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第3章
体調はFeel?隊長はCool。(後編)
「この子がモチコ。新しく入った私の相方」
紹介されたモチコは、女の人に向かってぺこりとお辞儀をした。
「はじめまして、モチコといいます」
「私はアリサ。よろしく」
クールな声だった。
アリサが差し出してきた手を、モチコも握りかえして握手する。
その手は特別大きくはないが、がっちりと自信を感じる握り方で、安心感があった。
胸にはマルシャと同じ赤色のスカーフ。
制服の左胸にあるポケットの上には、シグナスでの階級を示すピンバッジが光っている。
丸いバッジに描かれているのは、白鳥のシンボルと、2つの星。
前にシズゥから聞いた話によれば、2つ星は隊長の証だ。
「モチコ、シャワー浴びてくるから少し待ってて」
ミライアはそう言うと、奥にあるシャワー室の方へ消えていった。
残されたモチコは、アリサ隊長をあらためて見上げる。
ミライアより少し細身だが、同じくらい背が高い。
ショートカットの髪は、輝きのある金色。
ミライアとは違うベクトルで整ったその顔立ち……。
ハンサムな美しさ、とでも表現したらよいだろうか。
この格好良さは、ミライアのファンとはまた別のタイプの人たちから、熱烈に好かれそうだ。
そんなことを考えていたら、気づけば無言で隊長をじろじろと見つめ続けてしまっていた。
隊長もずっと黙ってモチコを見ている。
やばい、失礼だったかも。
もしかして怒らせてしまった……?
「うぉぉぉぉーーい! 白おかっぱ、いつまで隊長と見つめ合ってんのよ!」
たいへんよく響く大きな声が、部屋を震わせる。
無言で見つめ合ったままの2人を見かねて、マルシャが声をかけてくれたのだ。
正直、気まずいところだったので、この助け舟はありがたい。
「す、すみません。アリサ隊長の雰囲気が、その……格好良かったので、つい見すぎてしまいました」
「ふーん。隊長、褒められてますよ。良かったですね」
「ありがとう」
隊長は控えめな笑顔をつくりながら言った。
低くて芯のある、クールな声だ。
「白おかっぱ、夜中の台風はあんたが叩いたらしいわね」
「うん。先輩にリードしてもらって、なんとか」
「魔法が使えない白おかっぱにしては、少しは役に立つじゃない。ほんの少しだけど」
モチコとマルシャがそんな会話としていると、アリサ隊長が口を開いた。
「君、魔法が使えないの?」
「あ、はい……。実はですね――」
モチコは手短に、魔法が使えない体質について説明する。
隊長が尋ねるのも当然だ。
魔法が使えないのにアルビレオになったなんて、普通に考えれば何かの間違いだと思うだろう。
隊長はしばらく無言で何か考えたあと、口を開いた。
「今度、私たちのフライトを見学にくるといい。何か参考になるかも」
「えっ、いいんですか!? ぜひ見たいです!」
「ミライアの飛び方じゃ、規格外だから」
隊長はまた控えめな笑顔でそう言った。
確かに先輩は飛ぶのが速すぎて、普通の飛び方の参考にはならない。
他のアルビレオの飛び方を見せて貰えるのは、とてもありがたかった。
隊長の提案にマルシャも賛同する。
「隊長、いいアイデアですね。それなら、朝番のフライトの日にしましょう」
「朝番の仕事も見てみたい! ぜひ!」
モチコはぶんぶんと頭を縦に振って賛成した。
「朝番ならいつでもいいわよ。私はほとんど毎日いるから」
「マルシャ、そんなに働いてるの?」
「6色もいるのに、白組は夜専門で、黒は休職中。青はしばらく出張だし。黄組に負担をかける訳にもいかないから、結局は赤と緑の私たちが朝も夜も出ずっぱりよ」
「うわ……。大変だ」
「まあ、黒組か青組が戻ってくるまでの辛抱だから、別にいいけど」
そんなシグナスのシフト事情を話していると、ミライアがシャワーを終えて戻ってきた。
モチコの朝番見学の話を伝えると、ミライアも賛成してくれる。
「アリサ、うちのモチコをよろしく」
「わかった」
ミライアとアリサ隊長のそのやり取りは、短い言葉の中にも長年仕事を共にしてきた信頼感がにじみ出ていて、なんかよかった。
ミライアが『うちのモチコ』と言ったのも、モチコには誇らしかった。
先輩のアルビレオとして認められているという実感が湧いてくる。
それから白組のふたりは帰り支度をして、先にあがることになった。
ミライアが螺旋階段を上り始めたので、モチコも後をついていく。
モチコが帰りの挨拶をすると、隊長がモチコに向かって言った。
「次は朝のフライトで会おう。待ってるよ」
隊長は言葉は少ないが、冷たい感じはしない。
声はクールでも、中身はとても暖かい人のようだ。
そんな隊長の横にいるマルシャを見ると、なぜかニヤリと不敵な笑みを浮かべている。
「今度、白おかっぱに、フライト中のカッコいい私を見せてあげるわ」
「おー。楽しみにしてる」
モチコはマルシャに手を振って別れると、中央展望室でリサとシズゥにも挨拶をしてから、タワーを後にする。
屋上展望台から飛び立つと、台風が過ぎ去ったあとの空には雲もなく、すっきりとした朝だった。
紹介されたモチコは、女の人に向かってぺこりとお辞儀をした。
「はじめまして、モチコといいます」
「私はアリサ。よろしく」
クールな声だった。
アリサが差し出してきた手を、モチコも握りかえして握手する。
その手は特別大きくはないが、がっちりと自信を感じる握り方で、安心感があった。
胸にはマルシャと同じ赤色のスカーフ。
制服の左胸にあるポケットの上には、シグナスでの階級を示すピンバッジが光っている。
丸いバッジに描かれているのは、白鳥のシンボルと、2つの星。
前にシズゥから聞いた話によれば、2つ星は隊長の証だ。
「モチコ、シャワー浴びてくるから少し待ってて」
ミライアはそう言うと、奥にあるシャワー室の方へ消えていった。
残されたモチコは、アリサ隊長をあらためて見上げる。
ミライアより少し細身だが、同じくらい背が高い。
ショートカットの髪は、輝きのある金色。
ミライアとは違うベクトルで整ったその顔立ち……。
ハンサムな美しさ、とでも表現したらよいだろうか。
この格好良さは、ミライアのファンとはまた別のタイプの人たちから、熱烈に好かれそうだ。
そんなことを考えていたら、気づけば無言で隊長をじろじろと見つめ続けてしまっていた。
隊長もずっと黙ってモチコを見ている。
やばい、失礼だったかも。
もしかして怒らせてしまった……?
