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天敵
天敵1★
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★★★
痣の浮かぶ足に、うまく力が入れられなくて、雪くんが、私をまた抱き上げる。またもやお姫様抱っこ。ごめんね、雪くん……。
申し訳ないのだけど、体の震えが止まらなくて、雪くんの温もりに、心の強張りが少しずつ解けていくみたい。
「迷惑かけてごめんね……。助けてくれてありがとう」
そう言い、雪くんの首に抱きつくと、何故だか彼は息を呑んだ。
キッチンにつくと、詩紋ちゃんが椅子を引いてくれて、雪くんがそこに私をゆっくり座らせてくれる。
「大丈夫……?」
ロゼくんはそう言って、私の顔を覗き込むと、膝の上に乗ってきた。私を安心させるように首に手を回して、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「詩紋だって、樹里さんにハグしたいんだよ!」
そう言って私の腕に、抱きつく詩紋ちゃん。温かいな優しいな。
★★★
そんな事を痛感していると、「これでも飲んで、少しでも、気分が紛らわされるとよいのですが……」
そう言いながら雪くんが、温かいココアを淹れてくれていた。お礼を伝えて一口飲むと、また温かい気持ちになる。
メープルシロップの入った芳ばしさが香るのに、とても優しい味わいのココア。多分、ピュアココアを牛乳で丁寧に練って、砂糖の代わりにメープルシロップを入れてくれたんだろうな。メープルシロップの様な甘さや香りを感じるけど、すごく優しい味が口の中いっぱいに広がる。
詩紋ちゃんもロゼくんも、ココアを羨ましそうに見てるから「仕方ないな…」そういうと雪くんは、全員分のココアを淹れていた。
★★★
しばらく経ち、私が落ち着いたのを見て、千鶴さんも口を開く。
「雪、アイツラにやられたのか? ハクビシンの奴らに…。どう見ても樹里ちゃんの足首に残る痣も、アイツラのものと同じようだし…。龍脈が活性化した事や、僕たちが居心地よくて集まってしまった事で、目には見えない異変があるんだろうね。だから、変化の中心として樹里ちゃんが狙われた……。そう考えるべきじゃないかな…」
その言葉に息が詰まりそうになる。
きっとあやかしの木が、自分の意志で動き回るほど元気な事や、彼らが集まってきた事、よくわからないけど『龍脈』というものが、それの上にあやかしの木を植えてしまった事……。それらが原因で、もう彼らとは会えなくなっちゃうのかな。
私以外の人間に、彼等を迫害や利用をされたくなかった。だからその事については気をつけなきゃ…、そう思ってはいたけど、全然守れてなかったんだ……。
そう思うと、力のない自分が不甲斐なくて唇を噛みしめる。
「わがままかもしれないけど……、みんなと一緒にいたいよ……。せっかく知り合えたのにこのままお別れなんて嫌だよ…」
思わず口に出してはいけない思いが、溢れてしまった。ずっと忙しい両親にも、わがままは言わないようにしてたのに。私は一人でも、淋しくないって思ってたのに。
彼らと過ごした時間は、短いけど濃厚で、一人でも大丈夫!淋しくないって、気がつかないふりをしていた心の穴を、優しく暖かく埋めてくれた。
大人なのに情けない……、お別れなんて嫌だなって思う程、涙が止まらない……。
「大丈夫です。僕たちが樹里さんを見捨てて、このまま離れるとでも?」
そう言い、私の頭を撫でてくれる。
なんだろう、このショタは本当にイケメンだな……。
「僕たちが、アイツラを2度と手出ししたくならない様に、きっちり絞めれば、良いだけですから!安心してください」
「雪に大ケガ負わせた、お礼もまだしてないしね…。どう返してあげたら、アイツラ喜ぶのかしら…」
「樹里さん泣かせたの…、許さない……」
「こんなに愛らしい女の子を、泣かせるのは良くないよね。それに躾は大切だよね…、どう料理しようか……」
あれ? うちの可愛い文鳥あやかしさん達、いい笑顔なのに、目が笑ってないような? 全員がすごい黒いオーラを出してる様に、感じるのは気のせいだよね……? 思わず驚きすぎて涙が止まる…。
