荊棘の檻

鶴機 亀輔

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Act1.帝光学園

アンチ王道転校生?5

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 書類から目線を上げ、上杉の茶色い瞳を見据える。

 やつは「あれ? オレのほっぺに米粒でもついてます?」などと勘違いしながら両頬に手をやった。

「……桐生彩都を養子として引き取った義理の父親と不知火会長の父親が仕事の関係者で互いの家をしょっちゅう行き来していたというのは本当か?」

 目を泳がし、自分の両手の人差し指をこすり合わせている上杉は「ウィリアムさんや蘭さんの情報なんだから、まず間違いありませんよねー」となんてことのないように答える。「やっぱりショックですか? 好きな人の親が素性の知れないやつと一枚噛んでいるかもしれない状況は……」

「父親は父親。会長は会長だ。何もまだ、あの方が桐生と悪事を企んでいると決まったわけではない」

「でも、このタイミングで不知火会長が桐生さんと四六時中一緒にいるのって、おかしくありません? 会計であり、会長の付き人でもあるさんが、この状況を黙ってみていること自体、変ですもん」

「確かに納得がいかないな」

 俺の発言に上杉はギョッとした表情をするが、あえて無視する。

 目を丸くし、オロオロしながら小型プロジェクターを片づけ始める彼を横目に見つつ、手を三回叩いて生徒会室をもとの状態へ戻した。

「会長と土井先輩が、込み入った事情もなしに愚行を冒すはずがない。何かしらの理由があるに決まっている。上杉」

「は、はい!」

 慌てて立ち上がり、軍隊の人間みたいに背筋をのばす。

「俺は今、この上なく最高にいい気分だ! おかげで、さっきまでの疲れが一気に吹っ飛んだ。絶好調だ」

「それって興奮状態でアドレナリンが全開になって、元気になっていると身体が思い違いをしているだけなのでは……」

 口をもごつかせ、ボソボソ言っている声が聞こえたが、そんなのに構っている暇はない。

 俺はジャケットの上着を羽織り、立ち上がる。

「ちょっと、どこへ行くんですか!?」

「学食の様子を見がてら、朝食を用意してくれたミシェルと、おばちゃんたちに礼を言ってくる。うまかった。ごちそうさま」

「はい、お粗末でーす。……じゃなくて! お願いですから、もうこれ以上動き回らないでくださいよー」

「何を言う。どうせ今も、桐生を攻撃したくて堪らない連中や、嫉妬に狂ったアホどもがウジャウジャ集まっているはずだ。乱闘騒ぎになれば風紀の連中も骨を折る。準備運動だと思って、やつらの相手をしてやろう」

 すると慌てて上杉はお盆やどんぶりをけんどんの中に入れ、俺の後をついてきながら大声で、わめき始める。

「いやいや、あんた、ちゃんと仮眠を取ったほうがいいですからね!? マジで物騒なことは、やめてくださいよ?」

「それは連中次第だ。やつらがおとなしくしていれば、俺だって無体な働きをしないからな」



 そうして俺は千年前に学生たちが使っていた学生カバンを手にし、学食までの道のりを歩いたのだ。
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