荊棘の檻

鶴機 亀輔

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Act1.帝光学園

アンチ王道転校生?4

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 空になった丼を横へ追いやり、上杉は保湿リップをパーカーのポケットから出した。白地に水色をしたリップのキャップを開けば旧型のUSB端末の差込口が現れる。スラックスのポケットから取り出した小型プロジェクターに差し込む彼の姿を見ながら、手を三回叩いた。

 部屋のカーテンがすべて閉まり、室内の明かりが消え、暗くなる。外から余計な人間が入ってこないように扉や窓の鍵が自動でロックされた。

 そして白壁に顔写真が横並びに、映し出される。

「荊棘切の名前を使って守家と友禅、そして桐生さんについて調査しました」

 生徒手帳を作成する際に撮影された桐生の顔が出る。

 次いで、三白眼で髪の毛をハリネズミのようにツンツンさせている、いかにも不良っぽい見た目をした守家。

 いかにも軽薄そうな笑みを浮かべ、柑橘類のように鮮やかなオレンジ色の髪と空色の瞳が特徴的な友禅の顔が出た。

 守家と友禅も桐生と同じ時期に帝光学園へと転校してきて、転校初日に桐生の付き人となる申請書を提出したのである。

「頼人さんの読み通り、守家と友禅は以前から面識あるみたいです。学園に来る前のデータを見てビックリしましたよ。あいつら、実家が隣近所なんです。番地以外一致していてハッキングされて情報を改ざんされてないか、何回も確認させられました。幼稚園、小・中と同じところを通ってるし、本籍について住民票を取り寄せて調べたら、いとこ同士だし」

「通りで親密なわけだ」

 毎回、桐生の周りをうろちょろし、言い合いをしている姿なら俺も見かけた。

 ほとんどの連中は、ふたりが桐生に惑わされ、恋のライバルとして争っていると思っているようだが、実際は違う。

 あれは家族同然に育った犬と猫がじゃれ合うようなもの。

 殴り合いの喧嘩をしている最中に学園のものを壊し、こってり絞りあげた。その際に、親に怒られた兄弟が肩を並べて内緒話をしているみたいで、怪しいと思ったんだ。

「転校してきた理由もついでに調べたんですが、よくわかりません。前の学校で暴力事件を起こしたり、停学を食らったわけでもなければ、外で警官に補導された記録もゼロです。とりあえず裏口入学の線はなさそうですよ」

 鼻で笑いながら、両手を組み、彼らの写真を見つめる。

「『アンチ王道転校生』という言葉に踊らされ、委員長は今回も本質を見誤ったな」

「ですね。風紀委員長様の的外れな意見には毎回辟易します。転入試験の記録も確認しました。桐生さんが五教科をオール百なのは納得ですが、あのツーバカが推薦状もなしに、あの超難しい科目試験を不正なしで合格してるのには驚きです」

「人は見かけによらんということだ。存外、バカなふりをしているだけなのかも知れないぞ」

 浅漬けと、うどんを食べ終え、満腹感による眠気を感じながら、上杉の言葉に集中する。

 話の続きをするように促すと、やつは真剣な顔つきをしながら、こちらへ顔を向けた。

「その線は大ありかも知れません」

「というと?」

「蘭さんが戸籍に書かれている住所へテレポートして聞き込み調査をしたり、本籍地の役場に問い合わせて情報収集したんです。そうしたら桐生彩都なんて人間は、この世に存在しないってわかったんです。」

「なるほど、偽物か。ウィルは、どうしている?」

「今、警察庁長官とオンラインで話しているところですよ。そこが駄目なら、親しくしている政治家の先生に面会するそうです。外交官の方々から、直接桐生さんが何者か訊くと言っていました。それでも駄目なら部下を使って必要な情報を取ってくるそうです」

「いつものように行うというわけだな。それにしても桐生の戸籍が作られたものだとしたら本名が、べつにあるはずだ。おそらく守家や友禅が知っているはず。いや、あいつらも桐生の関係者だろう」

 なんらかの犯罪に巻き込まれ、逃げ回っている被害者か、はたまた小・中学生だった頃に人を殺害する事件を起こした加害者、はたまたすでに大学や院を卒業し、学位を取得した上で政府機関や軍部から任務を受けているホワイトハッカー。他国の情報機関や敵国からスパイ工作をやってくるように命令されたテロリストやハッカーの線も残っている。

「これが桐生さんの戸籍と身辺調査の結果です。目を通してください」

 岡箱の上段に入れてあった茶封筒を受け取り、紙の資料を取り出す。

 東北エリアの北端アオモリの下北半島出身。中流階級の一般家庭出身。先人類の両親を持つが、遺伝的欠損により生まれつき能力を発揮できない難病に冒され、虚弱体質で幼少期のほとんどを東北エリアの病院で過ごし、勉学は通信制のものを受けていた。

 十二のときに交通事故で両親を亡くしてからは、彼らと関係の深い桐生の家に引き取られる。高校は通学制を選択するが一年間、病気療養に専念していたため、留年。将来、自分を救ってくれた医師のようになりたいと帝光大医学部の進学を考え、学園へと転入した。

「さすがだ。この短期間で、ここまで情報を集めるとは。代々、忍者の超能力を受け継いできたうかには、かなわないな」

「ですね。こればかりは侍の超能力じゃ、かないませんから」
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