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天敵

天敵3★

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 ★★★

 せつくん達が、一つ一つ穴が無い様にと、計画を組み上げていく。

 今私に出来るのは、千鶴さんから預かったあやかしの種を育てる事と、あやかしの木と仲良くなって、効果をつけてもらう事。

 うーん…。効果ってなんだろう? ゲームでいう所の防御力を上げたり、耐性上げたりとか…、攻撃力を上げたりするバフみたいなものかな…?
 その布をまとって戦うの?? それにあやかしの木と仲良くってどうなるんだろう?? なんだかイメージが纏まらないな……。


 とりあえず、千鶴さんのくれた種を植えよう。話はそれからだよね。

 そう思い立ち上がると、それに気がついたせつくんが私に駆け寄り、「大丈夫ですか?」と手を差し伸べてくれる。

「もう足の力は戻ってきているし、大丈夫だよ」って答えたら、「でも心配なのでついて行きますよ」なんてエスコートする様に、スッと手を差し出しつつ言われた……。

『なんなのこのイケショタ!! 大きくなったら、肉食系の女の子に狙われちゃうよ…? 今だってこんなに素敵なのに! 少しお姉さんは、君の将来が心配になりますよ…』

 だって普通に生きてたら、こんな風にエスコートされたり、手をつないで歩くのだって「恋人とじゃないと…」しないよね……。いやまって…、恋人でもするかどうか分かんないかな…。

 小説の中の令嬢みたいに、執事さんがいるとか婚約者がいないと、ありえないシチュエーションのように感じてしまう。

 だから少しときめいちゃうのかな…。このときめきを糧に! 描きかけのイラストも頑張ろう!

 思考にふけっていた私は、「恋人…?」とぽそりと呟き、不機嫌そうになったせつくんには気がつかなかった。


 裏庭につくと、「種は樹里じゅりさんの好きな所に、埋めるといいと思いますよ」そう言われ、せつくんの木と競合しない距離に、種を植えてみる。

 じょうろに用意していた水をかけると、せつくんのくれた種の様に、すくすくとのびる。それはもうすくすくと!

「これ……、ジャックと豆の木…の夢とか、見てるんじゃないよね……。」

 天にも届きそうに、大きくのびるのを見て、私は素でドン引いた…。

 流石に私も「限度を知ろうか?? 千鶴さん!?」と怒鳴りたくなる成長具合で……、これで隠す気本当にあるの?? とも思ってしまう。

 呆気に取られていた、せつくんも「あのバカなんて、種を渡してるんだ……」と心做しか、青筋をたてている気が…。


 多分、私を守る為に特別製の種を、渡してくれたんだろうけど……。流石にこれはやり過ぎじゃないだろうか……。

 善意が何やら、空回りしているというのか……。気持ちはありがたいのだけど対処に困る……。


 呆然と千鶴さんの木をみていると、せつくんの木がスルスルと樹の幹を延ばし、千鶴さんの木を大きく揺さぶる。

 イヤイヤする様に千鶴さんの木は、身動ぎしていたのだけど、急に静かになったかと思うと、シュルシュルと縮んできて、せつくんのあやかしの木と同じくらいの高さになった。

「縮んだ??」

 意味のわからない私は、せつくんを見つめる。

「……張り切るのはいいけど、樹里じゅりさんを困らせるなと、あやかしの木が、説得したみたいですね。もう私が仲良くはならなくて、いいんじゃないかな。あいつ既に樹里じゅりさんに良い所見せたくてやらかしてる感じだし……」

 溜息をつきながら、そう吐き捨てるせつくん。この木のやらかしに、私はついていけるのかな……なんて不安を感じつつ、裏庭から室内に戻る私達だった。
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