新たな世界へ導かれた俺と、迎え入れてくれたきみ。

皇ひびき

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歩み寄る闇

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 千聖ちさとの医師との話が終わったあと、車で家まで帰ってきた。

 検査結果としては、特に何も出なかったようだが、容態が変わる事もある為に注意して欲しいとの事だったらしい。

 実際意識を取り戻すのに時間もかかっている為に、用心をしたいと言うことだろう。

「本当に目覚めて良かった…。 すごく心配したんだからな…」

 心底安心したと、言った体であおは言う。


 また真っ黒い笑みを、隠そうともせずに、浮かべながら千聖は言った。

「このまましばらく目覚めない様子だったらなら、危なかったわね…、あの子達…」

「何が!?」

 焦ってそう呟く碧に、笑いながら千聖は続けた。

「ふふ…、まぁ…ある程度は冗談よ。 でも、あの子達……、このまま鳴の意識が戻らなかったら、どうするのがすら考えていなかったんだもの。 うちの可愛い娘を、傷つけた事に対する罰はきちんと受けてもらうわ」

 大人しく話を聞いていためいが「心配かけてごめんなさい」ポツリと言った。

「良いのよ…。無事でいてくれたのだから。 病院じゃあ気を使っただろうし、お家でゆっくり休みなさい…、ね?」

 そういうと、千聖はエプロンをつけた。

「今日は消化しやすいだろうし、お雑炊にしようね」

 そう言うと、
 棚の上にある大きな土鍋を用意した。

 冷蔵庫に寝かしておいた残りご飯を塊を崩すようにして。サラリと水洗いする。

 小鳥遊家たかなしけでは、ご飯の粘り気がなくサラリと仕上がるので、軽く水洗いをする。

 鶏のモモ肉を、一口大に切り分け、土鍋で水から弱火でグツグツと煮ていく。

 アクを取りつつ、鶏肉の色が変わったら、椎茸のスライスしたものを一緒に煮込む。

 ある程度煮立ったら、水洗いしたご飯を足して更にグツグツと煮る。

 粉末のだしや、塩、醤油、や砂糖、おろした生姜を入れて味を調える。

 色味付と栄養を取れるようにと、仕上げに溶き卵を入れ、茶碗へと盛る。

 仕上げに小口ネギを、少量乗せれば完成だ。

「碧くんも消化早いかもしれないけど、たくさん食べてね」

 そう言いながら取り分けた器を手渡される。

 ふんわりとした醤油のいい香りが、食欲を刺激する。

「「いただきます」」

 ハモる様にそう言うと、手渡されたレンゲに、鶏肉や椎茸などを一緒に合わせて食べると、卵の優しい風味や鶏肉から出た風味、そして砂糖を加えたからだろうか。

 ほんのりとした甘みが口の中いっぱいに広がる。

「美味しい……」

 鳴が、聞こえるか聞こえないかの、小さな声で呟いた。

「本当に美味いです!」

 そう言いながら、レンゲを進める碧。

 今回の事件は当たり前の日々を簡単に壊しにかかってきた。

 鳴の意識が戻らないままだったら、食事を摂る気力もなかった。

 料理が美味しいなんて、ほんの些細な事を、喜べる幸せを痛感しながら、質素な食事をした。
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