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番外編
台風の日
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準備をしてきた台風の日がやってきた。
シルも雨夏も危ないからと引き止めてくれたけど、牧場のロッジから足を踏み出す。
本来は台風の日にしか出ないモンスターも、吹雪の日にしか出ないモンスターもいた気がするけど、私一人で倒すには、まだレベルが足りていない。
なので、モンスター小屋をビュービューと強い風が吹き荒れ、たまに雷の音が鳴り響く中、収穫と毛並みの手入れに向かう。
秋に収穫できる果樹や、お茶の木が無事かは明日にならなければわからないけれど、動物の世話をしてずぶぬれになってロッジに戻ると、「お風呂に入って風ひいちゃう」だとか『無理しないで……』とシルと雨夏に泣きつかれた。仕方がないので、お風呂に入ったら、今日はゆっくり過ごそうと決めた。
ーシルフィ視点ー
シフォが準備してくれて、湖で遊んだ。
水遊びは新鮮で楽しかったが、水着というのがシフォの白い肌の大部分をさらけ出すものだから、何だか居心地が悪くて視線をあわせられなかった…。
スイカを食べ、浴衣で花火をした。
今まで楽しむ為に何かをする事がなくて、シフォのいた世界の風習に戸惑いながらも、初めて心から楽しんだ気がした。やはり王城では、自分のためには生きていなかったのだなと感じた。
冒険者になってからも、今を生きるのに精一杯で、そういった感覚を持てていなかった事に初めて気がついた。
初めて義務の恒例行事ではないけど、また来年もやりたい、不思議とそう思った。
台風とこの地で呼ばれる嵐が来て強風が吹き雷がなっている。
こんな日は城に閉じこもっていたな…、などと思いを馳せていると「行ってきます」とシフォの元気な声が聞こえてきた。
え? この嵐の中外出するのか? 「ついて行こうか?」そう問うと「シルも濡れるだけだからゆっくりしてて!」そう言い、ロッジを出ていった。
心配そうに扉を雨夏と見つめていると、スブ濡れのシフォが帰ってきた。
「濡れた濡れた~…」
「早く湯に浸かった方がいいよ、そのままじゃ風邪をひく」
シフォはお風呂に入って、スッキリした後、大人しくロッジにいてくれた。
本当に目が離せない人だなとつくづく感じた日になった。
ー雨夏視点ー
ワタシは、彼らに拾われてから、自身を異質だと感じる事は少なくなった。笑う事が多くなった。
モンスターに対して、どうしようもないイタズラをしても、「よく考えつくね~」と笑い飛ばしてくれたり、「もっと効果を望める組み合わせもあるかもな…」なんて背中を押してくれる家族がいるから。
初めてラムネを飲んだ日。初めてスイカを食べた日、水遊びをした日。手持ち花火を知った日今まで経験したことない出来事を主とシルといっぱい経験して楽しいってことを少しずつ知った。
ワタシは生きることで精一杯で襲われたらやり返す。生きる為に獲物をかる。それだけの為に生きていた気がする。
美味しいものを一緒に食べると幸せ。一緒に何かをすることが幸せ。些細なことかもしれないけど、幸せだなぁと感じることが増えてきた。
台風という嵐の日。
普段なら木の下で、身を縮めて嵐が通り過ぎるのを待っていただけだった。
なのに今は安全な建物の中で大好きな人にかまこまれてる。手入れのされた尻尾を抱き込むように丸くなって過ごすワタシ。
そんな中、主が嵐の中を外出していった。
「ついて行こうか?」
そういうワタシたちに、「今日はいいよ。そのうちに付き合ってね」そう言い残し出ていってしまった。
夏だけど、帰る頃には体は冷えているかもしれない。温かいホットミルクと覚えたてのフレンチトーストを準備して、仕方がないので帰りを待つ。
