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9.幼馴染のスケッチブック
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「いただきます」
いつもより小さな亜子の声に合わせる。亜子が匙で粥を掬い、ふうふうと冷ましてから口に運んだ。
「おいしい」
へにゃりと弱々しくそれでいて満足そうに亜子が笑う。
いつもより食べる速さは流石に遅いけど、ちゃんと食べれているようだからそのうち熱も下がるだろう。
そう安心しながら俺も味の薄い粥を口にした。
味は薄いながらもふわふわとした卵の食感はいいし控えめな甘さもいい。たまにはこういう素朴な味も食べるべきだな。
「ごちそうさまでした」
食べ終えて片付けた後も、俺は亜子のそばにいた。
風邪が移らないかと一度心配されたけど、俺が頑として動かないので諦めたらしかった。
亜子も心なしか嬉しそうにしてくれている気がする。体調が悪い時って一人が寂しいもんな。分かるぞ。
「にしてもこの部屋の散らかりようは凄いな」
黙ってそばにいるのも暇なので部屋をちらちらと見ていたのだが、思わずそう言ってしまうくらい散らかっている。
普段は隣の部屋にしか入らないから知らなかった。あそこもかなり散らかっているけど、まさかそれ以上だとは。
床に積み重ねられたおびただしい量のスケッチブックをなんともなしに突くと、微妙なバランスで成り立っていたのか、雪崩のようにばさばさと崩れてしまった。
「あ、悪い。……ん?なんだこれ」
たまたま転がった一冊が開かれ、そこに描かれていたものを見て思わず首をひねった。
「そ、それは!だめ!」
亜子の慌てた声が聞こえたけど、俺にしては大変珍しく亜子の言うことは聞けなかった。
「これって……」
そこに描いてあったのは、間違いなく俺が作った料理の絵だった。
それだけならたまたま亜子のインスピレーションが働いただけだと思えた。
でも散らばるスケッチブックのどこを見渡しても俺の作った料理が描かれているのだ。これは偶然ではあり得ないだろう。
とても、とても嬉しかった。
「亜子、嬉しいよ」
「え?そ、それって……」
「亜子がこんなに俺の料理を好きでいてくれたなんて」
まさか亜子が絵を描いてくれるほどだなんて思ってもいなかった。
しかもおそらくこれは毎日毎食毎の絵だ。俺の料理はなんて愛されているんだろう。
嫉妬してしまうくらいだ。
「ち、ちがう!」
なのに亜子が悲痛な声を上げるものだから、やっぱり勘違いかと一瞬にしてへこんでしまう。
それを察してくれたのか亜子が慌てたように首を振る。別に気を使ってくれなくてもいいのだけど。
「ち、違わないけど、違う!涼太の料理は好きだけど!それだけじゃなくて!」
亜子がベッドから転がり出るように飛び起きて、俺が持っていたスケッチブックを引ったくる。
そしてあるページを開いて俺の前に突きつけてきた。
いつもより小さな亜子の声に合わせる。亜子が匙で粥を掬い、ふうふうと冷ましてから口に運んだ。
「おいしい」
へにゃりと弱々しくそれでいて満足そうに亜子が笑う。
いつもより食べる速さは流石に遅いけど、ちゃんと食べれているようだからそのうち熱も下がるだろう。
そう安心しながら俺も味の薄い粥を口にした。
味は薄いながらもふわふわとした卵の食感はいいし控えめな甘さもいい。たまにはこういう素朴な味も食べるべきだな。
「ごちそうさまでした」
食べ終えて片付けた後も、俺は亜子のそばにいた。
風邪が移らないかと一度心配されたけど、俺が頑として動かないので諦めたらしかった。
亜子も心なしか嬉しそうにしてくれている気がする。体調が悪い時って一人が寂しいもんな。分かるぞ。
「にしてもこの部屋の散らかりようは凄いな」
黙ってそばにいるのも暇なので部屋をちらちらと見ていたのだが、思わずそう言ってしまうくらい散らかっている。
普段は隣の部屋にしか入らないから知らなかった。あそこもかなり散らかっているけど、まさかそれ以上だとは。
床に積み重ねられたおびただしい量のスケッチブックをなんともなしに突くと、微妙なバランスで成り立っていたのか、雪崩のようにばさばさと崩れてしまった。
「あ、悪い。……ん?なんだこれ」
たまたま転がった一冊が開かれ、そこに描かれていたものを見て思わず首をひねった。
「そ、それは!だめ!」
亜子の慌てた声が聞こえたけど、俺にしては大変珍しく亜子の言うことは聞けなかった。
「これって……」
そこに描いてあったのは、間違いなく俺が作った料理の絵だった。
それだけならたまたま亜子のインスピレーションが働いただけだと思えた。
でも散らばるスケッチブックのどこを見渡しても俺の作った料理が描かれているのだ。これは偶然ではあり得ないだろう。
とても、とても嬉しかった。
「亜子、嬉しいよ」
「え?そ、それって……」
「亜子がこんなに俺の料理を好きでいてくれたなんて」
まさか亜子が絵を描いてくれるほどだなんて思ってもいなかった。
しかもおそらくこれは毎日毎食毎の絵だ。俺の料理はなんて愛されているんだろう。
嫉妬してしまうくらいだ。
「ち、ちがう!」
なのに亜子が悲痛な声を上げるものだから、やっぱり勘違いかと一瞬にしてへこんでしまう。
それを察してくれたのか亜子が慌てたように首を振る。別に気を使ってくれなくてもいいのだけど。
「ち、違わないけど、違う!涼太の料理は好きだけど!それだけじゃなくて!」
亜子がベッドから転がり出るように飛び起きて、俺が持っていたスケッチブックを引ったくる。
そしてあるページを開いて俺の前に突きつけてきた。
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