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チャプター3 虹橋萌火
4項 萌火、受難 ~公開レイプ
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それは、ある穏やかな昼下がり──
俺は社長に頼まれた買い出しを済ませて事務所に戻るところだった。
買い出しと言ってもその中身は社長のための酒とそのつまみ類で、店も近いこともあって俺は車を使わずに徒歩で出かけていた。
そして、とあるビルに隣接した駐車場の前に差し掛かった時、行きの時には無かったはずの人だかりをそこで見た。
──こんなところに何で人が集まってるんだ?
疑問に思いながらそこに差し掛かると、
「ね、ねえ、警察呼んだ方がよくない? これってガチなヤツじゃないの?」
「まさか、白昼堂々野外レイプとかありえねーだろ?」
「アレだよアレ、セックスアイドル! その撮影だよ、きっと!」
そんな会話が聞こえてくる?
──セックスアイドル?
聞き捨てならない単語を耳にした俺は、すぐさま人だかりを掻き分けて前へと出る。
「おらっ! おらっ! おらぁッッ!!」
パチンッ! パチンッ! パチンッッ!!
「あンッ! ダメぇ、そんなに激しくされたら……ンああッッ!!」
そこで繰り広げられている光景を目にした俺は面食らった。
若い男と女が真っ昼間の駐車場で性行為をしていたのだ。
「どうだ、気持ちイイか? 人に見られながら犯されてよがってんのかッ!?」
「はあぁぁ……レイプされてるのに……人に見られてるのに……ああン、スゴく気持ちイイよおぉぉぉッッ!!」
じゅぼッ! じゅぼッ! じゅぶぶッッ!!
茶髪の男は後ろから赤い髪の女を激しく突き、下着をずり下ろされた女は四つん這いになって嬌声を上げ、その律動に身を委ねている。
「へへっ、レイプされてよがるなんて、とんだスケベ女だな!!」
「そうなのぉ……わたし……あンッ! 人前で後ろからおチ○ポをムリヤリ挿入られて感じちゃってるスケベ女なのおぉぉぉッッ!!」
男のピストン運動はさらに激しさを増し、女は形の良い乳房を振り乱しながら恍惚に喘ぐ。
──何なんだ、これは?
俺は完全に混乱した。
本当のレイプ現場かとも思ったが、女の方に抵抗の意志がまるで感じられないのだ。
「よおし、そんじゃあご褒美にたっぷりと膣内射精してやるぜぇッ!!」
「ああ、そんなぁ……レイプされて膣内射精までされちゃったらわたし、ホントの変態になっちゃうよぉぉぉッッ!!!!」
女もどうやら混乱しているようで、快楽を貪りながらもほんのわずかな羞恥のようなものが垣間見えた。
「オラァ、イクぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!」
どぴゅぴゅッ! ズピュピュピュピュッッッ!!!!
刹那、男は咆哮と共に女の膣内に精を撃ち放つ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁンンッッッ!!!!!!」
絶叫と共に女はそのままうつ伏せに倒れる。
その局部からは白濁の液体がどくどくと放流されていた。
「へへっ、まさか通りがけのレイプでこんなによがってくれるとは思わなかったぜ」
男はそう言ってズボンを履き、女に冷笑を向ける。
──違う。これはセックスアイドルの撮影などではない!!
刹那、俺は荷物を放り出して猛然と駆け出し、
グシャアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!
