兵士達がガチンと持っていた槍の柄で地を叩く。
 あまりの恐怖に俺は思わず喉を鳴らし、江原はやはり強気な奴で、会長はただその上をいく存在なんだと示された気がした。
 王様はそのお偉いさんを制するように手で遮る。

「大臣! 良いのだ。お主の気持ちは分かるがな。勇者殿の気持ちも儂には分かる。突然知らない世界に呼ばれたら、儂だって納得できないという事は想像するに難くない」

 王様の予想外の常識人加減に驚いたが、胸をなでおろす暇もなく江原が顔を大きく歪め食って掛かった。

「だから、早く元の場所に戻せっつってんだろ!」

 今にも飛び掛かりそうな顔つきと言動。だが、それとは裏腹に、今度は若干足が震えている。槍持った兵士が待機してたら当然だろうが、中々に勇敢だとも思う。

 けれど、国王はそんな江原に嘲笑を浮かべたり侮蔑の視線を向けたりすることもなく、ただ一度大きく首を振った。

「すまないが、それは出来ん。戻さない、という事ではない。戻せない、不可能なのだ。この召喚は呼ぶだけの代物、本当に申し訳ないと思うのだが……」

「はぁぁ!? っざけんな! な――」

 と言いかける江原を、今度こそ会長がピシャリと手で完全に止める。まるでライオンの前の子犬のよう。
 しかし、それよりもなによりも、王様がもう戻れないと言ったことによる絶望感で俺の心は満ちていく

「国王様、大丈夫です。その答えは想定の範囲内ですので。
 むしろ、魔王を倒せば元の世界に帰れる。などと整合性の取れてない言葉を口にしたのであれば、あなたの信用は地に落ちていたことでしょう」

 超絶上から目線に、もうそれが会長にとっての当たり前なのだと思いつつ、全然想定の範囲内ではない事を口にしたかった。

「あ、うむ、そういったことはない。はっきり言われると、何とも複雑な気持ちになるが……」と言う国王を尻目に、ギャルが江原に声を掛ける。

「家族に会えないのは悲しいけど、正樹には私がいるから。ねっ?」

「あ、ああ。そうだな。俺には美々がいればそれでいいか」

 二人の会話を聞き俺の心に黒い感情が渦巻く。
 とするなら、さっき江原が足を震わせながらも王様や大臣に突っかかったのは、もしかしてギャルのためなのか?
 だとするならば江原は意外と男気のあるやつといえるかもしれない。
 と思ったが、それはそれとして、

 これこそリア充爆発しろ!じゃないのか?と、会長に目を向けたが、無表情で見つめているだけだった。
 そう、ただただ無の境地で。
『?』を浮かべながら、俺は会長の肩をちょいちょいとつつき顔を寄せる。

「あの、会長。さっきのやらないんですか……? リア充爆発しろって……」

 俺の言葉に驚いたような表情をしてからクスクスと笑い出す。

「ふふ。何を言ってるんですか? あれはリア充ではありません。
 あれはゴキブリの求愛に等しいもの。嫌悪感を抱くことさえすれ、妬ましい気持ちなど清浄程にも湧くはずがないじゃないですかー。洗浄したいとは思いますがね」

――どんだけー。

 会長は俺に「清浄とは小さい物の単位ですよー」と言ってきたが、正直意味は何となく分かったのでどうでも良かった。
 さっき社会の屑でも人間です、と言っていたのに、本心はゴキブリ扱いしていたんだと思いながら。

 その言葉を聞いた今、江原たちに目を向けても、もう『リア充爆発しろ』という気持ちは微塵も湧いてこない。
 だからと言って二人がゴキブリが見えるという事はない。
 ギャルは結構可愛いと思うし、日焼けした太腿もムッチリと色気があるもんな、と思った瞬間、

「おごぉっ!」

 莉緒の地獄突きが喉元に炸裂し、一瞬息が止まり俺は膝から砕け落ちる。

 一体なんなんだよ、と顔を上げると莉緒が何故か手を差し出してくれていた。
 ツンデレさんなんだろうか、と俺がその手を握ると、物凄い勢いでグインと引っ張り上げられる。

 顔を背けて「ご、ごめんなさい、やり過ぎたわ」と言うのが、何だか可笑しくて、可愛くて俺の心はほっこりした。
 けれど、莉緒とは今日が初対面。
 隠れ幼馴染なわけでも、実は許嫁なんかってことは――多分ない。少なくとも俺に心当たりはない。

 俺は知っている。

 女ってのは男に期待だけさせて、それをあっさり裏切る生物だという事を。
 そう、好きと言えば、それはほぼほぼ『Love』ではなく『Like』なのだという事を。
 心を開くな俺。騙されるな俺。気を許すな俺。
 現状、ただの無人島効果。付かず離れず、それがベスト・オブ・ベスト!

