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第2章 Alea iacta est!(本編本格始動の章です)

✨7話1Part 襲撃からまる2日...元魔王も堕天使も勇者も、すでに通常通りの生活に戻ることが出来たようです

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 アスモデウスの襲撃から翌々日。もうすでに完全職場復帰した望桜と瑠凪は、日々仕事に励んでいた。

 ......とはいっても、まだ右鎖骨の骨折が完全に治りきってない瑠凪は、今日はまだ主に左手のみでできる、料理の軽いデコレーションの担当だったけど。


「「終業時間の変更......?」」


 Melty♕HoneyCatsのオーナー、兎逹零央から全従業員に、終礼で告げられた言葉を繰り返す望桜と瑠凪。


「ああ!今までは猫カフェの終業時間の上限は、遅くても22時までだったんだ。まあウチは元から21時までしかやってなかったけど、20時までの規制が出来てね~、だから20時の前にさっさと店閉めちゃうことに決めたんだよ!!」

「はあ、つまりその分帰宅時間も早くなるってことですか?」

「あれ?どうしてそこを気にするんだ望桜くん~!!さては、本当はさっさと帰りたいな~って思いながら仕事をしてたのかい!?」

「ち、違いますよ!!......同居人に自炊出来るやつが居ないから、料理はいつも俺がやってたんですけど、早く帰れるようになったら、その分飯も早く食えるようになるし、そしたらあいつら文句言わなくなるだろうしな~って思いまして......」

「的李と鐘音は毒舌だし、2人とも怒ったら怖いもんね......」

「へ~、そうだったのかい!!そりゃ~大変だったね~!!なら良かったじゃないか!!......で、望桜くんには特別にあと1個、話があるんだよ!!他のみんなは上がっていいよ~!!」

「お疲れ様でした~」

「おつです~」


 1人別で話がある、と残された望桜。みんなが帰り支度をして出ていく中、瑠凪が1人こちらを見つめたあと、外に出ていった。

 今日はちょっと瑠凪につきあってもらいたい事があって一緒に帰るつもりだったんだが、まあ待っててくれるだろ。......ちょっと申し訳ないけど。


「で、話って......」

「望桜くんには今まで、1階のカフェスペースの接客のみを任せていただろ?けど次からは2階の猫と触れ合えるスペースの担当も任せたいと思ってね......まあ、やることといったら猫の餌やりやトイレ掃除、部屋の掃除......あとは2階でも提供してるソフトドリンクとかのオーダーを取ってもらうくらいかね!」


 要するに、こまめな餌やりと営業時間前と後に、定期的なトイレ掃除と2階の清掃、猫と触れ合ったり眺めたりする中で喉が渇いたお客さんに、飲み物を提供したりするのも担当して欲しいとの事。


「あー......はい!任せてください!!」

「助かるよ!!望桜くんは2階担当は今回が初だから、にはらいくんに教えて貰うといいよ!」

「にはら......い?」

「そう!八くん!!八くんは完全2階担当だから、完全1階担当の望桜くんが会うことは無いね~ww」

「俺は2階担当になるんですか?」

「や、八くんがシフト入ってないときに、2階を上手く回してくれると助かるなと思ってね!!......あ、ひょっとして瑠凪くんと離れるのを残念に思ってるとかかい?」

「え、分かります?」


 ズバリ今思ってることを言い当てられて、若干たじろぐ望桜。一瞬頭の中で、オーナーってもしかして覚(妖怪)......?とよぎったお馬鹿な考えを秒でドブに捨て、話の続きを聞いた。


「分かるに決まってんだろ~!!望桜くんだって2ヶ月一緒に働いた、私の店の立派な従業員だから、考えてることの1つや2つ、分かるもんさ!!」

「そうなんですね!!心読めるのかと......」

「はっはっは!!そんな大層な能力なんか身につけてないよ!あるのは大事な店と従業員、それからお客さんだけさね!!あ、あとの片付けは私がやっておくから、今日はもうあがっていいよ!!」

「あ、ありがとうございます!!お先に失礼しますー!!」


 そう言って店の裏口から出ると、やはり俺の予想通り、瑠凪が待ってくれていた。

 秋口といえど、昼は暑く、夜は寒い。俺はまだ薄着で平気だが、瑠凪の方は或斗が無理にでも持って行かせるんだろう。ハイネックのジャケットを着ている。


「......あ、終わったんだ」

「おうよ、待たせたな」

「で、何の話だったの?」

「あー、2階の担当もやってくれって言われてな、確か......八?って人に教えてもらえって言われた」

「八か......2階しか担当してないから、俺もあんま面識ない。けど、喧しい奴だなってことは覚えてるよ」

「そうなのか......」


 週5、6のペースでシフトが入ってる瑠凪ですらあまり面識のない従業員·八。てことは、そのくらい1階フロアには降りてこないってことか......