完全に油断していた男の頬に拳を繰り出した。
「ぐぼえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」
男は5mほど吹っ飛び、芥のように転がるとその場にパタリと倒れた。
ぽかんと開口する野次馬たちに、
「今すぐ警察と救急車を呼んでくれ! これは撮影なんかじゃない。リアルな事件だ!!」
俺は叫んでそう伝えた。
しかし、みな首をかしげたり訝しむばかりだった。
「セックスアイドルだったら一般市民の目に触れさせるようなことは絶対にしない。だからこれは犯罪なんだ!!」
俺が再度叫ぶと、ようやく近くにいた女性がスマホで電話をかけてくれた。
俺はホッとひと息吐いてから被害者である赤い髪の女性の方へ歩み寄り、おもむろに脱いだジャケットを彼女の肩にかけてその体を起こし上げる。
下着だと思っていたものはどうやら陸上選手が着ているセパレートのユニフォームのようで、それ以外の衣服が周囲に見当たらないことから、彼女はその姿でいたところを襲われたのだろう。
「大丈夫……な訳はありませんよね。今救急車を呼んでますので、どうか落ち着いてお待ちください」
何と声をかければ良いのか悩んだ末に、当たり障りのない言葉を向ける。
「わたし……引っ越して来たばかりで……ランニングしてたら……あの人が……」
彼女は虚ろな目を漂わせ、途切れ途切れに語り出した。
「わかりました。後は警察に伝えてください。俺はこれで失礼します」
俺は立ち上がり、
「もっと早く助けるべきだったのにためらってしまった。申し訳なく思います」
最後にそう言い残し、その場を後にした。
「遅くなってしまった。社長、怒ってるだろうなぁ……」
荷物を手に取り、俺は事務所へと急ぐ。
社長はとにかく酒絡みのことになると厳しく、少しの遅れでも許してはくれない。
──おそらく今日は解放されそうにないな……。
俺はため息を吐き、己の不幸を呪うのだった。
♢
「……うぅ、頭痛ぇ……」
昨日は案の定一晩中酒に付き合わされて結局事務所で夜を明かした。
「ツラそうだな、マサオミ。酒弱くなったんじゃないか?」
軽い二日酔いを抱えて唸る俺に対し、俺以上にしこたま酒を浴びたはずの社長はけろっとしており、今は普通にデスクに向かっていた。
「社長が強すぎるだけですよ……」
「まあ、そうだな。久しぶりにマサオミと2人きりだったから、うれしくて少し飲み過ぎたかもな」
そう言って彼女は笑う。
あれで少しなのか、と俺は思わず苦笑する。
「お、マサオミ。昨日のことがニュースになってるぞ」
刹那、社長がパソコンのモニターを凝視してそう呼びかける。
「どれどれ……あ、ホントですね」
俺は自分のパソコンでニュースサイトを開いてみると、たしかにトップ画面の下の方に「○○区で婦女暴行事件発生 犯人逮捕される」という見出しがあった。
それをクリックしてニュース記事を読んでみると、どうやら昨日の男は片想いをしていた女性にフラれたらしく、逆上してその女性を犯して逃走中だったらしい。そしてその翌日に例の駐車場でたまたまランニングをしていた赤い髪の女性をも襲ったとのことだった。
自暴自棄だったのだろう。
どちらにしても被害に遭った2人の女性は不運としか言いようが無い。
「このご時世でまだこういう事件が発生するのか……。まったくやり切れないな」
社長がため息交じりにボヤく。
「そうですね……」
俺は同調した。
こういった被害を無くすために「性的搾取禁止法」が施行され、性犯罪に対する処罰も極限まで厳格化された。
しかし、それにも関わらずこうした事件は一定数発生してしまうのだ。
俺はなんだかやり切れない気持ちになり、大きくため息をついた。
と、その時だった。
ピンポーーーン!
ビルへの来客を知らせるチャイムが事務所に鳴り響く。
「来客とはめずらしいな」
「俺が出ますよ」
俺は立ち上がり、部屋の入り口横にあるインターホンを起動させる。
するとモニターに映し出されたのは見たことの無い若い女性だった。
──いや、待てよ?
よくよく見てみると、特徴的な赤いショートヘアに見覚えがあった。
昨日、駐車場で強姦されたあの女性だ。
「はい、『SGIプロダクション』です」
『あの、こちらに佐渡原さんはいらっしゃいますか?』
俺の呼びかけに彼女はそう答える。
──なぜ俺の名前を知っているんだ?
