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本編
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レイス様の背中にしがみついて事の成り行きを見守る。
「は? ただのメイドだろ! オレに献上しろよ、悪いことにはしないから。側妃の一人にでもしてやるよ。身分を考えたら、ありがたい事だろ。感謝しろよ」
『いや……、何なのこのナルシスト…。嬉しい訳ないじゃない……』
涙目でレイス様を見ると、ポンポンと頭を撫でる様に軽く叩くと、キッと王子らしき人物を睨む。
「相変わらず話聞かないな……。なんの用で家に来たんだよ」
「あ、宰相からパンを奪ったんだが、美味かったからレシピを献上しろよ。何の為に王家がいると思ってんだよ。他の事業も渡せよ」
なんだか意味不明の理屈で責めてくる。私こんな人の為に、なにかしてあげたいとは思えないよ…。てか、お父様に持たせたお弁当のパン奪ったのか……。ご機嫌悪い訳だ。
「へぇ、じゃあその理屈父上に対して言えるんだね。言ってみるといいよ。どうなるかは、わかりきってるけど…」
「ぐぬぬ……」
「しかもさ僕達は領地から得た大切な金を献上している訳じゃないよ? 貸し付けてるだけさ。文句があるなら返してから言いなよ」
気がつくとレイス様の服を握りしめ震えていた。
そんな私を励ます様に、優しくポンポンと手に触れ、「行こう」と支えてくれた。
「あとさ……、緊急時用にとゲートの仕様リストに王家の人間も入れていたけど…、家の人間に手を出そうとしたんだもの。抹消しておくから。来たければ、先触れを出してから、何日もかけて来ればいいよ。それだけのことしたんだもの、わかってるよね」
こんなに怒ってるレイス様は、初めて見た。穏やかな口調なのに、嘲りや侮蔑といったものを言葉の端々から感じる気がする。
そういうと「お客様のお帰りだよ」と一緒に駆けつけていた騎士達に、クロスフォード様は連行されるように、ゲートがあるらしい部屋へと連れて行かれた。
「レイ…。恐い思いさせたね。登録の抹消をしてくるから、ティーファと一緒にサロンに行っていて?」
そう言って、私の額に軽くキスを落とすと、レイス様は行ってしまった。
あんな人初めて見た怖い。ナルシスト過ぎて気持ち悪い。レイス様が助けてくれて嬉しい。怒ったレイス様…、怖かったけど格好良かった……。
そんないろいろな感情に翻弄され、サロンについても口を開くことができなかった。ティーファさんが「これでも飲んで落ち着いてください……」そう言って温かい紅茶を淹れてくれる。
ティーファさんの優しさと紅茶の温かさに、やっと息がつけた気がする。
しばらく経って、お父様やお母様がサロンにつき、顔色の悪い私を気遣いながらも何も言わず抱きしめてくれた。
「は? ただのメイドだろ! オレに献上しろよ、悪いことにはしないから。側妃の一人にでもしてやるよ。身分を考えたら、ありがたい事だろ。感謝しろよ」
『いや……、何なのこのナルシスト…。嬉しい訳ないじゃない……』
涙目でレイス様を見ると、ポンポンと頭を撫でる様に軽く叩くと、キッと王子らしき人物を睨む。
「相変わらず話聞かないな……。なんの用で家に来たんだよ」
「あ、宰相からパンを奪ったんだが、美味かったからレシピを献上しろよ。何の為に王家がいると思ってんだよ。他の事業も渡せよ」
なんだか意味不明の理屈で責めてくる。私こんな人の為に、なにかしてあげたいとは思えないよ…。てか、お父様に持たせたお弁当のパン奪ったのか……。ご機嫌悪い訳だ。
「へぇ、じゃあその理屈父上に対して言えるんだね。言ってみるといいよ。どうなるかは、わかりきってるけど…」
「ぐぬぬ……」
「しかもさ僕達は領地から得た大切な金を献上している訳じゃないよ? 貸し付けてるだけさ。文句があるなら返してから言いなよ」
気がつくとレイス様の服を握りしめ震えていた。
そんな私を励ます様に、優しくポンポンと手に触れ、「行こう」と支えてくれた。
「あとさ……、緊急時用にとゲートの仕様リストに王家の人間も入れていたけど…、家の人間に手を出そうとしたんだもの。抹消しておくから。来たければ、先触れを出してから、何日もかけて来ればいいよ。それだけのことしたんだもの、わかってるよね」
こんなに怒ってるレイス様は、初めて見た。穏やかな口調なのに、嘲りや侮蔑といったものを言葉の端々から感じる気がする。
そういうと「お客様のお帰りだよ」と一緒に駆けつけていた騎士達に、クロスフォード様は連行されるように、ゲートがあるらしい部屋へと連れて行かれた。
「レイ…。恐い思いさせたね。登録の抹消をしてくるから、ティーファと一緒にサロンに行っていて?」
そう言って、私の額に軽くキスを落とすと、レイス様は行ってしまった。
あんな人初めて見た怖い。ナルシスト過ぎて気持ち悪い。レイス様が助けてくれて嬉しい。怒ったレイス様…、怖かったけど格好良かった……。
そんないろいろな感情に翻弄され、サロンについても口を開くことができなかった。ティーファさんが「これでも飲んで落ち着いてください……」そう言って温かい紅茶を淹れてくれる。
ティーファさんの優しさと紅茶の温かさに、やっと息がつけた気がする。
しばらく経って、お父様やお母様がサロンにつき、顔色の悪い私を気遣いながらも何も言わず抱きしめてくれた。
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