君においしい料理を作りたい!

蒼キるり

文字の大きさ
10 / 10

10.幼馴染の告白!

しおりを挟む
「私は涼太の料理だけじゃなくて、涼太が好きなの!」


 そこに描かれていたのは俺が料理をしている姿だった。
 ひどく楽しそうに微笑んでいる。亜子に俺がこんな風に見えているというのが驚きだった。
 俺を見ているというのも生まれてきて一番の驚きかもしれない。
 亜子はいつも絵の方ばかり見ていて、俺のことなんて見ていないのだと思っていた。


「涼太は私のことなんて、手のかかる幼馴染としか思ってないかもしれないけど、でも私は涼太が好きなんだもん」


 半泣きの亜子にようやく我に返って反論する。


「いや、いやいや俺も亜子のこと好きだよ」

「違う!それは友だちの好きじゃん!」

「そんなことないよ、好きだよ」


 いや勢い余ってなんだかすごいことを言ってる自覚は薄々ある。ずっと気づかれないようにしていたからだ。
 でも亜子が俺のことを少しでも意識してくれているなら隠す理由もない。


「そんなことある!だって私が引き止めても帰っちゃうし!なんの躊躇いもなく抱きしめてくるし!頭撫でるし!」

「お、おう」

「そもそも私はずっとアピールしてたもん!でも全然気づいてくれないから諦めようと思って遠い美大選んだのに、涼太は迷わず着いてきてくれるし、意味わかんない!」


 どうやら俺の気づかないところでとんでもなく色々なことをやらせてしまっていたようだ。申し訳ない。
 でもあの無防備な態度が俺限定だったのは安心した。誰彼構わずだったらと内心不安だったのだ。


「あのさ、亜子が言うことも分かるんだけど、俺の言い分も聞いてよ」


 とんでもなくむくれ顔で亜子がしぶしぶ頷く。むくれ顔すら可愛く見えるのだから、つくづくどうしようもないのかもしれない。


「俺、亜子のために部屋通って起こして三食作って片付けて何かと世話焼いてるだろ?そんなの誰にでもできねえよ。そりゃできるすげえ人格者もいるかもしれないけどさ。少なくとも俺は、好きじゃないやつにそこまで出来るほど聖人でも善人でもないよ」

「……うん」

「亜子に少しでも意識してもらえたらな、とか俺がいなきゃダメになってもらいたいな、とかそんなこと思いながら亜子のそばにいたよ」


 俺の言葉を聞きながら熱で涙腺が緩んでいるのか、亜子がぐすぐすと泣き始めてしまった。
 昔みたいだなあと可愛く思いながら亜子の頭を撫でると、涼太と名前を呼ばれた。


「これからも私にご飯作ってください」

「え、そりゃ明日も明後日も作るけど」

「そ、そうじゃなくてぇ」


 いきなり何かと思えば。でもそうじゃないらしい。


「明日も明後日も作ってほしいけど、そうじゃなくて、それだけじゃなくてぇ」

「うんうん。ゆっくりでいいぞ」

「一生私のためだけに私のご飯作って、私の絵を見て凄いって言って、そういう涼太でいてよぉ」


 プロポーズみたいだなぁと思いながら、それも満更でもない気分で俺は、わかったと頷く。


「明日も明後日もその先も、一生亜子のためだけに作るよ」


 そう言うと、俺の大好きな満面の笑みを亜子は見せてくれた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

かつて僕を振った幼馴染に、お月見をしながら「月が綺麗ですね」と言われた件。それって告白?

久野真一
青春
 2021年5月26日。「スーパームーン」と呼ばれる、満月としては1年で最も地球に近づく日。  同時に皆既月食が重なった稀有な日でもある。  社会人一年目の僕、荒木遊真(あらきゆうま)は、  実家のマンションの屋上で物思いにふけっていた。  それもそのはず。かつて、僕を振った、一生の親友を、お月見に誘ってみたのだ。  「せっかくの夜だし、マンションの屋上で、思い出話でもしない?」って。  僕を振った一生の親友の名前は、矢崎久遠(やざきくおん)。  亡くなった彼女のお母さんが、つけた大切な名前。  あの時の告白は応えてもらえなかったけど、今なら、あるいは。  そんな思いを抱えつつ、久遠と共に、かつての僕らについて語りあうことに。  そして、皆既月食の中で、僕は彼女から言われた。「月が綺麗だね」と。  夏目漱石が、I love youの和訳として「月が綺麗ですね」と言ったという逸話は有名だ。  とにかく、月が見えないその中で彼女は僕にそう言ったのだった。  これは、家族愛が強すぎて、恋愛を諦めざるを得なかった、「一生の親友」な久遠。  そして、彼女と一緒に生きてきた僕の一夜の物語。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

居酒屋で記憶をなくしてから、大学の美少女からやたらと飲みに誘われるようになった件について

古野ジョン
青春
記憶をなくすほど飲み過ぎた翌日、俺は二日酔いで慌てて駅を駆けていた。 すると、たまたまコンコースでぶつかった相手が――大学でも有名な美少女!? 「また飲みに誘ってくれれば」って……何の話だ? 俺、君と話したことも無いんだけど……? カクヨム・小説家になろう・ハーメルンにも投稿しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...