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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に
✨24話1Part 道化達のお茶会①
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「......ったく、一体どこまで逃げればいいのよ!!」
......東京港に謎の海獣が現れたのと同じ頃、下界聖弓勇者·聖火崎 千代は延々と続くアミューズメントパークのメインストリートを、全速力で走っていた。
謎の空間に何も知らぬまま気づいたら放り込まれていた彼女は、アミューズメントパークのようなところで目を覚ました。
そこから空間内を色々見て回り、とりあえずこの空間には森の中から街の中、広い湖の部分にまで、至る所にスピーカーがあった。
そして、今現在自身が走っている商店街·メインストリートは、周りに同じような道が放射線状に広がっているという事も分かった。
まだまだ情報が足りない......そう思い、聖火崎が放射線状に広がる道の中心部に向かおうとしていた時だった。全速力で走らなければならなくなったのは。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ......
「ったくもー!!面倒臭いったらありゃしないわ!!」
風のように走る聖火崎の後ろには、とてつもなく耳障りな爆音を発しながら猛追する、大きな大きな、
ブゥー!!ブウゥーーー!!
豚がいた。それもただの豚ではない。ミルキーカラーで色とりどりに飾られた豚だ。
ガタッ、ガラガラ......ガッシャーン!!ゴトゴトゴト
街が壊れるのなんかお構い無し、ただただ聖火崎目掛けて突進してくる。流石は豚、絵に書いたような猪突猛進だ。
「クィーククィーク煩いのよ!!もう少し静かにできないのかしら!!」
ブイィィィーーー!!!!
「うるっっさあい!!」
鳴き声は煩いし街は壊すし、もう聖火崎の堪忍袋の緒は首の皮一枚で繋がっている状態だった。
ファンシーなメインストリートの石畳が、ガラガラガラと崩れ落ちていく。何故か下は奈落、岩盤なんてものはこの世界に存在していない。建物の瓦礫が豚の通った後の奈落に次々と落ちていく様子は、かなり不思議な光景だ。
「んもー!!なんなのよこの空間っ!!床落ちたら終わりだし、豚はいるしトラップいっぱいだしでも見かけだけは可愛いしーっ!!」
そう一息で言い切った聖火崎は、息も切らさずに足を動かし続ける。
......そう、この世界はパッと見は非常に可愛らし~い"不思議の国"モチーフの世界なのだが、1歩踏み出してみるともう地獄以外に形容のしようがない世界であった。
線路が途切れているジェットコースターに、最上部に差し掛かった瞬間に中に毒ガスが注入される観覧車。他にも上から天井が迫ってきて天井と床でプレスされるメリーゴーランドと、数多の殺人トラップは確実に聖火崎のストレス値を貯めていった。
そうこう考えていても豚の脅威はまだすぐ後ろに、気を抜けるのはもっともっと先だろう。そう思いつつ、「街には元気なボンレスハムも居るし......」と密かに毒づいて聖火崎はようやっと聖弓を顕現させた。
「遠距離攻撃法術陣展開ッ、《セラフィム·プリマシャルフシュッツェ》!!」
ドガッ!!ガガガガバキバキバキバキッ.…..フッ
そして、豚目掛けて神気長濃縮型聖矢を放った。
その大量の聖矢は、豚に着弾した直後に眩く輝いた。
「Explosion !! (爆ぜなさい!!)」
聖火崎がそう唱えると、
......ドガアアアアアアアァァァァァァァァアアアアアアアンン......!
輝いた聖矢は、かなりの爆音とともに大爆発を起こした。
「......殺ったかしら」
爆発の後、瓦礫に埋もれてぴくりとも動かなくなってしまった。
............プギイイイイイイイイイイアアアアァァァァ!!
「ぎゃああああああああああああああ!?」
しかし、豚はなかなかにしぶとい。瓦礫の中からむくりと起き上がった豚の鳴き声に負けないくらいの叫び声を上げて、聖火崎は再び足を動かし始めた。
ドガッシャーーーンッ!!!!
プギュルルルルアアア、プギイイイイィィィ!!
