Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に

25話5Part Parallel⑤

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「......ねえ鐘音、本当にこっちで合ってるんでしょうね?」

「......そんなに不安なら、自分で探せばいいじゃん」


 森の中にある道を進んでいる中で聖火崎が鐘音にそう訊ねかけ、鐘音がそれを聞いてため息混じりで不機嫌そうに言い返した。

 ......運良く(?)合流できた一同が、恐らく自分達をこの異空間に閉じ込めた犯人であろう人物を倒すために一致団結してその場所に向かい始めた5分後、それまでは沢山あったたどり着くための手がかりが途端になくなってしまった(かくかくしかじかで)。

 絵に書いたように綺麗に立ち往生することになってしまった一同に、ふと鐘音がこう声をかけた。

 ......僕なら犯人の居場所が分かる、と。

 その言葉に一同はぱっと顔を上げて"その場所に行こう!!"と口を揃えて鐘音に伝え、結果的に鐘音の先導で犯人の場所に向かい、戦える人員フル稼働させて敵を倒して即脱出、という諸刃の剣な計画ができあがったのだった。

 そして今は、その計画の第1段階である"鐘音の先導で犯人の場所に行く"を進行している真っ最中なのだ。


「いや、だって......」


 聖火崎は辺りを怪訝の目で見回した後、そう言って言葉を濁した。

 ......鐘音曰く"聖火崎が感知してる魔力反応の場所が犯人のいる場所"らしいのだが、明らかに反対方向に向かって進まされているのだ。違和感を感じない方がおかしいというもの。

 それに、先程から的李が辺りを警戒し続けている。まあ、変な異空間に閉じ込められていて、しかもトラップが設置してあり敵もいる、となると当たり前の行動なのだが......

 辺りには一切の魔力·神気反応がなく、おまけにトラップらしきものも街中にしかないっぽいのだ。それは、事前に行った入念な探索によりしっかりと確認済みなのだが......

 ......的李が警戒している対象が、どう見ても"確実に来るとわかっているもの"なのだ。来るかわからないのではなく、確実に来る......恐らく、的李なりに色々考えた結果、確実に相手が来る、とでも考えたのだろう。

 上記の2つがあって、聖火崎は言葉を濁しながらも鐘音に"本当にこっちで合っているのか"と訊ねかけたのだ。


「はあ......さっきも言ったでしょ、迂回してかないとトラップに引っかかるって」

「でも、わざわざ道を通る必要もないんでしょ?ゲームの世界じゃないんだから、決められた範囲以外も行けるはずよ」

「そうだけど......進むのに危険が伴わない道はこっちだから」

「はあ?多少のリスクぐらいなら払ってかなきゃ帰れないレベルしか時間がないのよ?最悪、即死トラップ以外は突っ切っていかないとってぐらいには」

「帝亜羅と梓もいるんだから、それはダメでしょ。とにかく、こっちの道から迂回して行く」

「なんでそんなに頑ななのよ......」


 聖火崎の意見に、鐘音はまるで聞く耳を持たない。頑なに意見を曲げようとしない姿勢に、聖火崎は思わずため息混じりにそう呟いた。

 ......自分だって、戦う力を持たない帝亜羅と梓の身を案じない訳ではない。ただ、少なくとも即死以外のほぼ全てのトラップを退けられて、且つモニュメント等の通常の敵となら普通に戦える面子なのだから、ある程度の危険を冒してでも時間を無駄にしないようにすべきだ。

 それなのに......鐘音の安全ながら回り道なルート選択に、聖火崎はどうしても内心"これ本当に大丈夫なの?"と考えている。でも、自分が変に動けば、周りを危険な目に合わせるかもしれない。そうも考えているので、動きたくても動けずにいるのだ。


「......着いた」


 ......と、あれこれ考えているうちにどうやら目的地に着いたらしく、鐘音が辺りを見回しながら小さく声を上げた。


「着いた?っていないじゃない!!ってゆーかまだ街の中だし、魔力反応はー......」


 それに流石にイラッときた聖火崎が、魔力感知スキルを使って周りを調べてみた。しかし、


「......え、いない......?」


 周囲には一切の魔力反応がない。やはり、鐘音は誰もいないところに自分達を案内していた......?

