-全無生物を魔法に変える落ちこぼれ勇者- ユニーク魔法で異世界無双

とりっぷましーん

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第一章

021 異世界の旅路における食糧事情

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 俺と歩の合作ともいえる魔法の力でなんとか渇きをいやしたが、まだまだ目に映るのは木々の数々。
 あまりの量に目が良くなりそうだが、あいにく俺の視力は裸眼で1.0ある。ゲーム好きだが目はいいのだ。
 むしろ似たような幹が並ぶ光景に、眼が回りそうな気持ちのほうが強いだろう。

 当然、永久機関に近いような循環で俺達の身体は一応潤っているが、それは何の栄養分どころかミネラルすら含まれていない純水。
 当たり前だが腹は減る。
 もう三日以上何も食ってない俺達は、そこらの草に鑑定を向けてもみたが、ただの一般的な雑草でしかないようだった。

「木の実……とか、なってないもんですかねぇ、普通は……」

 グーグーと鳴り続ける腹を擦り見渡してみても、目に映るのはおそらく針葉樹林とかいうやつで、木の実はなっていないのだ。
 キノコなんかも生えていない。

「う、ん。甘く見てた……。兵輔の言うとおり水を循環させてなかったらこれやばかったよ……。ああっ!」

 突如カバンを探り歩は驚き声をあげた。

「どうした? あまり動くとカロリー消費するぞ?」

「い、いや……パンの欠片がちょびっとだけ残ってたよ。食べる……?」

 つまんで見せてきたのは、一センチほどの干からびたパンの欠片。
 だが、これをめぐり国同士の戦争が起こる程の価値を持つパンの欠片だ。

「あ、いや、歩が……。ちょっと待てよ。なぁ魔法で動物を捕る罠みたいなの出せね? ネズミ捕りみたいなやつ」

 パン一欠片は国が総出で取り合う程の価値があるが、俺はそれをさらにわらしべ長者しようと考えたのだ。
 捕まった獲物の事を考えれば、俺のつばだけが口の中へと湧き出てくる。

「ネズミ捕り……ネズミ捕り……よし、イメージできたしやってみるよ」

 魔力だけは俺も歩も有り余っている。どうやら時間経過で回復するようで、使わなければ損するような気がするほどだ。
 歩が描いている間暇なので、俺は何度となく試した雑草をブチりと抜いて、魔法変換を試す。

『シレ草一株』
  世界で最もポピュラーな草、シレ草を土の地面に限り任意の場所へと生やす。

 葉っぱ一枚で一株分の雑草を生やすことが出来るので、相当な成長をしているとは思うが何の役にも立たないことは事実。
 シレ草というのはそこら中に生えていて、口に入れれなくはないが、まるで美味くはないしぱさぱさとしているだけ。
 ちなみに現在髪の毛一本を魔法化すれば髪の毛10本にできるくらいの成長度合いだ。まだまだ役に立ちはしないがな。

 波〇さんを相手にすればおそらく数百万の金が転がり込んでくるだろうが。

 落ち葉を魔法化しても、固くなりカッターのように飛ばせたりとかだけであるし、土もおなじように広範囲に砂を飛ばしたりするだけだ。
 魔物相手になら非常に使えるのだが、俺達に差し迫った問題は食糧問題であって、魔物討伐に苦労しているわけではない。
 魔物の肉が食えたらいいとは思うが、もし毒でもあれば俺たちは死ぬ。流石にフグを食っていた原始人の様に、自分の身体で実験は出来ない。
 歩の話では小説で魔物が食べれる確率は結構高いようなのだが……。

 考えているうちに歩がネズミ捕りを描き上げ、具現化が成功していた。

「おおー。今回のは結構きっちりできているな。やはりイメージの力がでけーのかもな?」

 罠としても機能しているし、大きさも普通のネズミ捕りより大分大きいが、それは歩がそうしたのだろう。
 これで正解だと俺も感じた。

「結構、しっかり描いたつもりってのもあるけどね。大分、描写可能時間増えてるし。でもま……とりあえず仕掛けようか」

 街道から少し外れた場所へとネズミ捕り――というよりはウサギ取りくらいの大きさの罠を仕掛けて戻ってくる。
 これで俺たちに残された食料は完全に無くなった。
 だからなのか、チラチラと歩は様子を見ているが、流石にそんなにすぐに何かが起きたりしないだろう。