疲れ帰ってくるであろう彼女の笑顔の為に、何か出来る今のワタシが誇らしいと感じながら……。
シルも雨夏も危ないからと引き止めてくれたけど、牧場のロッジから足を踏み出す。
本来は台風の日にしか出ないモンスターも、吹雪の日にしか出ないモンスターもいた気がするけど、私一人で倒すには、まだレベルが足りていない。
なので、モンスター小屋をビュービューと強い風が吹き荒れ、たまに雷の音が鳴り響く中、収穫と毛並みの手入れに向かう。
秋に収穫できる果樹や、お茶の木が無事かは明日にならなければわからないけれど、動物の世話をしてずぶぬれになってロッジに戻ると、「お風呂に入って風ひいちゃう」だとか『無理しないで……』とシルと雨夏に泣きつかれた。仕方がないので、お風呂に入ったら、今日はゆっくり過ごそうと決めた。
ーシルフィ視点ー
シフォが準備してくれて、湖で遊んだ。
水遊びは新鮮で楽しかったが、水着というのがシフォの白い肌の大部分をさらけ出すものだから、何だか居心地が悪くて視線をあわせられなかった…。
スイカを食べ、浴衣で花火をした。
今まで楽しむ為に何かをする事がなくて、シフォのいた世界の風習に戸惑いながらも、初めて心から楽しんだ気がした。やはり王城では、自分のためには生きていなかったのだなと感じた。
冒険者になってからも、今を生きるのに精一杯で、そういった感覚を持てていなかった事に初めて気がついた。
初めて義務の恒例行事ではないけど、また来年もやりたい、不思議とそう思った。
台風とこの地で呼ばれる嵐が来て強風が吹き雷がなっている。
こんな日は城に閉じこもっていたな…、などと思いを馳せていると「行ってきます」とシフォの元気な声が聞こえてきた。
え? この嵐の中外出するのか? 「ついて行こうか?」そう問うと「シルも濡れるだけだからゆっくりしてて!」そう言い、ロッジを出ていった。
心配そうに扉を雨夏と見つめていると、スブ濡れのシフォが帰ってきた。
「濡れた濡れた~…」
「早く湯に浸かった方がいいよ、そのままじゃ風邪をひく」
シフォはお風呂に入って、スッキリした後、大人しくロッジにいてくれた。
本当に目が離せない人だなとつくづく感じた日になった。
ー雨夏視点ー
ワタシは、彼らに拾われてから、自身を異質だと感じる事は少なくなった。笑う事が多くなった。
モンスターに対して、どうしようもないイタズラをしても、「よく考えつくね~」と笑い飛ばしてくれたり、「もっと効果を望める組み合わせもあるかもな…」なんて背中を押してくれる家族がいるから。
初めてラムネを飲んだ日。初めてスイカを食べた日、水遊びをした日。手持ち花火を知った日今まで経験したことない出来事を主とシルといっぱい経験して楽しいってことを少しずつ知った。
ワタシは生きることで精一杯で襲われたらやり返す。生きる為に獲物をかる。それだけの為に生きていた気がする。
美味しいものを一緒に食べると幸せ。一緒に何かをすることが幸せ。些細なことかもしれないけど、幸せだなぁと感じることが増えてきた。
台風という嵐の日。
普段なら木の下で、身を縮めて嵐が通り過ぎるのを待っていただけだった。
なのに今は安全な建物の中で大好きな人にかまこまれてる。手入れのされた尻尾を抱き込むように丸くなって過ごすワタシ。
そんな中、主が嵐の中を外出していった。
「ついて行こうか?」
そういうワタシたちに、「今日はいいよ。そのうちに付き合ってね」そう言い残し出ていってしまった。
夏だけど、帰る頃には体は冷えているかもしれない。温かいホットミルクと覚えたてのフレンチトーストを準備して、仕方がないので帰りを待つ。
疲れ帰ってくるであろう彼女の笑顔の為に、何か出来る今のワタシが誇らしいと感じながら……。
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