Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に

24話4Part 道化達のお茶会④

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「ったく............あ、スピーカーだ」

「ほんとだ。......なあ、森にスピーカーって......おかしくねえか?」

「確かに......でもま、さっき変な放送入ってたし、この世界自体色々おかしいから、今更スピーカーが森の中にあるとかその程度のことは驚くほどでもないかなー......『ビビビビビビビビビビビー!!』

「「っ!!」」


 2人でぼちぼちとだべりながら進んでいる時だった。近くにあったスピーカーから、というよりこの空間全体にある全てのスピーカーから、けたたましいブザー音が鳴り響いたのだ。


「今度はなんだ!?」

「知るわけないだろ!?」


 それに反応して望桜と瑠凪はとっさに身構えた。鳥がバサバサと飛んでいく音がすぐ近くから聞こえ、スピーカーから発された大きな音がうわんうわんと不快に響き渡る。

 今度の放送の主も1回目の放送と同じ人物ではあるが、話し方が若干違う。しかし2人共そこに着目することはなかった。そこよりも気になる点があったからだ。


『えーえー、ただいま連絡が入ったのだけれどぉ、10数名いらっしゃるお客様のうちの数名の方が、割り振られたエリアからの脱走、及びモニュメントを破壊したらしいわねぇ♪』

「エリアからの脱走?確かに、さっき地図で見たけど、この空間には森とか街とか、他にも色々エリア分けされてるらしいが......遊園地のエリア移動が......"脱走"?」

『まあ、大丈夫だけどねぇ、手は打ってあるから。ってことでお客様方、ペナルティを被らないようにルールは守って、楽しみましょうねぇ♪Have a nine day !(いい1日を!)』

「......あ、終わった」


 捨て台詞的な言葉を最後に終了した放送に、瑠凪はぼそりとそう呟いて望桜の方に向き直った。


「"脱走"って言い方、おかしくねえか?エリア移動とか、別に普通の事じゃね?それがルール違反にあたるとか......」


 ......エリアからの"脱走"、それが仮にエリアの"移動"だとしたら、割り振られたエリアというのは、恐らく各々が目を覚ましたエリアの事だろう。そしてそのエリアから他のエリアに移動する事、それが"脱走"となっているのだろう。

 しかし、その"脱走"やその他のルール違反の行為......放送にあったモニュメントの破壊等をやってしまうと"ペナルティ"が課せられるのだとしたら......


「......ルール説明とか一切受けてない俺達、結構やばくね?」


 エリア分けやエリア移動とモニュメントの破壊がルール違反になる事こそ知っているものの、他にどんなルールがあるのかを知らない、そして違反したら課せられるペナルティについても何も知らない2人にはかなりきつい。そしてヤバい。


「確かに......僕達なんの説明も受けてないもんね」

「だろ?」


 冷や汗をかきながらぽつりと呟かれた言葉に、瑠凪はこくりと頷きながら不安げな表情を浮かべた。


「......ねえ、どっか狭い洞窟的なのないかな?このエリア内に」

「あるかもしれねえし、探しに行くか」


 不安を抱いたまま、2人で安心できそうな場所を探すために、再び歩みを進め始めたのだった。



 ──────────────Now Loading─────────────



「......あ!さすが晴瑠陽はるひ、やっぱり用意してた!」

「流石は世界一のハッカーじゃな!!」

「晴瑠陽はすごいんだなー!!」


 ......場面は移って兵庫県神戸市中央区本町、ヨシダパークハイム332号室に御厨 葵雲みくりや あうん天津風 愛あまつかぜ めぐ御厨 雨弥みくりや うみそして......


「ラファエルとアリエル......お前ら、そんなに長期間こっちに来てて大丈夫なのかよ」

「ああ、今はな。ただ、そろそろまずいかもしれん」


 来栖亭 汐音くるすてい しのん我厘 重あがり そうたの5人が集まっていた。......ただの少年少女の集まりにも見えるのだが、本当は天使と悪魔と一般人の混ざった、なんとも奇々怪々な集まりである。


「にしても......このパソコンに残ってたデータを見て思ったのだが、明らかに日本や地球に住む人物の犯行ではないだろう」


 デスクに乗った、USBメモリがセッティングされている固定型パソコンに視線をやりつつ、汐音がぽつりとそう言った。


「ウィズオート皇国の人か、天使の犯行だよね!魔界でもそういう話は聞かないし」

「いや、天使の犯行でもない。天界の奴らはまだ、こちらの世界日本のことを"あると断定はできない"世界としか思ってないから」


 汐音の言葉に葵雲が反応し、それに我厘も反論を述べる。ぱらぱらと降る雨の音が、隣の331号室に人がいない事を強調している。


「でもま、天界の手先である聖教教会とか勇者軍元帥とか、あとは政府の大臣とか皇帝とか......まあとりあえず、ウィズオート皇国の奴らの仕業だってことは確実だろ」

「確かに............ん?となると、あの聖弓勇者ジャンヌ·S·セインハルトは、勇者軍と政府から御法度を犯してでも死んでもらいたいほど大きい何らかの恨みでも買っているのか?」


 我厘がため息混じりに言い放った仮定に、来栖亭が大きく反応した。勇者軍の一般兵や元帥が故意的に勇者に何らかの害を与える事など、考えられないし本来あってはならない事だからだ。


