Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に

✨27話1Part 友情

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「さっさとこの件片付けて、皆で焼肉にでも行きましょー!!」


 聖火崎たかさきの勇者としての責任と欲たっっっぷりの叫び声で高々と宣言された、皇国政府·聖教教会の連合機関との戦の、序戦第2ラウンドの再開。

 ......と、ちょうど同じ頃。とあるビルの辺りに取り残された一同......望桜まお的李まとい瑠凪るな或斗あるとあずさ、そして一同の防衛に残ったオセは、


「しっかし暇だねえ......」

「戦えない主様と望桜さん、梓さんはともかく......俺達は怪我しているとはいえ、戦いの中で傍観することしかできないのは、ちょっと申し訳ないですよね......」

「後で、聖火崎にはお礼しないとなのだよ。あと葵雲あうん翠川すいかわにも」


 こんな調子で、随分と暇を持て余していた。

 的李と或斗は2人で床に寝そべって空を眺め、色々話したりぼそぼそと独り言を呟いたりしている。

 その横で、


「オセさんって魔王なの!?」

「魔王候補だ魔王候補。魔界の民20億ぐらいの中で数百人ぐらいいる候補のうちの1人だよ」

「凄いじゃんリアル悪魔ってことでしょ!?」

「ここまで俺達悪魔に良い意味で興味示す人間はあんたが初めてだよ......」

「えっ、だってかっこいいし強そうだしかっこいいじゃんっ!!」

「かっこいいか......?」

「かっこいいよ!!!」

「あー......じょ、嬢ちゃんがここまでのめり込むんなら本当なんだろうな......」


 オセは梓からの質問攻め+キラキラとした純粋で綺麗な目でめっちゃ見られるという人生で初めての出来事に、堂々としつつもどこか気圧され気味になっている。


「............ねえ望桜」

「ん?何だ?」

「魔王補正ってさ、内容、具体的に何個あってどんな事ができるの?」

「え?あ、補正?えー、んー......?」


 わやわやと騒ぎ立てるオセと梓(9割型梓の声)から少し離れた位置で、聖火崎達の戦闘を眺めていた望桜と瑠凪。

 先程までずっと黙りこくっていた瑠凪がふとそう問いかけてきたので、望桜は顎に手を当てて少しうなって悩み、頭の中で記憶をわっさわっさと漁り始めた。


「......全部覚えてるんじゃなかったのかよ」


 その様子を隣で見ていた瑠凪が不機嫌そうにむすっとした表情でそうぼやき、


「あー悪い悪い、今ちゃんと思い出した」

「......あっそ、ならいいけど......じゃあさっさと教えて」


 望桜がそれに軽く手を合わせて少し申し訳なさそうに謝ると、瑠凪はむすっとした表情そのままで望桜ずいっと顔を近づけて、少しだけ威圧的にそう聞く。


「分かった。まず1つ目は......んふ、」

「ちょっと、何」

「いや、すま......ふふ、ぐふ......」


 ああ、ぶすっとしてる所も可愛い......と、望桜が思わずにやけを漏らすし、


「にやけんなこっちは真剣なんだから!!」

「あでっ」


 瑠凪から頭に1発チョップがお見舞された。

 あ、そんな痛くねぇ......と望桜は思ったが、余計に気を悪くしそうなのでやめておいた。


「ああと、1つ目が......」


 そこから改めて、望桜は魔王補正の内容について説明をし始めた。

 ......あー、まず1つ目は、言語自動翻訳。これがなかったら俺は魔王としてやっていけなかっただろうなってレベルで、めちゃくちゃ便利な補正だな。

 詳細は補正名の通り、書き話し読み全てにおいての言語自動翻訳だな。俺目線から見てもよくわからん異国語が書いてあっても、意味だけは分かる。話す時も似た感じだな。それと、自分が日本語で喋っても、相手に伝わる。とりまめちゃくちゃ便利だ!!

 2つ目は、味方に対する強化魔法&回復魔法の効果増幅。まあ、俺はヒールとか強化魔法ですら下級のものしか使えないから、効果も実質中級と並ぶか並ばないかくらいにしかならねえけど......

