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本編
31(公爵家面々視点)
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ーメルヴィルス(父視点)ー
牛舎や鶏小屋の話をした日からレイは食堂や厨房に姿を現さなくなったらしい。
部屋から一歩も出なくなったのだ。レイの笑顔や料理は一人娘の心を失った気持ちを優しく癒やしてくれた。ましてや、頭を悩ませていた領地対しても、光明を与えてくれた。感謝こそすれ、暇しく思う事などなかったのに。
本人だって辛くないはずない。けれど、レイは私達に笑顔を与えてくれた。
美味しいと感じる気持ち。趣味で手に入れた力を、誇らしいと思う気持ちを思い出させてくれた。領土の為に、やるべき道を示してくれた。
記憶を失くして、本来のレイシアがやらない事をやり始めた時、正直戸惑いもした。
けれど、目覚めてしばらくの間、泣き叫んでいたレイが、そのことが嘘のように、明るく振る舞う彼女を見て思った。
娘とは違うのかもしれない。けれど、『彼女が娘の様に愛おしい』と…。
私は約束をした牛舎や鶏小屋を完成させる。そして、レイも大切な娘で、不要ではないのだと伝えたい。
ーメルア(母視点)ー
酵母を作って、パンの味見をしてからレイが部屋からでなくなった。
ホームシック7日と思いもしたけれど、ティーファに様子を聞くと、違う様に思えた。
一人ている時に小さく呟いたそうだ。「私の勝手で死ぬなんて出来ないから…、無理しても食べなきゃ…」と。
レイは、レイシアを乗っ取ったと、思っているのかしら…。そして私達がレイシアを恋しがってると思って、自身を消したいと思っているのかしら。でも人の体だと思うから出来ない…?
調べてみてわかったけれど、未来へつながる架け橋の言い伝え通りならば、最初は前世の記憶に翻弄される様だ。その後時間をかけて融合していくものだと書かれていた。
もしレイが、私達があの子を必要としていないと思っていて、大切な娘を奪ったと思っているのならば…。そう思わせたのは、私達のせいだ。
混乱している彼女に伝えず、ずっと苦しんでいたのにも気がつかず、私達が接していたからだとしたら……。
レイも大切な娘なのだと、伝えなければ……。
ーラフェル視点(料理長)ー
最近、お嬢様が来なくなった。頻繁に厨房へと足を運んで思いも寄らない料理やお菓子を作り上げていくお嬢様。
ある日、未来へつながる架け橋が降りてきた、存在なのだと知らされた。彼女の望む様にしてあげてくれとの公爵様のお言葉もあり、厨房へと迎え入れ、彼女の望む様にレイ様と呼んだ。
いつも「みんなに喜んで貰えて嬉しい!」そういいながら、屈託なく笑うお嬢様。色んな料理の作り方を教えて貰う事や、それを俺達風にアレンジしていく事が楽しく感じた。
お嬢様が来なくなった厨房は、以前と変わらないはずなのに、どこか殺風景で居心地の悪い空間になった。
そんな時に、奥方様より呼び出された俺達だった。
牛舎や鶏小屋の話をした日からレイは食堂や厨房に姿を現さなくなったらしい。
部屋から一歩も出なくなったのだ。レイの笑顔や料理は一人娘の心を失った気持ちを優しく癒やしてくれた。ましてや、頭を悩ませていた領地対しても、光明を与えてくれた。感謝こそすれ、暇しく思う事などなかったのに。
本人だって辛くないはずない。けれど、レイは私達に笑顔を与えてくれた。
美味しいと感じる気持ち。趣味で手に入れた力を、誇らしいと思う気持ちを思い出させてくれた。領土の為に、やるべき道を示してくれた。
記憶を失くして、本来のレイシアがやらない事をやり始めた時、正直戸惑いもした。
けれど、目覚めてしばらくの間、泣き叫んでいたレイが、そのことが嘘のように、明るく振る舞う彼女を見て思った。
娘とは違うのかもしれない。けれど、『彼女が娘の様に愛おしい』と…。
私は約束をした牛舎や鶏小屋を完成させる。そして、レイも大切な娘で、不要ではないのだと伝えたい。
ーメルア(母視点)ー
酵母を作って、パンの味見をしてからレイが部屋からでなくなった。
ホームシック7日と思いもしたけれど、ティーファに様子を聞くと、違う様に思えた。
一人ている時に小さく呟いたそうだ。「私の勝手で死ぬなんて出来ないから…、無理しても食べなきゃ…」と。
レイは、レイシアを乗っ取ったと、思っているのかしら…。そして私達がレイシアを恋しがってると思って、自身を消したいと思っているのかしら。でも人の体だと思うから出来ない…?
調べてみてわかったけれど、未来へつながる架け橋の言い伝え通りならば、最初は前世の記憶に翻弄される様だ。その後時間をかけて融合していくものだと書かれていた。
もしレイが、私達があの子を必要としていないと思っていて、大切な娘を奪ったと思っているのならば…。そう思わせたのは、私達のせいだ。
混乱している彼女に伝えず、ずっと苦しんでいたのにも気がつかず、私達が接していたからだとしたら……。
レイも大切な娘なのだと、伝えなければ……。
ーラフェル視点(料理長)ー
最近、お嬢様が来なくなった。頻繁に厨房へと足を運んで思いも寄らない料理やお菓子を作り上げていくお嬢様。
ある日、未来へつながる架け橋が降りてきた、存在なのだと知らされた。彼女の望む様にしてあげてくれとの公爵様のお言葉もあり、厨房へと迎え入れ、彼女の望む様にレイ様と呼んだ。
いつも「みんなに喜んで貰えて嬉しい!」そういいながら、屈託なく笑うお嬢様。色んな料理の作り方を教えて貰う事や、それを俺達風にアレンジしていく事が楽しく感じた。
お嬢様が来なくなった厨房は、以前と変わらないはずなのに、どこか殺風景で居心地の悪い空間になった。
そんな時に、奥方様より呼び出された俺達だった。
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