「ところで......今日はどこにつきあって欲しいの?一緒に行きたい所って......?」

「ん?あー、ウニクロだよ、ウニクロ。晴瑠陽の......アスモデウスの服を買いに行こうと思って、瑠凪達は結構お洒落な服持ってたりするから、選んでもらおうと思って」

「ふーん、いいけど......アスモデウスのこっちでの名前は何になったの?」

御厨 晴瑠陽みくりや はるひ。でも、聞くところによると多重人格らしいな?だから残りの人格にも呼び名があった方が楽だから、雨弥うみか、葵雲あうんか......」

「あー......人格的には3人だけど、この間僕達が戦った人格は、滅多に出てこないと思うよ」

「そーなのか......おい瑠凪」

「何?」

「自分のこと今なんて呼んだ?」

「へ?あっ、......別に、一人称くらい何でもいいだろ!!」

「へいへいww」

(なるほど、一部の人の前では僕呼びだと......可愛い)


 今回ばかりは望桜のお鈍い感でもわかったようだ。そしてウニクロまでの移動の時間で、アスモデウス......御厨晴瑠陽について、瑠凪やその他の魔王軍関係者や聖火崎達に説明してもらったことを、頭の中でだが復習してみようと思う。


 戸籍上の名前は御厨 晴瑠陽、歳は16だ。

 そして各人格の詳細についてだが、おおよそ3人。見た目で区別するには瞳の色を見ればいいらしい。

 だが、その前に雰囲気とか性格とかで、割と区別をつけるのは簡単だとか。


 瑠凪曰く、蒼い瞳の時は読書や機械系統をいじるのが好きで、機械を使うスピードや知識は、全悪魔の中でも群を抜いて高いらしい。

 運動能力や魔法を使う能力はほぼ皆無だが、その分頭がめちゃくちゃ良いんだと。


 次に紅い瞳の時。非常に活発で、運動能力が群を抜いて高く、機動力、攻撃魔法や爆炎術式の腕も魔界トップクラスらしい。

 しかし、その分頭が悪い......というよりかは考え方とかが幼稚で、自爆することもしばしばだとか。


 最後に紫の瞳の時。2人を足して2で割った感じらしい。

 そして何より、大昔の惨劇......Apokalypse durch südliche menschliche Säule (南方人柱黙示録)というらしい(望桜は読めない)事件で身体中に大怪我を負って、そのせいで表に長くは出ていられないらしい。


 この間の戦闘程の長さは異例中の異例。普段はあれの約10分の1......7、8分しか出ていられない。......て、なんで今瑠凪止まったんだ?


「......望桜?」

「ん?」

「着いたけど......」

「......あっ!悪い悪い、ちょっと考え事してた」


 視界の上の方には既に、大々的に"ウニクロ"と書かれた看板が下がっていた。

 晴瑠陽はあの襲撃からまる2日たったにも関わらず、目を覚まさない。でもとりあえず、動きやすい服でも買っていってやるとするか。


「......あの」

「ん?今度はなんだ?」

「聞きづらいんだけどさ......服買うお金あるの?」

「2、3着分くらいまでなら」

「んー......ならいいか」

「んで、なんか動きやすい服のがいいんじゃねえかな~って思ったから、Tシャツとかで選んで貰えると助かる」

「あー......わかった」


 "動きやすい服"と瑠凪に告げ、2、3着持ってきてくれるを待つ。その間、ツミッターでも見とこ......


『この間は怖かった~(´;ω;`)
 アオンで買い物してたら、急に眠くなって、起きたら周りの人もほとんど寝てて、時間も2時間ぐらい経ってて......ほんとに怖かった~。゜゜º(゜´ω`゜)º゜゜。』

『建物がグラグラって揺れたかと思ったら、眠くなった!!なんだったんだろう?』


 ......ツミッター見るのやーめたー......


 2日前の襲撃の際、アスモデウスが起こした爆発の他に、望桜が張った反射防護結界(リフレクション·ウォール)のせいで、その中にいた人たちは眠ってしまう、というちょっとした事件も起こった。

 勇者達は個人の記憶を消せても、大多数の人間の記憶をまとめて消すことは出来ない。頼みの綱だった瑠凪も事件の記憶を消す前に、大量出血による血液不足で眠ってたし。


「......と、これでどうかな」

「おっ!これなら大丈夫だろ!ありがとな!」

「別に......アス......晴瑠陽は大事な友達だし......わっ!」

「にしし、可愛い奴だなー!!」

「ちょ、な、撫でるな!!」

「にしし~ww」


 頭1つ分下にある瑠凪の頭を思い切り撫でる。......可愛い、赤面するところとか涙目になりつつあるところも可愛い。


「か、会計してきなよ!!待ってるから!!」

「おうよ!可愛い......」

「可愛いって言うな!!」


 服の入ったカゴを預かり、レジカウンターへと移動する。会計の最中、店員さんから、
  

「可愛い彼女さんですね♡」


 って声をかけられたのはここだけの秘密にしておこう。後ろ姿だけでなく、顔もかなり近くで見つめても、んん?男?女?どっち?ってなるような顔立ちだから、無理もないだろうけど。


「戻ったぞ~。もうここで解散でいいよな?」

「......うん、別に構わないけど......また明日......あ、あとこれ......」


 顔を伏せながら瑠凪が何かを渡してきた......これは一体?


「ん?なんだこれ?」

「インナー。Tシャツとかの中に着れるやつ。晴瑠陽に渡しておいて」

「お金は?」

「いい......んじゃ、またね」

「お、おう!またな!」


 先程同様顔を伏せたまま、背を向けて歩いていく。......可愛い。嫁にしたい。でも日本は一部地域以外同性婚はダメだから、魔界に行かないとな......ぐふふ


 こうして普通の日常の幕がまた上がったのだった。


 ─────────────To Be Continued─────────────


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