 でも莉緒の容姿ははっきり言って直球ど真ん中――ドストライクであるし、少しは夢を見たいとは感じる。

 そこで新垣と高嶋のリア充カップルに目を向ける。
 会長の言葉通りに取るとすれば、はあの二人は妬ましいと思ったということ。
 仲良く手を繋ぎ二人だけの世界を作り、王様に顔を向けているあの二人こそ、やはり本物のリア充なんだなと納得した。

 そのまま江原たちに目を向けると、

 「うぷっ」

 日焼けした体色のせいで、本当にゴキブリカップルを連想してしまい嗚咽を漏らす。

――会長のばかたれ!
 
 と思った瞬間、会長が朗らかな顔をしながらも、明らかに瞳に怒りを浮かべ顔を向けてくる。

「ひょうすけく~ん?」

「うわぁ!? な、何ですか、会長? そ、それより早く話を進めませんか? じゃないと、いつまで経っても先に進みません。王様も困惑してますし、なっ進藤?」

「え、ええ? 何で急に僕に……。でも、確かに藤堂君の言うとおりだと思います」

 との進藤の言葉に会長は俺にジト目を向けてきたが「ま、歩君に免じて許してあげますよー」と言って王様に体を向けた。

 俺は進藤に向け親指を立ててみせ「兵輔でいいぞ」と言うと、同じように親指を立て「じゃあ、僕は歩で」と返してくれる。

 歩がいじめられてたとは思えないほどにノリが良い奴だと感じ、気が合うかもしれないと思いつつ、会長の背中に目を向けていることに不安を覚える。
 勿論、会長に対し悪感情を抱いたなどバレたら堪らないので、必死に隠していると、会長が王様に向け小さく頭を下げた。

「本当にすみませんね。
 ええと、私達八人に四人の魔王を倒して欲しいというのは分かりました。しかし、各個撃破していくなら別に一人でも二人でもいいはずです。ということは……?」

「うむ。流石よの。その通りなのだ。
 とはいえ、単純な話。各個撃破だと、そこを攻めようとすると三方からの挟み撃ちを食らってしまうのだ。なので、全方位同時に攻めよう……という魂胆でな」

 今度は王様は会長にジッと目を向ける。不安に思ってその顔を見つめたというのが手に取るよう。

「その言い方ですと実際に試して失敗した経験があるという事ですね。
 ちなみに、魔王を倒さなかったらどうなるのでしょうか?」

「失敗した回数は無数にある。そのため、我が国はもう戦力を攻勢に回すことが出来ん。それで心苦しいが勇者方を召喚させてもらった、ということなのだ……。
 そして……、魔王を倒さなかったらこの国は滅びるであろうな。儂はそなたらの世界は知らん。けれど、強き者が弱き者から奪うのは自然の摂理。それはどこも同じなのではないか?」

 それを聞き会長は腕を組み黙考していたが、王様に「ちょっと待ってもらえますか?」と言ってから、なぜか俺の方へと歩み寄ってくる。
 微笑みを浮かべながらではなく真剣な表情で。

「ね。予習組じゃない兵輔君の意見を聞きたいのだけど。今の聞いてどう思いますか?」

「…………。そう……ですね。俺には魔王=悪というゲームの図式しか知りません。
 けれど、現実に今の局面に相対して思うことは、結局どちらが奪う側になるか?って事なんじゃないかと思います。善悪の判断は俺には出来ませんから」

 俺の言葉を聞いて嬉しそうな顔で会長は大きく頷き、莉緒と歩を呼び寄せると声のボリュームを落とした。

「ちなみに私も兵輔君と同意見。だけど……そうですね、この先は絶対に内緒、四人だけの秘密にしてね」

 その言葉にに、俺、莉緒、歩が頷いたのを満足そうに見てから言葉を紡いだ。

「王様の言葉に乗ろうと思います。けど、それはあくまで作戦上。やっぱり自分の目で見て判断すべきだと思うの。けれど、優先すべきはまず自分の命。それだけは覚えといて下さい」

 言ってから小さな円陣を解散させたが、俺は気になったので会長の耳元に口を寄せた。

「なぜ、あっちの四人は加えなかったんですか? 不安そうな表情を浮かべてますよ……?」

 会長は俺の言葉に艶笑を浮かべると、ゾクリとする程色っぽい声色で囁きかけてきた。

「それはね………………私の好みよ」

 小悪魔!と内心でツッコんでいると、会長は王様に体を向け小さく腰を折った。

「王様、度々申し訳御座いませんでした。同じ人間として勇者としての努めを果たさせて頂きたいと思います」
 
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