「いや?勇者軍の奴らと教会の奴ら、それと政府の奴らの大多数が彼奴のことを政治的に邪魔に思って、彼奴あやつと仲の良い聖槍勇者ルイーズと共に葬ろうとしておるのじゃあ」

「なっ......」


 しかし、そんな来栖亭に説明するために天津風が放った言葉に、来栖亭は先程よりも大きく目を見開いた。


「そ、そんなことを......あ、確かミカエルも裏方に入っていたな......あ、彼奴は皇国政府の奴らにそんなことをやらせようとしていたのか!?おいガブリエル!!お前は何も言わずに従って......」


 逆上する来栖亭に、我厘は冷たい視線と共にこう言い放った。


「仕方ないだろ。生まれた時から僕はあの人達の道具だ。道具は使役者に何も言えない」

「おまっ............ぐ、ぬぬ......!」

「まあまあ落ち着くのじゃ汐音!其奴そやつには何を言っても無駄じゃからな!」

「何を言っても無駄ってなんだよ!!」


 しんと静まり返った3階フロアに、天津風のなだめる声と我厘の不満げな声がささやかに響いた。住人が一時的にでもいないというのは、こうも建物が寂れて見えるものだろうか。


「って、君達全員落ち着いてよ~!!」

「いいあらそってるばあいじゃないぞー!!晴瑠陽も望桜も的李も鐘音も、瑠凪も或斗あるともみーんないなくなっちゃってるんだぞー!!」

「あ、ああ......そうだったな、急がねば」


 葵雲と雨弥が2人がかりで天使一同を落ち着かせにかかり、場はようやっと本題の話軸上にしっかり乗っかったのだった。


「にしても、ウィズオート皇国の人が犯人だとして、まず一般兵じゃないよね!中級以上の神気保持量じゃないと、ポータル陣は作れないから!」

「いやいや、一般兵の中にも神気保持量が中級以上の奴は1000分の1ぐらいの確率でいるから、そうとは言いきれないだろ」

「どっちみち、はんにんをこんせきをたどるのはここのめんばーだけだとむずかしいのだー!!」

「ううむ......わ、分からないのじゃあ~」


 全員が頭を抱えて考え込み始め、場の空気がどよよんと重いものになり変わろうとしたその時であった。


 カン、カン、カン、カン、


「ん?だれかきたぞー?」

「神気臭い......」


 階段を登る音が聞こえてきた。雨弥が首を傾げつつ玄関に視線を向け、葵雲が不愉快そうに顔を顰めて鼻を塞いだ。天使一同も揃って玄関に視線を向ける。


 ガチャ......


「全く......あなた達は揃いも揃って脳みそがジェル状か何かなんですか?もう少し頭を使って下さい」


 開いた扉から覗いたのは、明るい茶髪で結われたおさげと黒いチェック柄のマント。


「......ん?あ!!望桜の店の店員さんだー!!」

世羅 冬萌せら ともえと申します。雅 梓みやび あずささんのご両親と、奈津生 帝亜羅なつき てぃあらさんのお母様に頼まれて調査をしていたのですが......」


 どよんとした空気の332号室に堂々と入ってきのは、先日から行方不明になっている梓の両親が雇った私立探偵·世羅 冬萌であった。いかにも探偵といった風貌で現れた彼女は、部屋を一通り見回したあとパソコンの方に迷いなく歩みよって、


 カチッ


「あれ?そのUSB......君のだったの!?」


 USBメモリを抜き取ってポケットにしまった。そして、一同に数秒背を向けて何かを行った後、皆の方にゆっくりと振り返りながら、


「......帝亜羅さんのお母様からの調査依頼は、普通だったらこちら日本の人間が言うような内容のものではなかったので、(元)魔王と側近悪魔の居るこのマンションに足を運んだんですよ。そしたらなんか大天使と大悪魔が集って頭抱えてるし、私の方に"こっちに来て"と自ら連絡してくれた晴瑠陽さんも行方不明になってるし......今、結構状況自体はまずいんです......」


 と、文句と皮肉を織り交ぜた近況報告を述べた。そして......


「......"娘が皇国政府の勇者暗殺に巻き込まれたという名目で、聖教教会と政府の人間達の"人造天使生成計画"の実験体にさせられそうになっている"......そう、帝亜羅さんのお母様は私に依頼されました。元智天使の娘、天使と人間の混血の彼女はあの人達の実験体には最適でしょう。ですが、私としても彼女の身柄を渡すわけにはいかない......」

「......!」

「ですので、今回は私も命懸けで調査を行います」


 閉じた瞼をゆっくりと開いた。その下から覗く瞳の色に、その場にいた全員が目を白黒させて、冬萌を凝視した。


「......あ、もしかして汝......」


 ......透き通った琥珀色の瞳。それはまさしく天使の証の、"黄色い瞳そのものであった。そしていつの間にか顕現していた純白の翼と頭上の黄金の輪、そんな冬萌の人らしからぬ姿を見て訳もわからず困惑する一同の中で、唯一天津風だけが彼女が誰かを分かった上で困惑していた。


「セ、セラフィエルか!?」

「アリエルさん、お久しぶりですね」


 ......7大天使の一角であり、最後の審判天使である大天使聖·セラフィエル。白鷲の羽のようにすっと伸びた美しい翼は、1度見たら忘れないほどの代物。それを背に携えた彼女は、凛とした空気を纏ったままきりりと佇んでいた。



 ───────────────To Be Continued─────────────


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