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Act1.帝光学園
アンチ王道転校生?3
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「上杉か、おはよう」
「はい! あなたの付き人、上杉謙一、ただいま参上しました! 朝食をとりましょう、頼人さん」
朝から元気いっぱいなやつだなと羨ましく思いながら、まぶたをこすり、あくびを噛み殺した。
「朝食を持ってきてくれたのはありがたいが廊下は走るべきじゃないし、ドアはもっと静かに開けろ。ほかの人間に怪我をさせたら、どうする?」
「以前ならいざ知らず、今、生徒会室へ寄りつく人間なんて生徒会補佐をしている頼人さんか、風紀委員の方々だけですよー」と上杉は悪びれる様子もなく銀色のけんどんをソファーの前にある机へ置いた。「まじめに仕事をしているあなたが、この部屋を出るのは用を足すときか、何か問題が発生したときだけ。でもウィリアムさんや蘭さんから緊急の連絡はありません。男子トイレも、この扉の前も人がいる気配がなかったのでババーッ! と開け放っちゃいました」
「ああ言えばこう言うだな。俺に減らず口叩くのは一向に構わないが教師やほかの先輩方にやると、おまえ、嫌われるぞ」
上杉の言動にあきれ果ててしまう。
何事もなかったかのような様子で同い年の男は、せっせと食事の準備をする。
「もちろん平常時なら人通りのある廊下は走りませんし、ドアを思い切り開いたりしませんよ。でも頼人さんの、お食事を一分一秒早く届け、休みを取らせる任務があったので、ご容赦ください。いくらブルーライトをカットするメガネを掛けていても、朝から晩までろくに休みも取らず、ありみたいに小さな字がびっしり詰まった紙やパソコンを相手にしていたら身体を悪くしますよ」
「一応、人間というだけで、俺は――……」
「確かに、あんたは先人類の中でも一際体力のある人かもしれませんね。でも、このまま休まないで稼働し続けたら、そのうちエネルギー切れを起こして、生徒会の仕事で大きなミスをしちゃったり、テストで赤点を取っちゃうかもしれませんよ?」
「そんな醜態を晒すわけがないだろ。生徒会メンバー、リコールなんてことになったらバカを見るからな」と一蹴し、ソファーに再度腰を下ろした。
「学校は大丈夫でも、ご当主様から任務を与えられて現場へ直行ってことになったとき、動けなくなったら、どうするんですか?」
「それは、」
痛いところを突かれ、返答に窮する。
眉をつり上げ、口をへの字にした上杉が左手の人差し指を立て、ズイッと顔を近づける。
「頼人さんが仕事をきっちりこなしてくれないと、オレやミシェルは養護施設に逆戻りなんですよ!? あんたの身体は、あんたひとりのものじゃない。本来、背負っているものと、不知火会長に言われて入った生徒会の仕事のどちらが本職で重要なのか、忘れてもらっては困ります。頼人さんの調子が悪くなったり、ぶっ倒れたりしたら、それこそ一大事なんですからね!」
「それくらい言われなくても、わかっている。それ以上余計なことをしゃべるのなら、その口に紙の束を突っ込むぞ」
「オレ、シュレッダーでも、ヤギでもないんですから、冗談でも勘弁してくださいよ!?」
「ああ、ジョークだ」
「頼人さん!」と情けない声を出す上杉の姿に、つい笑ってしまう。
以前なら、ほかのメンバーや先輩方もここにいて楽しく談笑していたのが夢のようだ。
そう思ったら、なぜか急に胸が痛くなる。
しかしデジタル腕時計の記録を見ても、脈拍や心拍数に乱れはない。心臓に異常が発生していないのになんだろうと胸を押さえていれば、白い湯気の立つ鍋が置かれる。ふわっと、かつお節の食欲をそそる香りに腹も鳴り始める。
「今朝のメニューは、かまぼこと玉子が入った煮込みうどん。そんでもってキュウリとニンジン、白菜の浅漬けになります。オレはキャベツ山盛りのカツ丼大盛りと味噌スープです。それじゃあ、いっただきまーす!」
元気に挨拶をすると上杉は味噌汁を一口飲んで、丼にがっついた。
朝から、こってりした揚げ物を食べるなんて、胃もたれを起こさないのだろうかと不思議に思いつつ、白いうどんをすする。もやしたいにひょろっとした身体つきをしているのに、毎日大食い選手権で活躍する選手並みに食べて太らないのだから燃費がいいんだか、悪いんだかと心の中で、つぶやいた。
「ふたりだけだと、ここ、すごく広いし、静かですね」
「そうだな。静かすぎて落ち着かない」
「またまたー、頼人さんも会長がいなくて、さびしいんでしょ?」と上杉がへらへら笑う。「あんたが、あの方を好きなのは付き人であるオレたちはもちろん、親衛隊の皆さんも周知のことですからね」
なんだ、それはと眉をひそめるが、上杉は俺の様子に気づかずベラベラしゃべる。
「頼人さんの会長を見る熱い眼差し。そして会長のやわらかな表情。至近距離から親しげに話し、ボディータッチをする姿に黄色い悲鳴や雄たけびをあげる女子生徒たちの光景。なんだか懐かしく思えます」
「どうでもいい話を延々とするな。それよりも何か調べて、わかったことはあるか?」
茶色いタレがついた焦げ茶色の衣を頬張っていた上杉は、首を上下に振った。口の中に入っている肉を咀嚼し、のどをゴクリと鳴らした。