 聖火崎の中で、鐘音への不信感が最高潮に達しようとしていたその時だった。


『ピピーィィン、ポォーォォン、パァァーァァン、ポーォーオオンン』

「「っ!?」」


 再び変な放送が入ったようで、サイレンからかなり音割れしたチャイムが流れた。その瞬間、的李と或斗がそれぞれ小さく呻き声を上げて頭を抱え始めた。



「っが、ぁっ......」

「、っ、......」

「ちょっと2人ともどうしたのよ!!」

「大丈夫か的李!!或斗!!」


 頭を両手で押さえて苦しみ出した2人を見て、一同は焦ることしかできない。


「......」


 ......ただ1人を除いて。


「ちょっと鐘音っ、あなたなんとも思わなっ......」


 ガウンッ......


「っぐ、ぅ............けふっ......」

「............ぇ?」


 目の前の惨状とも呼べる有様に、聖火崎の驚きの声は驚きを体現する間もなく銃声が木々の間を木霊する音によって掻き消された。

 ......鐘音が腰に提げていたガンホルダーからマグナムを取り出して、あろう事か目の前で頭を抱えてうずくまっていた或斗の腹を撃ち抜いたのだ。

 飛び散った常人の物よりも黒みがかった朱と呆気なく口から血を吐いた或斗の姿、そしてただ呆然と立ち尽くす事しか出来ていない望桜と帝亜羅の姿が余計にその場の沈黙を際立たせていた。


「ちょっとあんた何やってっ............はぁ......?」


 その行為を目前に聖火崎がようやっと鐘音の手からマグナムを奪い取るべく動きだそうとしたが、体はぴくりとも動かなかった。


 ......カシャコン、ガウンッ......


 聖火崎が自身の身体がぴくりとも動かない事に一瞬だが動揺している内に、再びマグナムが火を吹いた。勢いよく飛び出た鉛弾は、今度は的李の右脚の付け根を貫く。


「っ、......、」


 無音の呻き声を上げた的李は、撃ち抜かれた部分を両手で押えて苦しげに顔を歪ませながら鐘音の事を睨みつけている。


「っ!!ちょっと、あんた!!マジで何やっ、か、ぁっ......」


 その光景をも目前にしていた聖火崎が目線だけを鐘音の方に向けて、唯一動く口を動かして鐘音に一言言おうとした瞬間に、聖火崎もまた割れるような頭の痛みを感じて地面に伏せざるを得なくなったのだ。

 不可抗力だ。体全体の力が一気に抜けてしまうぐらい頭が痛み、まるで頭蓋骨内で鐘付きでもされているのかと錯覚してしまう程に、脳がガンガンと揺さぶられている。否、それもまた錯覚なのだろうが......

 もう、どれが現実でどれが錯覚なのかの判別が付けられないほどに狼狽させられてしまった。聖火崎もまた、的李と或斗の膝を屈したからの攻撃を受けたのだ。

 軽く朦朧としてきた意識の中、聖火崎は直感でそう感じた。


「......敵の戦闘の主戦力を潰した。次に......」


 ......、......


 聖火崎の霞む視界と耳鳴りに6割型支配された聴覚の中で、鐘音がそう呟いて銃口を静かにこちらに向けた事だけがしっかりと認識できた。


「......サブ戦力を潰す」

「っ......、......く、そがっ............ぁ、い、ぎっ......」


 ただただ這いつくばって、悪態と血を吐くことしかできない。後方では、聖火崎と同じように動けない望桜と帝亜羅が小さく息を呑んだのが分かった。



 ─────────────To Be Continued──────────────


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