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25.分かりたくない
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よくよく考えると浩也は彼女らしき人と一緒に居たわけで、例え美奈に告白されたとしても良いと言うわけがないと思い立ったのはマグカップの中の紅茶が温くなってしまった頃だった。
しかも浩也が彼女と一緒に居たのは美奈も見ているのだから告白なんてするわけない。ない、はずだ。
やっとの事で自分を納得させて美奈の部屋の扉をノックして中に入ると美奈に遅いと文句を言われた。
そう言った美奈の顔はさっきまで泣いたようには全く思えなかった。
「お兄ちゃん、紅茶は熱くないと意味ないよ!ねえ、浩也さん」
俺が勧めて床に座った浩也は困ったように曖昧に頷いた。
「……紅茶はちょっと冷めたぐらいが良いんだよ」
「それはお兄ちゃんが猫舌だからでしょー!」
その後も少しだけ話して浩也が煎餅を食べて紅茶を飲み終わった辺りで立ち上がった。
「浩也さん、また来てね!」
手を振りながら言う美奈がもしかしたら浩也のことを本当に好きなんだろうかと思いながら、俺も立ち上がった。
「そこまで送ってくる」
二人で階段を下りながら、浩也に言いそびれていた事を伝える。
「遅くなったけど……今日、ありがとな。浩也が自転車貸してくれなきゃ、俺一人じゃ連れて帰るの大変だった」
「別に。大した事じゃないよ。お茶までご馳走になったし」
俺が少しだけ前を歩いていているから、浩也の顔は見えない。
「浩也はさ……」
だから、言うつもりもなかった事を口走った。
「誰にでもこんな事するんだろ」
怒っているような言い方になった。お礼を言いたかった、それだけなのに。
ちょうど階段を下り終わって動かずに俯いていると、浩也が隣に立った気配がする。
「……なんで、佐武以外にそんな事しなきゃいけないの」
とん、と壁に押さえつけられる。
目の前の浩也の顔は怒っているというより、悲しそうに見えた。
「浩也……」
「黙って」
押し付けられるように唇を重ねられる。
首を振っているのに頭を抱えられてしまい、舌を絡められる。
「んっ……」
思わず声が漏れて、慌てて力を込める。
上には美奈が居る。こんな事していると気づかれたら美奈はどう思うだろうか。
浩也もいつものようにキスしたりはせず、唇を離して、その後ちろりと俺の唇を小さく舐め離れた。
「……送らなくて良いよ。道は分かるから」
そう言って、俺に触れていた手を離して迷ったように口を開いた。
「俺も紅茶は冷めたぐらいが好き」
そう言った浩也の顔を俺は見る事が出来なかった。
家を出て行った浩也を確認すると、ずるずると壁にもたれるように崩れ落ちる。
好きという言葉に身体が震えて泣きそうになった意味が俺には分からなかった。
分かりたくなかった。
しかも浩也が彼女と一緒に居たのは美奈も見ているのだから告白なんてするわけない。ない、はずだ。
やっとの事で自分を納得させて美奈の部屋の扉をノックして中に入ると美奈に遅いと文句を言われた。
そう言った美奈の顔はさっきまで泣いたようには全く思えなかった。
「お兄ちゃん、紅茶は熱くないと意味ないよ!ねえ、浩也さん」
俺が勧めて床に座った浩也は困ったように曖昧に頷いた。
「……紅茶はちょっと冷めたぐらいが良いんだよ」
「それはお兄ちゃんが猫舌だからでしょー!」
その後も少しだけ話して浩也が煎餅を食べて紅茶を飲み終わった辺りで立ち上がった。
「浩也さん、また来てね!」
手を振りながら言う美奈がもしかしたら浩也のことを本当に好きなんだろうかと思いながら、俺も立ち上がった。
「そこまで送ってくる」
二人で階段を下りながら、浩也に言いそびれていた事を伝える。
「遅くなったけど……今日、ありがとな。浩也が自転車貸してくれなきゃ、俺一人じゃ連れて帰るの大変だった」
「別に。大した事じゃないよ。お茶までご馳走になったし」
俺が少しだけ前を歩いていているから、浩也の顔は見えない。
「浩也はさ……」
だから、言うつもりもなかった事を口走った。
「誰にでもこんな事するんだろ」
怒っているような言い方になった。お礼を言いたかった、それだけなのに。
ちょうど階段を下り終わって動かずに俯いていると、浩也が隣に立った気配がする。
「……なんで、佐武以外にそんな事しなきゃいけないの」
とん、と壁に押さえつけられる。
目の前の浩也の顔は怒っているというより、悲しそうに見えた。
「浩也……」
「黙って」
押し付けられるように唇を重ねられる。
首を振っているのに頭を抱えられてしまい、舌を絡められる。
「んっ……」
思わず声が漏れて、慌てて力を込める。
上には美奈が居る。こんな事していると気づかれたら美奈はどう思うだろうか。
浩也もいつものようにキスしたりはせず、唇を離して、その後ちろりと俺の唇を小さく舐め離れた。
「……送らなくて良いよ。道は分かるから」
そう言って、俺に触れていた手を離して迷ったように口を開いた。
「俺も紅茶は冷めたぐらいが好き」
そう言った浩也の顔を俺は見る事が出来なかった。
家を出て行った浩也を確認すると、ずるずると壁にもたれるように崩れ落ちる。
好きという言葉に身体が震えて泣きそうになった意味が俺には分からなかった。
分かりたくなかった。
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