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天敵

天敵9★

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 ★★★

 晩御飯を食べて、お茶を飲みながら一息ついていると、ロゼくんから「これ…」と木箱を渡された。

 わけもわからず受け取り、千鶴さんに「開けてみて」と、言われたので大人しく従う。

 渡された桐の箱を開けてみると、キラキラと光輝いている水晶で出来た、ブレスレットが入っていた。

「無事に作れて良かった……。上手く交わらなかければ、意味がなかったし……」

 そう深く息を吐き、呟くせつくん。

樹里じゅりさんは、元々霊力はあったのだろうけれど、僕や詩紋しもん達と一緒にいること…。そして、あやかしの木の食べ物の影響や…、この地の龍脈…、いろんな影響が重なったみたいで、すごく目立つ存在になってきてる……みたいなの。お守りなしで外で歩いたら、今日みたいに狙われる位に……」

 言葉を引き継ぐようにして、詩紋しもんちゃん達2人がそう教えてくれた。

 せつくんの様に、食べ物を生み出す木を生み出すあやかしも、あまり存在しなかったみたいで、私の様に人間も影響を受ける事を知らなかったみたい。

 ただ、種を植えた本人だからこそ出る効果で、他の人が食べても私の様にはならないだろうと言われた…。

「僕らやあやかしの木が、樹里じゅりさんを大好きなように…。多分僕らが惹かれてやまない、気質なのかもしれない……」

 悪いあやかしなら、私を食べて取り込み、妖力を上げようとする可能性がある…とか、いいあやかしでも料理や気質故に、そばにいたいと思わせるそうだ。
 それ故に、私が神隠しをされかねない、存在になっている……と説明された。

 正直言ってよくわからない……。悲しければ泣いちゃうし、怒るし普通の人でしかないのに…。なんでだろう……。


樹里じゅりちゃん、これからは出歩く時にはブレスレットをつけてね。君のあやかしを惹きつける要素の、目眩ましの役割をしてくれるから。そうでないと、今日みたいに狙われてしまうかもしれない……。一人で出歩けなくなってしまうから…、約束だよ?」

 真剣な顔で千鶴さんに、そう言われ息をのむ。

 思い出すだけで、背中にゾクリと悪寒が走る。あんな怖い思いを……、ずっとする事になりそうだったと言われ、恐ろしさに体が強張ってしまう……。


「そうならない様に、僕らみんなの妖力の結晶で、お守りを作りましたから……。怖がらないで…? あやかしの木達も、力を分けてくれたんですよ! あなたを守りたいと……」

 そう言って、小さな体で安心させようと優しく背中をなでてくれるせつくん。

『温かい。優しい……』

 言われてブレスレットをよく見ると、木材で出来た文鳥の形をした飾り部分が2箇所ある。白い木材と黒みがかった木材。とても愛らしい。

「私も種生み出せたらなぁ~。叔父さんやせつみたいに、私の木のパーツも入れて欲しかった! いつか種を生み出せたら、その時一緒につけてね!」

 ちょっと拗ねた様に、そういう詩紋しもんちゃんに、無言でコクコク頷くロゼくん。

 怖くて不安な気持ちが、解けていく…。
 すごく嬉しくて、嬉しいのに泣いてしまいそうな位に、彼らの気持ちが温かい……。

「ありがとう……。大切にするね」

 私が自由に動ける様に。
 彼ら以外のあやかしに、襲われない様に。色々な理由で、彼らは私の為のお守りを作ってくれた…。

 彼らとの縁も、このブレスレットも……。私の一生の大切な宝物になった。
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