-全無生物を魔法に変える落ちこぼれ勇者- ユニーク魔法で異世界無双

とりっぷましーん

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第一章

015 通信魔法はひらがなで

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 莉緒達と別れた俺達が南門から伸びる街道に辿りついた時、よく分からないが歩が首の後ろを擦った。

「ん、なんか首にピリって……来たような……。何もないけど」

「ピリ……? 会長が言ってたメッセージってやつなんじゃね?」

 俺の言葉に「ああ、そうかも! でも、どうすればいいんだろ」と言いながらステータスを開きだす。

「あ、見てよ。これだよね?」

 と、見せてきたステータスにはメッセージ有りとの文字。まるでメールのようだが気にしたら負けなんだろう。
 歩がタップすると円環の中に現れる文字に俺は「読み辛っ!」と思わず声を上げた。


『てすとです。れべるがひくいため、ひらがなでしかおくることができません』
『ぶじ、みなみもんまで、たどりつきましたか?』
『へんじは、このぶんしょうにゆびをふれると、へんしんがめんがひらきます』
『あたまのなかでかんがえながら、ゆびをすべらせるとかけるので、ためしてみてください』


 いつの時代のゲームだよってレベルの読みづらさ。レベルがと書かれているため、いずれは変わっていくのだろうが。

「なんて返事するんだ? つか、それでどうやって文字かくんだ?」

 親指と人差し指で円環を作ってしまったためか、中指を必死で動かそうとしているがどう見ても書きづらそう……というよりまず無理だろう。
 その必死な動かし方を見ているだけで噴出してしまいそうなほど。

「え、うーん、どうしよ。円環の作り方を失敗したみたい。ユニーク魔法を確認した時みたいに作るべきだったね」

「そうだな。だから王女さんも中指を使ってたんだろうな。んじゃあ次からは……例えば右手は親指と小指にするとか……?」

 言いながら自分で試してみると、若干ましになるような気はした。ま、実際にやってみないと分からないが。

「えー今更……。これ、円環崩すと多分消えちゃうよね……。ちょっと兵輔代わりに書いてよ」

 その言葉を聞き俺の悪戯心がくすぐられる。
 ニヤと口が歪み、メールの返信を人に頼むことの恐ろしさを教えてやらないといけない、という使命感が燃え上がった。

「なんて書くんだ?」

 と、聞きながら俺の頭の中で文章を構築し、完璧な作戦を練り上げた。
 同時に歩が俺の顔を見ながら口を開く。

「そうだね。こんな感じで送ってよ」


『こちらもてすとです。ぶじに、みなみもんへとたどりつきました』
『ぼくたちはがんばっていこうとおもいます』
『かいちょうさんと、せんそうじさんも、おからだにきをつけてがんばってください』


 ふぅんと右耳から左耳へと抜けていく言葉を聞き流し、俺の文章を歩の手の中で作成する。
 文字は書かれた場所に触れると消えるという性質を確認してから、作戦を決行した。


『かいちょうの、からだつき、すてきです』
『どうか、わたしに、ひとなつのけいけんをさせてくださいよ』


 歩はこれを見た瞬間目を見開いて、大慌てで俺に手を付きつけてくる。

「ちょ、ちょっとまって! 何やってんの! ば、馬鹿! はやく消してよ!」

「あーあーあー、ゆらすなよー。変になっちゃう――って、あー!」

 俺は文字を消しながら、おそらく送信ボタンであるだろうと思っていたボタンを押した。
 完璧、完璧だ。

「す、すまん……。冗談のつもりで全部消すつもりだったんだけど……」

「これ……絶対わざとでしょ!! 兵輔のばか!!」

 送られた内容はこうだ。


『かいちょう        す きです』
『  か わ          い         いよ』


 おっしゃ完璧、きたこれ!という感情をおくびにも出さないように、申し訳ないという気持ちいっぱいの声色を奏でた――つもり。

「いや、すまん。わざとじゃないんだ。たまたまなんだよ」

「へぇ? じゃぁなんでそんな笑いをこらえたような顔してんのさ! もう! 嫌われちゃったらどうすんのさ!」

「いやいや、最初のだったら流石にやばかっただろう。けれど、二つ目のはどうだ? 可愛いって褒めてるんだぞ?
 相手に好きと伝えてから意識させる、という高等テクをやってやったんだよ!」

 俺の言葉に歩は口元を引き結び、びしっと裏拳を肩口にあててくる。ツッコミの要領だが普通に痛い。

「それって全て計算尽くってことじゃんか! 何が冗談でたまたまだよ。完全にわざとじゃん!」

 頬を膨らませる歩を見て、ちょっとやりすぎたかなと反省する。
 自分がされて嫌なことは人にしてはいけない。

――良い子は真似しないようにっ!

