Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に

24話5Part 道化達のお茶会⑤

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「......!」

「ですので、今回は私も命懸けで調査を行います」


 閉じた瞼をゆっくりと開いた。その下から覗く瞳の色に、その場にいた全員が目を白黒させて、冬萌を凝視した。


「......あ、もしかして汝......」


 ......透き通った琥珀色の瞳。それはまさしく天使の証の、"黄色い瞳そのものであった。そしていつの間にか顕現していた純白の翼と頭上の黄金の輪、そんな冬萌の人らしからぬ姿を見て訳もわからず困惑する一同の中で、唯一天津風だけが彼女が誰かを分かった上で困惑していた。


「セ、セラフィエルか!?」

「アリエルさん、お久しぶりですね」


 ......7大天使の一角であり、最後の審判天使である大天使聖·セラフィエル。白鷲の羽のようにすっと伸びた美しい翼は、1度見たら忘れないほどの代物。それを背に携えた彼女は、凛とした空気を纏ったままきりりと佇んでいた。

 ......これは余談だが、昔、1度だけ顔を合わせた事があったアリエル......こと天津風は、その翼のおかげで彼女の事をぼんやりとだが記憶していたと言えるだろう。


「な、なんじゃセラフィエル!!私らは何も悪いことなどしておらぬから、しておらぬから有罪の裁定を下すのだけはやめておくれー!!」

「はあ?そんなことしませんよ。私自身、向こう天界での債務からこちらに逃避行している間抜けな主人をとっ捕まえに来ている、いわばオフな身ですから」

「そうか......」

「そっかー」

「そうなのかー!」

「あっそ」

「そうか!」


 さらりと言い放つ冬萌に一同は未だに軽くぽかんとしつつ、各々相槌を打った。


「いいですか、私はこれから厚生省に行ってきます」

「コウセイショウ?なにそれ、おいしいの?」

「食べ物じゃないけど......なんで厚生省に行くのさ?」


 冬萌の言葉に葵雲が訳の分からない反応をしたのに我厘がツッコミつつ、冬萌に訊ねかける。


「理由は聞かないで下さい、私も晴瑠陽さんから"厚生省に行け"という指示しか聞いてないですから」

「そうなんだ、いってらっしゃい!!」

「それと、皆さん......富士山頂に向かってください」

「は?富士山頂?」


 冬萌からの謎の指示に、我厘は不満全開な表情で顔を顰めた。


「こちらも、晴瑠陽さんから指示しか聞いていないので......とにかく、向かってください。なるべく早く」

「わかったのじゃあ~!!」


 捨て台詞を吐いて颯爽と部屋を出ていった冬萌。その背を眺めながら発された天津風の元気のいい返事で、他の面子の唖然とした表情そのままに332号室での会議は幕を閉じたのだった。



 ────────────To Be Continued───────────────



 ザクッ、ザクッ、


「......ん?なにか聞こえない?」

「あの教会からじゃないかい?」


 ......一方その頃、聖火崎たかさき的李まといは街のエリアから少し離れた、小さな田舎町を模した場所へとやってきていた。森へと向かう道の途中にある、小さな田舎町。

 人がおらずどこかおかしく怪しい色合いと雰囲気と建物な事以外は、この世界は現実と大差はない。つまづいてコケれば痛いし、牧場の牛小屋の匂いは強烈だった。道中で気づいたのは、その程度の事。

 ミルキーピンクとミルキーイエローで構成された建物が立ち並んでいる。そんな田舎町に差し掛かり、数分進むと向かって右手に大きな教会が見えてきた。その教会から、剣のような刃物で何かを刺すような、ザクッ、ザクッ、という音が聞こえてきた。

 明らかに誰かが中にいる。誰がいるのかが気になった2人が、教会表口の扉をこそーっと開けて中を覗くと、


「......え?あれ誰?」


 純白の髪に白雪のように白い肌の1人の青年が、何やらぶつぶつと呟きながら土台から崩れた神を模した銅像に鉄剣を刺しては抜き、刺しては抜きを繰り返していた。

 その姿と様子を見て、聖火崎は真っ先に思った事を口にした。


「さあ~......ここに居るのは私達のように異空間に招かれた人間か、敵方の人間。見て誰かわからないなら......多分敵方の人間なのだよ」


 そんな聖火崎に、的李も青年を凝視しながら返事を返す。


「斬る?私は後方支援するわよ」

「あー......君は攻撃しなくていいのだよ」


 聖火崎の言葉に的李は視線を数秒泳がせた後、刀を出しながらそう答えた。その答えに、聖火崎は不満全開


「はあ?何でよ。相手の実力が分からない以上、2人でガーッと攻めた方が良いじゃない」 

「いや、そうだけれど......この空間に入ってから、体に異常はないかい?顕現させた聖弓が小さいとか、肌がひりひりして痛いとか......」

「確かに肌は痛いし聖弓も......小さいというより、攻撃の威力が結構落ちていたわ」

「それ、この空間自体を濃い魔力が満たしているからなのだよ。君はまだ耐性がある方でそれにかなり強い方の神気が体に溜まっているから痛みは感じないし、戦闘能力等にもあまり影響がない。でも、耐性がない方の人間や神気を体に溜めていない人間は、吐き気がしたり酷い頭痛がしたりして、最悪死に至る可能性もあるほどの濃さなのだよ」

「なっ…って、それって梓ちゃん、まずいんじゃない?」

「相当まずい状況なのだよ。でも、居場所が分からない以上は......」

「なら、とっととあいつ捕まえて情報吐かせちゃいましょ」

「は、ちょっと、待ち給え!」


 いきなりずかずかと教会に入っていく聖火崎を的李は止めようとしたが、時すでに遅しだった。


「火力が下がっているのなら、根を強化して同じだけの火力を出せばいいだけよ......我が聖弓に宿りし鳳凰よ。汝の偉大なる、人々を悪夢に誘い擾乱せし者共を討ち貫く力よ、今、ここに顕現せよ......!」

「聖火崎っ!!」


 的李の"待て"を聞かずに ずんずんと教会内を突き進みながら詠唱を唱え、身体中の神気をありったけ聖弓に込めて宿す。

 そして、


「強化版......遠距離攻撃法術陣展開、《セラフィム·プリマシャルフシュッツェ》ッ!!」

「っ!!ぷ......」


 リーン、ゴーン、ガーン、ゴーン


 先程と同じ攻撃法術を、何十、何百倍の神気と火力を以て思いきりぱなした。場の魔力を圧倒する程の濃い神気に時計台の鐘の音をどこか遠くに聞きながら、的李は口を押さえて呻き声を上げ、苦しげにうずくまることしかできなかった。



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