「はい、それはもう、たくさん! いもづる式に出てきましたよ」
「はい! あなたの付き人、上杉謙一、ただいま参上しました! 朝食をとりましょう、頼人さん」
朝から元気いっぱいなやつだなと羨ましく思いながら、まぶたをこすり、あくびを噛み殺した。
「朝食を持ってきてくれたのはありがたいが廊下は走るべきじゃないし、ドアはもっと静かに開けろ。ほかの人間に怪我をさせたら、どうする?」
「以前ならいざ知らず、今、生徒会室へ寄りつく人間なんて生徒会補佐をしている頼人さんか、風紀委員の方々だけですよー」と上杉は悪びれる様子もなく銀色のけんどんをソファーの前にある机へ置いた。「まじめに仕事をしているあなたが、この部屋を出るのは用を足すときか、何か問題が発生したときだけ。でもウィリアムさんや蘭さんから緊急の連絡はありません。男子トイレも、この扉の前も人がいる気配がなかったのでババーッ! と開け放っちゃいました」
「ああ言えばこう言うだな。俺に減らず口叩くのは一向に構わないが教師やほかの先輩方にやると、おまえ、嫌われるぞ」
上杉の言動にあきれ果ててしまう。
何事もなかったかのような様子で同い年の男は、せっせと食事の準備をする。
「もちろん平常時なら人通りのある廊下は走りませんし、ドアを思い切り開いたりしませんよ。でも頼人さんの、お食事を一分一秒早く届け、休みを取らせる任務があったので、ご容赦ください。いくらブルーライトをカットするメガネを掛けていても、朝から晩までろくに休みも取らず、ありみたいに小さな字がびっしり詰まった紙やパソコンを相手にしていたら身体を悪くしますよ」
「一応、人間というだけで、俺は――……」
「確かに、あんたは先人類の中でも一際体力のある人かもしれませんね。でも、このまま休まないで稼働し続けたら、そのうちエネルギー切れを起こして、生徒会の仕事で大きなミスをしちゃったり、テストで赤点を取っちゃうかもしれませんよ?」
「そんな醜態を晒すわけがないだろ。生徒会メンバー、リコールなんてことになったらバカを見るからな」と一蹴し、ソファーに再度腰を下ろした。
「学校は大丈夫でも、ご当主様から任務を与えられて現場へ直行ってことになったとき、動けなくなったら、どうするんですか?」
「それは、」
痛いところを突かれ、返答に窮する。
眉をつり上げ、口をへの字にした上杉が左手の人差し指を立て、ズイッと顔を近づける。
「頼人さんが仕事をきっちりこなしてくれないと、オレやミシェルは養護施設に逆戻りなんですよ!? あんたの身体は、あんたひとりのものじゃない。本来、背負っているものと、不知火会長に言われて入った生徒会の仕事のどちらが本職で重要なのか、忘れてもらっては困ります。頼人さんの調子が悪くなったり、ぶっ倒れたりしたら、それこそ一大事なんですからね!」
「それくらい言われなくても、わかっている。それ以上余計なことをしゃべるのなら、その口に紙の束を突っ込むぞ」
「オレ、シュレッダーでも、ヤギでもないんですから、冗談でも勘弁してくださいよ!?」
「ああ、ジョークだ」
「頼人さん!」と情けない声を出す上杉の姿に、つい笑ってしまう。
以前なら、ほかのメンバーや先輩方もここにいて楽しく談笑していたのが夢のようだ。
そう思ったら、なぜか急に胸が痛くなる。
しかしデジタル腕時計の記録を見ても、脈拍や心拍数に乱れはない。心臓に異常が発生していないのになんだろうと胸を押さえていれば、白い湯気の立つ鍋が置かれる。ふわっと、かつお節の食欲をそそる香りに腹も鳴り始める。
「今朝のメニューは、かまぼこと玉子が入った煮込みうどん。そんでもってキュウリとニンジン、白菜の浅漬けになります。オレはキャベツ山盛りのカツ丼大盛りと味噌スープです。それじゃあ、いっただきまーす!」
元気に挨拶をすると上杉は味噌汁を一口飲んで、丼にがっついた。
朝から、こってりした揚げ物を食べるなんて、胃もたれを起こさないのだろうかと不思議に思いつつ、白いうどんをすする。もやしたいにひょろっとした身体つきをしているのに、毎日大食い選手権で活躍する選手並みに食べて太らないのだから燃費がいいんだか、悪いんだかと心の中で、つぶやいた。
「ふたりだけだと、ここ、すごく広いし、静かですね」
「そうだな。静かすぎて落ち着かない」
「またまたー、頼人さんも会長がいなくて、さびしいんでしょ?」と上杉がへらへら笑う。「あんたが、あの方を好きなのは付き人であるオレたちはもちろん、親衛隊の皆さんも周知のことですからね」
なんだ、それはと眉をひそめるが、上杉は俺の様子に気づかずベラベラしゃべる。
「頼人さんの会長を見る熱い眼差し。そして会長のやわらかな表情。至近距離から親しげに話し、ボディータッチをする姿に黄色い悲鳴や雄たけびをあげる女子生徒たちの光景。なんだか懐かしく思えます」
「どうでもいい話を延々とするな。それよりも何か調べて、わかったことはあるか?」
茶色いタレがついた焦げ茶色の衣を頬張っていた上杉は、首を上下に振った。口の中に入っている肉を咀嚼し、のどをゴクリと鳴らした。
「はい、それはもう、たくさん! いもづる式に出てきましたよ」
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