「うるせええええええええええええ!!!!」
ドガアン、ドガガガガガガガガガガガガガガガガガ
「さっっっさとくたばれええええぇぇぇぇ!!!!」
全く勇者らしくない言葉遣いを口で羅列しながら、聖火崎が豚に向かって思いっきり中指を立てた、その時だった。
「聖火崎!!」
「っ!!」
石畳の左右両側に立ち並ぶショップの左側の店の上から、誰かが聖火崎の名を呼んだ。
その声に反応して、聖火崎が視線をやると、
「港霞真煉流奥義......模倣技」
空の光を受けて怪しく揺れる黒髪に赤い瞳、そして頭上に1本角と牛の耳が乗った1人の悪魔が刀を鞘から抜きつつこちらの様子を伺っていた。
その悪魔が、なにかをぽつりと呟いた直後、
ッ!!
豚が初めて自分から動きを止めた。しかも、それだけではなく怯えるように体をカタカタと震わせているのだ。
「金翅鳥王剣」
バサッ!!
そして、その悪魔は動けないでいる豚の前にすっと飛び降り、頭上に持ってきていた刀を一気に振り下ろして豚を縦にズバッと斬った。
............ギギギギギィ、ズシャアァ......
その瞬間、豚は真っ二つになり鉄やプラスチック等が混じった人工物的な断面を晒しながら倒れていった。
「......は?ちょっと、的李!!見てたんならもう少し早く対処しなさいよ!!私が苦戦してたんだから!!」
その様子を見ていた聖火崎はどこか不満げに声を上げ、刀を持った悪魔......的李に怒鳴りつつ話しかけた。
「君ねえ......向こうでも色々あって、対処していたら遅くなってしまったのだよ!っていうか、悪魔である私が君の手助けをする義理はないのだよ!!」
「そんなこと言ってる場合ー!?こんな辺鄙でちんけな場所に放り込まれてるんだから、悪魔の手を借りる訳には~とか、私は仮にも勇者だから~とか言ってる暇は今はないの!!私、有給取ってないしフレアリカも向こうに......って、フレアリカが1人だわ!!」
「12歳ならきっと大丈夫なのだよ!!それを言ったら、私だって休みなんか取っちゃいないのだよ!!」
「なーにーよー!!」
「全くもー!!......って、言い争っている時間すらもなさそうなのだよ」
顔を合わせて、直ぐに始まる言い争い。真っ当な事を言っているのかいないのかはさておき、今現在、多分無駄にできる時間がない。そう言って的李はある1つの建物を指さした。その建物は......
「......time limit、この時計で15時まで......?何あの時計塔?」
......商店街をまーっすぐ行った先にある、1つの時計塔であった。それを見ながら、的李は考察を続ける。
「詳細は分からないけれど、タイムリミットが啓示してあるってことはその時間内までに脱出しておいた方がいいのは確実なのだよ。少しでも遅れると、余計なリスクを払いかねないからね」
その時計塔は街と同じように、可愛いミルキーカラーで染められていた。アンティーク調の建物......城のような建物のいちばん高いところに時計が嵌められている。
「確かに......あれ?あの時計塔......高さや色が違うだけで、よーく見たら姿形がまるっきり翠彗暁宮じゃないの!!どういうこと!?」
......そう、アンティーク調の建物に城のような建物、それは色と高さは違うものの、構造はウィズオート皇国東方の街の中心部にある城、翠彗暁宮と酷似どころか全く同じであった。
「え、何?これもあの政府の奴らの仕業なの?どこまで腐ってんのよ!!私、何も悪いことなんてしないってのに!!」
「あーもー落ち着き給えよ!!誰の仕業だとしても、まずはこの空間の主を倒さないことには始まらないのだよ!!」
再び始まった言い争い。もはや制限時間がどうだの豚がどうだのは忘れている。
「んーもー!!」
「だーかーら......『ぴーん、ぽーん、ぱーん、ぽーん♪』
そしてちょっとした口喧嘩の第3ラウンドが始まろうとした時だった。
