Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に

28話2Part 異世界生物達の冬休み②

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「みんな準備はいいかしら?」


 そんな分からない事だらけの中、聖火崎達が取った行動は......


「それじゃー、乾杯っ!!」


 高々とアルコールの入ったグラスを掲げ、乾杯の音頭を取る事だった。


「国民の英雄である勇者が......政府に消されようとしてる勇者が、こんなんでいいんだか......」


 瑠凪の憂いのぼやきは、周りの騒々しさの中であっさりと消えてなくなってしまった。


「にしても、いきなり声掛けたのにこんなに量があるなんて、あんた意外と臨機応変ね~?」


 グラスの酒を一気に飲み干した聖火崎は、目の前にあるテーブルの上に乗った、業務用か?と思う程大きな鍋を見、その後すぐに大鍋の前に鎮座している或斗の方を見やった。


「勘違いするな、元からその量を作る予定だったんだ。大体、貴様らが来ると連絡が入った時点でもうできていたのだから、増やしたりなどできるか」

「あら、それは悪いことしたわね」


 ぶすくれた様子で文句を吐く或斗の横で、聖火崎はさほど気にしてなさそうに謝罪の言葉を述べる。


「第1、到着の7分前にそちらに行くと連絡する奴があるか」

「昨日の時点で集まろうって話は出てたはずよ?まあ、次の日とは言ってなかったけど」

「はあ......」


 或斗のため息も先程の瑠凪のぼやきのように、すぐにさっと消えてしまった。

 と、いうのも、聖火崎と或斗の周りには、


「悪いなーいきなりお邪魔しちまって、にしても綺麗な部屋だよな~」

「うちの部屋は別段汚いけどその分安いから、仕方ないのだよ」


 或斗が配膳の用意をし終わるのを周囲を見回しながら待っている望桜まお的李まといに、


「後で、PlayStoreとか色々のゲームをやってみたい」

「あ、或斗さん、ご飯の後にでも買ってきたお菓子とかみんなで食べませんか?」

「あたしらお酒飲めないからジュースとかなら買ってきたよ!いきなりお邪魔するんだから、そのくらいはしないとだしね!」


 各々何かしら言いながら待機している鐘音べるね帝亜羅てぃあらあずさ


「晴瑠陽と雨弥はお家でゆっくりするってさ~!!あ、ねーねー、後で他の部屋も見ていいー?」

「いいけど、リビング以外はそんなに綺麗じゃないよ?」


 そして、騒ぎ立てる葵雲の横で、若干顔をしかめながら葵雲と話している瑠凪がいた。

 騒がしい空気だが、宴会特有の楽しさだとか嬉しさだとか、どこかそういうものを含んだ空気は決して居心地の悪いものではない。むしろいて楽しい空気だ。

 それも、かなり親しい(?)間柄のみの飲み会となれば、煩わしさや社会礼儀を弁えて~とかいう面倒臭さもない。

 ......そんな宴会であり飲み会......と称された人魔合同の忘年会は、主催は聖火崎、会場は桃塚家で開かれていた。

 料理は或斗が作ったもので、鮭のクリーム煮、ミートソースとトマトのパイ、フレンチサラダ、ハンバーグ、ジャーマンポテトの5つの料理が、全て特盛サイズで用意されていた。もちろん米もしっかりと同じぐらいの量が用意してある。

 元々は瑠凪と沙流川さるがわ(今現在は奥の部屋でアニメを見ている)が食べて、その残りを或斗1人で平らげるつもりで作っていたというのだから驚きである。

 飲み物は聖火崎が買ってきたアルコール類と合わせて梓が買ってきたジュース、後は元々桃塚家にあったもので事足りた。

 食後のお菓子やデザートも用意されているが、入念に計画を練られて行われているものではなく、突拍子もなくなんなら直前まで何の用意もされていない状態で突如開かれたゲリラ忘年会(年明け後)である。

 そんな忘年会に皆が収集されて10分ほど経った頃に、料理の配膳が済み、全員が料理に手をつけ始めた。


「はくっ......、」


 望桜が料理を何種類か取り皿に取り、そのうちの1つ、ミートソースとトマトのパイを大きく口を開けて思い切り頬張る。

 すると、


「っ!!」


 じゅわあ......とミートソースの甘辛いジューシーな風味が広がり、その後で塩で軽く味付けされた酸味のあるトマトの味がじわじわと口の中を侵食していく。

 大きめにカットされたミートソースの肉のごろっとした食感と、水煮のトマトの感触、そしてそれを包み込むサクッとしたパイを1度に頬張るのが楽しくて、割と大きめで1切れを取った望桜だが3口程で食べきってしまった。


「うまっ!!美味いぞこれ!!」

「或斗さん、美味しいです~!」


 お店さながらの料理達に望桜は無意識の内に歓声を上げながら舌鼓を打ち、鮭のクリーム煮を黙々と食べ続ける鐘音の隣で帝亜羅が或斗に称賛の言葉を投げかけると、


「へへ、良かったです♪作りがいがあるってもんですね♪」


 こういった空気に慣れないのか、若干含羞はにかみながら嬉しそうに笑って見せた。

 直後に、料理を取り分ける姿勢のままハッとして、自分の皿を置き楽しげに目を細めながら口を開く。


「あ、そういえば俺、1月10日で20歳になるんですよ」

「「「え、」」」


 或斗からの突然のカミングアウトに、一同はピタッと固まる。

 悪魔であり堕天使である或斗は、実年齢だけで言えば本当に万年を生きている悪魔の中でもかなり長く生きている方だ。

 そんな、長生きだが見た目はやや幼気いたいけない青年の姿である或斗が、日本で登録してある戸籍上20歳になるらしい。


「まあ、実年齢は20歳はたちなんてとうの昔に越してるんですけども......戸籍上は、1月10日から20歳なんです......!」


 一見大したことなさそうに思えるその出来事だが、或斗にとってはかなり大きな出来事であるらしく、まるで長年大成しなかったスポーツ選手が彼岸の優勝を果たしたかのような、そんな表情を浮かべている。

 しかし何故、それほどまでに戸籍上の20歳が嬉しいのかというと、


「なので、日本の酒蔵でお酒を~とかができるようになるんですっ!!」


 と、いうことらしい。


「......すっ......すぅ......!」


 何かが感極まったのか、ガッツポーズをしてぷるぷると小刻みに震えている或斗を、それほどお酒が好きなんだなぁ......と帝亜羅は少しだけ羨ましそうに笑いながら見つめている。



 ─────────────To Be Continued──────────────


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