「だが仕掛けたから動けねーよな。もう今日は休むことにするか……? 大分暗くなってきたことだし」

「ん。休むってのは早いけど、魔力多くなったからログハウスみたいなの描けるかな……?」

 今までは俺たち二人がやっと入れるくらいの大きさのテントしか試したことはない。
 それで十分だったし、それが限界であった。あまりにも大きなものはまだ具現化は出来ないのだ。

「やってみろよ。駄目なら駄目でかまやしねーし」

 そんなやり取りをして歩が描き上げたのは、かなり小さめのログハウス。
 畳二枚分程のスペースしかないが、ドアもついているし、意外と頑丈な造り。
 即席ということを考えたなら、あり得ないほどの出来栄えだろう。
 ただ一つ問題があるとすれば永続的な効果ではない事。俺の魔法とは違い、時間制限があるというのが最大のネックとなる。

「だから、歩は飯だけは出せねーんだよね」

 小さな木の感触と匂いが嬉しい家の中に、二人で座り向かい合っている。
 当然のことながら歩に食料を描かせるということは実践済みだ。
 どんなに丁寧に書いても、味というモノは表現できないのかまるで美味くない。
 リンゴを出してみたことがあるが、赤くて艶があり物凄く美味そうだったのだけれど、消しゴムを食っているような感覚が口の中に広がっただけだった。
 さらに咀嚼をして飲み込めば、なぜか消えていってしまうのだ。

「そうだよね……。はぁ。万能能力はないってことかなぁ……」

 とはいえ、歩のまずい食い物も全く意味がないという訳ではない。
 消えていくときに魔力化するのかどうかは知らないが、歩の魔力を俺に分け与えることが出来るような仕様になっている。
 もっともそれをするときは、くそ不味い物を食わないといけないので、極力したくはない。
 小さなログハウス内に、俺たち二人の腹の虫だけが木霊し続けていた。

「ね、兵輔の魔法化ってさ。いつも一つの物を対象にしてたじゃん? それを大量の物とかにできないの?」

 俺を伺うように覗き込んでくる歩を見て、ステータスを出し確認してみる。
 が、特に何も書かれてはいない。

「そうだな……。試してみるか? 餓死するくらいならやれることは試しておきたいよな」

「うん。草をいっぱい集めてそれでやってみようよ」

 草原でもできるんじゃねーかな、と思いつつ歩と外に出て草を集めることにした。
 約15分。無駄にカロリーを消費し集まったのは、俺達が両手で抱えられるかどうかといったほどの量の緑の草。おそらくは全てシレ草だ。
 会長が兵士を脅していた時のように両腕で大きな円環を作って、それを囲ってみる。
 試したことのない魔法化に、凄まじい量の魔力を吸い取られるような感覚を感じたが、緑の草は全て消え俺の腕の中に文字が表示された。

『コリンゴの木(一本)』
  瞬間的に成長するコリンゴの木を土の地面に限り任意の場所に生やす。コリンゴのなる数は20と固定。

「おいおい、これきたんじゃね? 歩の考えのおかげだろ!」

「うん! うん! 兵輔、早く魔法使ってみてよ!」

 歩の嬉しそうな顔におそらく俺も嬉しそうな顔をしているんだろうなと考え、魔法を発動させた。
 瞬間、一メートル程の盆栽のような木が現れ、指で輪を作ったくらいの大きさのリンゴのような実を20個付けた。
 二人で顔を見合わせると、鑑定することも忘れその果実をもぎ取り口に入れる。

「う、う、う、うめええええ! ちょっと酸っぱいけどこれは……身に染みるぞ‼」

「確かに酸っぱい。酸っぱいけど、今はその酸っぱさが余計生きてる実感を与えてくれるよぉ」

 二人で手を取り合いむしゃむしゃと小さなリンゴを食べていく。
 少し硬めの果実が腹に溜まるような気がして、余計に感動をいや増した。それは目尻から涙が零れるほどに。
 全ての実を食って、俺達の命の木ともいえる、もうただの小さな木になってしまった木に手を合わせていると、ガシャンと奇妙な音が耳に届いた。

「もしかして……?」

「うん、そうかも。行ってみよ!」

 顔を見合わせ一目散に罠を仕掛けた場所へと駆け寄った。罠にかかり動いているのは灰色の身体をした兎の姿。
 じたばたと暴れ腐葉土をまき散らしている姿は可哀そうだが、可哀そうという言葉ほど偽善なものはない。

