Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に

24話2Part 道化達のお茶会②

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「わかった!ふぅは、そこに行けばいいんだね!!」


 ......一方その頃、宇宙樹·ユグドラシルの"果実"寄生された少女であるフレアリカは、東京湾に突如現れた巨大な海獣から逃げ惑う人の並の中で、とある青年と出会った。

 その赤髪赤目の青年と軽く話し、"自分はどこに行けばいい?"という質問に対しての青年から得た答え·"東京スカイツリーのてっぺん"に向かおうと、踵を返したその時だった。


「まあ待て。人の話は最後まで聞くもんだぜ、嬢ちゃん」


 再び手をがしりと掴まれた。その力が意外に強くて、顔を顰めつつ青年の方に視線を戻す。


「え、でも......」

「嬢ちゃん、見たところ......天界の天使羽虫共とそれを崇拝してるヤツらに狙われてるだろ。それなのに、敵の懐にわざわざ無防備で、しかも護ってくれる人もなしに飛び込むのは無策愚策にも程があるってもんだぜ」

「天界の天使達を......崇拝してる人達......?それって、聖教教会の人達のこと?」

「おーおー、話が早くて助かるぜ。でも、そいつらだけの話じゃねえ。今は......っつーか昔から?ウィズオートの国全体が荒れてんだ。1部の一般民衆とかベルと一緒にいる元帥、シメオンとか言ったか、あいつぐらいだよ。国の政治にどこかおかしいって思ってんのは」

「国が、荒れてるの?......千代は、勇者軍の人達に殺されそうになってた。それも、そのせい......国が荒れてるせいなの?」

「ああ。国が荒れてるからこそ、自分達にとって政治的に不利なことを言いそうな奴で政治的にも戦闘的にも、簡単に潰せなさそうなやつは軍を上げて"悪人裁定"という形で殺しちまおうぜ、って魂胆だよ。皮肉なもんだな、国を正すためにやってることが、国のお偉いさんの私利私欲を叶えるためだけに"悪"って判断されて、消されちまうんだから」


 何故かウィズオート皇国の情勢に詳しい"身元不明な"青年の世間話に、フレアリカは唇をわなわなと震わせた。


「そんな......千代は、なんにも悪いことなんかしてないのに......!」


 義勇が悪か。お偉いさんが"正しい"とする命令だけを聞くのが、本当の善人なのか。

 幼いフレアリカには、政治の事はよく分からない。が、この事実だけが、フレアリカの脳に強烈に焼き付いた。

 ......千代の行動が皇帝や勇者軍元帥達にとって邪魔で、何も悪い事をしていないししようともしていないのに、"罪人として"殺されようとしている。


「落ち着け落ち着け。まあ、とにかくだ。そーいった考え方をするやつが政治を9割型牛耳ってるせいで、ベルの野郎とルイーズの野郎が、アヴィスフィアの嬢ちゃんみたいに消されちまうって訳よ」

「っ......それを、それを私は止めたい!!悪いことをしてない人が殺される世界なんて、そんなの、おかしいよ!!」


 いつの日かの、自宅での記憶両親との記憶を思い出しながら、フレアリカは必死で右手に力を込めた。それでも、あの小さくて大きな銃は、聖銃·ケリュケイオン父の遺品は顕現しなかった。

 ぼろぼろと涙が溢れる。頬を、決壊した涙の川がどぷりと流れ落ちた。

 自然と息が上がる。強く握りしめた右手は、爪先が食い込んだ手のひらから鮮血かにじみ出てきても尚、身体中に散り散りになった微かな神気を集めようと固くなったままだ。

  ......悔しい。正義の指針すら狂った、一個人聖火崎の考えが受け入れられるどころか話すら聞いて貰えないこの世界が。

 その感情を、小さな体の中で僅かながら確かに奮起している神気だけが、青年にひしひしと感じさせた。


「だから落ち着けって!!......俺だって止めてぇよ。でもな、無策で殺り合ったって無駄な犠牲をだすだけだ。もう少し、時間をかけて計画を練って、準備を整えてからじゃねえと......うおっといけね、ゲートが閉じちまう」

「ゲート?っそれって、千代達の敵の所に行けるゲート?」

「ああ、多分な「連れて行って!!!!」

「......は?」


 青年はフレアリカの発言と、手のひらの痛々しい爪痕にうっと気圧されながら、東京スカイツリーの頂上にて開かれているらしいゲートの状況を、どうやってかは分からないが確認している。

 そんな青年の様子なんかお構い無しに、フレアリカは言葉を続けた。


「私も、みんなと一緒に敵を倒したい!!」

「はあ!?おま、話聞いてたか!?何がなんでも無理なんだよ!!行ったとして、俺は守れねえぞ!?」

「いい!!私も行きたい!!連れて行ってよ!!!!」

「っお前はダメだッ!!」

「ッ......!」


 フレアリカは青年の両二の腕を手で掴んで、がくがくと激しく揺らした。その動作に痺れを切らしたのか、青年はフレアリカを強く一喝した。


「お前は、サリエルと共にこっちに残れ」

「......!なんでサリエルが居ることがわかるの!?」

「決まってんだろ。お前から、濃い神気の匂いがプンプンする。お前の体自体には少しの神気しかないのにな」

「えっ、すんすんすん......」
  
「自分じゃ分からんだろ......まあとにかくだ。お前に何かあったら、あいつが悲しむだろ?」

「千代が、悲しむ......」


 青年の言った言葉を口の中で小さく繰り返したあと、


「......わかった!家で理沙と待ってる!!」


 と、力強く返事をした。


「よしよし、いい子だ!!それじゃあ俺は、あいつを助けに行ってくるぜ!......飛行魔法《フライ》」

「あ、ちょっと待って!!」


 短い詠唱を唱えてふわりと空に浮き上がった青年を、フレアリカは大きな声を出して呼び止めた。


「なんだ?」

「最後に1つだけ......あなたは、一体何者なの?」

「ああ、俺か?」


 フレアリカの方にちらと視線をやった青年は、再び東京スカイツリーの方に振り返りざまに、


「俺はオセ。14代目魔王を志す者、"ミドリガオカマオ13代目魔王"の後任候補さ」


 と笑顔で言い残して、颯爽と飛び去っていった。


「望桜の......後任候補......?」


 後に残されたフレアリカは、もう街のほぼ全員が避難完了しまばらになった人すら視界に収めず、青年......大悪魔·オセが飛んでいった空を数秒ほど呆然として見つめていた。



 ──────────────To Be Continued──────────────


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