 詳細は、これも補正名の通り。他に説明することも、これに関してはないな。

 3つ目は、魔法·法術の強制解除。味方や敵にかけられている魔法とか法術、他には呪いとか色々を解除できるやつだな。

 詳細としては、この補正は洗脳魔法やリストレイント·コントローラー等の操作魔法、あとは......〇〇したら死ぬとか、その逆とかの日本だと"呪い"とか呼ばれそうな呪術魔法とかでも解けるぞ!ただし、契約魔法に関する魔法·法術は解除できないから注意だな!

 4つ目は、なんか強力な武器が召喚できる?とか何とかだったな。まあ、召喚条件が"受容魔力量が大以上の大悪魔"だからそもそも無理なんだけどな。武器とかに関する詳細も不明だ。

 5つ目は、魔力の浄化ができる。

 詳細は、魔力ってなんか人によって若干違うらしくてな?それぞれの人が持ってる魔力が自分にかけられた魔法とかで汚れる?みたいな現象が起きることがあるらしいんだ。それを、俺の中に魔力を一旦入れてから相手に戻すことで浄化ができるらしい。ファフニールに前やったのがこれだな。

 6つ目は、他人が書いた魔法陣で魔法が使える。

 詳細は、まあ、これも補正名の通りだ。普通、他人が書いた魔法陣の使用ってできないんだが、できるようになってるらしい。この補正に関しては特に使うことねえし、なんなら改めて聞かれるまで存在すら忘れてた。

 7つ目は、正体不明の生物の正体がわかる。ただし、俺が無自覚のうちに1回でも見たことあるものだった場合のみっていう条件つきな。だから、これに関しても使うこと、使えることはほとんどない。

 詳細は前述した通りだ。フレアリカが果実だって分かった理由はこの補正だから、今は少しだけ役に立つなって思ってる。


「......で、全部だ」

「そうだよね、あの時、そうだって言ってたもんね......!」

「え、あの時......?」


 望桜が説明し終わるなり瑠凪が目を輝かせながら見つめてきたので、望桜はにやけそうになるのを抑えながら、訊ねかける。


「フレアリカと初めて会った次の日......フレアリカがユグドラシルの果実だって言い当てたあの時、俺は補正で物の正体がわかるって......!」

「あ、ああ。確かに言ったけど、そ、それがどうしたんだ?」

「話は後!!あの海獣が何か分からない?」

「え、ああ、見てみる」

「急いで!!」

「わ、分かった!」


 酷く切羽詰まった様子の瑠凪は、望桜を急いで立たせ、そのまま海獣が見える方向に手を引いて連れていく。

 望桜はそんな瑠凪に手を強く握られたまま、急いで補正スキルを用いて海獣を見た。


「......あー、と......」

「何だった?」

「......Riesigeer menschlicher Fisch......巨魚族......?だってよ」

「......!じゃあ、個体名とかは!?」

「Leviatan......レヴィアタン?」

「っ!!!」

「一旦落ち着けって!!」

「っ、」


 自分の肩を外してしまうのではないかと心配になるレベルで腕を引っ張る瑠凪を、望桜は慌てて制止した。


「......冷静なままで、いられるわけないじゃん......!」

「何か理由があるのかもしれんが、冷静さ欠いたら駄目だ!!一体何が、あったんだよ......?」

「だって、だってっ......」


 瑠凪の言い草に再び訊ねかけた望桜の声には、疑問の意に驚きが混じっていた。

 ......何故なら、瑠凪は目にいっぱいの涙を貯めて、なんなら零しながらこちらを一心に見つめて、必死で言ってきたからだ。


「レヴィアタンは、僕の大切な友達なんだよ......!?」

「......え......?」


 ただ一心に友達を思い、それが例え敵になってしまった友人に対しても、心から大切だと思える瑠凪の思考とそれだけの"友情"に、望桜はただ唖然とするしかなかった。



 ─────────────To Be Continued──────────────
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