ユダの黙示録

神代リナ

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第零章 砕けた氷

第九話 賑やかな一日(Ⅲ)

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「へぇー、この子が貴女のバディ? 火葬屋様には似合わない、大人しそうな子じゃない」

 そう言いながら、恵梨香は氷華の頭を撫でる。

「あぅ……うぅ、なんか子供みたいに扱われてます……」

 ……身長差あるせいで確かに氷華が子供に見えなくない。

「……気を悪くしたならごめんなさい。恵梨香ちゃん、この子が嫌がってますよ」

「あー、ごめん。なんか妹みたいに見えちゃってさ、この子が」

「べ、別に嫌がってるってほどではないですけど……」

「それなら良かった。で、貴女名前は?」

「蒼山氷華です。恵梨香さん、胡桃さん、よろしくお願いします」

「こっちこそよろしく。これからもこの部屋にはよく来るだろうし」

 恵梨香、貴女は出来るならあんまり来ないで欲しいのだけど……ドア壊れるし……なんだったら、たまに部屋燃えるし。

「私もよろしくお願いしますね、氷華ちゃん」

「自己紹介は終わったかしら?」

「うん、見ての通りね。でぇ、瑠奈パイセーン」

 突然、恵梨香は私に上目遣いをしてくる。

「急にパイセン言うな気持ち悪い」

「えー、瑠奈パイセンひっどーい」

 ……こういう時、恵梨香が何を言い出すかは知っている。
 そう、私に昼飯代を出させる気だ。

「さっき、この部屋に入る前に聞こえたんだけどぉ」

 意外と耳いいのね、コイツ……
 その才能、別のことに生かしなさいよ。

「氷華ちゃんの好きなお昼ご飯を買ってあげるって言ってたじゃん。アタシも瑠奈パイセンに奢って欲しいなぁって」

「いや、なんでアンタにまで奢らなきゃいけないの?」

「んー、無事みんなで一緒に進級出来た記念?」

 Aクラスなんだから、進級出来るのも当然でしょうが……何言ってるのかねぇこの子は。

「はぁ、奢るわけないでしょ」

「お願い! 今月金欠なの!」

 新学期早々、金欠ってなんで? 
 どんな生活してんのよ。

「……ちなみに、なんで金欠なの?」

「えーっと、それはその……うー」

「胡桃、なんでか分かる?」

「えぇ、恵梨香ちゃんは今度こそ、貴女に勝つぞーって言って杖を買ってましたから、そのせいではないでしょうか?」

「ちょ、ちょっと胡桃!」

 ……恵梨香は、私にしょっちゅう勝負を挑みに来るけど毎回負けてるのよね。なるほど、なるほど。

「あのー、先輩」

「「「どうしたの?」」」

 私たち3人は同時に氷華の方を見る。
 氷華、ここにいる全員は先輩だから、"先輩"だけじゃ誰だか分からないの。

「あ、そうでした。えっと、宵月先輩」

「ん? どうしたのかな?」

「魔術師に杖って要りましたっけ?」

 あ、その話か。
 氷華は、まだ知らないのね。

「基本は要らないね。ただ、今よりもっと魔力操作の精度を上げたいって言う時に使うのよ。ま、まだ貴女には早いから気にしないでいいわ」

「なるほど……ありがとうございます」

 ちなみに、杖は別のモノで代用することも可能だ。
 例えば、私の剣とかね。あれは、半分杖みたいなものだし。

 さて、それはそうと……私は努力をする人は好きだ。
 今回は、負けてやるとしよう。

「恵梨香」

「何?」

「ほら、これあげるわ」

 そう言って、私は彼女にラーメン割引チケットを渡す。
 これが最大限の譲歩だろう。

「ん、割引チケットね……って、は、半額! あ、ありがとうございます、瑠奈様ぁぁぁ!」

 ……ま、まぁ、喜んでくれたなら何よりね。ちょっとオーバーリアクションだけど。

「てな訳で、ラーメン頼むけど良いかしら、氷華?」

「はい、私は別になんでも良いですから」

「なら、良かった。胡桃は?」

「私も良いですよ」

「よーし、じゃあ頼みますか」

 私は、ポケットからスマホを取り出し、近くのラーメン屋に電話をかけた。
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