明らかに人の声でチャイムを模したものが、スピーカーから聞こえてきたのだ。
「......ちょっと、今度は何よ」
「さあ?」
『本日は、クライナ·チャロフランドにようこそ!!ご来園、誠にありがとうございますぅ!!』
そのチャイムの後に続いたのは聞いてわかる通り、遊園地の園内放送そのままの内容の放送であった。
「こんな危険な遊園地があってたまるもんですか」
「いいから聴き給え!!」
『この遊園地は、とてもアメージングでワンダフルで、何よりノスタルジックな所です!!何故なら......人は皆、幻の幕間に囚われていくのですから......♪』
「は?ちょっとなに言ってるのか分からな「静かにするのだよ!!」
『......危機に溺れ、幻想に溺れ、欲望に溺れ、過去に溺れ、愛に溺れ......人は皆、何かしらの"海"に溺れていくもの。それは悪いことではない、ごくごく自然なことなのに、とても珍しい......私達クルーは、"陸"に上がりきってしまった人々を自然の摂理に招き入れて差し上げる活動をしております』
「胡散臭いわね......」
「......はあ......」
『そんな私達の集大成が、このクライナ·チャロフランドなのです......!お客様、是非この遊園地を楽しんでくださいね......♪』
「............ん?」
「あらら」
いかにも胡散臭い園内放送が終了すると、辺りは一気に静まり返ってしまい、園内の空気がガラリと変わった。2人から見た可愛らしかった世界が、どこか禍々しく感じられるようになってしまったのだ。
豚の亡骸(?)はそのままに、青かった空が唐突に灰混じりの薄い紫色に変わってしまった。「気色悪い......」と再び密かに毒づいた聖火崎は、放送内容を振り返ってみて、ふと引っかかった事をぼそっと呟いた。
「......クライナ·チャロフ?ウィズオート皇国東方の言語で......」
「不思議の国。......ああ、だから私はトランプ兵モチーフの服なのか......」
「......なんで私は赤ずきん?」
「童話物に寄せてあるとか?」
「ああ......ま、とりあえず空間の主をしばきに行きましょ」
「急がないとなのだよ」
「分かってるわよ」
聖火崎は苛苛を落ち着かせつつ的李と意見を交わした後、とりあえず時計塔の方に向かう事にした。
────────────To Be Continued───────────────
......東京港に謎の海獣が現れたのと同じ頃、下界聖弓勇者·聖火崎 千代は延々と続くアミューズメントパークのメインストリートを、全速力で走っていた。
謎の空間に何も知らぬまま気づいたら放り込まれていた彼女は、アミューズメントパークのようなところで目を覚ました。
そこから空間内を色々見て回り、とりあえずこの空間には森の中から街の中、広い湖の部分にまで、至る所にスピーカーがあった。
そして、今現在自身が走っている商店街·メインストリートは、周りに同じような道が放射線状に広がっているという事も分かった。
まだまだ情報が足りない......そう思い、聖火崎が放射線状に広がる道の中心部に向かおうとしていた時だった。全速力で走らなければならなくなったのは。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ......
「ったくもー!!面倒臭いったらありゃしないわ!!」
風のように走る聖火崎の後ろには、とてつもなく耳障りな爆音を発しながら猛追する、大きな大きな、
ブゥー!!ブウゥーーー!!
豚がいた。それもただの豚ではない。ミルキーカラーで色とりどりに飾られた豚だ。
ガタッ、ガラガラ......ガッシャーン!!ゴトゴトゴト
街が壊れるのなんかお構い無し、ただただ聖火崎目掛けて突進してくる。流石は豚、絵に書いたような猪突猛進だ。
「クィーククィーク煩いのよ!!もう少し静かにできないのかしら!!」
ブイィィィーーー!!!!