疑問に思いながらも通話を続ける。
「佐渡原は俺ですが」
『あ、あのわたし、昨日アナタに助けられた者です。改めてお礼が言いたくてお伺いしました』
彼女は顔を綻ばせてそう言った。
なぜ彼女は俺の名前ばかりか勤務先まで知っているのか疑問は募るばかりだが、わざわざ来訪してくれたのだから応対しなければならない。
「わかりました。今そちらに向かいますのでお待ちください」
俺はそう言ってインターホンを切り、
「そういう訳なので、ちょっと下へ降ります」
社長に伝える。
「モテる男はツラいねぇ。なんならここに連れこんでしまえ、マサオミ」
「はいはい、そうですね」
社長の戯言を軽く受け流し、俺は事務所から出る。
1階に降りてエントランスを抜け、玄関口を出ると例の女性が立っていた。
今日はセパレートユニフォームではなくちゃんと服を着ているので、何となく受ける印象が違って見える。とはいえ、Tシャツにホットパンツというラフで結構肌を露出した格好であることには変わりは無いのだが。
「あっ」
彼女は俺に気づくとすぐに駆け寄り、
「ジャケットありがとうございました。ちゃんとクリーニングさせていただきました」
そう言ってビニールにきっちりと包装された黒いジャケットを差し出した。
「わざわざありがとうございます」
俺はそれを受け取ると、
「ところで、どうしてここがわかったのですか? 俺の名前もご存知でしたし」
疑問に思っていたことを訊ねる。
「昨日、女性警察官の方に教えていただいたんです。『黒ずくめでサングラスをかけていてそういうことが出来る人物はひとりしかいない』って言ってましたよ。結構有名人なんですね?」
「いや、全然そんなこと無いですよ……」
俺は苦笑する。
たぶんその応対をしたのは、俺の知り合いの女性警察官だっただけのことだ。
「あの……ここってセックスアイドルが所属しているタレント事務所……なんですよね?」
彼女がおずおずと訊ねる。
「ええ、そうです」
「あの、いきなりなんですけど……わたしをこちらで雇っていただけないでしょうか?」
「セックスアイドルをしたい、ということですか?」
彼女はコクリとうなずいた。
「たしかにウチは慢性的な人材不足ですし、とてもありがたいお話ではありますが……」
人材不足どころか、今ウチに所属しているタレントはしほりさんひとりだけで、彼女が入ってからこれまで誰1人増えていないのだった。
「何でまた突然に?」
「あの、わたし、実は……」
彼女はそこまで言ってからひとつ深呼吸を入れ、
「変態なんですッ!!」
声を張り上げてカミングアウトするのだった。
俺は社長に頼まれた買い出しを済ませて事務所に戻るところだった。
買い出しと言ってもその中身は社長のための酒とそのつまみ類で、店も近いこともあって俺は車を使わずに徒歩で出かけていた。
そして、とあるビルに隣接した駐車場の前に差し掛かった時、行きの時には無かったはずの人だかりをそこで見た。
──こんなところに何で人が集まってるんだ?
疑問に思いながらそこに差し掛かると、
「ね、ねえ、警察呼んだ方がよくない? これってガチなヤツじゃないの?」
「まさか、白昼堂々野外レイプとかありえねーだろ?」
「アレだよアレ、セックスアイドル! その撮影だよ、きっと!」
そんな会話が聞こえてくる?
──セックスアイドル?
聞き捨てならない単語を耳にした俺は、すぐさま人だかりを掻き分けて前へと出る。
「おらっ! おらっ! おらぁッッ!!」
パチンッ! パチンッ! パチンッッ!!
「あンッ! ダメぇ、そんなに激しくされたら……ンああッッ!!」
そこで繰り広げられている光景を目にした俺は面食らった。
若い男と女が真っ昼間の駐車場で性行為をしていたのだ。
「どうだ、気持ちイイか? 人に見られながら犯されてよがってんのかッ!?」
「はあぁぁ……レイプされてるのに……人に見られてるのに……ああン、スゴく気持ちイイよおぉぉぉッッ!!」
じゅぼッ! じゅぼッ! じゅぶぶッッ!!
茶髪の男は後ろから赤い髪の女を激しく突き、下着をずり下ろされた女は四つん這いになって嬌声を上げ、その律動に身を委ねている。
「へへっ、レイプされてよがるなんて、とんだスケベ女だな!!」
「そうなのぉ……わたし……あンッ! 人前で後ろからおチ○ポをムリヤリ挿入られて感じちゃってるスケベ女なのおぉぉぉッッ!!」
男のピストン運動はさらに激しさを増し、女は形の良い乳房を振り乱しながら恍惚に喘ぐ。
──何なんだ、これは?
