世間が何を言おうとも、私たちは夫婦です。

蒼キるり

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婚姻届を出さない夫婦

21話

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 私と宮くんが付き合い始めるまで、そう長くはかからなかった。
 ありきたりに、良いように言い換えればひどく自然に、私たちの距離は縮まっていった。
 話が合って、月に何度か会い、お互いに恋人もいない。意識し始めるのは、そんなに難しい話ではないだろう。
 昔は全然そんな気が無かったのに、こんな風になるなんて少し不思議だった。昔の自分が見たら驚くだろう。でも、もしかしたら大人になるってこういうことなのかもしれない。なんて思ったりもした。
 付き合おうか、とはっきりと口にするまでに時間はかからなかった。


「呼び方、変えてみない?」


 付き合ってるんだから、と提案したのは私の方からだった。
 大した理由はなかった。でもお互いに苗字の呼び捨てよりは、良い呼び方があるんじゃないかと思ったのだ。
 だって高校生の時と変わらない。ただの同級生ではなく、恋人なのだから少し特別感が欲しい。
 なんて、私は少し浮かれていた。でも向こうもきっと同じくらい浮かれていたのだろう。


「いいかもな。気分変わりそうだし」


 いつにない笑顔で頷いてくれた。それが嬉しくてその場で考えを巡らせた。
 何がいいかだろうかとお互いに楽しく話し合った。
 名前で呼ぶ、という案も出たのだけど、なんだか気恥ずかしくてすぐに却下した。
 紗江、恵斗、なんて。私達にはちょっとレベルが高すぎる。きっと照れて呼べないだろう。本末転倒だ。
 苗字をもじって呼ぼう、ということになってお互いに思いついたものをぽんぽんと上げていった。
 ありきたりなものから絶対に恥ずかしくて呼べないものや由来が何かも分からないものにまで発展した。
 くだらないやり取りが楽しくて、ずっと笑っていた。


「じゃあ、私が宮くんって呼んで」

「うん、俺が松ちゃん」


 なんか子どもっぽい、とお互いに吹き出して、すぐにやめるかもと言いながらも、その響きが気に入っていた。
 呼び方を変えるだけで、なんだか距離が一層縮まった気がしたのだ。
 それは宮くんも同じだったようで、躊躇いなく私のことを松ちゃんと呼んだ。
 ずっとそう呼んできたみたいに、ひどくその呼び方は私達に馴染んだ。
 出会った時から呼び合っていたみたいに。大した意味もなくつけたあだ名は、私達にとってひどく大切なものになったのだ。

 宮くん、と呼んで宮くんが振り向くのが嬉しかった。
 松ちゃん、と宮くんが私を呼ぶのが嬉しかった。

 ただ、嬉しかっただけなことに影を差したのが、同じく本当なら嬉しいものだったのが皮肉だと思う。
 宮くんにプロポーズされたのだ。
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