「うるっっさあい!!」
鳴き声は煩いし街は壊すし、もう聖火崎の堪忍袋の緒は首の皮一枚で繋がっている状態だった。
ファンシーなメインストリートの石畳が、ガラガラガラと崩れ落ちていく。何故か下は奈落、岩盤なんてものはこの世界に存在していない。建物の瓦礫が豚の通った後の奈落に次々と落ちていく様子は、かなり不思議な光景だ。
「んもー!!なんなのよこの空間っ!!床落ちたら終わりだし、豚はいるしトラップいっぱいだしでも見かけだけは可愛いしーっ!!」
そう一息で言い切った聖火崎は、息も切らさずに足を動かし続ける。
......そう、この世界はパッと見は非常に可愛らし~い"不思議の国"モチーフの世界なのだが、1歩踏み出してみるともう地獄以外に形容のしようがない世界であった。
線路が途切れているジェットコースターに、最上部に差し掛かった瞬間に中に毒ガスが注入される観覧車。他にも上から天井が迫ってきて天井と床でプレスされるメリーゴーランドと、数多の殺人トラップは確実に聖火崎のストレス値を貯めていった。
そうこう考えていても豚の脅威はまだすぐ後ろに、気を抜けるのはもっともっと先だろう。そう思いつつ、「街には元気なボンレスハムも居るし......」と密かに毒づいて聖火崎はようやっと聖弓を顕現させた。
「遠距離攻撃法術陣展開ッ、《セラフィム·プリマシャルフシュッツェ》!!」
ドガッ!!ガガガガバキバキバキバキッ.…..フッ
そして、豚目掛けて神気長濃縮型聖矢を放った。
その大量の聖矢は、豚に着弾した直後に眩く輝いた。
「Explosion !! (爆ぜなさい!!)」
聖火崎がそう唱えると、
......ドガアアアアアアアァァァァァァァァアアアアアアアンン......!
輝いた聖矢は、かなりの爆音とともに大爆発を起こした。
「......殺ったかしら」
爆発の後、瓦礫に埋もれてぴくりとも動かなくなってしまった。
............プギイイイイイイイイイイアアアアァァァァ!!
「ぎゃああああああああああああああ!?」
しかし、豚はなかなかにしぶとい。瓦礫の中からむくりと起き上がった豚の鳴き声に負けないくらいの叫び声を上げて、聖火崎は再び足を動かし始めた。
ドガッシャーーーンッ!!!!
プギュルルルルアアア、プギイイイイィィィ!!
「うるせええええええええええええ!!!!」
ドガアン、ドガガガガガガガガガガガガガガガガガ
「さっっっさとくたばれええええぇぇぇぇ!!!!」
全く勇者らしくない言葉遣いを口で羅列しながら、聖火崎が豚に向かって思いっきり中指を立てた、その時だった。
「聖火崎!!」
「っ!!」
石畳の左右両側に立ち並ぶショップの左側の店の上から、誰かが聖火崎の名を呼んだ。
その声に反応して、聖火崎が視線をやると、
「港霞真煉流奥義......模倣技」
空の光を受けて怪しく揺れる黒髪に赤い瞳、そして頭上に1本角と牛の耳が乗った1人の悪魔が刀を鞘から抜きつつこちらの様子を伺っていた。
その悪魔が、なにかをぽつりと呟いた直後、
ッ!!
豚が初めて自分から動きを止めた。しかも、それだけではなく怯えるように体をカタカタと震わせているのだ。
「金翅鳥王剣」
バサッ!!
そして、その悪魔は動けないでいる豚の前にすっと飛び降り、頭上に持ってきていた刀を一気に振り下ろして豚を縦にズバッと斬った。
............ギギギギギィ、ズシャアァ......
その瞬間、豚は真っ二つになり鉄やプラスチック等が混じった人工物的な断面を晒しながら倒れていった。
「......は?ちょっと、的李!!見てたんならもう少し早く対処しなさいよ!!私が苦戦してたんだから!!」
その様子を見ていた聖火崎はどこか不満げに声を上げ、刀を持った悪魔......的李に怒鳴りつつ話しかけた。
「君ねえ......向こうでも色々あって、対処していたら遅くなってしまったのだよ!っていうか、悪魔である私が君の手助けをする義理はないのだよ!!」
「そんなこと言ってる場合ー!?こんな辺鄙でちんけな場所に放り込まれてるんだから、悪魔の手を借りる訳には~とか、私は仮にも勇者だから~とか言ってる暇は今はないの!!私、有給取ってないしフレアリカも向こうに......って、フレアリカが1人だわ!!」
「12歳ならきっと大丈夫なのだよ!!それを言ったら、私だって休みなんか取っちゃいないのだよ!!」
「なーにーよー!!」
「全くもー!!......って、言い争っている時間すらもなさそうなのだよ」
顔を合わせて、直ぐに始まる言い争い。真っ当な事を言っているのかいないのかはさておき、今現在、多分無駄にできる時間がない。そう言って的李はある1つの建物を指さした。その建物は......