俺は完全に混乱した。
本当のレイプ現場かとも思ったが、女の方に抵抗の意志がまるで感じられないのだ。
「よおし、そんじゃあご褒美にたっぷりと膣内射精してやるぜぇッ!!」
「ああ、そんなぁ……レイプされて膣内射精までされちゃったらわたし、ホントの変態になっちゃうよぉぉぉッッ!!!!」
女もどうやら混乱しているようで、快楽を貪りながらもほんのわずかな羞恥のようなものが垣間見えた。
「オラァ、イクぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッ!!!!」
どぴゅぴゅッ! ズピュピュピュピュッッッ!!!!
刹那、男は咆哮と共に女の膣内に精を撃ち放つ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁンンッッッ!!!!!!」
絶叫と共に女はそのままうつ伏せに倒れる。
その局部からは白濁の液体がどくどくと放流されていた。
「へへっ、まさか通りがけのレイプでこんなによがってくれるとは思わなかったぜ」
男はそう言ってズボンを履き、女に冷笑を向ける。
──違う。これはセックスアイドルの撮影などではない!!
刹那、俺は荷物を放り出して猛然と駆け出し、
グシャアぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!
完全に油断していた男の頬に拳を繰り出した。
「ぐぼえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!!!」
男は5mほど吹っ飛び、芥のように転がるとその場にパタリと倒れた。
ぽかんと開口する野次馬たちに、
「今すぐ警察と救急車を呼んでくれ! これは撮影なんかじゃない。リアルな事件だ!!」
俺は叫んでそう伝えた。
しかし、みな首をかしげたり訝しむばかりだった。
「セックスアイドルだったら一般市民の目に触れさせるようなことは絶対にしない。だからこれは犯罪なんだ!!」
俺が再度叫ぶと、ようやく近くにいた女性がスマホで電話をかけてくれた。
俺はホッとひと息吐いてから被害者である赤い髪の女性の方へ歩み寄り、おもむろに脱いだジャケットを彼女の肩にかけてその体を起こし上げる。
下着だと思っていたものはどうやら陸上選手が着ているセパレートのユニフォームのようで、それ以外の衣服が周囲に見当たらないことから、彼女はその姿でいたところを襲われたのだろう。
「大丈夫……な訳はありませんよね。今救急車を呼んでますので、どうか落ち着いてお待ちください」
何と声をかければ良いのか悩んだ末に、当たり障りのない言葉を向ける。
「わたし……引っ越して来たばかりで……ランニングしてたら……あの人が……」
彼女は虚ろな目を漂わせ、途切れ途切れに語り出した。
「わかりました。後は警察に伝えてください。俺はこれで失礼します」
俺は立ち上がり、
「もっと早く助けるべきだったのにためらってしまった。申し訳なく思います」
最後にそう言い残し、その場を後にした。
「遅くなってしまった。社長、怒ってるだろうなぁ……」
荷物を手に取り、俺は事務所へと急ぐ。
社長はとにかく酒絡みのことになると厳しく、少しの遅れでも許してはくれない。
──おそらく今日は解放されそうにないな……。
俺はため息を吐き、己の不幸を呪うのだった。
♢
「……うぅ、頭痛ぇ……」
昨日は案の定一晩中酒に付き合わされて結局事務所で夜を明かした。
「ツラそうだな、マサオミ。酒弱くなったんじゃないか?」
軽い二日酔いを抱えて唸る俺に対し、俺以上にしこたま酒を浴びたはずの社長はけろっとしており、今は普通にデスクに向かっていた。
「社長が強すぎるだけですよ……」
「まあ、そうだな。久しぶりにマサオミと2人きりだったから、うれしくて少し飲み過ぎたかもな」
そう言って彼女は笑う。
あれで少しなのか、と俺は思わず苦笑する。
「お、マサオミ。昨日のことがニュースになってるぞ」
刹那、社長がパソコンのモニターを凝視してそう呼びかける。
「どれどれ……あ、ホントですね」
俺は自分のパソコンでニュースサイトを開いてみると、たしかにトップ画面の下の方に「○○区で婦女暴行事件発生 犯人逮捕される」という見出しがあった。
それをクリックしてニュース記事を読んでみると、どうやら昨日の男は片想いをしていた女性にフラれたらしく、逆上してその女性を犯して逃走中だったらしい。そしてその翌日に例の駐車場でたまたまランニングをしていた赤い髪の女性をも襲ったとのことだった。
自暴自棄だったのだろう。
どちらにしても被害に遭った2人の女性は不運としか言いようが無い。
「このご時世でまだこういう事件が発生するのか……。まったくやり切れないな」
社長がため息交じりにボヤく。
「そうですね……」
俺は同調した。
こういった被害を無くすために「性的搾取禁止法」が施行され、性犯罪に対する処罰も極限まで厳格化された。
しかし、それにも関わらずこうした事件は一定数発生してしまうのだ。
俺はなんだかやり切れない気持ちになり、大きくため息をついた。
と、その時だった。
ピンポーーーン!