 俺は一度だけ手を合わせると腰の剣を抜き取り、躊躇せずその首へと突きさした。

 命の終わり。

 そこに魔物だろうが野生生物だろうが差異はないような気がしている。違うのは魔物は金を零すということだけ。
 人間だけは別だと考えているのはエゴでしかないような気がするが、そこを踏み越えるのは本当にどうしようもないとき。
 エゴだろうが偽善だろうが俺はその考えを変えるつもりはないし、生命を奪って生きていく事に躊躇うこともない。

「すまないな、そしてありがとう」

「うん。どの過程を目にするかってことなんだよね。僕らは肉だろうが魚だろうが、それを食べて生きているんだから」

 殺すことを残酷というのは簡単なこと。だが、それを言ってしまえばその人間には生命を奪う資格はない。
 野菜だって命あるものと考えることは出来るが、それだけで生きていく事も可能なのだから。

「無機物食って生きていくことは出来ねーからな。ま、それは通過した。どうやって食うかだが、生命の重みは良いとしても生では流石にきちーよな」

 新鮮な肉なら生でも食べることは出来るだろうが、流石にそこまで野生児として順応できていない。
 火を起こす道具もなければ、調理する道具もない。

「うーん。こんなことなら火打石みたいなものでも買ってもらっとくんだったね」

「なぁ……。歩の魔法って炎とかかけねーの? 小学生がなんか書くじゃん? あんな感じでさ」

 言ってからコンロのような物のほうが良いか?と思ったが、流石にそれは機能的過ぎて無理だろう。
 だが、そういった物も出せるようになる可能性があると考えると、歩の将来が楽しみだと思えた。
 ちなみにだが、歩が具現化したものは俺の魔法で魔法化することは出来ない。
 おそらく、魔法は魔法化が出来ないという事になっているのだと思う。

 兎を延焼を起こさない場所まで運び、土を落とす。
 歩が炎を描くと僅かに熱風が広がり、兎の遺体に火を点けた。
 オレンジ色の炎がパチパチと弾けながら、毛を焼きじゅわじゅわとその肉を焦がしていく。
 あまりに原始的過ぎるその調理法は、表面を黒く焦がし焦げ臭い匂いと、美味そうな匂いを混じり合わせ、天へと煙を運んでいった。

「剣でやるのは流石に清潔じゃないからさ、ナイフも出してくんね?」

 俺の言葉に首肯すると小ぶりのナイフを描き出す。あまりの汎用性の髙さに若干羨ましくなるほどだ。
 金塊を出し、剣を出し、絆創膏もどきを出し、テントを出し、ネズミ捕りを出し、ログハウスを出し、炎を出した。
 確かに歩が以前言った通り、小説の主人公としての能力といえるモノだと思う。

「いや、歩の魔法ってすげーな。あり得ないほどにすげぇと思う」

 言いながら焦げた肉を削ぎ落とすと、白の水蒸気がもわと上がり死ぬほど美味そうな香りが辺りを支配した。

「そうかな? 僕は兵輔の力が羨ましいと思うよ。なんといったって速いから」

 確かに発動が速いのは俺の利点。歩は発動の遅さがネック。だが、そんな差では汎用性の高さという壁をまるで埋められないような気がした。
 実際に向き合って戦えば俺が勝つだろう。けれど、戦いだけが全てという訳ではない。

「ま、いいや。じゃ食おうぜ?」

「あ、うん。どうぞどうぞ、兵輔からお先にどうぞ」

「いや、歩が捕まえて焼いたものなんだから、先食っていいぞ? リンゴ食って多少は腹が膨れてるしな」

「え、えと……」

 と言って、俺に口を緩めてみせた。
 なんとなくそれで察した俺は、ナイフで肉を削り取り口へと運んでみる。
 良い能力を授かったが、精神的な弱さはまだまだ歩のもの。それが歩らしいとも言えるのだが。

「う、う、うめぇよこれ! 臭くないし! 旨味は少ないのかもしれないけど、脂分が十分にそれを補って、噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる!」

 と、毒味役をしてやると歩も恐る恐るだが肉を食い、美味そうに顔を綻ばせる。こうして二人の魔法で俺達は食糧事情に一時の解決を得た。
 いや、コリンゴを出せることを考えれば、これ以降心配することもないのかもしれない。草が生えている限り。
 ログハウスで休息をとった俺達は順調に旅路を続けることとなる。


――はずだったのだが、次に浮かび上がってくる問題はというと……。
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