「......time limit、この時計で15時まで......?何あの時計塔?」
......商店街をまーっすぐ行った先にある、1つの時計塔であった。それを見ながら、的李は考察を続ける。
「詳細は分からないけれど、タイムリミットが啓示してあるってことはその時間内までに脱出しておいた方がいいのは確実なのだよ。少しでも遅れると、余計なリスクを払いかねないからね」
その時計塔は街と同じように、可愛いミルキーカラーで染められていた。アンティーク調の建物......城のような建物のいちばん高いところに時計が嵌められている。
「確かに......あれ?あの時計塔......高さや色が違うだけで、よーく見たら姿形がまるっきり翠彗暁宮じゃないの!!どういうこと!?」
......そう、アンティーク調の建物に城のような建物、それは色と高さは違うものの、構造はウィズオート皇国東方の街の中心部にある城、翠彗暁宮と酷似どころか全く同じであった。
「え、何?これもあの政府の奴らの仕業なの?どこまで腐ってんのよ!!私、何も悪いことなんてしないってのに!!」
「あーもー落ち着き給えよ!!誰の仕業だとしても、まずはこの空間の主を倒さないことには始まらないのだよ!!」
再び始まった言い争い。もはや制限時間がどうだの豚がどうだのは忘れている。
「んーもー!!」
「だーかーら......『ぴーん、ぽーん、ぱーん、ぽーん♪』
そしてちょっとした口喧嘩の第3ラウンドが始まろうとした時だった。
明らかに人の声でチャイムを模したものが、スピーカーから聞こえてきたのだ。
「......ちょっと、今度は何よ」
「さあ?」
『本日は、クライナ·チャロフランドにようこそ!!ご来園、誠にありがとうございますぅ!!』
そのチャイムの後に続いたのは聞いてわかる通り、遊園地の園内放送そのままの内容の放送であった。
「こんな危険な遊園地があってたまるもんですか」
「いいから聴き給え!!」
『この遊園地は、とてもアメージングでワンダフルで、何よりノスタルジックな所です!!何故なら......人は皆、幻の幕間に囚われていくのですから......♪』
「は?ちょっとなに言ってるのか分からな「静かにするのだよ!!」
『......危機に溺れ、幻想に溺れ、欲望に溺れ、過去に溺れ、愛に溺れ......人は皆、何かしらの"海"に溺れていくもの。それは悪いことではない、ごくごく自然なことなのに、とても珍しい......私達クルーは、"陸"に上がりきってしまった人々を自然の摂理に招き入れて差し上げる活動をしております』
「胡散臭いわね......」
「......はあ......」
『そんな私達の集大成が、このクライナ·チャロフランドなのです......!お客様、是非この遊園地を楽しんでくださいね......♪』
「............ん?」
「あらら」
いかにも胡散臭い園内放送が終了すると、辺りは一気に静まり返ってしまい、園内の空気がガラリと変わった。2人から見た可愛らしかった世界が、どこか禍々しく感じられるようになってしまったのだ。
豚の亡骸(?)はそのままに、青かった空が唐突に灰混じりの薄い紫色に変わってしまった。「気色悪い......」と再び密かに毒づいた聖火崎は、放送内容を振り返ってみて、ふと引っかかった事をぼそっと呟いた。
「......クライナ·チャロフ?ウィズオート皇国東方の言語で......」
「不思議の国。......ああ、だから私はトランプ兵モチーフの服なのか......」
「......なんで私は赤ずきん?」
「童話物に寄せてあるとか?」
「ああ......ま、とりあえず空間の主をしばきに行きましょ」
「急がないとなのだよ」
「分かってるわよ」
聖火崎は苛苛を落ち着かせつつ的李と意見を交わした後、とりあえず時計塔の方に向かう事にした。
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