「うぉぉぉぉーーい! 白おかっぱ、いつまで隊長と見つめ合ってんのよ!」
たいへんよく響く大きな声が、部屋を震わせる。
無言で見つめ合ったままの2人を見かねて、マルシャが声をかけてくれたのだ。
正直、気まずいところだったので、この助け舟はありがたい。
「す、すみません。アリサ隊長の雰囲気が、その……格好良かったので、つい見すぎてしまいました」
「ふーん。隊長、褒められてますよ。良かったですね」
「ありがとう」
隊長は控えめな笑顔をつくりながら言った。
低くて芯のある、クールな声だ。
「白おかっぱ、夜中の台風はあんたが叩いたらしいわね」
「うん。先輩にリードしてもらって、なんとか」
「魔法が使えない白おかっぱにしては、少しは役に立つじゃない。ほんの少しだけど」
モチコとマルシャがそんな会話としていると、アリサ隊長が口を開いた。
「君、魔法が使えないの?」
「あ、はい……。実はですね――」
モチコは手短に、魔法が使えない体質について説明する。
隊長が尋ねるのも当然だ。
魔法が使えないのにアルビレオになったなんて、普通に考えれば何かの間違いだと思うだろう。
隊長はしばらく無言で何か考えたあと、口を開いた。
「今度、私たちのフライトを見学にくるといい。何か参考になるかも」
「えっ、いいんですか!? ぜひ見たいです!」
「ミライアの飛び方じゃ、規格外だから」
隊長はまた控えめな笑顔でそう言った。
確かに先輩は飛ぶのが速すぎて、普通の飛び方の参考にはならない。
他のアルビレオの飛び方を見せて貰えるのは、とてもありがたかった。
隊長の提案にマルシャも賛同する。
「隊長、いいアイデアですね。それなら、朝番のフライトの日にしましょう」
「朝番の仕事も見てみたい! ぜひ!」
モチコはぶんぶんと頭を縦に振って賛成した。
「朝番ならいつでもいいわよ。私はほとんど毎日いるから」
「マルシャ、そんなに働いてるの?」
「6色もいるのに、白組は夜専門で、黒は休職中。青はしばらく出張だし。黄組に負担をかける訳にもいかないから、結局は赤と緑の私たちが朝も夜も出ずっぱりよ」
「うわ……。大変だ」
「まあ、黒組か青組が戻ってくるまでの辛抱だから、別にいいけど」
そんなシグナスのシフト事情を話していると、ミライアがシャワーを終えて戻ってきた。
モチコの朝番見学の話を伝えると、ミライアも賛成してくれる。
「アリサ、うちのモチコをよろしく」
「わかった」
ミライアとアリサ隊長のそのやり取りは、短い言葉の中にも長年仕事を共にしてきた信頼感がにじみ出ていて、なんかよかった。
ミライアが『うちのモチコ』と言ったのも、モチコには誇らしかった。
先輩のアルビレオとして認められているという実感が湧いてくる。
それから白組のふたりは帰り支度をして、先にあがることになった。
ミライアが螺旋階段を上り始めたので、モチコも後をついていく。
モチコが帰りの挨拶をすると、隊長がモチコに向かって言った。
「次は朝のフライトで会おう。待ってるよ」
隊長は言葉は少ないが、冷たい感じはしない。
声はクールでも、中身はとても暖かい人のようだ。
そんな隊長の横にいるマルシャを見ると、なぜかニヤリと不敵な笑みを浮かべている。
「今度、白おかっぱに、フライト中のカッコいい私を見せてあげるわ」
「おー。楽しみにしてる」
モチコはマルシャに手を振って別れると、中央展望室でリサとシズゥにも挨拶をしてから、タワーを後にする。
屋上展望台から飛び立つと、台風が過ぎ去ったあとの空には雲もなく、すっきりとした朝だった。
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