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第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と
18話3Part ヴァルハラ滞在1日目のみんな③
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同時刻、ラグナロクの勇者軍本拠地·パンデモニウムの中にある5つの勇者軍元帥専用部屋のうちの1つに、勇者2人と元帥1人とその他の勇者軍兵達が集まっていた。1つの小さな棺の中を覗いては、悲しげに目を伏せる者や怒りに静かに震える者など様々だ。
そしてその小さな棺の中には、桃色の髪の少女が生気なく底に横たわっている。周りには花やお菓子、そして彼女の大好きだった魔導書を数冊と皆からの手紙が入れられている。......青ざめた顔は既に亡くなっているから当たり前なのだが、その割に小さな損傷1つない綺麗すぎる遺体は、戦争の時にでる軍兵の遺体とは似ても似つかないもので。
今にもその柔く閉じられた瞼を開けて大きな桃色の瞳で周りの者達を捉え、「じゃーん!!どうです、びっくりしましたか?」と笑いながらからかってきそうでならない。でもそんなことは起きない、起きるはずがない。何故ならもう、聖火崎が昨日望桜達にフレアリカを預けて日本からゲートでこちらに来た時、いや、その2日前の休日にフレアリカとデズニーランドに遊びに行っていた時点で既に亡くなっていたというのだから。
聖火崎はその事実に"もうちょっと彼女らにも気を配っていられれば"という後悔と自責の念に押し潰されそうになるのに必死に耐えながら、当時の状況と死因などを勇者軍元帥·シメオンから聞いている。
「これ......病気か何かなの?外傷も内出血も見受けられない......」
「それが......違うのだ」
「え?どういうこと?」
しかし予想とはまた違った答えが返ってきたことに驚き、シメオンの方に目を向ける聖火崎。彼は深刻そうに眉を顰めて、俯き加減のまま続けた。
「微かにだが、魔の者の痕跡が残っている。きっと何らかの魔術を用いて殺されたのだろう」
「......魔の者って......悪魔?」
そう恐る恐る聖火崎は訊ねた。......聖火崎は近頃、勇者軍時代よりも悪魔と接する機会がかなり多かった。今まで特別嫌っていた訳ではないが良いイメージを持っているわけでもなかった聖火崎にとって、悪魔とは"人間に害をなす生物"ぐらいの認識しか無かった。
しかし近頃の望桜や的李、瑠凪といったメンバーを筆頭に悪魔と関わるようになって以降、好きでも嫌いでもない"普通"の位置にあるのだ、悪魔という存在が。人間と悪魔の絶対敵対関係があろうとも、悪魔ではなくむしろ人間に酷い目に遭わされた経験のある聖火崎にとっては、"人間も悪魔も大して変わりはしない"のだ。
たが今回の件で聖火崎の中での悪魔の株が下がることはなく、未だに普通のままだ。しかし、"犯人にはどんな事でもしてやろう"と復讐心だけは密かに燃え上がっていた。
「遺体をここまで綺麗な状態で殺す事ができるというと、それなりに上級の悪魔だろう」
「上級の............よし、犯人は私が見つけ出してやろうじゃないの......!」
「ジャンヌ、まだ目星は......」
「大丈夫よ、私には強力な助っ人がついてるもの」
焦燥しながら聖火崎の方を見たシメオンに、そう言って怒り混じりの笑顔を見せつけた聖火崎はそのまま元帥専用部屋......アヴィスフィアの部屋から出て真っ直ぐ車庫へと向かう。そして車庫の扉に手をかけて思い切り押し開いた。
ギギギィ......
