Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に

27話2Part 友情②

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「レヴィアタンは、僕の大切な友達なんだよ......!?」

「......え......?」


 ただ一心に友達を思い、それが例え敵になってしまった友人に対しても、心から大切だと思える瑠凪の思考とそれだけの"友情"に、望桜はただ唖然とするしかなかった。


「聖火崎達が......っく、レヴィアタンレヴィアタン言ってたから、もしかしたらとは......っぇく、思ったんだよ......でも、......っ、信じたかったけど、信じられなかった......ありえないし......今になるまでは......えっく......」


 瑠凪は目から大粒の涙をぱたぱたと落としながら、しゃくり上げるのを懸命に抑えようとしつつ話している。

 それは、今までの望桜が見てきたどの瑠凪の"顔"よりも、1番本人の性格大元の大元をありありと表し出した表情であった。

 望桜は今、瑠凪......ルシファーという人物の人情を、全てと言っても過言ではないほど全容を事細かに、隅から隅まで知り尽くしたのを直感した。

 生意気で、照れ屋で、


「えっと、どういう......?」

「......っく......っ、サタンとかベルゼブブとかって魔界では......っぇ、存外珍しい名前でもないんだ......レヴィアタンもそれと一緒......っく、だから......」


 子供らしいようで、大人っぽくて、


「なら、レヴィアタンが今現在、敵方にいるのはおかしくないんじゃねえのか?」

「おかしいよ......だって、」


 下界の事とかにおいては博識で、表面上は気丈だけど、


「レヴィアタンは、8000年前にもう......死んでるんだよ......?」


 芯は、諸々の事と次第によっては命取りになるレベルで、弱いという事。

 瑠凪の涙ながらの暴露に、望桜は声すら出せずにその場で立ち尽くしていた。そんな望桜を後目に、瑠凪は涙を拭って、息を整えている。


「......僕の友達のレヴィアタンは、海に住む大きな龍で......7罪、嫉妬のレヴィアタン......その通り名で通ってるのは、今東京湾にいるレヴィアタンだけなんだ。でも......レヴィは人間のこと心から嫌ってたみたいだし、ましてや聖教教会の味方につくことなんて、ありえない......」

「そう、なのか......」

「うん......」


 その時、望桜はある出来事をふと思い出した。

 それは、2ヶ月......いや、3ヶ月ほど前の、葵雲がアオンモールにて望桜達を襲った時の事だ。

 あの時の葵雲は、今家で日がな一日中ごろごろしながら動画を見、飯を食い、寝ている葵雲とは違っていた。

 それは、リストレイント·コントローラーと呼ばれる1種の洗脳魔法をかけられていたのが理由の1つである。本人曰くあの時の記憶は曖昧らしく、葵雲はあまり細かいところは覚えていないとの事。

 ......もし、あの時の葵雲のように何かしらの魔法で、レヴィアタンが操られているのなら......

 瑠凪曰く人を嫌っていたらしいレヴィアタンが、聖教教会と皇国政府の連合機関の味方についているのにも納得がいく。

 望桜はくだんのレヴィアタンに会った事もないし、出自や経歴、性格等について詳しく調べたわけではないので分からないが、やってみる価値はある。

 望桜は自身がふと今思いついた作戦に、そう値踏みした。

 ......レヴィアタンが既に死んでる件については、後回しだな。


「......っ、」


 望桜は軽く拳を握ると、軽く俯いたまま黙りこくっている瑠凪の頭に、軽く手を乗せた。


「俺に考えがあるけど、乗るか?」

「っ!」


 ぱっと顔を上げた瑠凪の答えは、決まりきっていた。


「うん......!」

「っし、とりあえず場所を移すぞ。話は後、ってやつだ」

「......分かった」


 望桜が目配せする前に瑠凪は意図を察して、ゲートを開き2人で再び先程の場所へと移動する。


「......あ、あいつら......!」


 ......オセが2人がいなくなったことに気づいた時には、2人は東京スカイツリー天望回廊の天井の上へと移動していたのだった。



                      ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「っ、やっぱ寒いね、ここ......」

「地上より遥かに高いからな。んでー......よし、大丈夫そうだな」


 天望回廊の上、地上450mは、先程までとは打って変わってそよ風程度の寒風が吹く静かな場所だった。

 望桜は自身の斜め上、先程自分達が異空間から放り出された際の出口があったであろう空を見て、すぐに顔を戻す。

 そこからは、異空間に満ちていた魔力が少なからず漏れており、辺りの空気に交じってふわふわと浮いていた。

 望桜は瑠凪の手を握って一旦内側に寄り、しゃがんで、東京湾の方をすっと見た。

 ......今、ここなら、大丈夫そうだな......!


