男爵家の娘の私が気弱な王子の後宮に呼ばれるなんて何事ですか!?

蒼キるり

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4.気弱に見えて頑固です

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 怯えた子猫のように背中を丸めて寝台に座る皇子から離れた位置の椅子に腰掛けたミアは、困惑と納得の入り混じった顔で頷いていた。


「……つまり、こういうことですか」


 ミアがなんとか宥めるようにして落ち着かせた皇子は、ぽつぽつと己の事を語った。
 ひどくゆっくりと覚束ない喋りをミアは弟と接するよりも更に根気強く聞き、それをどうにか纏めようとしている。


「殿下はそういった行為を極力避けたいと思っているけれど、ご自分の立場故にそれは許されない。一応こうして後宮に通ってはいるもののお役目は果てしていない。そして今夜も私とは何事もなく終えることを希望している。……ということですね」


 合っていますか? とミアが尋ねると、未だ涙の跡が残る顔で皇子はこくりと幼子のように頷いた。
 正直言って頭が痛いというのがミアの率直な感想だった。道理でお子に恵まれないはずだ。
 当然だろう、為すべきことを為していないのだから、子供が出来るはずもない。むしろ出来たら驚きである。後宮の女が他の男となど笑い話にもなりやしない。


「……不躾な質問なことは承知しておりますが、殿下は何故そういうことを行いたくないのです? 下世話な事とは思いますが、相手に任せておけば殿下が何もしなくても事は終わるでしょうに。言い方は悪いですが、目を閉じて耐えれば終わるでしょう、こういうことは」

「そ、そういうことはお互いに想いが通じあって初めて行うことだと母様が言っていた」


 皇子が顔を赤らめて首を振る。白い顔に生気が戻って何よりだ、とは言っていられない状況だ。
 そういえば第一皇子の母である妃は随分と寵愛を受けていたと聞いた覚えがあるとミアは微かな記憶を頼りに思い出していた。

 確か何年も前に亡くなってしまってからというもの王の後宮通いが盛んになっているという噂もあったはずだ。
 その辺りの背景も考えると皇子がこういう発言をするのも仕方ないのだろうかとミアは密かに首を傾げる。


「それに皆、随分と積極的で、その、躊躇われるというか……人に触れるのもあまり好きではないし」


 ぽそぽそと小さな声で付け加える皇子に、むしろそちらの方が納得できるとミアは深く頷いた。
 ミアが顔を見る度に袖で顔を隠そうとする皇子はどうやら人見知りもあるようだった。
 今日その日にあった人とゆっくり話もせずに即座に閨を共にするなんて無理な話だろうなと思わずにはいられない。


「でも皆、今日こそはと期待してくれているし、行きたくないとも言えなくて……」


 皆というのは御付きの人達のことらしく、皇子は言われるがままにここに通っているらしい。
 なんてことだろう、ミアは頭を抱えたい気持ちになった。
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