残りのココアを味わいながら、「そんなはずないわだってみんないい子だもの……」と、感じた事を誤魔化すのだった。
痣の浮かぶ足に、うまく力が入れられなくて、雪くんが、私をまた抱き上げる。またもやお姫様抱っこ。ごめんね、雪くん……。
申し訳ないのだけど、体の震えが止まらなくて、雪くんの温もりに、心の強張りが少しずつ解けていくみたい。
「迷惑かけてごめんね……。助けてくれてありがとう」
そう言い、雪くんの首に抱きつくと、何故だか彼は息を呑んだ。
キッチンにつくと、詩紋ちゃんが椅子を引いてくれて、雪くんがそこに私をゆっくり座らせてくれる。
「大丈夫……?」
ロゼくんはそう言って、私の顔を覗き込むと、膝の上に乗ってきた。私を安心させるように首に手を回して、ぎゅっと抱きしめてくれる。
「詩紋だって、樹里さんにハグしたいんだよ!」
そう言って私の腕に、抱きつく詩紋ちゃん。温かいな優しいな。
★★★
そんな事を痛感していると、「これでも飲んで、少しでも、気分が紛らわされるとよいのですが……」
そう言いながら雪くんが、温かいココアを淹れてくれていた。お礼を伝えて一口飲むと、また温かい気持ちになる。
メープルシロップの入った芳ばしさが香るのに、とても優しい味わいのココア。多分、ピュアココアを牛乳で丁寧に練って、砂糖の代わりにメープルシロップを入れてくれたんだろうな。メープルシロップの様な甘さや香りを感じるけど、すごく優しい味が口の中いっぱいに広がる。
詩紋ちゃんもロゼくんも、ココアを羨ましそうに見てるから「仕方ないな…」そういうと雪くんは、全員分のココアを淹れていた。
★★★
しばらく経ち、私が落ち着いたのを見て、千鶴さんも口を開く。
「雪、アイツラにやられたのか? ハクビシンの奴らに…。どう見ても樹里ちゃんの足首に残る痣も、アイツラのものと同じようだし…。龍脈が活性化した事や、僕たちが居心地よくて集まってしまった事で、目には見えない異変があるんだろうね。だから、変化の中心として樹里ちゃんが狙われた……。そう考えるべきじゃないかな…」
その言葉に息が詰まりそうになる。
きっとあやかしの木が、自分の意志で動き回るほど元気な事や、彼らが集まってきた事、よくわからないけど『龍脈』というものが、それの上にあやかしの木を植えてしまった事……。それらが原因で、もう彼らとは会えなくなっちゃうのかな。
私以外の人間に、彼等を迫害や利用をされたくなかった。だからその事については気をつけなきゃ…、そう思ってはいたけど、全然守れてなかったんだ……。
そう思うと、力のない自分が不甲斐なくて唇を噛みしめる。
「わがままかもしれないけど……、みんなと一緒にいたいよ……。せっかく知り合えたのにこのままお別れなんて嫌だよ…」
思わず口に出してはいけない思いが、溢れてしまった。ずっと忙しい両親にも、わがままは言わないようにしてたのに。私は一人でも、淋しくないって思ってたのに。
彼らと過ごした時間は、短いけど濃厚で、一人でも大丈夫!淋しくないって、気がつかないふりをしていた心の穴を、優しく暖かく埋めてくれた。
大人なのに情けない……、お別れなんて嫌だなって思う程、涙が止まらない……。
「大丈夫です。僕たちが樹里さんを見捨てて、このまま離れるとでも?」
そう言い、私の頭を撫でてくれる。
なんだろう、このショタは本当にイケメンだな……。
「僕たちが、アイツラを2度と手出ししたくならない様に、きっちり絞めれば、良いだけですから!安心してください」
「雪に大ケガ負わせた、お礼もまだしてないしね…。どう返してあげたら、アイツラ喜ぶのかしら…」
「樹里さん泣かせたの…、許さない……」
「こんなに愛らしい女の子を、泣かせるのは良くないよね。それに躾は大切だよね…、どう料理しようか……」
あれ? うちの可愛い文鳥あやかしさん達、いい笑顔なのに、目が笑ってないような? 全員がすごい黒いオーラを出してる様に、感じるのは気のせいだよね……? 思わず驚きすぎて涙が止まる…。
残りのココアを味わいながら、「そんなはずないわだってみんないい子だもの……」と、感じた事を誤魔化すのだった。
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