ペンダントの中の猫時間―失恋OL、時々猫。運命をくしゃみで変えてみせます。―

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第5にゃ‐3 君に還る道

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(第5章 輪廻の記憶 ― 君に還る道)

ー[夜・河川敷の遊歩道]ー

街の喧騒から少し離れた川沿いの道。
夜風がやさしく頬を撫で、
街灯の光が川面に細く揺れていた。

悠真とみさとは、並んで歩いていた。
沈黙があっても、気まずさはなかった。
むしろ、何かを待つような静けさが二人の間に漂っていた。

「……あの夢、また見たんです」
悠真が呟く。

「猫が現れて、僕に笑いかけるんです。
 まるで、昔から知ってるみたいに」

みさとは歩みを止めた。
「その猫、どんな顔をしてた?」

「白くて……鈴をつけてて。
 風の中で、鈴の音を鳴らしながら――」

――あなたに会えて、幸せだった。

記憶の奥底から、声が溢れた。
悠真の言葉と同時に、みさとの胸の鈴が共鳴する。

――ちりん。

夜の風が止まり、世界が静まった。
その音だけが、二人を包んだ。

ー[記憶の回廊]ー

光が舞い、過去と現在が重なっていく。
ふたりの視界の先、無数の光の粒が道のように伸びていた。
それは、時を越える“君に還る道”。

「……あなたに会うために、何度でも戻るにゃ」

どこか懐かしい声。
みさとは胸を押さえ、息を呑んだ。

(あの夜……あたし、確かに言った)

猫の記憶、風の香り、彼の掌。
忘れたはずのすべてが、一気に流れ込む。

悠真もまた、手の中のペンダントを見つめた。
光が脈打ち、心臓の鼓動と同じリズムを刻む。

「……思い出した。
 俺、君を……“ミオ”って呼んでた」

「――!」

涙が溢れた。
その名を、ようやく聞けた。
何度も夢で、何度も届かず、それでも呼びたかった名。

「……悠真さん」
「ミオ……」

二人の声が重なった瞬間、
光が弾け、風が一気に吹き抜けた。

ー[現在・河川敷]ー

夜風が再び流れ出す。
ペンダントの鈴が二つ、静かに触れ合って鳴った。

みさとは涙を拭きながら笑う。
「……戻ってきたんですね」

悠真も微笑んだ。
「たぶん、ずっと同じ場所にいたんです。
 君を探すために」

二人の指先がそっと触れ合う。
その瞬間、胸の奥で再び鈴の音が鳴った。

――ちりん。

それは、時を越えた再会の証。
失われた記憶は戻らなくても、
想いは確かに生きていた。

ー[余韻]ー

川の流れが静かに光を反射する。
遠くで電車の音が響き、
夜の空に小さな星がひとつ瞬いた。

みさとは、ぽつりと口からもらした。

「……この道は、あなたに還るための道だったのね」

悠真はその言葉に静かに頷いた。
「じゃあ、これからは――
 一緒に歩こう。もう迷わないように」

風がふたりを包み、
鈴の音が夜の川面に流れていった。

――それは、永遠に続く輪のように。
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