ビルへの来客を知らせるチャイムが事務所に鳴り響く。
「来客とはめずらしいな」
「俺が出ますよ」
俺は立ち上がり、部屋の入り口横にあるインターホンを起動させる。
するとモニターに映し出されたのは見たことの無い若い女性だった。
──いや、待てよ?
よくよく見てみると、特徴的な赤いショートヘアに見覚えがあった。
昨日、駐車場で強姦されたあの女性だ。
「はい、『SGIプロダクション』です」
『あの、こちらに佐渡原さんはいらっしゃいますか?』
俺の呼びかけに彼女はそう答える。
──なぜ俺の名前を知っているんだ?
疑問に思いながらも通話を続ける。
「佐渡原は俺ですが」
『あ、あのわたし、昨日アナタに助けられた者です。改めてお礼が言いたくてお伺いしました』
彼女は顔を綻ばせてそう言った。
なぜ彼女は俺の名前ばかりか勤務先まで知っているのか疑問は募るばかりだが、わざわざ来訪してくれたのだから応対しなければならない。
「わかりました。今そちらに向かいますのでお待ちください」
俺はそう言ってインターホンを切り、
「そういう訳なので、ちょっと下へ降ります」
社長に伝える。
「モテる男はツラいねぇ。なんならここに連れこんでしまえ、マサオミ」
「はいはい、そうですね」
社長の戯言を軽く受け流し、俺は事務所から出る。
1階に降りてエントランスを抜け、玄関口を出ると例の女性が立っていた。
今日はセパレートユニフォームではなくちゃんと服を着ているので、何となく受ける印象が違って見える。とはいえ、Tシャツにホットパンツというラフで結構肌を露出した格好であることには変わりは無いのだが。
「あっ」
彼女は俺に気づくとすぐに駆け寄り、
「ジャケットありがとうございました。ちゃんとクリーニングさせていただきました」
そう言ってビニールにきっちりと包装された黒いジャケットを差し出した。
「わざわざありがとうございます」
俺はそれを受け取ると、
「ところで、どうしてここがわかったのですか? 俺の名前もご存知でしたし」
疑問に思っていたことを訊ねる。
「昨日、女性警察官の方に教えていただいたんです。『黒ずくめでサングラスをかけていてそういうことが出来る人物はひとりしかいない』って言ってましたよ。結構有名人なんですね?」
「いや、全然そんなこと無いですよ……」
俺は苦笑する。
たぶんその応対をしたのは、俺の知り合いの女性警察官だっただけのことだ。
「あの……ここってセックスアイドルが所属しているタレント事務所……なんですよね?」
彼女がおずおずと訊ねる。
「ええ、そうです」
「あの、いきなりなんですけど……わたしをこちらで雇っていただけないでしょうか?」
「セックスアイドルをしたい、ということですか?」
彼女はコクリとうなずいた。
「たしかにウチは慢性的な人材不足ですし、とてもありがたいお話ではありますが……」
人材不足どころか、今ウチに所属しているタレントはしほりさんひとりだけで、彼女が入ってからこれまで誰1人増えていないのだった。
「何でまた突然に?」
「あの、わたし、実は……」
彼女はそこまで言ってからひとつ深呼吸を入れ、
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