「俺の計画っつーか算段は、まずお前が攻撃魔法陣......できれば、広く浅く攻撃するやつで、範囲と威力が行使中でも変更可能なめちゃくちゃ便利なやつを用意して欲しいんだが......描けるか?」

「うん、やってみる」

「ん、ありがとな。それで......魔法陣用意して、俺がそれを使って海獣......レヴィアタンを殺さない程度に炙る。殺さないために一時的に気絶させるだけだから、そこは納得してくれ」

「......、......分かった」

「でも、俺単体じゃせいぜい1秒行使できるかできないかぐらいしか魔力が持たねえから、行使してる間俺に魔力供給を頼む。さっき俺達がほっぽり出された時に異空間から漏れた分が上に残ってるからそれ使えば......いけるか?」

「大丈夫」

「良かった。んで......気絶させて、操作魔法をかけられてれば解いて俺達で保護、かけられてなければそのままゲートで強制的に魔界に送り返そう。魔界なら人もいねえし、入ることもねえから皇国の追手とかはひとまず大丈夫だろ」

「そうだね。いい計画、乗った」


 2人は瑠凪の相槌の直後に、東京湾を正面に構え天望回廊上の端の方にスタンバイする。

 そのまま、瑠凪は海獣を中心に、先程望桜が言った条件に合う攻撃陣を丁寧に描き始めた。

 ......体内の魔力を消費してその場で描く魔法陣は、葵雲等が用いる瞬間的に出せる魔法陣の"テンプレート"がある魔法陣と比べて手間と時間がかかるが、その分多種多様な細かい応用が効く魔法陣にすることができる。

 しかし、その場で描くタイプの魔法陣は、どの紋様がどんな意味を持つのかを覚え、さらにどう配置することで効果の強弱をつけることができるか等を考える必要があり、慣れるまでは大量の時間を要するので、用いているのはよほど魔法の腕と知能に覚えがあるほんの1部の悪魔のみである。

 そんな慣れないと何日もかかると言われる魔法陣の描画を、望桜に見守られながら進めていった瑠凪は、


「......はい、できたよ」


 ものの数秒で描き上げてしまった。


「す、すげ......」


 描画する魔法陣を使用する大変さ等を知識として知っている望桜は、それを見て思わず感嘆の声を上げた。

 そんな望桜の方に、瑠凪は魔法陣を保ったまま振り返る。


「この次、何すればいい?」

「ああ、えっと......俺がこの魔法陣で海獣を炙るから、お前は魔力供給をしてくれればいいぞ。ところで......魔力供給は体が触れ合ってればできるが、特に首とか足の付け根とか手首とかがいいって聞いたんだが、実際どうなんだ?」

「首とかの方が、空気中に逃がしたりとかしないし、時間もかからないかな。魔法を連続して使うんなら、首とか触ってた方が絶対いいよ」

「んー、おっけ」


 望桜は瑠凪がそう言い終わると同時に、返事をしながら瑠凪のすぐ後ろに場所を移した。

 そして、


「っ!?ぇ、へ......?」


 魔法陣保持のために手を前にかざして立っている瑠凪を、後ろからぎゅっと抱きしめた。

 驚きと急な羞恥で思わず声を上げた瑠凪を、望桜はそのまま抱きしめ続ける。


「んじゃ、やるぞー!!」

「え、あ、うん......//」


 含羞はにかむ瑠凪をそのままに、望桜は詠唱を唱える。


「この世の我が眷属達に告ぐ。今、汝らの怨哀な意で世を歪ませ、聖なるを堕としうる力を我に与え給え」

「っ、」


 望桜が詠唱を唱えた瞬間に、自身の体から吸われていく魔力の量が増えたのを感じ、瑠凪はふらつく足に力を込めた。

 それを望桜は察して、瑠凪を片手で抱き支え、もう片方の手はまっすぐ海獣の方に向ける。

 遠くで聖火崎達が戦っているのが見えるが、海獣より体が小さく小回りが効くため、当たらないだろうという確証を持って、


「......特異高位攻撃魔法《Teufels悪魔schwertの剣》」


 望桜は思い切り、攻撃魔法を放った。



 ─────────────To Be Continued──────────────


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