 なんて思ってる場合じゃない。どうするかな、と思っていると再度歩が首筋を触った。

「うわぁ、メッセージ来ちゃったよ! これ、こっちから送れないから今の時間胃がきりきりした」

 言いながら、さっき俺が提案したように、小指を利用した円環を作りながら差し向けてくる。

「怖いから兵輔見てよ……。返信はしなくていいからね」

 どれどれ、と思いながらジッと目を向ける。


『だいすきってことばなら、わたしもかんがえましたー。けれど、あゆむくん』
『が、つかったことばは、ただのすきということば』
『これはいったいぜんたい、なんのじょうだんなのですかー?』
『とりあえず、いまは、そんなじょうきょうではありません。でも』
『わたしには、かれしもすきなひともいませんので、あゆむくんが、がんば』
『るなら、かんがえてあげるかもしれないのですよー』


 冗談と見透かされているのか、脈ありなのか、遠回しに断っているのか中々に難解な文章である。

「う~ん。自分で見てみろよ? 絶望的なほど拒絶されてるってわけじゃねーと思うぞ」

「な、何その言い方……。分かった、見てみるよ」

 そう言って歩は円環の中を熟読。短い文章だが、真剣な顔をして何度も読み返している様子だ。
 しかし、今の文章はおかしなところで文節が切れていたりと、最初に送られてきた文章とは違い作りが変だった事に気付く。
 まさか……たてよ……と、俺の脳裏に嫌な予感が走る。
 
「なぁ、もっかい今の見せてくんね?」

「え、うん……。いいよ? 確かに最後の二行見ちゃうと希望あるのかなって思っちゃうな」

 俺は再度円環の中を覗いて文頭の文字を並べてみた。


だ が こ と わ る


 言えないっ!
 こんな残酷な言葉が隠されているだなんて、歩にはとても言えない。
 そう思いながら俺はおもむろにエメラルドグリーンの表面に触れてやり、強制的に返信画面に切り替えた。

「ああっ! なにすんの!」

「い、いや、うん。早く返信しないと会長も待ってるかなと思ってさ。女を待たす男にはなっちゃいけないぞ、うん」

 歩は「ええ~! でも確かにそうだね」と言いつつ、文章を作成し始めた。と、ここで俺の首筋にピリリと電気が走ったような感覚。
 首筋を擦りながら、これがさっき歩の言ってたやつか?と考えつつ、恐る恐るステータスを開き確認してみる。


『りおです。れいなにたのんで、おくらせてもらっています』
『さっき、あゆむくんからきたのって、ひょうすけがやったんでしょ?』
『あんなことしちゃだめだよ。かわいそうじゃない!』
『でも、れいなはあゆむくん、けっこうかわいいっていってて』
『ほんとうにがんばるなら、ほんとうにかんがえるかもっていってました』
『つたえるのもつたえないのも、ひょうすけがきめればいいけど』
『あゆむくんがおちこむようなら、つたえてあげてください』
『                          』
『あとね、わたし』


 ここまで読んで、俺の首筋に再度ピリリとした感覚が走り、反射的に首筋に手が伸び円環を崩してしまう。

「あああ! やっちまった!」

「ど、どうしたの? 突然大きな声を上げて?」

「い、いや、なんでもない。すまんな、驚かせて。会長に返信してあげてくれ」

 訝しむように眉根を寄せつつも、大切に円環を守る歩に、流石だな、と思いながら俺は自分の失態を悔いる。
 最後、なんて書かれてたのか気になる。非常に気になる。いや、それとも何も書かれてなかったのかもしれない。
 けど、そうすると文章が変なところで終わってしまう。

 葛藤し身悶えしそうになっていると、この状況を何が作り出したかという事に到達する。
 それは、ピリリとした感覚。
 つまり、別のメッセージ様の来訪。

 俺はステータス画面を開き、確認するとメッセージ有りとの文字。
 だが、それは新しいものだけであって、やはりスマホのように過去の文章を見ることは出来ない。
 溜息をつきたい気持ちを押し殺し、文章を開いてみる。

『ひょうすけのかっこいいとこみてたよ』

 どういうことだ……? 何が何だか……、と思いながら頭を回す。
 まさか、さっきの兵士との戦いを見てたってことなのか……?
 確かにあれは上手くいきすぎるほど上手くいった。我ながらかっこよかったとも思う。
 それを莉緒に見せれなくて、残念だと思ってた気持ちも正直ある。

 それを莉緒が見ていた……?

 動悸が高速反復横跳びのように跳ね上がり、体が浮遊感に包まれ、体が自然と震えてしまう。
 けれど、その感覚全てが心地よい。手放したくない。
 別に告白が成功したわけでもない。告白されたわけでもない。
 ただ、ひらがなで書かれた文章が俺に届いただけ。そう思いながら再度目を向ける。

『ひょうすけのかっこいいとこみてたよ』

 文章を見るだけで、もう顔が二ヤつくのを押さえることができなかった
 ということは、さっきの文章はあれで終わっていたという事になるのかもしれない。
 いや、間に何が書かれていたとしてもどうでもいい。
 俺の分身さんが反応するのも、心臓さんが心不全を起こしそうになるのも、気にせず再度目を向ける。


『ひょうすけのかっこいいとこみてたよ』


――うはぁ!
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