「急いで車を出してちょうだい!」
「せ、聖弓勇者様!?まだ話し合いが終られてないんじゃ......」
「いいから!」
「は、はい!!行き先は......」
運転手の不満げな様子をよそに、聖火崎は車に乗りこみ東の方を向いた。魔力感知増幅装置のおかげでその方向からほんの少し、微かに感じられる禍々しい力に期待の念を向けながら、
「ヴァルハラ独立国家の皇城、ヴァルハラ=グラン·ギニョルよ」
そう力強く1言、はっきり言い放ったのだ。......自身の向かう場所に、この事件の真相を暴いてくれる者がいると確信しながら。
──────────────To Be Continued──────────────
そしてその小さな棺の中には、桃色の髪の少女が生気なく底に横たわっている。周りには花やお菓子、そして彼女の大好きだった魔導書を数冊と皆からの手紙が入れられている。......青ざめた顔は既に亡くなっているから当たり前なのだが、その割に小さな損傷1つない綺麗すぎる遺体は、戦争の時にでる軍兵の遺体とは似ても似つかないもので。
今にもその柔く閉じられた瞼を開けて大きな桃色の瞳で周りの者達を捉え、「じゃーん!!どうです、びっくりしましたか?」と笑いながらからかってきそうでならない。でもそんなことは起きない、起きるはずがない。何故ならもう、聖火崎が昨日望桜達にフレアリカを預けて日本からゲートでこちらに来た時、いや、その2日前の休日にフレアリカとデズニーランドに遊びに行っていた時点で既に亡くなっていたというのだから。
聖火崎はその事実に"もうちょっと彼女らにも気を配っていられれば"という後悔と自責の念に押し潰されそうになるのに必死に耐えながら、当時の状況と死因などを勇者軍元帥·シメオンから聞いている。
「これ......病気か何かなの?外傷も内出血も見受けられない......」
「それが......違うのだ」
「え?どういうこと?」
しかし予想とはまた違った答えが返ってきたことに驚き、シメオンの方に目を向ける聖火崎。彼は深刻そうに眉を顰めて、俯き加減のまま続けた。
「微かにだが、魔の者の痕跡が残っている。きっと何らかの魔術を用いて殺されたのだろう」
「......魔の者って......悪魔?」
そう恐る恐る聖火崎は訊ねた。......聖火崎は近頃、勇者軍時代よりも悪魔と接する機会がかなり多かった。今まで特別嫌っていた訳ではないが良いイメージを持っているわけでもなかった聖火崎にとって、悪魔とは"人間に害をなす生物"ぐらいの認識しか無かった。
しかし近頃の望桜や的李、瑠凪といったメンバーを筆頭に悪魔と関わるようになって以降、好きでも嫌いでもない"普通"の位置にあるのだ、悪魔という存在が。人間と悪魔の絶対敵対関係があろうとも、悪魔ではなくむしろ人間に酷い目に遭わされた経験のある聖火崎にとっては、"人間も悪魔も大して変わりはしない"のだ。
たが今回の件で聖火崎の中での悪魔の株が下がることはなく、未だに普通のままだ。しかし、"犯人にはどんな事でもしてやろう"と復讐心だけは密かに燃え上がっていた。
「遺体をここまで綺麗な状態で殺す事ができるというと、それなりに上級の悪魔だろう」
「上級の............よし、犯人は私が見つけ出してやろうじゃないの......!」
「ジャンヌ、まだ目星は......」
「大丈夫よ、私には強力な助っ人がついてるもの」
焦燥しながら聖火崎の方を見たシメオンに、そう言って怒り混じりの笑顔を見せつけた聖火崎はそのまま元帥専用部屋......アヴィスフィアの部屋から出て真っ直ぐ車庫へと向かう。そして車庫の扉に手をかけて思い切り押し開いた。
ギギギィ......
「急いで車を出してちょうだい!」
「せ、聖弓勇者様!?まだ話し合いが終られてないんじゃ......」
「いいから!」
「は、はい!!行き先は......」
運転手の不満げな様子をよそに、聖火崎は車に乗りこみ東の方を向いた。魔力感知増幅装置のおかげでその方向からほんの少し、微かに感じられる禍々しい力に期待の念を向けながら、
「ヴァルハラ独立国家の皇城、ヴァルハラ=グラン·ギニョルよ」
そう力強く1言、はっきり言い放ったのだ。......自身の向かう場所に、この事件の真相を暴いてくれる者がいると確信しながら。
──────────────To Be Continued──────────────
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